大切に育てているきゅうりの葉が穴だらけになっていたり、実が何者かに食べられていたりすると、本当にがっかりしますよね。その犯人は、もしかしたら「イモムシ」かもしれません。家庭菜園で人気のきゅうりですが、実は多くの害虫に狙われやすい野菜なのです。本記事では、きゅうりに付くイモムシの正体から、農薬を使わない安全な駆除方法、効果的な予防策まで、分かりやすく解説します。この記事を読めば、あなたもイモムシ対策のプロになれるはずです。
まずは敵を知ろう!きゅうりを襲うイモムシの正体と被害

「イモムシ」と一括りに言っても、きゅうりに被害をもたらすものにはいくつかの種類が存在します。まずは、やっかいな害虫の正体を突き止め、その特徴や被害の様子をしっかりと把握することから始めましょう。敵の正体がわかれば、対策も立てやすくなります。
この章では、きゅうりに発生しやすい代表的なイモムシについて、その見分け方と被害の特徴を詳しく解説していきます。
- 葉や実を食い荒らす!代表的なイモムシ3種類
- イモムシの種類別見分け方と被害の特徴
葉や実を食い荒らす!代表的なイモムシ3種類
家庭菜園のきゅうりでよく見かけるイモムシは、主にガの幼虫です。昼間は葉の裏や土の中に隠れていて、夜になると活動を始めるものが多いため、被害が拡大してから気づくこともしばしば。ここでは、特に注意すべき3種類のイモムシを紹介します。
オオタバコガの幼虫
非常に食欲旺盛で、きゅうりだけでなくトマトやナスなど様々な野菜を食害することで知られています。 若い幼虫は葉を食べますが、成長すると果実の中に潜り込んで内部を食い荒らすため、被害が大きくなりやすいのが特徴です。 体色は緑色や褐色など個体差が大きいですが、体表に細い毛が生えている点が見分けるポイントになります。 雌1匹の産卵数が1,000個を超えることもあるほど繁殖力が強く、一度発生するとあっという間に被害が広がる可能性があるため、早期発見・早期駆除が重要です。
ヨトウムシ(夜盗虫)
その名の通り、夜間に活動して葉や新芽を食い荒らす害虫です。 昼間は株元の土の中に隠れているため、姿が見えないのに被害だけが広がっていくという厄介な特徴があります。若い幼虫は集団で葉の裏側を食べるため、葉が白っぽく透けたように見えるのが被害の初期症状です。 成長すると分散し、夜間に葉や茎、時には果実まで猛烈な勢いで食べるようになります。 雑食性で、きゅうり以外にもキャベツやハクサイなどの葉物野菜に大きな被害をもたらします。
ウリノメイガの幼虫
ウリ科の植物を好んで食害することから、この名前がついています。 幼虫はツヤのある緑色で、背中に2本の白い筋があるのが特徴です。 新芽の先端部や葉を糸で綴り合わせて巣を作り、その中に隠れて葉を食べ進めます。 そのため、薬剤が直接かかりにくく、駆除が難しい害虫の一つです。 被害が進むと、葉がボロボロにされるだけでなく、きゅうりの果実に穴を開けて侵入することもあります。
イモムシの種類別見分け方と被害の特徴
それぞれのイモムシの特徴を、表で比較してみましょう。あなたのきゅうりを加害している犯人を特定してみてください。
種類 | 見た目の特徴 | 主な被害場所 | 被害のサイン |
---|---|---|---|
オオタバコガ | 体長約40mm。緑色、褐色など体色の変異が大きい。体表に細かい毛が生えている。 | 葉、茎、花、果実 | 果実に直径5mm程度の穴が開いている。 葉や新芽が食べられている。 |
ヨトウムシ | 体長約40-50mm。緑色、褐色、黒色など様々。夜行性で昼間は土中に潜む。 | 葉、新芽、茎、果実 | 葉の裏が集団で食害され白っぽく見える(若齢幼虫)。葉が穴だらけ、または葉脈を残して食べられている(老齢幼虫)。 |
ウリノメイガ | 体長約20mm。ツヤのある緑色で、背中に2本の白い筋がある。 | 新芽、葉、果実 | 葉が糸で綴られている。 葉の内側から食べられ、穴が開いている。果実に穴が開いている。 |
【農薬を使いたくない方へ】安全にできるイモムシ駆除&予防策7選

「家族が食べる野菜だから、できるだけ農薬は使いたくない」そう考える方は多いのではないでしょうか。幸い、農薬に頼らなくてもイモムシの被害を抑える方法はたくさんあります。ここでは、手軽に始められる安全な駆除・予防策を7つ厳選してご紹介します。
化学薬品を使わないので、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して試すことができます。
- 見つけ次第、手で捕まえるのが一番確実
- 自然由来の力で撃退!木酢液・食酢スプレー
- 虫が嫌がる植物を植える(コンパニオンプランツ)
- 物理的にシャットアウト!防虫ネットの活用
- 天敵の力を借りる自然な防除
- 昔ながらの知恵!草木灰をまく
- キラキラ光るもので寄せ付けない
見つけ次第、手で捕まえるのが一番確実
最も原始的ですが、最も確実で即効性のある方法です。イモムシは比較的大きいので、見つけさえすれば手で取り除くのは難しくありません。特に、被害がまだ少ない初期段階では、この方法が非常に有効です。
イモムシは葉の裏や茎の付け根に隠れていることが多いので、毎日きゅうりの株をよく観察する習慣をつけましょう。 特に、黒や緑のフンが落ちていたら、その真上にイモムシがいる可能性が高いです。 虫を直接触るのに抵抗がある方は、割り箸やピンセットを使うと良いでしょう。捕まえたイモムシは、そのまま放置せずに確実に駆除してください。
自然由来の力で撃退!木酢液・食酢スプレー
木酢液や食酢には、害虫が嫌がる成分が含まれており、忌避効果が期待できます。 木酢液は木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、植物の成長を助ける効果や土壌改良効果もあるとされています。
使用する際は、水で薄めてスプレーボトルに入れ、葉の表裏にまんべんなく散布します。希釈倍率は製品によって異なりますが、一般的に木酢液は200~500倍、食酢は10倍程度が目安です。 効果を持続させるためには、雨が降った後や、週に1~2回程度、定期的に散布するのがおすすめです。ただし、濃度が濃すぎると葉を傷める可能性があるので、規定の倍率を守って使用してください。
虫が嫌がる植物を植える(コンパニオンプランツ)
きゅうりの近くに特定の植物を植えることで、害虫を寄せ付けにくくする「コンパニオンプランツ」という方法があります。 これは、植物同士の相性を利用した自然な害虫対策です。
きゅうりのコンパニオンプランツとして特に有名なのがネギ類(長ネギ、ニラなど)です。 ネギ類が持つ独特の香りを害虫が嫌うため、アブラムシやウリハムシなどを遠ざける効果が期待できます。 また、ネギ類の根に共生する微生物が、きゅうりの「つる割病」などの土壌病害を抑制してくれるという嬉しい効果もあります。 きゅうりの株元にネギを一緒に植えるだけで手軽に始められるので、ぜひ試してみてください。他にも、バジルやマリーゴールドなども害虫忌避効果があるとされています。
物理的にシャットアウト!防虫ネットの活用
イモムシの親であるガの飛来を防ぐために、防虫ネットできゅうりの株全体を覆ってしまうのは非常に効果的な予防策です。 物理的に侵入を防ぐため、産卵自体をさせないようにすることができます。
ネットを選ぶ際は、目の細かさが重要です。オオタバコガやヨトウガなどの比較的大きなガを防ぐには、1mm目合い程度のネットでも効果がありますが、より小さな害虫もまとめて防ぎたい場合は、0.8mm以下の細かい目合いのネットを選ぶと良いでしょう。 ネットをかける際は、支柱を立ててきゅうりの葉にネットが直接触れないように空間を作ることがポイントです。葉に触れていると、その上から産卵されてしまう可能性があります。
天敵の力を借りる自然な防除
畑や庭には、害虫を食べてくれる益虫もたくさん住んでいます。例えば、クモやカマキリ、テントウムシ、アシナガバチなどは、イモムシやその親であるガを捕食してくれる頼もしい味方です。
殺虫剤をむやみに使うと、こうした益虫まで殺してしまい、かえって害虫が増えやすい環境になってしまうことがあります。 多少の虫は気にせず、多様な生き物が生息できる環境を整えることが、結果的に害虫の異常発生を防ぐことに繋がります。農薬を使わない菜園では、こうした天敵の働きを最大限に活用しましょう。
昔ながらの知恵!草木灰をまく
草木灰は、植物を燃やして作られる天然の資材で、カリウムやミネラルを豊富に含んだ肥料として利用されます。それだけでなく、害虫忌避の効果もあるとされ、昔から有機栽培などで活用されてきました。
ウリハムシなどが嫌うとされており、イモムシの親であるガの飛来を減らす効果も期待できます。使い方は簡単で、きゅうりの葉が朝露などで濡れている時に、葉全体に薄く振りかけるだけです。アルカリ性なので、土壌の酸度調整にも役立ちますが、まきすぎると土壌がアルカリ性に傾きすぎる可能性があるので注意が必要です。
キラキラ光るもので寄せ付けない
アブラムシやウリハムシなどの害虫は、キラキラと乱反射する光を嫌う習性があります。 この習性を利用して、害虫をきゅうりに寄せ付けないようにする方法です。
具体的には、シルバーマルチを畑の畝に敷いたり、使わなくなったCD-ROMやアルミホイルを短冊状に切って支柱から吊るしたりします。 特に、植え付け初期の苗が小さい時期は害虫の被害を受けやすいため、この対策は有効です。太陽の光を反射して、害虫の方向感覚を狂わせ、きゅうりに近づきにくくさせます。手軽にできてコストもかからないので、試してみる価値は十分にあります。
どうしても退治したい!農薬を使った確実な駆除方法

イモムシが大量発生してしまい、手作業での駆除では追いつかない場合や、確実な効果を求める場合には、農薬の使用も有効な選択肢となります。農薬と聞くと少し抵抗があるかもしれませんが、正しく使えば安全かつ効果的に害虫を駆除することができます。
ここでは、イモムシに効果のある農薬の選び方から、具体的な商品、そして安全に使うための注意点までを詳しく解説します。
- イモムシに効果的な農薬の選び方
- おすすめの殺虫剤と正しい使い方
- 農薬を使う際の注意点
イモムシに効果的な農薬の選び方
ホームセンターなどに行くと様々な種類の農薬が並んでいて、どれを選べば良いか迷ってしまいますよね。農薬を選ぶ際は、まずラベルをよく確認し、「きゅうり」と「対象害虫(オオタバコガ、ヨトウムシなど)」の両方が記載されているかを必ずチェックしてください。 登録のない作物や害虫に使用することは法律で禁止されています。
また、農薬には様々なタイプがあります。イモムシのようなガの幼虫に特化した「BT剤(バチルス・チューリンゲンシス菌)」は、自然界に存在する細菌を利用した生物農薬で、人間や他の益虫への影響が少なく、有機JAS栽培でも使用が認められているものがあります。 一方で、幅広い害虫に効果がある化学合成農薬もあります。ご自身の栽培スタイルや被害の状況に合わせて選びましょう。
おすすめの殺虫剤と正しい使い方
きゅうりのイモムシ類に効果があり、家庭菜園でも使いやすい農薬をいくつか紹介します。
- アファーム乳剤: オオタバコガやウリノメイガなど、幅広いチョウ目害虫に効果があります。 浸達性があり、葉の中に潜んだ害虫にも効果を発揮します。
- ベネビアOD: ウリノメイガに効果的で、アブラムシやアザミウマなど他の害虫も同時に防除できるのが特徴です。
- グレーシア乳剤: ウリノメイガに対して非常に高い効果が報告されており、散布後に効果を実感しやすい薬剤です。
- プレオフロアブル: ヨトウムシやウリノメイガに効果があります。
これらの農薬を使用する際は、必ず製品ラベルに記載された希釈倍率や使用方法を守ってください。薄めすぎると効果がなく、濃すぎると薬害の原因になります。散布は、風のない穏やかな日に行い、葉の裏までしっかりと薬剤がかかるように丁寧に散布するのがコツです。
農薬を使う際の注意点
農薬を安全に使うためには、いくつかの重要な注意点があります。まず、散布する際はマスク、ゴーグル、長袖・長ズボンを着用し、薬剤が皮膚に付着したり、吸い込んだりしないように保護しましょう。
次に重要なのが、「使用時期」と「使用回数」です。ラベルには「収穫〇日前まで」「〇回以内」といった記載があるので、これを厳守してください。収穫直前に使用すると、残留農薬の基準値を超えてしまう可能性があります。また、同じ農薬を繰り返し使用すると、害虫がその薬剤に対して抵抗性を持ってしまい、効きにくくなることがあります。 系統の異なる複数の農薬をローテーションで使うと、抵抗性の発達を防ぐことができます。
そもそも寄せ付けない!栽培環境を見直す予防のコツ

イモムシの被害に遭ってから対策するのも大切ですが、そもそも害虫が発生しにくい環境を作ることができれば、それに越したことはありません。日頃のちょっとした管理の工夫で、害虫のリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、きゅうりを健康に育て、害虫を寄せ付けないための栽培環境の整え方について、3つの重要なコツをご紹介します。
- 風通しと水はけを良くする
- 雑草はこまめに抜く
- 窒素肥料の与えすぎに注意
風通しと水はけを良くする
風通しが悪く、ジメジメした環境は、病害虫にとって絶好の住処となります。葉が密集しすぎると、湿気がこもってうどんこ病などの病気が発生しやすくなるだけでなく、害虫が隠れる場所も増えてしまいます。
対策として、きゅうりの株間を適切にとり、成長に合わせて下葉や混み合った葉を摘み取る「整枝」を行いましょう。これにより、株全体の風通しと日当たりが良くなります。また、畑の水はけが悪い場合は、畝を高くするなどの工夫をすると、根腐れを防ぎ、きゅうり自体が健康に育つため、病害虫への抵抗力も高まります。
雑草はこまめに抜く
畑やプランターの周りの雑草は、害虫の隠れ家や繁殖場所になります。 特に、アブラムシやコナジラミなどは、まず雑草に寄生し、そこから野菜へと移ってくるケースが少なくありません。イモムシの親であるガも、雑草に産卵することがあります。
きゅうりの株周りはもちろん、畑全体の雑草をこまめに取り除くことで、害虫の発生源を断つことができます。 除草は、害虫対策だけでなく、きゅうりと雑草との間で水分や養分の奪い合いを防ぐ意味でも非常に重要です。手間はかかりますが、こまめな除草が健康なきゅうりを育てるための基本となります。
窒素肥料の与えすぎに注意
野菜を元気に育てようと、ついつい肥料を多めに与えてしまいがちですが、特に窒素成分の多い肥料の与えすぎは逆効果になることがあります。窒素は葉や茎を大きくする働きがありますが、過剰になると植物体が軟弱に育ち、病害虫に対する抵抗力が弱くなってしまうのです。
アブラムシやハダニなどの吸汁性害虫は、窒素過多でアミノ酸が豊富になった柔らかい葉を好みます。 また、オオタバコガの幼虫も窒素過多の株に付きやすいと言われています。 肥料は、パッケージに記載された適量を守り、きゅうりの生育状況を見ながら追肥を行うようにしましょう。バランスの取れた施肥が、丈夫で病害虫に強いきゅうりを育てるコツです。
きゅうりの害虫イモムシに関するよくある質問

イモムシに食べられたきゅうりは食べても大丈夫?
イモムシに一部を食べられてしまっても、食べられた部分とその周辺を大きめに取り除けば、残りの部分は食べても問題ありません。イモムシ自体に毒があるわけではないので、衛生的に気になる部分をカットすれば大丈夫です。ただし、穴が開いてから時間が経ち、腐敗やカビが発生している場合は、安全のために食べるのをやめましょう。
イモムシのフンを見つけたらどうすればいい?
葉の上や地面に黒や緑色の小さな粒(フン)が落ちていたら、それはイモムシがいる確かな証拠です。 フンは、イモムシが近くにいることを教えてくれるサイン。フンを見つけたら、その真上にある葉の裏などを念入りに探し、潜んでいるイモムシを捕殺しましょう。特にヨトウムシは昼間は土の中に隠れているため、株元の土を少し掘り返してみると見つかることがあります。
きゅうりに付く白い小さい虫の正体は何ですか?
きゅうりに付く白い小さい虫は、コナジラミである可能性が高いです。 体長1~2mm程度の小さな虫で、葉を揺らすと白い粉のように一斉に飛び立ちます。葉の裏に寄生して汁を吸い、植物の生育を妨げるだけでなく、ウイルス病を媒介することもある厄介な害虫です。乾燥した環境を好むため、こまめに葉水を与えて湿度を保つことが予防に繋がります。
イモムシ以外のきゅうりの害虫には何がいますか?
きゅうりにはイモムシ以外にも多くの害虫が発生します。代表的なものには、オレンジ色の甲虫「ウリハムシ」、葉の汁を吸う「アブラムシ」や「ハダニ」、葉に白い筋状の絵を描く「ハモグリバエ」、ウイルス病を媒介する「アザミウマ」などがいます。 それぞれの害虫に合わせた対策が必要です。
まとめ

- きゅうりのイモムシは主にガの幼虫。
- 代表的なのはオオタバコガ、ヨトウムシ、ウリノメイガ。
- オオタバコガは実の中に潜り込む。
- ヨトウムシは夜に活動し葉を暴食する。
- ウリノメイガは葉を綴って巣を作る。
- 農薬を使わない駆除は手での捕殺が基本。
- 木酢液や食酢スプレーは忌避効果が期待できる。
- コンパニオンプランツとしてネギ類が有効。
- 防虫ネットで成虫の飛来と産卵を防ぐ。
- 農薬は「きゅうり」と対象害虫の登録を確認。
- BT剤は益虫への影響が少ない生物農薬。
- 農薬使用時は使用時期と回数を厳守する。
- 風通しを良くし、病害虫の発生を防ぐ。
- 畑の雑草はこまめに抜き、隠れ家をなくす。
- 窒素肥料の与えすぎは害虫を呼ぶ原因になる。