転職活動の面接で頻出する質問の一つが「今まで苦労したこと」です。この質問にどう答えれば良いか悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、面接官に響く「今まで苦労したこと」の伝え方や具体的な例文、避けるべきNG例、そしてエピソードが見つからない場合の対処法まで、転職成功に向けて徹底解説します。この記事を読めば、自信を持って面接に臨めるようになるでしょう。
なぜ転職面接で「今まで苦労したこと」を聞かれるのか?企業の3つの意図
面接官が「今まで苦労したこと」を質問するのは、応募者の能力や人となりを多角的に知りたいからです。単に苦労話を聞きたいわけではなく、その経験を通じて何を得たのか、そして自社でどのように活かせるのかを見極めようとしています。主な意図は以下の3つです。
- 問題解決能力や課題発見力を見極めたい
- ストレス耐性や困難への向き合い方を知りたい
- 応募者の価値観や人となりを理解したい
問題解決能力や課題発見力を見極めたい
企業は、困難な状況に直面した際に、どのように課題を分析し、解決策を見つけ出し、行動できるかという問題解決能力を知りたいと考えています。仕事では予期せぬトラブルや難しい課題が発生することが日常茶飯事です。そのため、過去の苦労体験から、応募者がどのような思考プロセスで問題に取り組み、それを乗り越えてきたのかを確認しようとします。具体的にどのような課題を発見し、それに対してどんなアプローチを試みたのか、そしてその結果どうなったのか、という一連の流れから、入社後も同様の能力を発揮してくれるかを判断するのです。単に「大変だった」という感想ではなく、具体的な行動と結果を伝えることが重要になります。
ストレス耐性や困難への向き合い方を知りたい
仕事にはプレッシャーやストレスがつきものです。面接官は、応募者がストレスのかかる状況や困難な壁にぶつかったときに、どのように感情をコントロールし、前向きに取り組めるか、つまりストレス耐性や精神的なタフさを見極めようとしています。苦労した経験を語る中で、投げやりになったり他責にしたりせず、粘り強く取り組んだ姿勢を示すことができれば、入社後も困難な状況を乗り越えてくれる人材だと評価されるでしょう。また、苦労から何を学び、次にどう活かそうとしているのかという視点も、成長意欲を示す上で大切です。困難を成長の糧と捉えられる人物は、企業にとって魅力的な存在と言えます。
応募者の価値観や人となりを理解したい
「何に苦労したか」「それをどう乗り越えたか」というエピソードには、その人の価値観や仕事への取り組み方、人となりが色濃く反映されます。例えば、チームワークを重視する人が人間関係の調整に苦労した話をするかもしれませんし、高い目標達成意欲を持つ人が目標未達の危機に苦労した話をするかもしれません。面接官は、こうしたエピソードを通じて、応募者がどのようなことに重きを置き、どのようなことにやりがいを感じるのか、そして自社の社風やチームにフィットする人材かを見極めようとしています。正直に、そして自分らしさが伝わるように話すことが、相互理解を深める上で重要です。
転職面接で「今まで苦労したこと」を効果的に伝える構成術:PREP法を活用
「今まで苦労したこと」を効果的に伝えるためには、話の構成が非常に重要です。おすすめなのは、結論から話し始め、理由、具体例、そして再び結論(学びや貢献)へと繋げる「PREP法」です。この構成を用いることで、話が分かりやすくなり、面接官に伝えたいポイントが明確になります。
- 【P】Point:結論ファーストで苦労の概要を提示
- 【R】Reason:苦労した背景や原因を説明
- 【E】Example:具体的な行動と乗り越えたプロセスを詳述
- 【P】Point:経験から得た学びと入社後の貢献をアピール
【P】Point:結論ファーストで苦労の概要を提示
まず最初に、「私が今までで最も苦労したことは、〇〇です」というように、結論から述べましょう。これにより、面接官は何についての話が始まるのかをすぐに理解でき、その後の話に集中しやすくなります。例えば、「前職で新規プロジェクトのリーダーを任された際、未経験の分野であったため、知識不足とメンバーのモチベーション維持に苦労しました」といった具体的な状況を簡潔に伝えるのがポイントです。この段階では詳細を語りすぎず、話の全体像を明確に示すことを意識してください。
【R】Reason:苦労した背景や原因を説明
次に、なぜそれが苦労だと感じたのか、その背景や原因を具体的に説明します。どのような状況で、何が問題だったのかを明らかにすることで、話に深みが増し、面接官の共感を得やすくなります。例えば、「プロジェクトの納期が非常にタイトであったにも関わらず、関連部署との連携がうまくいかず、情報共有に遅れが生じたことが主な原因でした」や「新しい技術の習得に時間がかかり、チーム全体の進捗に影響が出始めたことに強いプレッシャーを感じました」など、当時の状況や課題を具体的に描写しましょう。これにより、単なる困難自慢ではなく、客観的な状況説明として伝わります。
【E】Example:具体的な行動と乗り越えたプロセスを詳述
ここが話の核心部分です。その苦労に対して、具体的にどのような行動を取り、どのように乗り越えようと努力したのかを詳細に語ります。課題解決のために試行錯誤したプロセスや、周囲とどのように協力したかなどを盛り込むと良いでしょう。「毎日1時間の勉強時間を確保し、週末にはセミナーに参加して専門知識を習得しました。また、チームメンバーとは毎日朝礼で進捗と課題を共有し、個別の面談でモチベーション向上に努めました」のように、具体的なアクションを示すことが重要です。成功体験だけでなく、失敗から学んで改善した点なども含めると、より人間味あふれるストーリーになります。
【P】Point:経験から得た学びと入社後の貢献をアピール
最後に、その苦労した経験から何を学び、それが今後どのように活かせるのか、入社後にどう貢献できるのかを伝えます。これが自己PRに繋がる重要なポイントです。「この経験から、困難な状況でも諦めずに主体的に学ぶことの重要性と、チームワークで課題を乗り越える達成感を学びました。この経験で培った課題解決能力とコミュニケーション能力を活かして、貴社でもプロジェクトの成功に貢献したいと考えております」というように、具体的な学びと入社後のビジョンを示すことで、面接官に採用するメリットを感じさせることができます。
【状況別】転職面接で使える「今まで苦労したこと」例文5選
ここでは、様々な状況で応用できる「今まで苦労したこと」の例文を5つ紹介します。ご自身の経験に照らし合わせながら、話の組み立て方の参考にしてください。大切なのは、例文を丸暗記するのではなく、自分の言葉で語ることです。
- 例文1:高い目標達成に向けて努力した経験(営業職など)
- 例文2:チーム内の意見対立を解消した経験(リーダー職など)
- 例文3:未経験の業務・スキル習得に挑戦した経験(キャリアチェンジなど)
- 例文4:予期せぬトラブルやクレームに対応した経験(サービス業など)
- 例文5:既存のやり方や非効率な業務を改善した経験(全般)
例文1:高い目標達成に向けて努力した経験(営業職など)
私が最も苦労したのは、前職で新規顧客開拓の目標が前年比150%と非常に高く設定されたことです。
当初は、従来の営業手法だけでは到底達成できない数字だと感じ、プレッシャーも大きかったです。既存顧客への深耕だけでは限界があり、新しいアプローチが必要でした。
そこで、まず市場調査を徹底的に行い、未開拓だった業界にターゲットを絞りました。そして、その業界向けの新しい提案資料を一から作成し、テレアポや飛び込み営業だけでなく、業界セミナーへの参加やSNSを活用した情報発信も積極的に行いました。最初は断られることも多かったですが、諦めずにアプローチ方法を改善し続けた結果、徐々に成果が出始め、最終的には目標を105%達成することができました。
この経験から、困難な目標に対しても、現状分析と戦略的な行動、そして粘り強い努力で達成できることを学びました。貴社でもこの経験を活かし、高い目標にも果敢に挑戦していきたいと考えております。
例文2:チーム内の意見対立を解消した経験(リーダー職など)
私が苦労したのは、あるプロジェクトでチームメンバー間の意見が対立し、プロジェクトの進行が停滞してしまったことです。
それぞれの意見に一理あり、どちらかを一方的に採用することが難しい状況でした。チームの雰囲気も悪化し、このままでは納期に間に合わないという危機感がありました。
まず、対立しているメンバー双方から個別にじっくりと話を聞き、それぞれの意見の背景にある考えや懸念点を深く理解するよう努めました。その上で、全員が集まるミーティングの場を設け、中立的な立場でファシリテーションを行い、共通の目標を再確認しました。そして、双方の意見の良い部分を取り入れた折衷案を提示し、具体的なメリット・デメリットを比較検討することで、最終的に全員が納得できる結論を導き出すことができました。
この経験を通じて、多様な意見を尊重し、対話を通じて合意形成を図ることの重要性を学びました。貴社でも、チームワークを促進し、円滑なコミュニケーションでプロジェクトを推進していきたいです。
例文3:未経験の業務・スキル習得に挑戦した経験(キャリアチェンジなど)
私が最も苦労したのは、前職で新しいCRMシステムの導入担当を任された際、システムに関する知識が全くなかったことです。
周囲に詳しい人も少なく、何から手をつけて良いか分からない状態からのスタートでした。導入期限も迫っており、大きな不安を感じました。
まずは独学で関連書籍を読み漁り、オンライン講座を受講して基礎知識を身につけました。それでも分からない点は、ベンダーの担当者に積極的に質問し、疑問点を一つひとつ解消していきました。また、他社での導入事例を研究し、自社に最適な活用方法を模索しました。導入後は、社内向けの研修会を企画・実施し、スムーズな移行をサポートしました。
この経験から、未経験の分野でも、主体的に学び、周囲の協力を得ながら取り組むことで乗り越えられることを実感しました。貴社でも新しいことへの挑戦を恐れず、積極的にスキルアップを図りたいと考えています。
例文4:予期せぬトラブルやクレームに対応した経験(サービス業など)
私が苦労したのは、店舗責任者として勤務していた際に、大規模なシステム障害により、一時的に全ての決済処理ができなくなったことです。
お客様からは厳しいお叱りを受け、店内は混乱状態となりました。スタッフも動揺しており、迅速かつ的確な対応が求められました。
まず、お客様へ状況を丁寧に説明し、謝罪するとともに、復旧見込みや代替手段について誠意をもって伝えました。同時に、スタッフには冷静に対応するよう指示し、手作業での対応準備を進めました。クレームに対しては真摯に耳を傾け、お客様の不満を少しでも和らげるよう努めました。幸い数時間でシステムは復旧しましたが、この間の情報共有とスタッフ間の連携には細心の注意を払いました。
この経験から、予期せぬトラブル発生時における冷静な判断力と、お客様への誠実な対応、そしてチームをまとめるリーダーシップの重要性を痛感しました。貴社でも、いかなる状況でもお客様第一の姿勢を忘れず、問題解決に尽力したいです。
例文5:既存のやり方や非効率な業務を改善した経験(全般)
私が苦労したのは、長年続いていた手作業によるデータ入力業務の非効率性に気づき、その改善提案を行った際、当初なかなか周囲の理解を得られなかったことです。
従来のやり方に慣れているメンバーからは、「今のままで問題ない」「新しいことを覚えるのが面倒」といった抵抗感があり、改善の必要性を理解してもらうのに時間がかかりました。
そこで、まず現状の業務にかかる時間やコスト、ミスの発生率などを具体的に数値化し、客観的なデータに基づいて非効率性を説明しました。その上で、新しいツールの導入や業務フローの変更によるメリット(時間短縮、コスト削減、ミス削減など)を具体的に提示し、導入後のサポート体制も明確にしました。また、一部のメンバーに試験的に新しい方法を試してもらい、その効果を実感してもらうことで、徐々に賛同者を得ていきました。
この経験から、現状を変えることの難しさと、データに基づいた説得力、そして丁寧なコミュニケーションの重要性を学びました。貴社でも、常に業務改善の意識を持ち、効率化と生産性向上に貢献したいと考えています。
【職種別】「今まで苦労したこと」の例文とポイント
職種によって求められる能力や経験は異なります。「今まで苦労したこと」のエピソードも、応募する職種の特性に合わせてアピールポイントを調整することが重要です。ここでは、代表的な職種別に例文と伝える際のポイントを解説します。
- 営業職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
- エンジニア・技術職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
- 事務・アシスタント職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
- 販売・サービス職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
営業職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
営業職では、目標達成意欲、交渉力、関係構築力などが重視されます。苦労した経験を通じて、これらの能力をどのように発揮し、成果に繋げたかをアピールしましょう。
例文:
「私が営業として最も苦労したのは、競合他社が非常に強い地域で新規開拓を担当したことです。当初は門前払いも多く、なかなか成果に繋がりませんでした。
原因を分析したところ、自社製品の認知度が低いこと、そして競合製品への信頼が厚いことが分かりました。
そこで、製品の強みを徹底的に洗い出し、ターゲット顧客の課題解決に特化した提案資料を作成しました。また、地域イベントへの参加や紹介キャンペーンの実施など、地道な関係構築にも注力しました。粘り強く訪問を重ね、顧客のニーズを丁寧にヒアリングすることで、徐々に信頼を得ることができ、半年後には目標の120%を達成しました。
この経験から、困難な状況でも諦めずに戦略を練り直し、行動し続けることの重要性を学びました。貴社でもこの粘り強さと提案力を活かして貢献したいです。」
ポイント:
- 具体的な数値目標と結果を示す
- どのように市場や顧客を分析したか
- どのような工夫や行動で壁を乗り越えたか
- 目標達成意欲や粘り強さをアピールする
エンジニア・技術職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
エンジニアや技術職では、問題解決能力、技術的な探求心、論理的思考力などが求められます。技術的な課題にどのように取り組み、解決に導いたかを具体的に説明しましょう。
例文:
「私がエンジニアとして苦労したのは、開発中のシステムで原因不明のバグが頻発し、プロジェクトの遅延が懸念されたことです。
ログを詳細に解析しても直接的な原因が特定できず、チーム内にも焦りが見え始めました。
そこで、一度原点に立ち返り、関連するモジュール間の連携やデータの流れを一つひとつ検証し直しました。また、同様の事象がないか技術文献やコミュニティで情報を収集し、仮説を立てて検証を繰り返しました。その結果、あるライブラリの特定バージョンとの相性問題が原因であることを突き止め、バージョンアップすることで解決できました。
この経験から、複雑な問題に対しても、粘り強く多角的な視点からアプローチすることの重要性を学びました。貴社でもこの探求心と問題解決能力を活かして、技術的な課題解決に貢献したいです。」
ポイント:
- どのような技術的課題だったか具体的に説明する
- 問題の原因究明プロセスを論理的に示す
- どのように解決策を見つけ出し、実行したか
- 技術的な探求心や論理的思考力をアピールする
事務・アシスタント職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
事務・アシスタント職では、正確性、効率性、サポート力、マルチタスク能力などが評価されます。業務効率化や他部署との連携で苦労した経験などを通じて、これらの能力をアピールすると良いでしょう。
例文:
「私が事務職として苦労したのは、月末の請求書発行業務が特定の担当者に集中し、毎月残業が常態化していたことです。
担当者の負担が大きく、ミスも発生しやすい状況でした。業務の属人化も課題だと感じました。
そこで、まず現在の業務フローを詳細にヒアリングし、ボトルネックとなっている箇所を特定しました。その上で、一部業務の自動化ツールの導入と、複数名で分担できるようなマニュアル作成を提案し、上司の承認を得て実行しました。最初は新しいフローに戸惑う声もありましたが、丁寧に説明しサポートすることで、徐々に定着していきました。結果として、月間の残業時間を平均5時間削減し、ミスの発生も大幅に減らすことができました。
この経験から、現状の課題を発見し、周囲と協力しながら業務改善を進めることの重要性を学びました。貴社でも、効率的な業務遂行と円滑なサポートで貢献したいです。」
ポイント:
- どのような業務上の課題だったか
- どのように業務改善や効率化に取り組んだか
- 周囲との連携やサポート力をどのように発揮したか
- 正確性や計画性をアピールする
販売・サービス職で「今まで苦労したこと」を伝える例文とポイント
販売・サービス職では、コミュニケーション能力、顧客対応力、課題解決力、ホスピタリティなどが重視されます。お客様との関わりの中で生じた困難や、店舗運営上の課題にどのように対応したかを伝えましょう。
例文:
「私が販売員として苦労したのは、あるお客様から商品に対する厳しいご意見をいただき、ご納得いただくまでに時間を要したことです。
お客様は商品の品質にご不満をお持ちで、強い口調でお話しされました。当初は私自身も戸惑い、どのように対応すべきか悩みました。
まずはお客様のお話を最後まで真摯に傾聴し、ご不満な点を正確に把握するよう努めました。そして、商品の特性や品質管理について改めて丁寧に説明し、誤解があった点については誠心誠意謝罪いたしました。また、代替案として他の商品をご提案したり、今後の改善策についてお伝えしたりすることで、最終的にはお客様にご理解いただき、笑顔でお帰りいただくことができました。
この経験から、お客様の言葉の裏にある真のニーズを汲み取り、誠実に対応することの大切さを学びました。貴社でも、お客様一人ひとりに寄り添った丁寧な接客を心がけたいです。」
ポイント:
- どのような顧客対応上の困難だったか
- お客様の感情や状況をどのように理解しようとしたか
- どのように誠意をもって対応し、解決に導いたか
- コミュニケーション能力やホスピタリティをアピールする
面接官に響く!「今まで苦労したこと」を話す際の5つの重要ポイント
「今まで苦労したこと」を語る際には、単にエピソードを話すだけでなく、面接官に良い印象を与え、自己PRに繋げるためのポイントがあります。以下の5つの点を意識することで、あなたの話はより魅力的になるでしょう。
- 具体的なエピソードを選び、ストーリーで語る
- ネガティブな表現で終わらせず、ポジティブな学びに繋げる
- 企業の求める人物像や社風と関連付ける
- 嘘や過度な誇張はせず、等身大の経験を話す
- 結論を先に述べ、簡潔かつ分かりやすく伝える
具体的なエピソードを選び、ストーリーで語る
抽象的な話ではなく、具体的な状況や行動、感情が伝わるエピソードを選びましょう。「大変だった」「頑張った」という言葉だけでは、面接官には何も伝わりません。いつ、どこで、誰と、何が起こり、それに対して自分がどう考え、どう行動したのか、そしてその結果どうなったのか、というストーリーで語ることが重要です。情景が目に浮かぶような描写を心がけることで、面接官はあなたの話に引き込まれ、共感しやすくなります。エピソードにリアリティを持たせることで、あなたの個性や能力がより鮮明に伝わるはずです。
ネガティブな表現で終わらせず、ポジティブな学びに繋げる
苦労話なので、ネガティブな状況から話が始まるのは当然です。しかし、最終的にその経験から何を学び、どのように成長できたのかというポジティブな結論に繋げることが非常に重要です。「〇〇が大変で辛かった」で終わってしまうと、単なる愚痴や不満に聞こえてしまいかねません。「その苦労を乗り越えたことで、〇〇というスキルが身についた」「〇〇の大切さを学んだ」といった、前向きな学びや気づきを必ず含めるようにしましょう。これにより、困難を成長の糧にできる人物であるという印象を与えることができます。
企業の求める人物像や社風と関連付ける
話すエピソードやそこから得た学びは、応募先企業が求める人物像や社風と関連付けることで、より効果的なアピールになります。事前に企業のウェブサイトや求人情報などをよく確認し、どのような人材を求めているのかを把握しておきましょう。例えば、チームワークを重視する企業であれば、チームで困難を乗り越えた経験を話すのが効果的です。自分の強みと企業のニーズが合致していることを示すことで、入社意欲の高さと貢献可能性をアピールできます。
嘘や過度な誇張はせず、等身大の経験を話す
面接官に良く見られたいという気持ちは分かりますが、嘘をついたり、経験を過度に誇張したりするのは絶対に避けましょう。面接官は多くの応募者を見ているため、話の矛盾や不自然な点に気づくことがあります。また、入社後に話した内容と実際の能力に乖離があると、後々問題になる可能性もあります。等身大の経験を誠実に語ることが、信頼を得るための最も大切なポイントです。小さな経験でも、そこから得た学びや成長がしっかり語れれば、十分にアピールになります。
結論を先に述べ、簡潔かつ分かりやすく伝える
PREP法でも触れましたが、まず結論から話すことは、ビジネスコミュニケーションの基本です。「私が最も苦労したことは〇〇です」と最初に伝えることで、面接官は話のテーマをすぐに理解できます。話が長くなりすぎないように、要点をまとめて簡潔に話すことも重要です。3分程度で話し終えるのを目安に、事前に練習しておくと良いでしょう。分かりやすい言葉を選び、論理的な構成で話すことを心がけてください。
これは避けたい!転職面接における「今まで苦労したこと」のNG例5選
良かれと思って話した内容が、実は面接官にマイナスな印象を与えてしまうこともあります。ここでは、「今まで苦労したこと」を話す際に避けるべきNG例を5つ紹介します。これらの点に注意して、エピソード選びや話し方を工夫しましょう。
- NG例1:他責や環境のせいにする発言
- NG例2:単なる愚痴や不満、ネガティブな話で終わる
- NG例3:自身の努力不足や準備不足が原因の苦労
- NG例4:企業の理念や価値観に反するエピソード
- NG例5:「特にありません」という回答や抽象的な話
NG例1:他責や環境のせいにする発言
「上司の指示が悪かった」「会社の体制が整っていなかった」など、苦労の原因を他人や環境のせいにするような発言は絶対に避けましょう。このような発言は、当事者意識が低く、問題解決能力に欠けるという印象を与えてしまいます。たとえ実際にそうした側面があったとしても、面接の場では、その状況下で自分がどのように考え、行動したのかという主体的な側面にフォーカスして話すべきです。責任転嫁する姿勢は、どの企業からも敬遠されるでしょう。
NG例2:単なる愚痴や不満、ネガティブな話で終わる
苦労した経験を話すのですから、ネガティブな要素が含まれるのは仕方がありません。しかし、それが単なる愚痴や不満の吐露で終わってしまうのはNGです。「あの時は本当に最悪だった」「もう二度とあんな経験はしたくない」といったネガティブな感情表現だけで終わると、面接官はあなたがその経験から何も学んでいないと感じてしまいます。必ず、その苦労を乗り越えるためにどのような努力をし、何を学び、今後にどう活かそうとしているのかという前向きな視点を加えることが重要です。
NG例3:自身の努力不足や準備不足が原因の苦労
「勉強不足で試験に落ちた」「準備を怠ってプレゼンに失敗した」など、明らかに自分自身の努力不足や準備不足、怠慢が原因で招いた苦労を話すのは避けましょう。これは自己管理能力の低さや計画性のなさを露呈するだけで、プラスの評価には繋がりません。面接官が知りたいのは、不可抗力的な困難や高い目標に対して、あなたがどのように主体的に取り組んだかです。自業自得と捉えられかねないエピソードは、選ばない方が賢明です。
NG例4:企業の理念や価値観に反するエピソード
応募先の企業が大切にしている理念や価値観と、あなたの話す苦労話の内容が明らかに矛盾している、あるいは反している場合、企業適合性が低いと判断される可能性があります。例えば、チームワークを非常に重視する企業に対して、個人プレーで成果を出したもののチームとは軋轢が生じた、といった苦労話は適切ではありません。事前に企業の理念や行動指針などをよく調べておき、共感できるポイントを見つけてエピソードに反映させるか、少なくとも企業の価値観と衝突しない内容を選ぶようにしましょう。
NG例5:「特にありません」という回答や抽象的な話
「今まで苦労したことは特にありません」という回答は、成長意欲がない、あるいは自己分析ができていないと見なされる可能性が高く、最も避けるべき回答の一つです。誰しも仕事をする上で何かしらの困難や壁に直面するはずです。また、「いろいろ大変でした」といった抽象的な話も、具体性に欠けるため評価されません。面接官は、あなたがどのような課題に直面し、それをどう乗り越えてきたのかという具体的なプロセスを知りたいのです。具体的なエピソードを事前に準備しておくことが不可欠です。
「今まで苦労したことが思いつかない…」そんな時の対処法3選
「これといった大きな苦労経験がない」「面接で話せるような立派なエピソードが思いつかない」と悩む方もいるかもしれません。しかし、心配はいりません。日常業務の中での小さな工夫や努力も、伝え方次第で立派なアピール材料になります。ここでは、苦労したことが思いつかない場合の対処法を3つ紹介します。
- 「大きな苦労」でなくても大丈夫!小さな困難や課題を深掘り
- 日々の業務で「工夫したこと」「努力したこと」を振り返る
- 信頼できる上司や同僚に客観的な意見を聞いてみる
「大きな苦労」でなくても大丈夫!小さな困難や課題を深掘り
面接で話す「苦労したこと」は、必ずしもドラマチックな大失敗や、壮大なプロジェクトである必要はありません。日常業務の中で感じた「ちょっと大変だったな」「どうすれば上手くいくだろう」と考えた経験でも十分です。例えば、「新しい業務ツールに慣れるのに時間がかかった」「複数の業務が重なって優先順位付けに悩んだ」「お客様からの難しい要望にどう応えるか考えた」など、些細なことでも、それをどのように乗り越えようと努力し、何を得たのかを具体的に語れれば、面接官にあなたの問題解決への姿勢や成長力を伝えることができます。過去の業務日報やメモを見返してみるのも良いでしょう。
日々の業務で「工夫したこと」「努力したこと」を振り返る
「苦労」という言葉に囚われず、日々の業務の中で「もっとこうすれば良くなるのに」と考えて工夫したことや、目標達成のために努力したことを思い出してみましょう。例えば、「資料作成の時間を短縮するためにテンプレートを作成した」「問い合わせ対応をスムーズにするためにFAQを整備した」「チームのコミュニケーションを円滑にするために定期的なミーティングを提案した」など、主体的に行動して改善を試みた経験は、立派なアピールポイントになります。その行動のきっかけ、具体的な取り組み、そしてその結果どのような変化があったのかを整理してみましょう。
信頼できる上司や同僚に客観的な意見を聞いてみる
自分では「当たり前のこと」として認識していて、苦労だと感じていないことでも、客観的に見れば立派な努力や成果である場合があります。過去の仕事ぶりをよく知る、信頼できる上司や同僚、あるいは友人に「私が仕事で頑張っていたことって何だったかな?」「何か大変そうだったけど乗り越えたことってあった?」と聞いてみるのも一つの手です。第三者の視点からフィードバックをもらうことで、自分では気づかなかったエピソードや強みを発見できるかもしれません。また、話す内容についてアドバイスをもらうのも良いでしょう。
【転職】「今まで苦労したこと」に関するよくある質問
ここでは、「今まで苦労したこと」という質問に関して、転職活動中の方からよく寄せられる疑問とその回答をまとめました。面接準備の参考にしてください。
Q1. 苦労話はいくつくらい準備しておけば良いですか?
A1. 最低でも2~3つは準備しておくことをおすすめします。面接官から「他に苦労した経験はありますか?」と深掘りされることもありますし、応募する企業の特性や面接の流れによって、最適なエピソードが異なる場合もあるからです。複数のエピソードを用意しておくことで、状況に応じて柔軟に対応できます。それぞれのエピソードでアピールしたい強みや学びを変えておくと、より多角的に自分を表現できるでしょう。
Q2. 「失敗談」と「苦労したこと」の違いは何ですか?
A2. 「失敗談」は、目標を達成できなかったり、何らかのミスをしたりした結果に焦点が当たります。一方、「苦労したこと」は、困難な状況や課題に直面し、それを乗り越えるためのプロセスや努力に焦点が当たります。結果的に成功したか失敗したかにかかわらず、その過程での頑張りや学びを伝えるのが「苦労したこと」です。ただし、両者は重なる部分も多く、失敗から学んで次に活かした経験は、苦労話としても有効な場合があります。重要なのは、その経験から何を学び、どう成長したかを伝えることです。
Q3. 過去の職場の悪口と捉えられないようにするには?
A3. 苦労した状況を説明する際に、前職の会社や上司、同僚に対する批判的な表現は避けましょう。「〇〇という課題があった」という客観的な事実を述べるに留め、その状況下で自分がどのように考え、行動したのかという点にフォーカスします。「会社の体制が悪くて…」ではなく、「既存の体制では対応が難しかったため、私は〇〇という新しい方法を提案し実行しました」というように、主体的な行動とポジティブな姿勢を強調することが大切です。他責にせず、あくまで自己の成長に繋がった経験として語りましょう。
Q4. どのくらい前のエピソードまで話して良いのでしょうか?
A4. 基本的には、直近の職務経験(3年~5年以内程度)の中からエピソードを選ぶのが望ましいです。あまりにも古い話だと、現在のあなたのスキルや価値観と乖離している可能性がありますし、面接官も「最近は何も努力していないのか?」と疑問に思うかもしれません。ただし、新卒時代の経験であっても、そこから得た学びが現在の自分に大きな影響を与えており、かつ応募企業の求める人物像に合致するのであれば、話しても問題ありません。その場合は、なぜそのエピソードを選んだのか、現在にどう繋がっているのかを明確に説明できるようにしましょう。
Q5. 苦労した結果、目標達成できなかった場合はどう伝えれば良いですか?
A5. 目標達成できなかったとしても、その経験から何を学び、次にどう活かそうとしているのかを具体的に伝えられれば問題ありません。重要なのは結果だけではなく、その過程での努力や試行錯誤、そしてそこからの学びです。「目標は未達でしたが、〇〇という課題を発見し、△△という改善策を講じました。この経験から□□の重要性を学び、次のプロジェクトではその点を意識して取り組み、成果を出すことができました」というように、失敗から得た教訓と、その後の行動の変化や成果をセットで語ることで、成長力や問題解決能力をアピールできます。
Q6. 「苦労したことがない」と正直に答えるのはアリ?
A6. 前述の通り、「特にありません」という回答は避けるべきです。本当に大きな苦労がなかったとしても、日々の業務で工夫したことや努力したこと、小さな壁を乗り越えた経験はあるはずです。それを「苦労」と捉えて話すようにしましょう。「苦労知らず」と見られるよりは、「課題意識を持って仕事に取り組んでいる」と評価される方がはるかに良いです。自己分析を深め、些細なことでもエピソードとして語れるように準備しておくことが大切です。
Q7. 例文をそのまま使っても大丈夫?
A7. 例文はあくまで話の構成や表現の参考として活用し、ご自身の経験に基づいたオリジナルのエピソードを語るようにしてください。例文を丸暗記して話すと、言葉に詰まったり、不自然な印象を与えたりする可能性があります。面接官は多くの応募者と話しているので、借り物の言葉は見抜かれやすいです。自分の言葉で、自分の感情を込めて話すことで、初めて相手に伝わるものがあります。例文を参考にしながら、自分ならではのストーリーを組み立てましょう。
まとめ
- 面接官は苦労話から問題解決能力や人柄を見る
- PREP法で結論から具体例、学びを伝える
- 具体的なエピソードでストーリーを語る
- ネガティブで終わらずポジティブな学びに繋げる
- 企業の求める人物像と関連付けることが重要
- 嘘や誇張はせず等身大の経験を誠実に話す
- 他責や愚痴、努力不足が原因の話はNG
- 「特にない」という回答は避けるべき
- 小さな困難や工夫も立派なエピソードになる
- 職種に合わせてアピールポイントを調整する
- 営業職は目標達成意欲や交渉力を示す
- 技術職は問題解決プロセスや探求心を示す
- 事務職は効率化やサポート力を示す
- 販売職は顧客対応力やホスピタリティを示す
- 複数のエピソードを準備しておくと安心