アーステスタは、電気設備の安全を守るために欠かせない測定器です。漏電や感電事故を防ぐ上で重要な「接地抵抗」の値を正確に測るために用いられます。本記事では、アーステスタの基本的な使い方から、測定の進め方、結果の判定方法、そして安全に作業するための注意点まで、詳しく解説します。電気工事や設備点検に携わる方はもちろん、電気の安全に関心のある全ての方に役立つ情報をお届けします。
アーステスタとは?接地抵抗測定の重要性を知ろう

アーステスタは、電気設備と大地との間の電気抵抗値である「接地抵抗」を測定するための専用機器です。別名「接地抵抗計」とも呼ばれ、電気の安全を確保する上で非常に重要な役割を担っています。
接地抵抗とは?なぜ測定が必要なのか
接地抵抗とは、電気設備が万が一漏電した際に、その電流を安全に大地へ逃がすための通り道(アース)の電気的な通りにくさを指します。この抵抗値が適切でないと、漏電時に人体に電流が流れ、感電事故につながる危険性があります。また、火災や電気機器の故障の原因にもなりかねません。
そのため、電気設備を設置する際や定期的な点検時に、接地抵抗が国の定める基準値内にあるかを測定し、安全性を確認することが不可欠です。接地抵抗測定は、私たちの命と財産を守るための重要な保安機能と言えるでしょう。
アーステスタの役割と種類
アーステスタは、この接地抵抗値を正確に測定し、電気設備の安全性を評価する役割を担います。アーステスタには、主に以下の3つの種類があります。
- 3極法(精密測定用): 接地極、電圧電極、電流電極の3つの電極を用いて測定する、最も一般的で正確な測定方法です。新規の接地工事や詳細な点検に適しています。
- 2極法(簡易測定用): 既存の接地極を利用して測定する簡易的な方法で、補助接地棒を打ち込めない場所や既設設備の確認などに用いられます。
- クランプ式: 接地線を挟むだけで測定できるタイプで、活線状態でも測定が可能であり、多重接地回路の測定に特に便利です。
それぞれの測定方法には特徴があり、現場の状況や測定対象に応じて適切なアーステスタを選ぶことが、正確な測定を行うための第一歩となります。
アーステスタの基本的な使い方:測定前の準備と接続方法

アーステスタを使って接地抵抗を測定する前には、いくつかの準備と正しい接続方法を理解しておくことが大切です。これらを怠ると、正確な測定ができないだけでなく、事故につながる可能性もあります。
測定に必要な道具を揃える
接地抵抗測定を行う際には、アーステスタ本体以外にもいくつかの道具が必要です。主なものは以下の通りです。
- アーステスタ本体: デジタル式とアナログ式があり、測定する環境や求める精度に応じて選びます。
- 測定コード: E(接地極)、P(電圧電極)、C(電流電極)に接続する専用のコードです。通常、色分けされています。
- 補助接地棒(補助電極): P極とC極として大地に打ち込む金属製の棒です。
- ハンマー: 補助接地棒を地面に打ち込む際に使用します。
- 水(必要に応じて): 地面が乾燥している場合、補助接地棒の周囲に水をまくことで導電性を高め、正確な測定を助けます。
- メジャー: 補助接地棒の間隔を正確に測るために使います。
- 保護具: 作業用手袋、安全靴など、感電や怪我を防ぐための保護具を必ず着用しましょう。
これらの道具を事前に準備し、安全かつスムーズに作業を進めることが重要です。
補助接地棒の設置場所と間隔
3極法で測定する場合、補助接地棒(P極とC極)の設置場所と間隔は、測定精度に大きく影響します。
一般的に、被測定接地極(E極)から一直線上にP極、さらにC極を配置します。P極とC極は、E極からそれぞれ5mから10m以上離して設置するのが目安です。特に、P極はE極とC極の間の電位分布が安定した位置に置くことが求められます。理想的には、E極とC極の間の距離の約61.8%の地点にP極を設置すると、より正確な測定が期待できます。
地面がコンクリートやアスファルトで舗装されている場所では、補助接地棒を打ち込むのが難しい場合があります。その際は、簡易測定(2極法)やクランプ式アーステスタの利用、あるいは導電性マットなどを活用する方法を検討しましょう。
アーステスタの配線方法を理解する
アーステスタの配線は、機種によって多少の違いはありますが、基本的な接続方法は共通しています。3極法の場合、以下の手順でコードを接続します。
- アーステスタ本体のE端子に、被測定接地極(測定対象のアース)に接続するコード(黒または緑)を繋ぎます。
- P端子には、補助接地棒(電圧電極)に接続するコード(黄色)を繋ぎます。
- C端子には、もう一方の補助接地棒(電流電極)に接続するコード(赤色)を繋ぎます。
コードの色と端子の色が一致していることが多いため、それに従って接続すれば間違いは少ないでしょう。接続が完了したら、コードがしっかりと固定されているか、断線していないかなどを確認し、測定前の最終チェックを忘れずに行いましょう。
アーステスタを使った接地抵抗測定の具体的な進め方

接地抵抗測定は、電気設備の安全を確保するために非常に重要な作業です。ここでは、主な測定方法である3極法と2極法、そして測定値の読み取り方について具体的に解説します。
3極法(精密測定)による測定手順
3極法は、最も正確な接地抵抗値を測定できる方法として広く用いられています。
- 準備: アーステスタ本体、測定コード(E、P、C)、補助接地棒2本、ハンマー、メジャー、必要に応じて水を用意します。
- 補助接地棒の設置: 測定対象の接地極(E極)から一直線上に、P極(電圧電極)を約10m、C極(電流電極)をさらに約10m離して打ち込みます。地面が乾燥している場合は、補助接地棒の周囲に水をまいて導電性を高めましょう。
- 配線: アーステスタのE端子を測定対象の接地極に、P端子をP極の補助接地棒に、C端子をC極の補助接地棒にそれぞれ接続します。
- 測定: アーステスタの電源を入れ、測定レンジを設定します。測定ボタンを押して、表示される抵抗値(Ω)を読み取ります。表示が安定しない場合は、補助接地棒の位置を微調整したり、地面の状態を確認したりする工夫が必要です。
この方法では、E極とC極の間に交流電流を流し、E極とP極の間の電位差を測定することで接地抵抗値を算出します。
2極法(簡易測定)による測定手順
2極法は、補助接地棒を打ち込むスペースがない場合や、D種接地などの簡易的な測定に用いられます。
- 準備: アーステスタ本体、測定コード(E、P/C短絡用)、既設の接地極(水道管や建物の金属フレームなど)を用意します。
- 配線: アーステスタのE端子を測定対象の接地極に接続します。P端子とC端子を短絡させ、これを既設の信頼できる接地極(例えば、水道管など)に接続します。
- 測定: アーステスタの電源を入れ、測定レンジを設定し、測定ボタンを押して抵抗値(Ω)を読み取ります。
2極法で測定される値は、測定対象の接地抵抗と、接続した既設の接地極の抵抗値の合計となるため、D種接地(100Ω以下)の基準を満たしているかどうかの確認など、限定的な用途で活用されます。
測定値の読み取り方と注意点
アーステスタの測定値は、デジタル表示式であれば画面に直接数値が表示され、アナログ表示式であれば針の指す目盛りを読み取ります。
測定時にはいくつかの注意点があります。
- 地電圧の影響: 測定箇所に地電圧(大地と大地間の電位差)が存在すると、測定値に誤差が生じる可能性があります。地電圧が3V以上ある場合は、測定を避けるか、地電圧を低くする対策を講じましょう。
- 土壌の状態: 地面が極端に乾燥している、または舗装されている場合は、補助接地棒の接触抵抗が高くなり、正確な測定が難しいことがあります。水をまいたり、補助接地網を利用したりする対策が有効です。
- リード線の配置: 測定コードが他の動力線と平行に接触していると、静電誘導によりノイズが入り、測定誤差の原因となることがあります。リード線は適切な経路を選定し、絡まないように配置しましょう。
- 複数回の測定: 測定値の信頼性を高めるため、同じ場所で複数回測定を行い、平均値を取ることをおすすめします。
これらの注意点を守ることで、より正確で信頼性の高い接地抵抗測定が可能になります。
測定結果の判定:接地抵抗値の基準と安全性の確認

接地抵抗測定で得られた数値は、電気設備の安全性を判断するための重要な根拠となります。測定結果を正しく評価するためには、接地工事の種類に応じた基準値を理解することが不可欠です。
A種、B種、C種、D種接地工事の基準値
電気設備技術基準では、接地工事をその用途と危険度に応じてA種、B種、C種、D種の4種類に分類し、それぞれ異なる接地抵抗値の基準を定めています。
以下に、主な接地工事の種別と基準値を示します。
- A種接地工事: 高圧機器や避雷器などに施される接地工事で、10Ω以下が基準です。高圧機器による感電や災害を防ぐ目的があります。
- B種接地工事: 変圧器の高圧側と低圧側が混触した際の危険を防ぐために、変圧器の低圧側中性点に施される接地工事です。基準値は「150/Ig Ω以下」(Igは1線地絡電流)と計算で求められ、遮断時間により緩和規定があります。
- C種接地工事: 300Vを超える低圧電気機器の金属製外箱などに施される接地工事で、10Ω以下が基準です。ただし、0.5秒以内に電路を自動遮断する装置を設置する場合は500Ω以下に緩和されます。
- D種接地工事: 300V以下の低圧電気機器の金属製外箱などに施される接地工事で、100Ω以下が基準です。C種と同様に、0.5秒以内に電路を自動遮断する装置を設置する場合は500Ω以下に緩和されます。
測定した接地抵抗値が、これらの基準値を満たしているかを確認し、合否を判定することが重要です。
測定値が高かった場合の対処法
もし測定した接地抵抗値が基準値よりも高かった場合、それは電気的な安全性が十分に確保されていない状態を意味します。速やかに適切な対処を行う必要があります。
主な対処法は以下の通りです。
- 接地極の追加・延長: 接地棒の数を増やしたり、より長い接地棒を深く打ち込んだりすることで、大地との接触面積を増やし、接地抵抗値を下げることが期待できます。
- 接地抵抗低減材の使用: 接地極の周囲に接地抵抗低減材(導電性コンクリートなど)を埋設することで、土壌の導電性を高め、接地抵抗値を効果的に下げられます。
- 土壌の改良: 地面が乾燥している場合は、水をまくことでも一時的に抵抗値を下げられますが、根本的な解決にはなりません。土壌の種類によっては、より導電性の高い土に入れ替えるなどの改良が必要な場合もあります。
- 配線の確認: 接地線が断線していたり、接続が緩んでいたりすると、抵抗値が高くなることがあります。配線に異常がないかを確認し、必要に応じて補修しましょう。
これらの対策を講じた後には、再度アーステスタで測定を行い、接地抵抗値が基準値内に収まっていることを必ず確認してください。
アーステスタ使用時の安全対策とよくあるトラブル

アーステスタを使った接地抵抗測定は、電気を扱う作業であるため、常に安全に配慮することが大切です。また、測定中に起こりやすいトラブルとその対策を知っておくことで、スムーズに作業を進められます。
感電事故を防ぐための安全な測定方法
接地抵抗測定は、活線状態(電気が流れている状態)で行うことは基本的に避けるべきです。感電事故を防ぐために、以下の安全な測定方法を徹底しましょう。
- 電源の遮断: 測定対象の電気設備の電源を必ず遮断し、無電圧状態であることを確認してから作業を開始します。
- 保護具の着用: 作業用手袋、安全靴、保護メガネなどの適切な保護具を常に着用します。
- 地電圧の確認: 測定前にアーステスタの地電圧測定機能で、測定箇所に危険な電圧が発生していないかを確認します。地電圧が高い場合は、原因を特定し、解消してから測定を行いましょう。
- リード線の取り扱い: 測定コードは、他の電路や金属部分に触れないように慎重に配置します。また、コードの断線や被覆の損傷がないか、使用前に必ず点検します。
- 複数人での作業: 可能であれば、複数人で作業を行い、万が一の事態に備えて相互に監視し合うことが安全性を高めることにつながります。
これらの対策を徹底することで、感電事故のリスクを最小限に抑え、安全に測定作業を進められます。
測定誤差の原因と対策
接地抵抗測定では、さまざまな要因によって測定誤差が生じることがあります。正確な測定値を得るために、主な原因と対策を理解しておきましょう。
- 地電圧の影響: 測定箇所に迷走電流などによる地電圧が存在すると、測定値に誤差が生じます。アーステスタによっては、地電圧の影響を受けにくい交流電位差計方式を採用しているものもあります。
- 補助接地抵抗の影響: 補助接地棒(P極、C極)の接地抵抗が高すぎると、測定が不安定になったり、エラー表示が出たりすることがあります。地面が乾燥している場合は水をまいたり、補助接地棒を深く打ち込んだりして、接触抵抗を下げましょう。
- リード線の誘導: 測定コードが他の動力線と平行に敷設されていると、電磁誘導や静電誘導によりノイズが入り、測定値が変動することがあります。リード線は動力線から離し、適切な経路で配置することが重要です。
- 土壌の不均一性: 土壌の組成や水分含有量は場所によって異なるため、測定値が安定しないことがあります。複数箇所で測定を行い、平均値を取ることで、より信頼性の高い結果が得られます。
- 測定周波数: 接地抵抗計に内蔵される測定用電源の周波数が商用電源の周波数に近いと、迷走電流との干渉で誤差が生じやすくなります。商用電源とは異なる特定の周波数帯で測定できるアーステスタを選ぶと、より安定した測定が可能です。
これらの原因と対策を把握し、適切な方法で測定を行うことで、信頼性の高い接地抵抗値を得ることができます。
よくある質問

アーステスタはどこで買えますか?
アーステスタは、電気工事材料店、ホームセンターの電気工具コーナー、またはAmazonやモノタロウなどのオンラインストアで購入できます。主要なメーカーとしては、HIOKI(日置電機)、KYORITSU(共立電気計器)、SANWA(三和電気計器)などがあり、様々な種類の製品が販売されています。
アーステスタの校正は必要ですか?
アーステスタは、測定器としての精度を維持するために定期的な校正が推奨されます。特に法的な義務として定められた校正周期はありませんが、多くのメーカーは1年に1回の定期校正を推奨しています。使用頻度や使用環境に応じて、社内規定で校正周期を定めることもできます。
接地抵抗測定はどのくらいの頻度で行うべきですか?
接地抵抗測定の頻度については、法令で明確に定められているわけではありませんが、電気設備の保安点検の一環として、年1回実施されることが一般的です。特に高圧電気設備では、年次点検時に測定が行われます。また、新規設置時や改修工事後、異常が疑われる場合にも測定が必要です。
アーステスタの電池が切れたらどうすればいいですか?
アーステスタの電池が切れた場合は、取扱説明書に記載されている電池の種類と交換方法に従って、新しい電池に交換してください。測定中に電池切れになると、正確な測定ができないだけでなく、機器の故障につながる可能性もあります。予備の電池を用意しておくことをおすすめします。
接地抵抗測定に資格は必要ですか?
一般的に、配電設備以外の接地抵抗測定であれば、特別な資格や免許は必要ありません。しかし、屋内配線の電気設備の絶縁抵抗測定など、測定前に断路器を切る作業が必要な場合は、厚生労働省が定める安全教育を受講した者でなければなりません。安全に作業を行うためには、電気に関する基礎知識と測定器の正しい使い方を習得することが重要です。
まとめ
- アーステスタは電気設備の接地抵抗を測定する機器です。
- 接地抵抗測定は感電や火災事故を防ぐために不可欠です。
- アーステスタには3極法、2極法、クランプ式があります。
- 3極法は精密測定に、2極法は簡易測定に用いられます。
- 測定前には必要な道具を揃え、安全確認を徹底しましょう。
- 補助接地棒はE極からP極、C極を一直線に配置します。
- P極とC極の間隔はそれぞれ10m以上が目安です。
- アーステスタの配線はコードの色と端子を合わせます。
- 測定時は地電圧や土壌の状態に注意が必要です。
- A種、B種、C種、D種接地工事にはそれぞれ基準値があります。
- 測定値が基準より高い場合は接地極の追加や低減材を検討します。
- 感電事故防止のため電源遮断と保護具着用は必須です。
- 測定誤差の原因には地電圧やリード線の誘導があります。
- アーステスタは電気工事材料店やオンラインストアで購入可能です。
- アーステスタの校正は年1回が推奨されます。
- 接地抵抗測定は年1回の定期点検で実施されることが多いです。
