税込経理から税抜経理へ!変更時の注意点とスムーズな移行方法を徹底解説

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「うちの会社、ずっと税込経理だけど、税抜経理に変えた方がいいのかな?」「税込経理から税抜経理に変更したいけど、何に注意すればいいんだろう…」そんなお悩みはありませんか?経理方式の変更は、日々の業務や決算に影響を与えるため、慎重な判断が必要です。本記事では、税込経理から税抜経理へ変更する際の注意点や、スムーズな移行方法について詳しく解説します。ぜひ、あなたの会社の経理方式を見直すきっかけにしてください。

目次

税込経理と税抜経理の基本的な違い

まず、税込経理と税抜経理の基本的な違いを理解しておきましょう。この2つの方式の主な違いは、日々の取引における消費税の扱い方です。

具体的には、以下の点が異なります。

  • 日々の取引の記帳方法
  • 消費税の納付税額の処理方法
  • 控除対象外消費税の処理方法

それぞれの方式について、詳しく見ていきましょう。

税込経理方式とは

税込経理方式とは、売上や仕入れの際に、消費税額を含んだ総額で会計処理する方法です。 日々の記帳では、消費税を区分せず、取引金額全体を売上高や仕入高として計上します。 そして、決算時にまとめて消費税の処理を行います。 確定した消費税額は「租税公課」として費用計上し、還付される場合は「雑収入」として処理します。

例えば、税抜10,000円(消費税1,000円)の商品を販売した場合、税込経理では売上として11,000円を計上します。

税抜経理方式とは

一方、税抜経理方式は、売上や仕入れの際に、本体価格と消費税額を分けて会計処理する方法です。 取引の都度、売上にかかる消費税を「仮受消費税」、仕入れにかかる消費税を「仮払消費税」という勘定科目で処理します。 そして、決算時にこれらの仮受消費税と仮払消費税を相殺し、納付すべき消費税額を計算します。

先ほどの例で言えば、税抜10,000円(消費税1,000円)の商品を販売した場合、税抜経理では売上10,000円、仮受消費税1,000円と分けて計上します。

どちらの方式を選ぶべきか?

課税事業者であれば、税込経理方式と税抜経理方式のどちらを選択しても良いとされています。 どちらの方式を選んでも、最終的に納付する消費税額は変わりません。 ただし、免税事業者の場合は、税込経理方式しか選択できません。

どちらの方式を選ぶかは事業者の任意であり、税務署への特別な届出も不要です。 それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った方式を選択することが重要です。

税込経理から税抜経理へ変更するメリット

税込経理から税抜経理へ変更することで、いくつかのメリットが期待できます。特に、正確な損益把握や節税効果といった点が挙げられます。

主なメリットは以下の通りです。

  • 期中でも正確な利益と納税額を把握しやすい
  • 消費税改正時の対応がスムーズ
  • 交際費や固定資産の扱いで有利になる場合がある

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

期中でも正確な利益と納税額を把握しやすい

税抜経理方式の最大のメリットは、期中であっても正確な利益や消費税の納税額を把握しやすい点です。 税抜経理では、日々の取引で本体価格と消費税を分けて処理するため、帳簿を見ればいつでも税抜きの損益状況が分かります。 また、「仮受消費税」と「仮払消費税」の差額を見ることで、その時点での消費税の納税予測額も把握できます。 これにより、決算前に慌てることなく納税資金の準備を進めることができます。

一方、税込経理の場合は、期中の損益に消費税額が含まれているため、決算処理を行うまで正確な税抜きの利益が分かりにくいという側面があります。

消費税改正時の対応がスムーズ

消費税率の改正があった場合、税抜経理の方が対応しやすいというメリットもあります。 税抜経理では、消費税額を別途管理しているため、税率変更に伴う修正作業が比較的容易です。会計ソフトを利用している場合でも、設定変更で対応しやすいでしょう。

税込経理の場合、過去の取引データの修正や、新旧税率が混在する期間の処理が煩雑になる可能性があります。

交際費や固定資産の扱いで有利になる場合がある

税法上の特例を利用する際に、税抜経理の方が有利になるケースがあります。 例えば、以下のような場合です。

  • 少額減価償却資産の特例: 30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる特例ですが、この30万円未満の判定を、税抜経理の場合は税抜金額で、税込経理の場合は税込金額で行います。 そのため、税抜経理の方がより高額な資産を経費として処理できる可能性があります。 例えば、税込29万円の資産は、税込経理では資産計上が必要ですが、税抜経理(税抜約26.3万円)であれば経費処理できる場合があります。
  • 交際費の損金不算入: 資本金1億円以下の中小企業の場合、年間800万円までの交際費は損金に算入できます。この800万円の判定も、税抜経理の場合は税抜金額で行うため、より多くの交際費を損金として扱える可能性があります。
  • 固定資産の取得価額: 10万円以上の固定資産を購入した場合、税込経理では税込価格が取得価額となりますが、税抜経理では税抜価格が取得価額となります。 これにより、税抜経理の方が取得価額を低く抑えられ、結果として償却資産税の負担が軽減される場合があります。

ただし、特別償却や税額控除など、取得価額が大きい方が有利になる特例も存在するため、一概に税抜経理が有利とは言えません。 自社の状況に合わせて検討が必要です。

税込経理から税抜経理へ変更する際の注意点

税込経理から税抜経理への変更はメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。特に、経理処理の煩雑化や会計ソフトの設定変更などが挙げられます。

主な注意点は以下の通りです。

  • 経理処理が煩雑になる
  • 会計ソフトの設定変更が必要
  • 期中に変更する場合の処理
  • 過去の会計データとの比較
  • インボイス制度への対応

これらの注意点を事前に理解し、対策を講じることがスムーズな移行の鍵となります。

経理処理が煩雑になる

税抜経理方式のデメリットとして、日々の経理処理が税込経理に比べて煩雑になる点が挙げられます。 取引の都度、本体価格と消費税額を分けて入力する必要があるため、仕訳の手間が増える可能性があります。 特に手書きで帳簿をつけている場合は、負担が大きくなるでしょう。

ただし、多くの会計ソフトでは、税込金額を入力すれば自動的に税抜金額と消費税額を計算してくれる機能が搭載されているため、このデメリットは軽減されつつあります。

会計ソフトの設定変更が必要

税込経理から税抜経理へ変更する場合、使用している会計ソフトの設定変更が必須です。 設定を誤ると、正しい会計処理ができず、決算時に大きな問題が発生する可能性があります。会計ソフトのマニュアルを確認したり、提供元のサポートに問い合わせたりして、確実に設定変更を行いましょう。

また、変更のタイミングによっては、期首からの遡及処理が必要になる場合もあります。

期中に変更する場合の処理

原則として、選択した経理方式はその事業年度のすべての取引に適用する必要があります。 そのため、期中に経理方式を変更することは推奨されません。もし期中に変更した場合、期首からのすべての取引を新しい方式で再処理する必要が生じ、非常に手間がかかります。

経理方式の変更は、原則として事業年度の開始時点で行うようにしましょう。

過去の会計データとの比較

経理方式を変更すると、過去の会計データとの比較が難しくなる点に注意が必要です。 例えば、売上高や経費の推移を見る際に、税込経理の期間の数値と税抜経理の期間の数値を単純比較することはできません。 経営分析を行う際には、この点を考慮に入れる必要があります。

過去のデータも税抜に修正するか、あるいは比較する際には消費税相当額を調整するなどの工夫が求められます。

インボイス制度への対応

2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、経理方式の選択にも影響を与える可能性があります。 インボイス制度では、適格請求書(インボイス)の保存が仕入税額控除の要件となります。

税抜経理方式は、インボイスに記載された税額を正確に把握しやすいため、インボイス制度との親和性が高いと言えます。 一方で、免税事業者との取引がある場合など、仕入税額控除の計算が複雑になるケースも考えられます。 インボイス制度への対応と合わせて、自社にとって最適な経理方式を検討することが重要です。

税込経理から税抜経理へスムーズに移行するためのステップ

税込経理から税抜経理へスムーズに移行するためには、事前の準備と計画的な実行が不可欠です。焦らず、段階を踏んで進めましょう。

具体的な移行ステップは以下の通りです。

  • 移行時期の決定
  • 会計ソフトの選定・設定変更
  • 社内への周知と研修
  • 専門家への相談

これらのステップを確実に実行することで、混乱を最小限に抑え、円滑な移行を実現できます。

移行時期の決定

前述の通り、経理方式の変更は事業年度の開始に合わせて行うのが理想的です。期中に変更すると、遡って処理が必要になるなど、業務が煩雑になります。新年度から税抜経理を適用できるよう、事前に計画を立てましょう。

また、繁忙期を避け、比較的業務に余裕のある時期に移行作業を行うことも検討しましょう。

会計ソフトの選定・設定変更

現在使用している会計ソフトが税抜経理に対応しているか確認し、必要であれば新しい会計ソフトを選定します。多くの会計ソフトは税抜経理に対応していますが、機能や使い勝手はソフトによって異なります。自社の規模や業種、経理担当者のスキルに合ったソフトを選びましょう。

会計ソフトの設定変更は、マニュアルをよく読み、慎重に行います。 不安な場合は、ソフトのサポートデスクや専門家に相談することをおすすめします。

社内への周知と研修

経理方式の変更は、経理担当者だけでなく、関連部署の従業員にも影響があります。例えば、営業担当者が見積書や請求書を作成する際に、消費税の扱いを理解しておく必要があります。変更内容や新しい処理方法について、社内で十分に周知し、必要に応じて研修を実施しましょう。

特に、仕訳入力のルールや勘定科目の使い方など、具体的な実務に関するトレーニングが重要です。

専門家への相談

経理方式の変更に関して不安な点や不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。 専門家は、自社の状況に合わせた最適なアドバイスをしてくれますし、移行作業のサポートも期待できます。

特に、税務上の判断が難しい場合や、複雑な取引が多い場合は、専門家の助言が不可欠です。顧問税理士がいる場合は、まずは相談してみましょう。

税込経理と税抜経理の仕訳例

ここで、税込経理と税抜経理の具体的な仕訳例を見てみましょう。 例として、税込5,500円(税抜5,000円、消費税500円)の商品を掛けで仕入れ、税込11,000円(税抜10,000円、消費税1,000円)で現金で販売した場合の仕訳を紹介します。

税込経理方式の仕訳例

税込経理方式では、消費税を含んだ金額で仕訳を行います。

仕入時

借方金額貸方金額
仕入高5,500円買掛金5,500円

売上時

借方金額貸方金額
現金11,000円売上高11,000円

決算時(消費税の納付)

納付すべき消費税額が500円(仮受消費税1,000円 – 仮払消費税500円)の場合

借方金額貸方金額
租税公課500円未払消費税等500円

(実際に納付した際に、未払消費税等 / 現金預金 となります)

税抜経理方式の仕訳例

税抜経理方式では、本体価格と消費税額を分けて仕訳を行います。

仕入時

借方金額貸方金額
仕入高5,000円買掛金5,500円
仮払消費税等500円

売上時

借方金額貸方金額
現金11,000円売上高10,000円
仮受消費税等1,000円

決算時(消費税の納付)

仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を未払消費税等として計上します。

借方金額貸方金額
仮受消費税等1,000円仮払消費税等500円
未払消費税等500円

(実際に納付した際に、未払消費税等 / 現金預金 となります)

このように、日々の仕訳と決算時の処理が異なります。会計ソフトを使用している場合は、ソフトが自動でこれらの処理を行ってくれることが多いです。

よくある質問

税込経理から税抜経理への変更に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1: 税込経理と税抜経理、どちらが節税になりますか?

A1: 原則として、どちらの経理方式を選んでも最終的に納付する消費税額は変わりません。 ただし、前述の通り、少額減価償却資産の特例や交際費の損金算入など、特定のケースにおいては税抜経理の方が有利になる場合があります。 一方で、特別償却など取得価額が大きい方が有利になる特例もあるため、自社の状況を総合的に判断する必要があります。

Q2: 免税事業者でも税抜経理はできますか?

A2: いいえ、免税事業者は税込経理方式で処理しなければなりません。 税抜経理方式を選択できるのは課税事業者のみです。 課税売上高が1,000万円以下の事業者は基本的に免税事業者となります。

Q3: 期の途中で税込経理から税抜経理に変更できますか?

A3: 原則として、期中の経理方式の変更は推奨されません。 選択した経理方式は、その事業年度のすべての取引に適用する必要があるためです。 もし期中に変更する場合は、期首に遡ってすべての取引を新しい方式で処理し直す必要があり、非常に手間がかかります。変更は事業年度の開始時に行うのが一般的です。

Q4: 会計ソフトを使っていれば、税込でも税抜でも手間は同じですか?

A4: 多くの会計ソフトでは、税込金額を入力すれば自動で税抜金額と消費税額を計算してくれる機能があるため、入力の手間自体は大きく変わらない場合があります。 しかし、税抜経理の場合は「仮払消費税」「仮受消費税」といった勘定科目を正しく使う必要があり、初期設定や仕組みの理解は必要です。また、レポートの見方なども変わってきます。

Q5: 税込経理から税抜経理に変更したら、過去のデータはどうなりますか?

A5: 経理方式を変更しても、過去の会計データ(例えば前期以前の試算表や決算書)が自動的に新しい方式に修正されるわけではありません。 そのため、過去のデータと比較する際には注意が必要です。 必要に応じて、過去のデータを税抜に換算して比較するなどの対応が求められます。

Q6: インボイス制度開始に伴い、税抜経理にした方が良いですか?

A6: 一概にどちらが良いとは言えません。 税抜経理はインボイスに記載された消費税額を直接把握できるため、制度との親和性は高いと考えられます。 しかし、免税事業者との取引が多い場合など、かえって処理が複雑になる可能性もあります。 自社の取引状況や経理体制、インボイス制度への対応方針などを総合的に勘案して判断する必要があります。 不明な点は税理士などの専門家に相談しましょう。

Q7: 建設業ですが、公共工事の入札に影響はありますか?

A7: はい、建設業などで公共事業の入札申請を行う際には、税抜経理で処理された決算書の提出を求められる場合があります。 そのため、公共工事の入札に参加する可能性がある場合は、税抜経理方式を選択することが一般的です。

Q8: 税込経理から税抜経理に変更する際、税務署への届出は必要ですか?

A8: いいえ、経理方式の変更に関して、税務署への特別な届出は必要ありません。 事業者が任意で選択できます。

まとめ

  • 税込経理は消費税込みの金額で処理、税抜経理は分けて処理します。
  • 税抜経理は期中の損益把握が容易で、節税に繋がる場合があります。
  • 税抜経理への変更は、経理処理の煩雑化やソフト設定変更が伴います。
  • 移行は事業年度開始時に行い、会計ソフトの設定変更が必須です。
  • 過去データとの比較が難しくなる点に注意が必要です。
  • インボイス制度への対応も考慮して経理方式を選びましょう。
  • 仕訳例:税込は総額計上、税抜は本体と税を区分します。
  • 免税事業者は税込経理のみ選択可能です。
  • 期中変更は原則不可、遡及処理が必要になります。
  • 会計ソフト利用でも、税抜経理の仕組み理解は必要です。
  • 過去データは変更されず、比較時に調整が必要です。
  • インボイス制度では税抜経理が有利な場合もありますが、状況によります。
  • 建設業の公共工事入札では税抜経理が求められることがあります。
  • 経理方式変更の税務署への届出は不要です。
  • 不明な点は税理士など専門家への相談が推奨されます。
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