秋の味覚の代表格であるサツマイモ。家庭菜園でも人気が高く、比較的育てやすい野菜として知られています。しかし、いくつかの注意点を押さえないと、「芋が大きくならない」「つるばかり伸びてしまう」といった失敗につながることも。本記事では、サツマイモを植える時の注意点をはじめ、初心者でも美味しいサツマイモを収穫するための育て方のコツを詳しく解説します。
サツマイモ栽培を始める前に知っておきたいこと
サツマイモ栽培を成功させるためには、まずサツマイモの基本的な性質や栽培に適した環境を理解しておくことが大切です。ここでは、サツマイモ栽培を始める前に押さえておきたいポイントを解説します。
- サツマイモの生育条件と好む環境
- サツマイモ栽培に適した時期
- サツマイモの品種選びのポイント
サツマイモの生育条件と好む環境
サツマイモは、高温と乾燥に強く、日当たりの良い場所を好みます。 やせた土地でも育ちやすいですが、水はけと通気性の良い土壌環境が理想的です。 逆に、過湿には弱く、水はけの悪い場所では根腐れを起こしたり、病気にかかりやすくなったりするため注意が必要です。 また、肥料のやりすぎ、特に窒素成分が多いと「つるぼけ」といって葉や茎ばかりが茂り、肝心の芋が大きくならない原因となるため気をつけましょう。
サツマイモ栽培に適した時期
サツマイモの植え付けに適した時期は、平均気温が18℃以上、地温が15℃以上になる5月上旬から6月下旬頃です。 霜の心配がなくなってから植え付けを行いましょう。 収穫時期は品種や地域によって異なりますが、一般的に植え付けから約110日~150日後、9月下旬から11月頃が目安となります。
サツマイモの品種選びのポイント
サツマイモには多くの品種があり、食感や甘み、育てやすさなどが異なります。 代表的な品種としては、「紅あずま」「鳴門金時」「安納芋」「シルクスイート」などがあります。 ねっとり系、ホクホク系など、好みの食感や用途に合わせて品種を選びましょう。初心者の方は、比較的育てやすい品種から始めるのがおすすめです。
サツマイモを植える時の具体的な注意点
美味しいサツマイモをたくさん収穫するためには、植え付け時の作業が非常に重要です。ここでは、サツマイモを植える際の具体的な注意点を詳しく解説します。
- 元気な苗の選び方と準備
- 最適な土壌の準備と畝立て
- 正しい植え付け方法と深さ
- 植え付け後の水やり
元気な苗の選び方と準備
サツマイモは、種芋から育てた「挿し苗」と呼ばれるつるを植え付けて栽培するのが一般的です。 元気な苗を選ぶことが、その後の生育を左右する重要なポイントとなります。以下の点に注目して苗を選びましょう。
- 茎が太くしっかりしている
- 葉の色が濃く、厚みがある
- 節間が詰まっている(間延びしていない)
- 葉が5~7枚程度ついている
- 長さが25~30cm程度ある
購入した苗は、植え付け直前まで水を張ったバケツなどに入れ、日陰で保管します。 葉がしおれている場合は、植え付け前に水に浸けておくと良いでしょう。 自家製の苗の場合は、水につけずに少ししおれさせてから植え付けた方が発根が良いという情報もあります。
最適な土壌の準備と畝立て
サツマイモは水はけの良い土壌を好むため、植え付け前に畑をよく耕し、高さ30cm程度の高畝にして水はけと通気性を高めることが重要です。 肥料は基本的に控えめにし、特に窒素成分の多い肥料は「つるぼけ」の原因になるため避けましょう。 前作で野菜を栽培していた畑であれば、無肥料でも十分に育つことがあります。 プランターで栽培する場合も、野菜用培養土など水はけの良い土を使用しましょう。
正しい植え付け方法と深さ
サツマイモの植え方には、いくつかの方法があり、それぞれ特徴が異なります。 代表的な植え付け方法は以下の通りです。
- 水平植え(船底植え):苗を地面に対して水平に浅く植える方法です。 芋の数は多くなりますが、一つ一つの大きさは小さめになる傾向があります。 乾燥や寒さにやや弱いというデメリットもあります。
- 斜め植え:苗を斜めに植え付ける方法で、最も一般的な方法の一つです。 芋の数は比較的多く、大きさもそこそこ期待できます。
- 垂直植え:苗を垂直に近い角度で植える方法です。芋の数は少なくなりますが、大きな芋が育ちやすいとされています。 小さい苗を植えるのに適しています。
どの植え方でも、苗の先端にある成長点は必ず地上に出すようにし、葉が土に埋まらないように注意しましょう。 植え付ける深さは、水平植えの場合は3~5cm程度、斜め植えの場合は5~10cm程度が目安です。 植え付け間隔は、30cm~40cm程度が一般的です。
植え付け後の水やり
サツマイモは乾燥に強い作物ですが、植え付け直後から1週間程度は、苗が活着するまでたっぷりと水やりをします。 その後は、基本的に雨水だけで十分育ちますが、乾燥した日が続くようであれば適度に水やりを行いましょう。 過湿は根腐れや病気の原因になるため、水のやりすぎには注意が必要です。
サツマイモ栽培中の管理と注意点
植え付けが無事に終わったら、次は収穫に向けて適切な管理を行うことが大切です。ここでは、サツマイモ栽培中の主な管理作業と注意点について解説します。
- 肥料(追肥)のタイミングと量
- 水やりの頻度と量
- つる返し(つるあげ)の重要性
- 雑草対策
- 病害虫対策
肥料(追肥)のタイミングと量
サツマイモは基本的に追肥は不要ですが、葉の色が薄くなったり、生育が悪いと感じたりした場合には、植え付けから1ヶ月後以降に少量のカリウム分が多い肥料を与えることがあります。 ただし、肥料のやりすぎは「つるぼけ」を引き起こし、芋の肥大を妨げるため、量には十分注意が必要です。
水やりの頻度と量
植え付け後の苗が活着してからは、基本的に毎日の水やりは不要です。 畑栽培の場合は自然の雨に任せ、プランター栽培の場合は土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える程度で十分です。 特に梅雨時期など雨が続く場合は、過湿にならないように注意しましょう。
つる返し(つるあげ)の重要性
サツマイモのつるは、地面に接した部分から根を出し、そこに小さな芋ができてしまうことがあります。 これを防ぎ、株元の芋に栄養を集中させるために行うのが「つる返し(つるあげ)」です。 7月~8月頃、つるが伸びてきたら、つるを持ち上げて地面から剥がし、葉の上にひっくり返すようにして置きます。 この作業を怠ると、芋が大きくならなかったり、数が減ったりする原因になります。
雑草対策
植え付け初期は、雑草に養分を奪われないように、こまめに除草作業を行いましょう。 マルチング(黒いビニールシートで畝を覆うこと)をすると、雑草の発生を抑える効果が期待できます。
病害虫対策
サツマイモは比較的病害虫に強い野菜ですが、風通しが悪いと「うどんこ病」などが発生することがあります。 また、ヨトウムシやアブラムシなどの害虫にも注意が必要です。 早期発見・早期対処を心がけ、必要に応じて適切な薬剤を使用しましょう。病害虫の発生を抑えるためには、水はけの良い土壌環境を保ち、適切な株間を確保することが大切です。
サツマイモの収穫と保存方法
丹精込めて育てたサツマイモも、収穫のタイミングや保存方法を間違えると美味しさが半減してしまうことも。ここでは、サツマイモの収穫と保存のポイントについて解説します。
- 収穫時期の見極め方
- 上手な収穫方法
- 美味しさを長持ちさせる保存方法
収穫時期の見極め方
サツマイモの収穫時期は、植え付けから約110日~150日後が目安です。 品種や栽培地域によっても異なりますが、一般的には9月下旬から11月頃になります。 葉や茎の色が黄色く変わり始めたら収穫のサインの一つです。 試し掘りをして、芋の大きさを確認するのも良いでしょう。 霜が降りる前に収穫を終えるようにしましょう。霜にあたると芋が傷みやすくなります。
上手な収穫方法
収穫は、晴れた日の午前中に行うのがおすすめです。 土が乾燥している方が、芋を傷つけにくく、収穫後の乾燥もしやすいためです。 まず、株元のつるを鎌などで刈り取ります。 次に、芋を傷つけないように注意しながら、株元から少し離れた場所にスコップを入れ、土を掘り起こしていきます。 芋が見えてきたら、手で優しく掘り出しましょう。
美味しさを長持ちさせる保存方法
収穫したサツマイモは、すぐに食べるよりも、数週間から1ヶ月程度貯蔵することで追熟し、甘みが増します。 収穫後、土を軽く落とし、数日間天日で乾燥させます。 その後、新聞紙で一つずつ包み、風通しの良い冷暗所(13~15℃程度)で保存しましょう。 低温に弱いため、冷蔵庫での保存は避けましょう。
プランターでのサツマイモ栽培の注意点
畑がない方でも、プランターを使えばベランダなどで手軽にサツマイモ栽培を楽しむことができます。ここでは、プランター栽培特有の注意点を解説します。
- プランターの選び方と土の準備
- 水やりと肥料管理
プランターの選び方と土の準備
サツマイモは根を深く張るため、深さが30cm以上ある大型のプランターを選びましょう。 容量としては45L以上が目安です。 土は、市販の野菜用培養土を使用すると手軽です。水はけを良くするために、鉢底石を敷くと良いでしょう。
水やりと肥料管理
プランター栽培では、畑栽培に比べて土が乾燥しやすいため、土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。 ただし、水のやりすぎは根腐れの原因になるため注意が必要です。肥料は、元肥が含まれている培養土であれば基本的に不要ですが、生育状況を見て液肥などを少量与える程度にしましょう。
サツマイモ栽培でよくある失敗と対策
サツマイモ栽培では、いくつかの典型的な失敗例があります。ここでは、よくある失敗とその対策について解説します。
- 芋が小さい、またはできない(つるぼけ)
- 芋が割れてしまう
- 病害虫の発生
芋が小さい、またはできない(つるぼけ)
「つるぼけ」は、葉や茎ばかりが茂り、肝心の芋が大きくならない現象です。 主な原因は、肥料のやりすぎ(特に窒素過多)や日照不足、過湿などです。 対策としては、肥料を控えめにし、日当たりの良い場所で水はけの良い土壌で育てること、そして「つる返し」を適切に行うことが重要です。
芋が割れてしまう
収穫したサツマイモが割れてしまうことがあります。主な原因は、収穫時期の遅れや、生育期間中の急激な水分変化などです。 適切な時期に収穫し、土壌の水分管理に気をつけることで、ある程度防ぐことができます。
病害虫の発生
サツマイモは比較的病害虫に強いですが、全く発生しないわけではありません。 特に、風通しの悪い場所や過湿な環境では、うどんこ病などの病気が発生しやすくなります。 また、ヨトウムシやアブラムシなどの害虫にも注意が必要です。 対策としては、適切な株間を保ち、水はけの良い環境で育てること、そして早期発見・早期対処が基本です。
よくある質問
ここでは、サツマイモ栽培に関するよくある質問とその回答をまとめました。
サツマイモの植え付け時期はいつですか?
サツマイモの植え付けに適した時期は、平均気温が18℃以上、地温が15℃以上になる5月上旬から6月下旬頃です。 霜の心配がなくなってから植え付けましょう。 地域によって多少前後します。
サツマイモの植え付けの深さはどれくらいですか?
植え付け方法によって異なりますが、水平植えの場合は3~5cm程度、斜め植えの場合は5~10cm程度が目安です。 苗の先端にある成長点は必ず地上に出すようにしましょう。
サツマイモに肥料はいらないのですか?
サツマイモは比較的やせた土地でも育つため、肥料は控えめにするのが基本です。 特に窒素成分が多いと「つるぼけ」の原因になるため注意が必要です。 前作で野菜を栽培していた畑など、土壌に栄養分が残っている場合は無肥料でも十分に育ちます。
サツマイモを植えた後の水やりはどうすればいいですか?
植え付け直後から1週間程度は、苗が活着するまでたっぷりと水やりをします。 その後は、基本的に雨水だけで十分育ちますが、乾燥した日が続くようであれば適度に水やりを行いましょう。 過湿は禁物です。
サツマイモの苗を逆さまに植えるとどうなりますか?
サツマイモの苗を意図的に逆さまに植えるという情報は一般的ではありません。サツマイモは節から根が出て芋になるため、正しい向きで植え付けることが重要です。 成長点が土に埋まってしまうと、うまく育たない可能性があります。
サツマイモの植え付けの間隔はどれくらいですか?
一般的に、株間は30cm~40cm程度が目安です。 畝幅は70cm程度が一般的です。
サツマイモの植え付けから収穫までの期間はどれくらいですか?
品種や栽培条件によって異なりますが、一般的に植え付けから約110日~150日程度で収穫できます。 葉の色が黄色く変わり始めるのが収穫の目安の一つです。
サツマイモを植える向きはありますか?
畝の向きについては、日当たりを考慮して南北に作るのが良いという考え方もありますが、サツマイモの場合、それほど神経質になる必要はないでしょう。 苗を植え付ける際の向きとしては、葉が太陽光を効率よく受けられるように、成長点を上に向けて植えることが基本です。
まとめ
- サツマイモは高温乾燥を好み、水はけの良い土壌が適しています。
- 植え付け時期は5月上旬~6月下旬、地温15℃以上が目安です。
- 元気な苗を選び、適切な方法で植え付けましょう。
- 肥料のやりすぎ(特に窒素)は「つるぼけ」の原因になります。
- 植え付け直後は水やりが必要ですが、活着後は控えめにします。
- 「つる返し」は美味しい芋を育てるための重要な作業です。
- 収穫は植え付けから110~150日後、霜が降りる前に行います。
- 収穫後は追熟させることで甘みが増します。
- プランターでも栽培可能ですが、深めの容器を選びましょう。
- 日当たりと水はけの良い場所を選びましょう。
- 苗の成長点は必ず地上に出して植え付けます。
- 過湿は根腐れや病気の原因となるため注意が必要です。
- 雑草はこまめに取り除きましょう。
- 病害虫の早期発見・早期対処を心がけましょう。
- 収穫した芋は新聞紙に包み冷暗所で保存します。