「川辺で大きなネズミのような生き物を見かけたけど、あれは何だろう?」「ヌートリアを見つけたらお金がもらえるって本当?」そんな疑問や噂を耳にしたことはありませんか。可愛らしい見た目に反して、実は特定外来生物に指定されているヌートリア。その発見や捕獲が、本当にお金になるのか気になりますよね。
本記事では、ヌートリアを見つけた場合にお金がもらえるのか、報奨金や買取の真実について詳しく解説します。さらに、ヌートリアを発見した際の正しい対処法や、その生態、危険性についても網羅的にご紹介します。この記事を読めば、ヌートリアに関する疑問がすべて解決するはずです。
【結論】ヌートリアを見つけても基本的にお金はもらえない!ただし例外も

早速結論からお伝えすると、単にヌートリアを見つけただけでお金がもらえることは、基本的にありません。「見つけたら連絡するだけで報奨金がもらえる」といった制度は、残念ながら存在しないのが現状です。
しかし、がっかりするのはまだ早いかもしれません。一部の自治体では、ヌートリアを「捕獲」した場合に報奨金を支給する制度を設けていることがあります。これは、ヌートリアが農作物や生態系に与える被害が深刻であるため、駆除を推進するための取り組みです。つまり、「見つける」だけではダメで、「捕獲する」ことがお金につながる可能性がある、ということです。ただし、誰でも自由に捕獲して良いわけではなく、法律に基づいた適切な手続きが必要となります。
ヌートリアの捕獲で報奨金(懸賞金)がもらえる自治体はある?

ヌートリアによる被害に悩む自治体の中には、その個体数を減らす目的で、捕獲に対する報奨金制度を設けているところがあります。ここでは、報奨金制度の詳細と、その背景にあるヌートリアの被害について解説します。
- 報奨金制度を設けている自治体の例
- なぜ報奨金制度があるのか?ヌートリアによる被害
報奨金制度を設けている自治体の例
ヌートリアの捕獲報奨金制度は、特に西日本を中心とした被害の多い地域で実施されています。 ただし、制度の有無や金額、条件は自治体によって大きく異なるため、お住まいの地域の最新情報を確認することが非常に重要です。
例えば、以下のような自治体で報奨金制度が確認されています。
- 広島県東広島市: ヌートリアの尻尾を証拠品として提出すると、1頭につき1,000円の報奨金が交付されます。
- 島根県出雲市: ヌートリア1頭あたり1,000円の報奨金が設定されています。
- 山口県岩国市: アライグマと並んでヌートリアも捕獲奨励金の対象となっており、1頭あたり3,000円が支給される例があります。
これらの報奨金を受け取るためには、いくつかの重要な条件があります。まず、ヌートリアは「鳥獣保護管理法」および「特定外来生物法」の対象動物であるため、捕獲には原則として自治体の許可や狩猟免許が必要です。 無許可で捕獲すると法律違反となり、罰せられる可能性があります。 申請には、捕獲したことを証明するための写真や、尻尾などの証拠品の提出が求められるのが一般的です。 詳しい手続きについては、必ずお住まいの市役所や町村役場の農林担当課、または環境保全担当課にご確認ください。
なぜ報奨金制度があるのか?ヌートリアによる被害
自治体が費用をかけてまで報奨金制度を設けるのには、ヌートリアがもたらす深刻な被害が背景にあります。見た目の印象とは裏腹に、ヌートリアは日本の環境や農業にとって大きな脅威となっているのです。
主な被害は以下の通りです。
- 農業被害: ヌートリアは非常に食欲旺盛で、特にイネの苗やレンコン、カボチャ、ニンジンといった農作物を好んで食べます。 田んぼの畦(あぜ)を破壊して水漏れを引き起こすこともあり、農家にとっては死活問題です。
- インフラへの被害: 水辺に巣穴を掘る習性があり、その巣穴は非常に長くて複雑です。 この巣穴が原因で、河川の堤防やため池の土手がもろくなり、決壊して水害を引き起こす危険性も指摘されています。
- 生態系への影響: 在来の水生植物を大量に食べることで、その植物を利用する他の生物の生息環境を奪ってしまいます。 また、二枚貝を捕食することから、二枚貝に産卵するタナゴ類などの在来魚類にも間接的な影響を与え、生態系のバランスを崩す原因となっています。
これらの被害の拡大を防ぐため、自治体は報奨金というインセンティブを設けることで、市民や猟友会の協力を得て、効果的に個体数を減らそうとしているのです。
ヌートリアの買取はしてもらえる?毛皮や肉の価値は?

報奨金以外に、「ヌートリアを捕まえたら買い取ってもらえるのでは?」と考える方もいるかもしれません。特に、毛皮や肉の価値が気になるところです。ここでは、ヌートリアの買取の可能性について解説します。
- ヌートリアの毛皮の価値と買取の現状
- ヌートリアの肉は食べられる?買取や販売は?
- 「尻尾の買取」の噂は本当?
ヌートリアの毛皮の価値と買取の現状
ヌートリアが日本に持ち込まれた当初の目的は、軍服用の毛皮を生産するためでした。 ヌートリアの毛皮は、硬い刺し毛の下に柔らかい綿毛が密集しており、保温性や耐久性に優れています。 その品質はミンクに匹敵するとも言われ、かつては高値で取引されていました。
しかし、現在、野生化したヌートリアの毛皮を積極的に買い取る業者はほとんど存在しません。毛皮の需要自体が世界的に減少していることや、害獣としてのイメージが強いことが理由として挙げられます。一部の毛皮専門の買取業者では、コートなどの製品化されたものであれば査定対象になることもありますが、野生の個体を持ち込んでも、買取を期待するのは難しいでしょう。 ヤフオクなどでは取引事例もありますが、高額での売却は困難なのが実情です。
ヌートリアの肉は食べられる?買取や販売は?
「ヌートリアは食べられるのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。実際に、原産地の南米では食用とされており、日本でも一部の地域や個人の間で食べられることがあります。味については、鶏肉に似ている、クセがなくて美味しいといった声も聞かれます。
しかし、食用としてヌートリアを買い取る業者や、その肉を販売している店舗は、日本ではまずありません。その最大の理由は、衛生面のリスクです。野生のヌートリアは、レプトスピラ症などの人獣共通感染症の病原体を保有している可能性があります。 適切な知識を持たずに調理・喫食することは非常に危険です。過去には、無許可で捕獲して食べたとして逮捕された事例もあります。 安易に食べることは絶対に避けるべきです。
「尻尾の買取」の噂は本当?
インターネット上などで、「ヌートリアの尻尾を買い取ってくれる」という噂が流れることがあります。これは、前述した自治体の報奨金制度が誤って伝わったものと考えられます。
多くの自治体では、報奨金の申請時に捕獲の証拠として「尻尾」の提出を求めています。 この「報奨金との引き換え」が、いつの間にか「買取」という言葉に変化して広まったのでしょう。民間業者などが、単に尻尾だけを買い取るようなことはありません。この噂に惑わされないように注意してください。
ヌートリアを見つけたらどうする?正しい対処法

ヌートリアを見つけてもお金にはならず、むしろ様々なリスクがあることが分かりました。では、実際に遭遇した場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは、ヌートリアを見つけた際の正しい対処法と、絶対にやってはいけないことを解説します。
- 絶対にやってはいけないこと
- ヌートリアを見つけた時の連絡先
- 自分で駆除はできる?必要な許可や注意点
絶対にやってはいけないこと
ヌートリアを見かけた際に、良かれと思って取った行動が、かえって状況を悪化させたり、ご自身を危険に晒したりすることがあります。以下の行為は絶対に避けてください。
- むやみに近づく・触る: ヌートリアは基本的におとなしい性格ですが、追い詰められると防衛のために噛みついたり、引っ掻いたりすることがあります。 アゴの力は強く、人の指を噛み切るほどの力があるとも言われています。 また、先述の通りレプトスピラ症などの病原体を保有している可能性があるため、絶対に素手で触ってはいけません。
- 餌を与える: 「かわいいから」「お腹を空かせているかも」といった理由で餌を与えるのは絶対にやめてください。 餌付けはヌートリアをその場所に居つかせてしまい、繁殖を助長します。 結果的に、農作物被害や生態系への悪影響を拡大させる手助けをしてしまうことになります。
- 許可なく捕獲・飼育・運搬する: ヌートリアは「特定外来生物」に指定されています。 そのため、外来生物法により、許可なく捕獲、飼育、保管、運搬、譲渡、輸入することが固く禁じられています。 違反した場合は、厳しい罰則が科せられる可能性があります。
ヌートリアを見つけた時の連絡先
ヌートリアを見つけた場合、個人で対処しようとせず、専門の機関に連絡するのが最も安全で適切な方法です。
基本的な連絡先は、お住まいの市役所や町村役場の担当課です。 具体的には、以下のような部署が窓口となることが多いです。
- 農林水産課、農政課
- 環境課、環境保全課
- 鳥獣対策担当課
連絡する際は、パニックにならず、以下の情報を落ち着いて伝えると、その後の対応がスムーズになります。
- 発見した日時
- 発見した場所(できるだけ詳しく)
- 見かけたヌートリアの数
- 被害の状況(もしあれば)
自宅の敷地内に侵入された、農作物が被害に遭っているなど、具体的な被害が発生している場合は、その旨も必ず伝えましょう。自治体によっては、捕獲器の貸し出しを行っている場合もあります。
自分で駆除はできる?必要な許可や注意点
「自分の畑を荒らすヌートリアを、今すぐどうにかしたい」という場合、自分で駆除することは可能なのでしょうか。
結論から言うと、法律に基づいた許可を得れば、個人での駆除も可能です。 しかし、そのためには高いハードルがあります。ヌートリアは鳥獣保護管理法と外来生物法の両方で規制されているため、捕獲するには原則として「狩猟免許」と、自治体からの「捕獲許可」の両方が必要になるケースがほとんどです。
自宅の敷地内での被害を防ぐ目的であれば、狩猟免許がなくても許可が下りる場合もありますが、自治体によって判断が異なります。 許可の申請手続きも煩雑で、時間がかかることが一般的です。 さらに、捕獲した後のヌートリアは、外来生物法により生きたまま運搬したり、別の場所に放したりすることが禁止されているため、自ら適切に処分する必要があります。
これらの手続きやリスクを考えると、個人での駆除は現実的ではありません。被害に困っている場合は、まずは自治体に相談し、専門の駆除業者に依頼することも含めて、最適な方法を検討するのが賢明です。
そもそもヌートリアってどんな生き物?生態と見分け方

ここまでヌートリアの被害や対処法について解説してきましたが、そもそもヌートリアとはどのような生き物なのでしょうか。よく似た動物との見分け方や、その生態について知ることで、より適切な対応ができるようになります。
- ヌートリアの生態と特徴
- カピバラやビーバーとの見分け方
- ヌートリアの危険性と注意点
ヌートリアの生態と特徴
ヌートリアは、南米原産の大型のげっ歯類(ネズミの仲間)です。 日本には本来生息していませんでしたが、毛皮目的で持ち込まれたものが野生化し、現在は特に西日本を中心に分布を広げています。
主な特徴は以下の通りです。
- 見た目: 体長は40~60cmほどで、猫よりも大きく見えることがあります。 全身は茶色い毛で覆われ、口の周りだけが白っぽくなっています。 最大の特徴は、大きくてオレンジ色(黄色)の前歯です。 尻尾はネズミのように細長く、毛はほとんど生えていません。
- 生息地: 泳ぎが得意で、河川や湖沼、ため池、水路といった水辺を好んで生活します。
- 食性: 基本的には草食性で、水生植物の茎や根を好んで食べます。 農作物ではイネや野菜などを食害します。
- 繁殖力: 非常に繁殖力が強く、年に2~3回出産し、一度に平均5匹ほどの子を産みます。 天敵が少ない日本では、爆発的に数が増えてしまいました。
- 習性: 夜行性で、明け方や夕方に活発に活動します。 水辺の土手に巣穴を掘って生活します。
カピバラやビーバーとの見分け方
水辺にいる大きなげっ歯類というと、カピバラやビーバーを思い浮かべる人も多いでしょう。特にカピバラとはよく間違えられますが、決定的な違いがあります。
以下の表で見分け方のポイントを確認してみましょう。
特徴 | ヌートリア | カピバラ | ビーバー |
---|---|---|---|
大きさ | 体長40~60cm | 体長100~135cm(はるかに大きい) | 体長60~90cm |
尻尾 | 細長く、丸い(ネズミのよう) | ほとんどない | 平たく、うちわのような形 |
歯の色 | オレンジ色 | 白色 | オレンジ色 |
野生での生息 | 西日本を中心に生息 | 日本には野生で生息していない | 日本には野生で生息していない |
最も重要なポイントは、日本の川や池で野生の個体を見かけた場合、それはカピバラではなく、ほぼ間違いなくヌートリアだということです。 カピバラは動物園でしか見ることができません。
ヌートリアの危険性と注意点
すでにお伝えした通り、ヌートリアには直接的・間接的な危険性があります。改めて注意点をまとめます。
- 人獣共通感染症のリスク: ヌートリアはレプトスピラ症などの病原菌を保有している可能性があります。 この菌は、尿などを介して水や土壌を汚染し、人の皮膚の傷口などから体内に侵入することで感染します。重症化すると命に関わることもあるため、ヌートリアやその生息水域には安易に近づかないことが大切です。
- 噛みつきによる外傷: 温厚に見えても、追い詰めたり刺激したりすると、身を守るために攻撃してくることがあります。 特に大きなオレンジ色の前歯は鋭く、噛まれると大怪我につながる恐れがあります。 小さな子供やペットを連れている場合は、特に注意が必要です。
ヌートリアは、外来生物法によって生態系への被害が懸念される「特定外来生物」に指定されています。 見た目の印象だけで判断せず、適切な距離を保ち、正しい知識を持って接することが重要です。
よくある質問

ヌートリアの尻尾を買い取ってくれるところはありますか?
いいえ、民間業者などがヌートリアの尻尾を買い取ることはありません。この話は、一部の自治体が捕獲報奨金の支払いの際に、証拠品として尻尾の提出を求めていることから生じた誤解です。 報奨金制度を利用する場合にのみ、自治体へ提出する形になります。
ヌートリアを見つけたら警察に連絡してもいいですか?
基本的には、市役所や町村役場の担当課(農林課や環境課など)への連絡が適切です。 警察は、直接的な人的被害が発生している、またはその危険が差し迫っているといった緊急の場合を除き、野生動物の対応を専門とはしていません。まずは自治体に相談しましょう。
ヌートリアの駆除費用はいくらくらいかかりますか?
ヌートリアの駆除を専門業者に依頼する場合、費用は被害状況、駆除する頭数、建物の構造、作業の難易度などによって大きく変動します。数万円から十数万円以上かかることもあります。複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することをおすすめします。
ヌートリアはペットとして飼えますか?
いいえ、ヌートリアをペットとして飼うことはできません。 ヌートリアは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」により、特定外来生物に指定されています。 この法律により、愛玩目的での飼育、栽培、保管、運搬は原則として禁止されており、違反すると重い罰則が科せられます。
まとめ

- ヌートリアを見つけただけではお金はもらえない。
- 一部自治体では「捕獲」に対する報奨金制度がある。
- 報奨金を得るには狩猟免許や自治体の許可が必要。
- ヌートリアの毛皮や肉の商業的な買取はほぼない。
- 「尻尾の買取」は報奨金制度の誤解である。
- 見つけたらむやみに近づかず、餌を与えないこと。
- 許可なく捕獲・飼育・運搬するのは法律違反。
- 発見時の連絡先は市役所や町村役場の担当課。
- 個人での駆除は許可が必要で現実的ではない。
- ヌートリアはオレンジ色の前歯が特徴の特定外来生物。
- 日本の野外にいる大きなネズミはほぼヌートリア。
- カピバラは日本の野外には生息していない。
- レプトスピラ症などの感染症リスクがある。
- 追い詰めると噛みつく危険性があるため注意が必要。
- 被害拡大防止のため、見つけたら自治体への連絡が最善策。