大切に育てている松の木に、いつの間にかびっしりと毛虫が…。その光景に、思わず鳥肌が立った経験はありませんか?「この毛虫は何だろう?」「毒はあるの?」「どうやって駆除すればいいの?」そんな不安と疑問でいっぱいになっているかもしれません。放置すれば、美しい松が丸裸にされてしまうだけでなく、毒を持つ毛虫であれば、ご自身やご家族に健康被害が及ぶ可能性も。でも、ご安心ください。本記事では、松につく毛虫の正体から、ご家庭で安全にできる駆除方法、そして万が一刺されてしまった場合の正しい対処法まで、詳しく解説していきます。この記事を読めば、もう松の毛虫に悩まされることはありません。
あなたの松を襲う毛虫の正体は?代表的な種類と見分け方

庭の松に発生する毛虫。その多くは、ある特定のガの幼虫です。まずは敵の正体を知ることから始めましょう。ここでは、松に発生する代表的な毛虫の種類と、その見分け方について解説します。正しい知識が、適切な対策への第一歩です。
本章では、以下の内容について詳しく解説します。
- 最も注意すべきは「マツカレハ(松毛虫)」
- その他に注意したい松の毛虫
最も注意すべきは「マツカレハ(松毛虫)」
松に発生する毛虫の中で、最も代表的で注意が必要なのが「マツカレハ」です。通称「マツケムシ」とも呼ばれ、その名の通り松の葉を好んで食べます。 見た目のインパクトもさることながら、毒を持っているため、取り扱いには十分な注意が必要です。
マツカレハの見た目と特徴
マツカレハの幼虫は、成長すると体長が75mmにも達する大型の毛虫です。 全体的に黒や褐色の長い毛で覆われており、いかにも「毛虫」といった姿をしています。 特徴的なのは、背中にある藍色や黒色の毛の束です。 この部分に毒針毛(どくしんもう)と呼ばれる毒のある毛が密集しているため、絶対に素手で触ってはいけません。 松の枝や幹にいると、その色合いから意外と見つけにくいこともあります。
マツカレハの生態と発生時期
マツカレハは、地域によって異なりますが、年に1回または2回発生します。 暖かい地域では、4月~6月頃と8月~10月頃の2回発生することが多いです。 幼虫は、秋に孵化して松の葉を食べながら成長し、ある程度大きくなると樹皮の隙間や根元の落ち葉の下などで越冬します。 そして春になると再び木に登り、松の葉を旺盛に食害し始めます。 特に、蛹になる直前の春の食害は激しく、松の木に大きな被害を与えます。
マツカレハの毒性と被害
マツカレハの毒針毛に触れると、激しい痛みと共に皮膚が赤く腫れ上がる皮膚炎を引き起こします。 痛みや腫れは数日で治まることが多いですが、かゆみは1~2週間続くこともあり、非常に厄介です。 また、マツカレハは森林害虫としても知られており、大量発生すると松の葉を食べ尽くし、木を枯らしてしまうことさえあります。 被害が90%以上に及ぶと、木の成長に大きな影響が出ると言われています。
その他に注意したい松の毛虫
マツカレハほどではありませんが、他にも松を食害する毛虫がいます。代表的なものをいくつか紹介します。
マツノキハバチ
マツノキハバチの幼虫は、体長20mmほどで、全体的に光沢のある緑色をしています。 頭部は橙黄色で、黒い斑点があるのが特徴です。 毒はありませんが、群れで発生し、松の葉を先端からきれいに食べてしまいます。 特に若い松の木で大発生することがあります。
マツノミドリハバチ
こちらもハバチの仲間で、幼虫はマツノキハバチに似ていますが、少し小さいです。年に2回発生し、集団で葉を食害します。 どちらのハバチも、大量発生すると松の美観を損ねる原因となります。
【状況別】松の毛虫の駆除方法|自分でできる対策から業者依頼まで

松に毛虫を発見したら、被害が広がる前に迅速に駆除することが大切です。しかし、やみくもに対処するのは危険。毛虫の数や木の高さなど、状況に応じた適切な方法を選ぶ必要があります。ここでは、ご自身でできる簡単な駆除方法から、薬剤を使った本格的な対策、そして専門業者に依頼する場合のポイントまで、具体的に解説します。
本章で解説する駆除方法は以下の通りです。
- まずは自分でできる!基本的な駆除方法
- 薬剤(殺虫剤)を使った効果的な駆除
- 高い木や大量発生時はプロの業者に依頼
まずは自分でできる!基本的な駆除方法
発生した毛虫がまだ少数で、木の高さも手の届く範囲であれば、ご自身で駆除することも可能です。薬剤を使わないため、環境への影響も少なく済みます。
道具を使った物理的な駆除(割り箸、火ばさみ)
マツカレハなどの毛虫は、厚手の手袋やゴム手袋を着用した上で、割り箸や火ばさみ、ピンセットなどを使って一匹ずつ捕まえ、ビニール袋に入れて口をしっかり縛ってから処分します。 直接触れるのは絶対に避けてください。地道な作業ですが、数が少ない初期段階では非常に有効な方法です。
枝ごと切り落として処分する方法
孵化したばかりの幼虫は、特定の枝に集団で固まっていることが多いです。 このような場合は、その枝ごと剪定ばさみで切り落としてしまうのが最も手軽で確実な方法です。 切り落とした枝は、毛虫が散らばらないように注意しながらビニール袋に入れ、しっかりと密閉して燃えるゴミとして処分しましょう。この際も、毒針毛が飛散する可能性があるので、マスクやゴーグルを着用するとより安全です。
薬剤(殺虫剤)を使った効果的な駆除
毛虫が広範囲に発生してしまったり、物理的な駆除が難しい場合には、薬剤(殺虫剤)の使用が効果的です。適切な薬剤を正しい方法で使うことで、効率的に駆除できます。
おすすめの殺虫剤と選び方(スミチオン乳剤、トレボン乳剤など)
マツカレハの駆除には、スミチオン乳剤、トレボン乳剤、アトラック液剤などの有機リン系殺虫剤が一般的に使用されます。 これらの薬剤は、ホームセンターや農薬を扱う店舗、インターネット通販などで購入できます。 商品によって使用方法や希釈倍率が異なるため、必ず取扱説明書をよく読んでから使用してください。 最近では、樹木に注入するタイプで長期間効果が持続する薬剤もあり、散布の手間を省きたい方におすすめです。
薬剤散布の最適な時期と注意点
薬剤散布の効果を最大限に高めるには、散布のタイミングが重要です。幼虫がまだ小さいうち(若齢幼虫)の方が薬剤が効きやすいため、8月~9月頃や、越冬後の4月~5月頃の発生初期に散布するのが最も効果的です。 散布する際は、風のない穏やかな日を選び、マスク、ゴーグル、長袖長ズボン、帽子を着用して、薬剤が皮膚や目にかからないように十分注意してください。 また、近隣の住宅や洗濯物、ペット、池などに薬剤がかからないよう、細心の注意を払いましょう。
高い木や大量発生時はプロの業者に依頼
松の木が高くて自分では薬剤散布ができない場合や、毛虫が大量に発生して手に負えない場合は、無理をせず専門の駆除業者に依頼することをおすすめします。
業者に依頼するメリット
プロの業者は、専門的な知識と経験、そして専用の機材を持っています。高所作業車を使って高い木のてっぺんまで確実に薬剤を散布したり、周辺環境に配慮した安全な方法で駆除を行ってくれます。 何より、危険な作業を自分で行う必要がなく、安全かつ確実に毛虫問題を解決できるのが最大のメリットです。
駆除費用の相場と見積もりのポイント
駆除費用は、木の高さや本数、被害の状況によって大きく異なりますが、一般的な庭木1本あたり数千円から数万円が目安となります。正確な料金を知るためには、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。その際、料金の内訳(作業費、薬剤費、出張費など)が明確であるか、作業後の保証はあるかなどを確認し、信頼できる業者を選びましょう。
絶対に触らないで!松の毛虫に刺された時の正しい対処法

どんなに気をつけていても、庭作業中などにうっかり毛虫に刺されてしまうことがあるかもしれません。特にマツカレハのような毒毛虫に刺されると、激しい痛みに襲われます。パニックにならず、正しい応急処置をすることが症状の悪化を防ぐ鍵です。ここでは、万が一刺されてしまった場合の対処法をステップごとに解説します。
この章では、以下の重要なポイントを学びます。
- 毛虫に刺された直後の応急処置
- 症状がひどい場合は皮膚科を受診
毛虫に刺された直後の応急処置
刺されたと気づいたら、すぐにその場を離れ、落ち着いて以下の処置を行ってください。掻きむしるのは絶対にやめましょう。
掻かずに毒針毛を取り除く(粘着テープ)
まず、刺された部分を絶対にこすったり掻いたりしないでください。 こすると、目に見えない微細な毒針毛がさらに皮膚の奥深くに刺さったり、周囲に広がって被害を拡大させてしまいます。 患部に触れないようにしながら、セロハンテープやガムテープなどの粘着テープをそっと貼り、ゆっくり剥がす作業を数回繰り返して、皮膚に付着した毒針毛を取り除きます。
流水と石鹸で洗い流す
毒針毛をテープで取り除いたら、次に石鹸をよく泡立て、流水で優しく洗い流します。 勢いのあるシャワーで洗い流すのも効果的です。 これにより、まだ残っているかもしれない毒針毛や毒の成分を洗い流すことができます。この時も、ゴシゴシこすらないように注意してください。
患部を冷やして炎症を抑える
洗い流した後は、清潔なタオルで水分をそっと拭き取り、氷のうや保冷剤などをタオルで包んで患部を冷やしましょう。 冷やすことで、血管が収縮し、炎症や腫れ、かゆみを和らげる効果が期待できます。 痛みやかゆみが強い場合に試してみてください。
症状がひどい場合は皮膚科を受診
応急処置をしても症状が改善しない、または悪化するような場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。
病院に行くべき症状の目安
かゆみや痛みが非常に強い、腫れが広範囲に及んでいる、じんましんのような発疹が全身に広がってきた、めまいや吐き気など、皮膚以外の症状が現れた場合は、速やかに皮膚科を受診してください。 特に、アレルギー体質の人は症状が重くなることがあるため、早めの対応が肝心です。
処方される薬について
皮膚科では、炎症を抑えるためのステロイド外用薬(塗り薬)やかゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬(飲み薬)などが処方されるのが一般的です。 医師の指示に従って適切に使用することで、つらい症状を早く和らげることができます。市販薬で対応することも可能ですが、症状が強い場合は専門医の診断を仰ぐのが最も安全で確実です。
来年は発生させない!松の毛虫の発生を予防する3つの方法

一度、松の毛虫の駆除を経験すると、「もう二度とあんな思いはしたくない」と心から思うはずです。駆除も大切ですが、それ以上に重要なのが「発生させない」ための予防策。日頃のちょっとした心がけで、毛虫の発生リスクを大幅に減らすことができます。ここでは、来シーズンの安心のために、今からできる効果的な予防方法を3つご紹介します。
本章で取り上げる予防策は以下の通りです。
- 伝統的な予防法「こも巻き」
- 卵のうちに駆除する
- 定期的な剪定と薬剤散布
伝統的な予防法「こも巻き」
冬の公園や庭園で、松の幹に藁(わら)が巻かれているのを見たことはありませんか?これは「こも巻き」と呼ばれる、昔ながらの害虫駆除方法です。
こも巻きの時期と正しいやり方
マツカレハの幼虫は、冬になると寒さを避けるために木から降りてきて、樹皮の隙間や暖かい場所で越冬する習性があります。 この習性を利用するのが「こも巻き」です。10月下旬から11月頃に、地上から1~2mの高さの幹に藁で作った「こも」を巻き付けます。 すると、越冬場所を探している幼虫が、暖かいこもの中に集まってきます。そして、虫たちが活動を始める前の2月中旬頃にこもを外し、中にいる幼虫ごと焼却処分するという方法です。 これは、冬の風物詩としても知られる、環境に優しい伝統的な予防策です。
卵のうちに駆除する
毛虫になってから駆除するよりも、卵の段階で取り除いてしまうのが最も効率的です。手間はかかりますが、その効果は絶大です。
卵塊の見つけ方と除去方法
マツカレハの成虫(ガ)は、7月~9月頃に松の葉に卵を産み付けます。 卵は200~500個ほどの塊(卵塊)になっており、見た目はイクラの粒が集まったような感じです。 この時期に松の木をよく観察し、葉に付着している卵塊を見つけたら、その葉や枝ごと切り取って処分しましょう。 卵の時点では毒針毛はありませんが、念のため手袋をして作業すると安全です。孵化する前に取り除くことで、春先の大量発生を未然に防ぐことができます。
定期的な剪定と薬剤散布
日頃の庭木の手入れも、重要な予防策の一つです。松の木を健康に保つことが、害虫に強い木を育てることに繋がります。
風通しを良くして発生しにくい環境を作る
毛虫は、日当たりや風通しの悪い場所を好みます。古葉が多く、枝が密集していると、毛虫にとって格好の隠れ家となり、発生しやすくなります。 定期的に剪定を行い、不要な枝や古い葉を取り除いて、木の内部まで日光が当たり、風が通るようにしてあげましょう。 これだけでも、毛虫が住みつきにくい環境を作ることができます。
予防効果のある薬剤の紹介
毎年毛虫の発生に悩まされている場合は、予防効果のある薬剤をあらかじめ散布しておくのも一つの手です。 効果が長期間持続するタイプの殺虫剤や、樹木に注入するタイプの薬剤を使用することで、毛虫の発生を抑制する効果が期待できます。 散布時期や使用方法は製品によって異なるため、説明書をよく確認して適切に使用してください。
よくある質問

松の毛虫のフンは害がありますか?
松の毛虫、特にマツカレハのフンは、直接的な毒性はありません。しかし、大量に発生した場合、地面やウッドデッキ、洗濯物などを汚すことがあります。 見た目も不快ですし、衛生的にも良くありません。フンが大量に落ちている場合は、木の上に毛虫がいるサインですので、早めに木の上の確認と対策を行いましょう。
チャドクガは松の木につきますか?
いいえ、基本的にチャドクガが松の木に発生することはありません。チャドクガは、ツバキやサザンカ、チャノキなど、ツバキ科の植物を好む毒蛾です。 松につく毒毛虫は、主にマツカレハ(松毛虫)と考えてよいでしょう。
毛虫駆除に木酢液は効果がありますか?
木酢液は、植物の成長を助けたり、一部の害虫に対して忌避効果(虫を寄せ付けにくくする効果)があるとされています。しかし、マツカレハのような毛虫に対する直接的な殺虫効果は、専用の殺虫剤に比べて低いと考えられます。予防の一環として使用するのは良いかもしれませんが、すでに発生してしまった毛虫を確実に駆除したい場合は、殺虫剤の使用をおすすめします。
駆除した毛虫の死骸はどう処理すればいいですか?
駆除した毛虫の死骸にも、毒針毛が残っている可能性があります。絶対に素手で触らず、割り箸などで集めてビニール袋に入れ、口をしっかり縛ってから燃えるゴミとして処分してください。薬剤で駆除した場合も同様に、死骸が地面に落ちている場合は放置せず、きちんと集めて処理しましょう。
業者に頼むといくらくらいかかりますか?
駆除費用は、木の高さ、本数、毛虫の発生状況、作業の難易度などによって大きく変動します。一概には言えませんが、一般的な庭木1本あたりで、数千円から数万円程度が目安です。高所作業車が必要になるような高い木の場合は、さらに高額になることがあります。正確な料金を知るためには、複数の専門業者に見積もりを依頼し、作業内容と料金を比較検討することをおすすめします。
まとめ

- 松につく毛虫の代表は毒を持つ「マツカレハ」です。
- マツカレハは春と秋に発生し、松の葉を食害します。
- 刺されると激しい痛みを伴う皮膚炎になります。
- 駆除は発生初期に、箸で捕獲するか枝ごと切るのが有効です。
- 大量発生時は「スミチオン乳剤」などの殺虫剤を使用します。
- 薬剤散布は幼虫が小さい時期が効果的です。
- 高い木や自分での駆除が困難な場合は業者に依頼しましょう。
- 刺されたら掻かずにテープで毒針毛を取り除きます。
- その後、石鹸と流水で洗い流し、患部を冷やしてください。
- 症状がひどい場合は、迷わず皮膚科を受診しましょう。
- 予防策として冬の「こも巻き」が伝統的で有効です。
- 夏から秋にかけて卵の塊を見つけて除去するのも効果的です。
- 定期的な剪定で風通しを良くし、発生しにくい環境を作ります。
- 毛虫のフンは直接的な害はないですが、不衛生です。
- チャドクガは松にはつかず、ツバキ科の植物を好みます。