大切なご家族が亡くなられたとき、悲しみの中で直面するのが「相続」です。このとき、耳慣れない専門用語に戸惑う方も少なくありません。特に「被相続人」という言葉は、相続手続きにおいて非常に重要な意味を持ちます。
本記事では、「被相続人」が何を指すのかをわかりやすく解説し、相続人との違いや、相続が発生した際にどのような流れで手続きが進むのかを詳しくお伝えします。相続に関する不安を少しでも和らげ、スムーズな手続きを進めるための第一歩として、ぜひお役立てください。
被相続人とはわかりやすく解説!相続の基本を理解しよう

相続は、故人が遺した財産や権利、義務を次の世代へ引き継ぐ大切な制度です。この制度を理解する上で、まず知っておくべきは「被相続人」という言葉の意味でしょう。この章では、被相続人の基本的な定義から、相続人との違いまでを掘り下げて解説します。
被相続人の定義と役割
「被相続人(ひそうぞくにん)」とは、財産を遺して亡くなった方を指す法律用語です。一般的には「故人」と呼ばれることが多いですが、相続手続きの場面ではこの「被相続人」という言葉が使われます。例えば、ご自身の父親が亡くなり、その財産を相続する場合、父親が「被相続人」にあたります。
被相続人は、生前に築き上げた財産だけでなく、抱えていた借金などの義務も相続の対象として遺す役割を担います。相続は、被相続人の死亡によって開始されるのが原則です。
被相続人になるのはどんな人?
被相続人になるのは、文字通り「亡くなった人」です。性別や年齢、国籍に関わらず、財産を残して亡くなった人であれば誰でも被相続人となります。重要なのは、その人が生前にどのような財産(プラスの財産もマイナスの財産も含む)を持っていたか、そして誰がその財産を受け継ぐ権利を持つかという点です。被相続人が遺言書を残しているかどうかによっても、その後の相続の進め方が大きく変わるため、遺言書の有無も重要な要素となります。
相続人との違いを明確に理解する
「被相続人」と混同しやすい言葉に「相続人(そうぞくにん)」があります。この二つの言葉は似ていますが、その意味は全く異なります。被相続人が「財産を遺す側(亡くなった人)」であるのに対し、相続人は「被相続人の財産を受け継ぐ権利がある人」を指します。 例えば、夫が亡くなり、妻と子が財産を相続する場合、夫が被相続人、妻と子が相続人となります。
相続人は民法で定められた範囲と優先順位があり、誰でもなれるわけではありません。この違いをしっかりと理解することが、相続手続きを円滑に進めるための第一歩となります。
被相続人が亡くなるとどうなる?相続発生後の流れ

被相続人が亡くなると、相続が開始され、様々な手続きが必要になります。悲しみに暮れる中で、何をどう進めていけば良いのか分からなくなることも少なくありません。この章では、相続発生後の基本的な流れと、特に重要なポイントについて解説します。
遺産相続の開始と手続きの全体像
被相続人が亡くなると、その瞬間から遺産相続が開始されます。相続手続きは多岐にわたり、期限が設けられているものも少なくありません。まず、死亡診断書を受け取り、市区町村へ死亡届を提出することから始まります。次に、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めて、誰が法定相続人であるかを確定させます。
その後、遺言書の有無を確認し、被相続人がどのような財産(預貯金、不動産、借金など)を持っていたかを調査します。これらの情報が揃って初めて、相続人全員で遺産分割について話し合う「遺産分割協議」へと進むことができます。 遺産分割協議がまとまれば、相続税の申告・納税や、不動産の名義変更などの手続きを行います。
遺言書の有無が与える影響
被相続人が有効な遺言書を残しているかどうかは、相続手続きに大きな影響を与えます。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産が分割されます。 これは、被相続人の生前の意思を尊重するためです。しかし、遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決める必要があります。遺言書は、特定の財産を特定の人物に遺贈する、あるいは相続人ではない人に財産を渡すなど、被相続人の多様な希望を反映させるための重要な手段です。
遺言書の種類には、自筆証書遺言や公正証書遺言などがあり、それぞれ作成方法や保管方法が異なります。
法定相続人と法定相続分:誰がどれだけ相続する?
遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、民法で定められた「法定相続人」が「法定相続分」に基づいて遺産を相続します。法定相続人には優先順位があり、常に相続人となるのは被相続人の配偶者(法律上の婚姻関係にある場合)です。 配偶者以外の血族相続人には、以下の順位が定められています。
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫などの直系卑属が代襲相続します)
- 第2順位:父母(子や孫がいない場合に限ります。父母が亡くなっている場合は祖父母などの直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹(子、孫、父母、祖父母がいない場合に限ります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪が代襲相続します)
法定相続分は、これらの相続人の組み合わせによって割合が決められています。例えば、配偶者と子が相続人の場合、配偶者が2分の1、子が2分の1を相続します。 このように、誰がどれだけの割合で相続するのかを正確に把握することが、遺産分割協議を進める上で不可欠です。
被相続人の財産と債務:相続の対象となるもの

被相続人が遺したものは、預貯金や不動産といったプラスの財産だけではありません。借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。この章では、相続の対象となる財産と債務について詳しく見ていきましょう。
プラスの財産とマイナスの財産を把握する重要性
被相続人が亡くなった際、相続人はその方が所有していた全ての財産を承継します。これには、現金、預貯金、不動産、株式、自動車などの「プラスの財産」だけでなく、借金、未払いの税金、医療費などの「マイナスの財産」も含まれます。 相続手続きの初期段階で、これらのプラスとマイナスの財産を正確に把握することが極めて重要です。
なぜなら、マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続人がその借金を背負うことになる可能性があるからです。財産調査は、通帳や権利証、契約書などを確認するだけでなく、金融機関や役所への問い合わせも必要となる場合があります。
相続放棄という選択肢:借金が多い場合の対処法
もし被相続人が多額の借金を抱えていた場合、相続人はその借金も引き継ぐことになります。このような状況で、借金を背負いたくないと考える相続人のために、「相続放棄」という選択肢が用意されています。相続放棄とは、被相続人の財産(プラスもマイナスも含む)を一切相続しないことを家庭裁判所に申し立てる手続きです。 相続放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされ、借金を返済する義務もなくなります。
ただし、相続放棄には「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」という期限があるため、早めの検討と手続きが必要です。 また、相続放棄をすると、被相続人のプラスの財産も一切受け取れなくなる点に注意しましょう。
被相続人に関するよくある質問

相続手続きを進める中で、被相続人に関して様々な疑問が生じることがあります。ここでは、特によくある質問とその回答をまとめました。
- 被相続人の戸籍謄本はなぜ必要ですか?
- 内縁の妻は被相続人の相続人になれますか?
- 被相続人より先に相続人が亡くなった場合はどうなりますか?
- 被相続人の意思を相続に反映させる方法はありますか?
- 相続税は誰が納めるのですか?
被相続人の戸籍謄本はなぜ必要ですか?
被相続人の戸籍謄本は、相続人を確定するために必要です。 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本なども含む)を取得することで、被相続人に子が何人いるか、養子縁組をしているか、婚姻歴はどうかなど、家族関係の全てを把握できます。これにより、民法で定められた法定相続人が誰であるかを正確に特定し、遺産分割協議に参加すべき人を漏れなく確認することが可能になります。
不動産の名義変更や預貯金の解約など、ほとんどの相続手続きで提出が求められる重要な書類です。
内縁の妻は被相続人の相続人になれますか?
いいえ、内縁の妻(夫)は、原則として被相続人の相続人にはなれません。 民法で定められている法定相続人になれるのは、法律上の婚姻関係にある配偶者のみです。 婚姻届を提出していない事実婚や内縁関係の場合、どれだけ長く連れ添っていても、法律上の相続権は認められません。ただし、被相続人が内縁の妻(夫)に財産を遺したいと望む場合は、有効な遺言書を作成することで、遺贈という形で財産を渡すことが可能です。
この場合でも、他の法定相続人の遺留分を侵害しないよう配慮が必要です。
被相続人より先に相続人が亡くなった場合はどうなりますか?
被相続人より先に相続人となるはずだった人が亡くなっていた場合、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という制度が適用されることがあります。 代襲相続とは、本来相続人となるべき子が被相続人より先に亡くなっていた場合、その子の子(被相続人から見て孫)が代わりに相続人となる制度です。 同様に、兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合は、その兄弟姉妹の子(被相続人から見て甥や姪)が代襲相続人となります。
ただし、代襲相続は直系尊属(父母や祖父母)には認められていません。 この制度により、相続権が次世代へと引き継がれ、相続財産が宙に浮くことを防ぎます。
被相続人の意思を相続に反映させる方法はありますか?
はい、被相続人の意思を相続に反映させる方法はいくつかあります。最も一般的なのは、遺言書を作成することです。 遺言書には、誰にどの財産をどれだけ渡すか、あるいは相続人ではない人に財産を遺贈するなどの内容を記載できます。 また、生前贈与を活用して、被相続人が生きている間に財産を渡す方法もあります。
さらに、家族信託を利用することで、被相続人の財産管理や承継について、より柔軟な計画を立てることも可能です。 これらの方法を適切に利用することで、被相続人の希望に沿った形で財産を次世代に引き継ぐことができます。
相続税は誰が納めるのですか?
相続税を納める義務があるのは、被相続人ではなく、財産を相続した「相続人」です。 相続税は、相続した財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に発生します。 相続人は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に相続税の申告と納税を行う必要があります。
期限を過ぎると延滞税などのペナルティが課されることもあるため、早めに税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを進めることが大切です。
まとめ
- 被相続人とは、財産を遺して亡くなった方を指す法律用語です。
- 相続人とは、被相続人の財産を受け継ぐ権利がある人です。
- 被相続人の死亡により相続が開始され、様々な手続きが必要となります。
- 遺言書がある場合、原則として被相続人の意思が尊重されます。
- 遺言書がない場合、民法で定められた法定相続人が法定相続分に基づいて相続します。
- 法定相続人には配偶者が常に含まれ、子、父母、兄弟姉妹の順に優先順位があります。
- 相続財産には、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も含まれます。
- マイナスの財産が多い場合、相続放棄という選択肢があります。
- 相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。
- 被相続人の戸籍謄本は、相続人を確定するために不可欠な書類です。
- 内縁の妻(夫)は、法律上の相続人にはなれませんが、遺言による遺贈は可能です。
- 被相続人より先に相続人が亡くなった場合、代襲相続により孫や甥姪が相続人となることがあります。
- 被相続人の意思を反映させる方法として、遺言書作成や生前贈与、家族信託などがあります。
- 相続税は、財産を相続した相続人が納める義務があります。
- 相続税の申告・納税には期限があり、早めの準備が重要です。
