職場で「〇〇ちゃん」と呼ばれることに、少しモヤモヤした経験はありませんか? 親しみを込めて呼ばれているのかもしれませんが、馴れ馴れしいと感じたり、子供扱いされているように感じたりすることもあるでしょう。本記事では、職場で「ちゃん付け」する人・される人の心理や、それがもたらす影響、そして不快に感じた場合の対処法まで、詳しく解説していきます。
職場で「ちゃん付け」、あなたは気になりますか?
職場における「ちゃん付け」の是非については、様々な意見があります。一概に良い・悪いと判断できるものではなく、その職場の文化や人間関係、そして個人の受け止め方によって大きく左右されるデリケートな問題と言えるでしょう。
- 「ちゃん付け」は失礼?それとも親しみの表れ?
- 会社の文化や雰囲気によって許容度は変わる
- 年代や性別による受け止め方の違い
「ちゃん付け」は失礼?それとも親しみの表れ?
「ちゃん付け」に対する受け止め方は、まさに人それぞれです。親しみを込めた呼び方だとポジティブに捉える人がいる一方で、ビジネスマナーとして不適切、あるいは馴れ馴れしいと感じて不快感を覚える人も少なくありません。 一般的には、職場では「さん」付けが基本マナーとされており、特に公の場やフォーマルな場面での「ちゃん付け」は避けるべきだと考えられています。 しかし、関係性が近しい同僚同士や、非常にフランクな社風の会社などでは、コミュニケーションを円滑にするための愛称として受け入れられている場合もあります。
重要なのは、呼ぶ側がどのような意図を持っていたとしても、呼ばれる側がどう感じるかという点です。親しみのつもりでも、相手が不快に感じてしまえば、それは良好なコミュニケーションとは言えません。
会社の文化や雰囲気によって許容度は変わる
「ちゃん付け」が許容されるかどうかは、その会社が持つ独自の文化や雰囲気にも大きく影響されます。例えば、歴史のある堅い業界の企業や、上下関係が厳しい組織では、「ちゃん付け」はマナー違反と見なされる可能性が高いでしょう。役職名や「さん」付けで呼ぶことが徹底されている場合が多いです。一方で、ITベンチャーやアパレル業界など、比較的フラットで自由な社風の企業では、ニックネームや「ちゃん付け」がコミュニケーションの一環として定着していることもあります。 このような環境では、「ちゃん付け」がチームの一体感を高めたり、親密な雰囲気を作ったりする効果を持つことも考えられます。
ただし、たとえフランクな社風であっても、TPOをわきまえることは重要です。社内での打ち合わせと、社外のクライアントとの会議では、適切な呼び方が異なることを理解しておく必要があります。
年代や性別による受け止め方の違い
「ちゃん付け」に対する感覚は、年代や性別によっても異なる傾向が見られます。一般的に、年配の世代ほど、職場での「ちゃん付け」に対して違和感や不快感を抱きやすいと言われています。 これは、従来のビジネスマナーが強く意識されているためと考えられます。若い世代では、比較的抵抗感が少ない人もいますが、それでも「子供扱いされている」「対等に見られていない」と感じる人もいます。
また、男性から女性への「ちゃん付け」は、セクハラと受け取られるリスクが他のケースよりも高い傾向にあります。 呼ぶ側に性的な意図がなくても、呼ばれた女性が不快に感じたり、性的な意味合いを感じ取ってしまったりする可能性があるため、特に注意が必要です。逆に、女性から男性への「ちゃん付け」も、相手によっては馴れ馴れしいと感じられることがあります。
なぜ「ちゃん付け」するの?隠された5つの心理
では、なぜ職場で「ちゃん付け」をする人がいるのでしょうか。その背景には、様々な心理が隠されていると考えられます。一見、親しみを込めているように見えても、実は別の意図が潜んでいる可能性も否定できません。
- ① 親近感や好意を示したい
- ② 相手をコントロールしたい・見下したい
- ③ 場の雰囲気を和ませたい
- ④ 無意識の癖・習慣
- ⑤ 相手を子供扱いしている
① 親近感や好意を示したい
最も一般的で、ポジティブな理由として考えられるのが、相手との距離を縮めたい、親しくなりたいという気持ちの表れです。 特に、新入社員や若手社員に対して、早く職場に馴染んでほしい、可愛がりたいといった思いから「ちゃん付け」で呼ぶことがあります。この場合、呼ぶ側は相手に対して好意的な感情を抱いており、フレンドリーな関係を築きたいと考えていることが多いでしょう。悪気がないケースがほとんどですが、相手がどう受け取るかは別問題であるため、注意が必要です。
また、同僚同士で、仕事上の関係だけでなく、プライベートでも親しい間柄の場合、その延長線上で職場で「ちゃん付け」をしてしまうこともあります。この場合も、基本的には親愛の情を示すための呼び方と言えます。
② 相手をコントロールしたい・見下したい
一方で、ネガティブな心理が隠されているケースもあります。それは、相手を自分より下の立場だと認識し、コントロールしたいという支配欲の表れです。 「ちゃん」という呼び方は、本来子供に対して使われることが多いため、相手を無意識に、あるいは意図的に子供扱いし、見下すニュアンスを含んでしまうことがあります。特に、上司が部下に対して「ちゃん付け」をする場合、この心理が働いている可能性も考えられます。相手を対等なビジネスパーソンとして見ていない、というメッセージとして受け取られかねません。
このような「ちゃん付け」は、パワハラと見なされるリスクも伴います。相手が不快感を表明しているにも関わらず続けたり、他の人には「さん」付けなのに特定の人だけ「ちゃん付け」したりする場合は、注意が必要です。
③ 場の雰囲気を和ませたい
チームのムードメーカー的な存在の人や、場の空気を読んで行動するタイプの人は、職場の雰囲気を和ませたり、緊張をほぐしたりする目的で「ちゃん付け」を使うことがあります。特に、堅苦しい会議の後や、プロジェクトが佳境でピリピリしている時などに、あえてフランクな呼び方をすることで、心理的な距離を縮め、リラックスした雰囲気を作ろうとしているのかもしれません。この場合、特定の個人への感情というよりは、チーム全体への配慮からくる行動である可能性があります。
ただし、これも良かれと思ってやったことが裏目に出る可能性はあります。場の空気を読んだつもりが、逆に馴れ馴れしい、TPOをわきまえていない、と受け取られてしまうリスクも考慮すべきでしょう。
④ 無意識の癖・習慣
特に深い意図はなく、単なる癖や習慣として「ちゃん付け」をしてしまう人もいます。 以前の職場や、学生時代のサークルなどで「ちゃん付け」が当たり前の環境にいた場合、その感覚が抜けずに無意識に使ってしまうケースです。また、プライベートで子供や年下の人に対して「ちゃん付け」で呼ぶことが習慣になっている人が、職場でもつい同じように呼んでしまうことも考えられます。この場合、本人に悪気は全くないことがほとんどですが、職場という環境には不適切である可能性を自覚する必要があります。
もし、無意識の癖で「ちゃん付け」をしてしまっている自覚があるなら、意識して「さん」付けに直す努力が求められます。周りの人に指摘してもらうのも良いかもしれません。
⑤ 相手を子供扱いしている
②の「見下したい」という心理と近いですが、より「保護欲」や「未熟さ」を感じている場合に「ちゃん付け」をすることがあります。特に、新入社員や経験の浅い若手社員に対して、「まだ一人前ではない」「自分が面倒を見てあげなければ」という意識から、無意識に子供扱いするような呼び方になってしまうケースです。 悪気はないかもしれませんが、呼ばれた側は「いつまでも半人前扱いされている」「対等に見られていない」と感じ、モチベーションの低下につながる可能性もあります。
部下や後輩の成長を願うのであれば、たとえ未熟に見えても、一人のビジネスパーソンとして尊重し、「さん」付けで呼ぶのが適切なコミュニケーションと言えるでしょう。
「ちゃん付け」される側の本音は?様々な心理パターン
職場で「ちゃん付け」された時、どのように感じるかは人によって大きく異なります。嬉しいと感じる人もいれば、強い不快感を覚える人もいます。ここでは、「ちゃん付け」される側の様々な心理パターンを見ていきましょう。
- 嬉しい・親しみを感じる
- 不快・嫌だと感じる(馴れ馴れしい、子供扱いされている等)
- 戸惑う・どう反応すればいいか分からない
- 相手や状況によって受け止め方が変わる
嬉しい・親しみを感じる
特に、入社したばかりで職場に馴染めていない時や、尊敬している上司・先輩から「ちゃん付け」で呼ばれると、距離が縮まったように感じて嬉しいと思う人もいます。 チームの一員として受け入れられた、可愛がられていると感じ、安心感や所属意識が高まることもあります。また、元々フレンドリーな性格の人や、「ちゃん付け」に抵抗がない人は、特に気にしない、あるいはむしろ親しみを込めて呼ばれていると感じてポジティブに受け止めるでしょう。
ただし、嬉しいと感じる場合でも、TPOによっては使い分けてほしいと思うこともあるかもしれません。例えば、社内では良くても、取引先の前では「さん」付けにしてほしい、といった具合です。
不快・嫌だと感じる(馴れ馴れしい、子供扱いされている等)
一方で、「ちゃん付け」に対して明確な不快感を抱く人も少なくありません。 その理由は様々ですが、主に以下のようなものが挙げられます。
- 馴れ馴れしいと感じる: 十分な信頼関係が築けていない相手からの「ちゃん付け」は、プライベートな領域に踏み込まれたようで不快に感じることがあります。
- 子供扱いされているように感じる: 特に、ある程度の年齢や経験を重ねているのに「ちゃん付け」されると、対等な大人として見られていない、見下されていると感じて屈辱感を覚えることがあります。
- プロ意識に欠けると感じる: 職場は仕事をする場であり、馴れ合いは好ましくないと考えている人にとっては、「ちゃん付け」はプロ意識に欠ける行為と映ります。
- 公私混同だと感じる: 仕事上の関係とプライベートな関係は区別したいと考えている人にとって、「ちゃん付け」は公私混同であり、不適切だと感じられます。
- セクハラだと感じる: 特に異性からの「ちゃん付け」に対して、性的なニュアンスを感じ取り、不快感や嫌悪感を抱くことがあります。
このように、不快に感じる理由は多岐にわたり、個人の価値観や経験によって様々です。
戸惑う・どう反応すればいいか分からない
嬉しいわけでも、明確に不快なわけでもないけれど、どう反応したら良いか分からず戸惑ってしまうという人もいます。 特に、上司や先輩など、立場が上の人から「ちゃん付け」された場合、本当は嫌だと感じていても、それを表に出していいものか、波風を立ててしまうのではないかと悩んでしまうことがあります。笑顔で受け流すべきか、それともやんわりと訂正をお願いすべきか、対応に困ってしまうのです。
また、周りの同僚が「ちゃん付け」で呼ばれていないのに、自分だけが呼ばれている場合なども、「なぜ自分だけ?」と疑問に思い、戸惑いを感じることがあります。
相手や状況によって受け止め方が変わる
「ちゃん付け」に対する受け止め方は、誰から、どのような状況で呼ばれるかによって変わることもあります。例えば、普段から仲の良い同期からの「ちゃん付け」は気にならなくても、あまり親しくない上司からの「ちゃん付け」は不快に感じる、といった具合です。また、社内のリラックスした場面では許容できても、クライアントの前や公式な会議の場での「ちゃん付け」は不適切だと感じる、という人も多いでしょう。
このように、人間関係やTPOによって、「ちゃん付け」の許容範囲は変化します。呼ぶ側は、こうした状況による受け止め方の違いも考慮する必要があります。
要注意!職場での「ちゃん付け」がハラスメントになる可能性
親しみを込めたつもりの「ちゃん付け」が、意図せず相手を深く傷つけ、ハラスメントと受け取られてしまうリスクがあることを認識しておく必要があります。特に職場という環境においては、パワーバランスや性別が絡むことで、問題がより深刻化する可能性があります。
- セクハラやパワハラと見なされるケースとは?
- 特に注意すべき関係性(上司と部下、異性間など)
- 相手の受け止め方が重要であることを理解する
セクハラやパワハラと見なされるケースとは?
「ちゃん付け」がハラスメントに該当するかどうかは、個別の状況によって判断されますが、一般的に以下のようなケースでは、セクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)と見なされる可能性が高まります。
- 相手が明確に不快感を示しているにも関わらず、繰り返し「ちゃん付け」をする。
- 他の従業員は「さん」付けなのに、特定の人だけを「ちゃん付け」で呼ぶ(特に異性に対して)。
- 「ちゃん付け」をやめてほしいと伝えたことで、不利益な扱い(無視、仕事を与えないなど)を受ける。
- 性的な言動や他のハラスメント行為と合わせて「ちゃん付け」が行われる。
- 役職や立場を利用して、相手が嫌がっていることを知りながら「ちゃん付け」を強要する。
重要なのは、呼ぶ側の意図ではなく、呼ばれる側がどう感じたかがハラスメントの判断基準において重視されるという点です。 「そんなつもりはなかった」という言い訳は通用しない可能性があります。
特に注意すべき関係性(上司と部下、異性間など)
職場における「ちゃん付け」は、当事者間の関係性によって、ハラスメントと受け取られるリスクの度合いが変わってきます。特に注意が必要なのは以下の関係性です。
- 上司から部下へ: 立場の優位性を利用したパワハラと見なされるリスクがあります。 部下は嫌だと感じていても、立場上、それを言い出しにくい状況にあることを理解する必要があります。
- 男性から女性へ: セクハラと受け取られるリスクが最も高いケースです。 呼ぶ側に性的な意図がなくても、女性側が不快感や屈辱感を覚える可能性があります。「〇〇ちゃん、お茶汲んできて」のような、性別役割分業を想起させるような文脈で使われると、さらに問題は深刻になります。
- 正社員から非正規社員(派遣社員、アルバイトなど)へ: 雇用形態の違いによるパワーバランスが存在する場合があり、パワハラと受け取られる可能性があります。
これらの関係性においては、特に慎重な配慮が求められ、基本的には「さん」付けで呼ぶことが無難であり、望ましいと言えるでしょう。
相手の受け止め方が重要であることを理解する
繰り返しになりますが、ハラスメントの問題において最も重要なのは、行為を受けた側がどのように感じたかという点です。 たとえ呼ぶ側に親しみを込める意図しかなかったとしても、相手がそれを不快に感じ、業務に支障が出たり、精神的な苦痛を感じたりすれば、ハラスメントと認定される可能性があります。「自分は大丈夫だったから」「他の人も気にしていなかったから」といった考え方は通用しません。
コミュニケーションは、相手があって初めて成り立つものです。自分の価値観だけで判断せず、相手の反応をよく観察し、もし相手が嫌がっている素振りを見せたら、すぐにその呼び方を改める柔軟性が求められます。職場における円滑な人間関係を築くためには、相手への配慮と想像力が不可欠です。
職場で「ちゃん付け」されて困った時の対処法
もしあなたが職場で「ちゃん付け」されることに不快感や戸惑いを覚えていて、やめてほしいと思っているなら、いくつか対処法があります。我慢し続ける必要はありません。状況に合わせて、適切な方法を選びましょう。
- まずは自分の気持ちを整理する
- やめてほしいと伝える際の具体的なフレーズ例
- 直接言いにくい場合の伝え方(第三者を介す、メールなど)
- 上司や人事部・相談窓口に相談する
- 職場のルールや就業規則を確認する
まずは自分の気持ちを整理する
具体的な行動を起こす前に、まずは自分の気持ちを冷静に整理してみましょう。「ちゃん付け」に対して、具体的にどのような感情を抱いているのでしょうか?
- 単に違和感があるだけなのか?
- 明確に不快感や嫌悪感があるのか?
- 子供扱いされているようで悲しいのか?
- 馴れ馴れしいと感じてイライラするのか?
- ハラスメントだと感じているのか?
自分の感情を明確にすることで、相手にどのように伝えたいのか、どの程度の対応を求めるのかが見えてきます。また、「誰からの」「どんな状況での」ちゃん付けが特に嫌なのかを特定することも有効です。全ての「ちゃん付け」が嫌なのか、特定の相手だけなのかによって、取るべき対応も変わってきます。
やめてほしいと伝える際の具体的なフレーズ例
相手に直接「ちゃん付け」をやめてほしいと伝えるのは勇気がいることですが、関係性を悪化させずに伝えるための工夫は可能です。感情的にならず、冷静に、かつ具体的に伝えることがポイントです。
以下にフレーズ例をいくつか紹介します。
- シンプルにお願いする:
「〇〇さん、すみません、できれば今後は『さん』付けで呼んでいただけると嬉しいです。」 - 理由を添えて伝える:
「〇〇さん、申し訳ないのですが、『ちゃん付け』だと少し子供扱いされているように感じてしまうので、『さん』付けでお願いできますか?」
「職場なので、けじめとして『さん』付けで呼び合いたいと思っています。ご協力いただけますか?」 - ユーモアを交えて伝える(相手との関係性による):
「〇〇さん、もう『ちゃん』付けは卒業させてください~(笑)これからは『さん』でお願いします!」 - 周りの状況を引き合いに出す:
「周りの皆さんも『さん』付けなので、私も『さん』で呼んでいただけるとありがたいです。」
伝える際は、相手への配慮を忘れずに、「申し訳ないのですが」「恐れ入りますが」といったクッション言葉を使うと、より柔らかい印象になります。また、二人きりのタイミングを見計らって伝えるなど、伝える場所やタイミングにも配慮しましょう。
直接言いにくい場合の伝え方(第三者を介す、メールなど)
相手が上司であったり、直接言うことで関係が悪化しそうだと感じたりする場合は、間接的な方法で伝えることも検討しましょう。
- 信頼できる同僚や先輩に相談する: 状況を理解してくれる同僚や先輩に相談し、その人から相手に伝えてもらう方法です。角が立ちにくい場合があります。
- メールやチャットで伝える: 直接言うよりも、文章で伝える方が冷静に、かつ正確に気持ちを伝えられる場合があります。「いつもお世話になっております。お願いがありご連絡いたしました。大変恐縮なのですが、今後は『さん』付けで呼んでいただけますでしょうか。職場での呼称ですので、そのようにしていただけると幸いです。」のように、丁寧な文章を心がけましょう。
- 他の人がいる前であえて「さん」付けで呼び返す: 相手が自分を「ちゃん付け」で呼んだ際に、自分はその相手を意識的に「〇〇さん」と呼ぶことで、暗に「さん」付けを促す方法です。ただし、気づいてもらえない可能性もあります。
どの方法を選ぶにしても、相手を非難するような伝え方にならないよう注意が必要です。
上司や人事部・相談窓口に相談する
直接伝えても改善されない場合や、相手が上司で直接言いにくい場合、あるいは「ちゃん付け」がハラスメントに該当すると感じる場合は、さらに上の上司や、会社の人事部、ハラスメント相談窓口などに相談しましょう。 相談する際は、いつ、誰から、どのような状況で「ちゃん付け」され、それに対して自分がどう感じているのか、そして可能であれば、具体的な記録(日時、場所、言われた内容など)をまとめておくと、状況を説明しやすくなります。
会社には、従業員が安全かつ快適に働ける環境を提供する義務(職場環境配慮義務)があります。ハラスメントが疑われる場合は、会社として適切な対応を取る責任がありますので、一人で抱え込まずに相談することが重要です。
職場のルールや就業規則を確認する
会社の就業規則や服務規律、あるいはハラスメント防止規定などに、従業員同士の呼び方に関するルールが定められている場合があります。もし、「従業員は互いに『さん』付けで呼ぶこと」といった規定があれば、それを根拠に「ちゃん付け」をやめてもらうよう伝えやすくなります。また、ハラスメントに関する規定があれば、どのような行為がハラスメントに該当するのか、相談窓口はどこか、といった情報を確認できます。
社内規定を確認することは、自分の主張の正当性を補強したり、適切な相談先を見つけたりする上で役立ちます。一度、自社のルールを確認してみることをお勧めします。
「ちゃん付け」以外の適切な呼び方とは?職場のマナーを確認
職場での「ちゃん付け」問題を避けるためには、そもそもどのような呼び方が適切なのか、基本的なビジネスマナーを再確認しておくことが大切です。相手に敬意を払い、円滑なコミュニケーションを図るための基本を押さえましょう。
- 基本は「さん」付け
- 役職者への呼び方
- 相手との関係性に応じた使い分け
基本は「さん」付け
日本のビジネスシーンにおける最も基本的で、かつ無難な敬称は「さん」です。 これは、相手の性別や年齢、役職、社内外を問わず、幅広く使うことができる汎用性の高い敬称です。「さん」付けで呼ぶことは、相手を一人の対等な個人として尊重しているという意思表示になります。特別な理由がない限り、まずは「さん」付けで呼ぶことを徹底すれば、呼び方に関するトラブルの多くは避けることができるでしょう。
たとえ相手が年下や後輩であっても、「さん」付けで呼ぶのが基本マナーです。「呼び捨て」や「君付け」なども、相手との関係性や会社の文化によっては許容される場合もありますが、一般的には避けた方が無難です。
役職者への呼び方
相手に役職がある場合は、「役職名」で呼ぶか、「名字+役職名」で呼ぶのが一般的です。 例えば、「部長」「〇〇部長」といった呼び方です。ただし、社内文化によっては「〇〇さん」と呼ぶことが推奨されている場合もありますので、周りの状況を見て判断しましょう。「〇〇部長様」のように、役職名に「様」を付けるのは二重敬語となり、誤りですので注意が必要です。
社外の人に対して自社の役職者について話す場合は、「部長の〇〇」のように、役職名を先に付けて呼び捨てにするのが基本です。
役職者への呼び方は、社内外や文脈によって使い分ける必要があり、少し複雑に感じるかもしれませんが、基本的なルールを押さえておくことが大切です。
相手との関係性に応じた使い分け
基本は「さん」付けですが、相手との関係性が深まるにつれて、より親しみを込めた呼び方に変化していくこともあります。例えば、非常に仲の良い同期や、長年の付き合いがある同僚などに対しては、本人の許可を得た上でニックネームや「ちゃん付け」で呼ぶことが許容される場合もあるでしょう。しかし、これはあくまでプライベートな関係性の延長線上であり、職場という公の場では、たとえ親しい間柄であってもTPOをわきまえ、「さん」付けを基本とすることが望ましいと言えます。
重要なのは、相手がその呼び方を快く思っているかどうかを確認することです。自分が親しみを込めているつもりでも、相手はそう思っていないかもしれません。相手の反応を見たり、直接確認したりするなど、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
【FAQ】職場での「ちゃん付け」に関するよくある質問
Q. 男性から女性への「ちゃん付け」は特に問題になりやすいですか?
はい、その傾向があります。呼ぶ側に性的な意図がなくても、呼ばれた女性が不快感や屈辱感、あるいは性的なニュアンスを感じ取ってしまう可能性があり、セクハラと見なされるリスクが他のケースよりも高いと言えます。 職場では、性別に関わらず「さん」付けを基本とするのが最も安全で適切な対応です。
Q. 同期同士の「ちゃん付け」は許されますか?
同期同士であれば、比較的許容されやすい傾向にはあります。特に、入社当初からお互いに「ちゃん付け」で呼び合っているような場合は、親密さの表れとして定着していることもあるでしょう。しかし、これもTPOをわきまえることが重要です。公の場や上司・他部署の人がいる前では「さん」付けにするなど、状況に応じた使い分けが求められます。また、同期の中にも「ちゃん付け」を好まない人がいる可能性も考慮し、相手の意向を確認するのが望ましいでしょう。
Q. 上司に「ちゃん付け」されたらどうすればいいですか?
上司からの「ちゃん付け」は、パワハラと受け取られる可能性もあり、部下としては対応に悩むことが多いでしょう。まずは、本記事で紹介した「やめてほしいと伝える際の具体的なフレーズ例」を参考に、二人きりのタイミングで丁寧にお願いしてみるのが第一歩です。それでも改善されない場合や、直接言いにくい場合は、さらに上の上司や人事部、ハラスメント相談窓口に相談することを検討してください。 我慢し続ける必要はありません。
Q. 「ちゃん付け」を注意したら関係が悪くなりませんか?
その可能性はゼロではありません。だからこそ、伝え方には細心の注意が必要です。相手を非難するのではなく、あくまで「お願い」という形で、丁寧かつ冷静に伝えることが大切です。クッション言葉を使ったり、理由を添えたりすることで、相手も受け入れやすくなる可能性があります。それでも関係が悪化することを恐れる場合は、信頼できる第三者に相談したり、間接的な方法で伝えたりすることも検討しましょう。
Q. 相手に悪気がない場合でも、やめてほしいと伝えていいですか?
はい、伝えて問題ありません。たとえ相手に悪気がなく、親しみを込めているつもりだったとしても、あなたが不快に感じているのであれば、それは改善されるべきです。重要なのはあなたの気持ちです。「悪気がないのは分かっているのですが」「申し訳ないのですが」といった前置きをしつつ、正直な気持ちを丁寧に伝えましょう。相手も、あなたが嫌がっていると知れば、呼び方を改めてくれる可能性が高いです。
Q. 逆に部下や後輩を「ちゃん付け」で呼ぶのはどうですか?
避けるべきです。たとえ親しみを込めたつもりでも、相手は「子供扱いされている」「見下されている」と感じる可能性があります。 部下や後輩であっても、一人のビジネスパーソンとして尊重し、「さん」付けで呼ぶのが基本マナーです。良好な信頼関係を築くためにも、適切な呼び方を心がけましょう。
Q. 派遣社員やアルバイトに対する「ちゃん付け」は?
これも避けるべきです。正社員から派遣社員やアルバイトに対して「ちゃん付け」をすることは、雇用形態による立場の違いを利用したパワハラと受け取られる可能性があります。雇用形態に関わらず、全ての従業員に対して敬意を払い、「さん」付けで呼ぶようにしましょう。
まとめ
- 職場での「ちゃん付け」は賛否両論あり、会社の文化や個人の受け止め方による。
- 一般的には「さん」付けがビジネスマナーの基本。
- 「ちゃん付け」する心理には、親近感、支配欲、無意識など様々。
- 「ちゃん付け」される側も、嬉しい、不快、戸惑いなど反応は多様。
- 特に上司から部下、男性から女性への「ちゃん付け」は注意が必要。
- 相手が不快に感じれば、ハラスメント(セクハラ・パワハラ)になる可能性がある。
- ハラスメントの判断は、行為者の意図ではなく受け手の感情が重視される。
- 「ちゃん付け」が嫌な場合は、自分の気持ちを整理することが第一歩。
- やめてほしいと伝える際は、冷静に、丁寧に、具体的なフレーズで。
- 直接言いにくい場合は、第三者やメールなど間接的な方法も検討する。
- 改善されない、ハラスメントだと感じる場合は、上司や人事部に相談する。
- 会社の就業規則やハラスメント規定を確認することも有効。
- 役職者には「役職名」か「名字+役職名」で呼ぶのが基本。
- 親しい間柄でも、職場ではTPOをわきまえ「さん」付けを心がける。
- 部下や後輩、非正規社員に対しても敬意を払い「さん」付けで呼ぶ。