映画史に燦然と輝く二大スター、勝新太郎演じる盲目の剣客「座頭市」と、三船敏郎演じる孤高の浪人「用心棒」。この二つの伝説的なキャラクターがスクリーンで激突する夢の企画が、1970年公開の映画『座頭市と用心棒』で実現しました。本記事では、この記念碑的な作品の魅力や制作背景、そして多くの観客を惹きつけた二人の対決の真実に迫ります。
ポチップ
ポチップ
ポチップ
映画『座頭市と用心棒』とは？二大スター共演の背景
『座頭市と用心棒』は、1970年1月15日に公開された日本映画です。この作品は、勝新太郎が主演を務める「座頭市」シリーズの第20作目にあたります。監督は、テンポの良い演出で知られる岡本喜八が務めました。脚本は岡本喜八と吉田哲郎が共同で執筆し、子母沢寛の原作を基に物語が展開されます。
本作の最大の注目点は、なんといっても勝新太郎と三船敏郎という日本映画界を代表する二大スターの共演でした。当時の映画業界には「5社協定」と呼ばれる俳優とスタッフの専属性を定めた取り決めがあり、異なる会社のスターが共演することは極めて困難だったのです。しかし、勝新太郎が設立した勝プロダクションが本作を製作し、大映が配給することで、この夢のような企画が実現しました。三船敏郎は当初、友情出演程度のオファーだと思っていたそうですが、台本のタイトルを見て驚いたという逸話も残っています。
作品概要と基本情報
『座頭市と用心棒』は、勝プロダクションが製作し、大映が配給した作品です。この映画は、座頭市シリーズにおいて大映が配給した最後の作品でもあります。音楽は、数々の特撮映画音楽で知られる伊福部昭が担当し、作品に重厚な彩りを加えています。上映時間は116分とされていますが、資料によっては79分と記載されているものもあります。
主要キャストは以下の通りです。
- 座頭市：勝新太郎
- 用心棒・佐々大作：三船敏郎
- 梅乃：若尾文子
- 小仏の政五郎：米倉斉加年
- 九頭竜・跡部九内：岸田森
- 脇屋陣三郎：神山繁
- 兵六爺さん：嵐寛寿郎
時代劇の枠を超えた「夢の対決」が実現した理由
当時の日本映画界は、大手5社による専属契約制度「5社協定」が敷かれており、他社の俳優が作品に出演することは非常に困難でした。しかし、勝新太郎は自らのプロダクションである勝プロダクションを設立し、この協定の枠を超えて映画製作を行うことを目指しました。その結果、東宝の看板スターであった三船敏郎を招聘することが可能となり、「座頭市」と「用心棒」という二大ヒーローの共演が実現したのです。
この企画は、当時の映画ファンや業界関係者の間で大きな話題となり、「ゴジラVSコング」や「エイリアンVSプレデター」のようなクロスオーバー作品として、公開前から高い期待が寄せられました。結果として、本作は座頭市シリーズの中で最高の興行収入を記録する大ヒット作となりました。
盲目の居合斬り「座頭市」と孤高の剣客「用心棒」の魅力
『座頭市と用心棒』は、それぞれのキャラクターが持つ独自の魅力が最大限に引き出された作品です。勝新太郎演じる座頭市は、盲目でありながらも驚異的な居合の腕前を持つ、義理人情に厚い渡世人。一方、三船敏郎演じる用心棒・佐々大作は、多くを語らず、飄々としていながらも圧倒的な剣の腕を持つ孤高の剣客です。
勝新太郎が演じる座頭市のキャラクター性
勝新太郎が演じる座頭市は、その独特の歩き方や仕草、そして一瞬にして敵を斬り伏せる居合の美学で多くのファンを魅了してきました。盲目というハンディキャップを逆手に取った戦い方は、観る者に強い印象を与えます。彼は弱きを助け、強きを挫く正義感の持ち主ですが、同時に人を斬ることに苦悩する人間的な深さも持ち合わせています。本作では、平和を求めて訪れた村が荒廃している現状に心を痛め、再び刀を抜くことになります。
三船敏郎が演じる用心棒・佐々大作の存在感
三船敏郎が演じる用心棒・佐々大作は、黒澤明監督の『用心棒』に登場する桑畑三十郎を彷彿とさせるキャラクターです。多くを語らず、ニヒルな笑みを浮かべながらも、その眼光の鋭さと剣の腕前は圧倒的です。彼は金で雇われる浪人でありながらも、どこか達観した視点を持ち、悪党たちの間で立ち回りながら、自らの正義を貫こうとします。三船敏郎の存在感は、スクリーンに登場するだけで場の空気を一変させるほどの迫力があります。
二人のヒーローが織りなす化学反応
座頭市と用心棒は、それぞれ異なる背景と哲学を持つヒーローですが、本作では金塊を巡る争いに巻き込まれる中で、一時的に協力関係を築きます。盲目と孤高、動と静、義理と打算。対照的な二人が互いの実力を認め合い、時に反発しながらも、共通の敵に立ち向かう姿は、観客に独特の化学反応と興奮をもたらします。彼らが酒を酌み交わし、互いを「バケモノ」「ケダモノ」と評するシーンは、二人の関係性を象徴する名場面と言えるでしょう。
『座頭市と用心棒』のあらすじと見どころ
『座頭市と用心棒』は、単なる二大スターの共演に留まらず、岡本喜八監督ならではの演出と、金塊を巡る複雑な人間ドラマが織りなす見どころ満載の作品です。
金塊を巡る欲望と裏切りの物語
物語は、座頭市が3年ぶりに訪れた蓮華沢の里が、やくざの小仏一家によって荒廃していることから始まります。この村では、小仏一家と生糸問屋の烏帽子屋弥助が、莫大な金塊（砂金）の隠し場所を巡って激しく対立していました。小仏の政五郎は、座頭市を斬るために用心棒の浪人・佐々大作を雇いますが、市と佐々はお互いの実力を認め合い、やがて金塊のありかを探るために一時的に手を組むことになります。
しかし、この金塊を巡る争いには、公儀隠密である九頭竜・跡部九内や、烏帽子屋の息子である御金改役・後藤三右衛門など、様々な思惑を持つ人物が絡み合います。欲望が渦巻く中で、裏切りや殺戮が繰り返され、登場人物たちの人間性が浮き彫りになっていきます。
岡本喜八監督が描くウエスタン風味のアクション
監督の岡本喜八は、時代劇よりも西部劇を撮りたかったと公言しており、その影響は本作の演出に色濃く反映されています。ウエスタン映画のような乾いた雰囲気や、スピーディーな展開、そして銃と刀が交錯するアクションシーンは、従来の座頭市シリーズとは一線を画す魅力となっています。特に、短銃使いの岸田森演じる九頭竜の不気味な存在感は、作品に独特の緊張感を与えています。
豪華キャスト陣が彩る人間ドラマ
勝新太郎と三船敏郎の共演はもちろんのこと、ヒロインの梅乃を演じる若尾文子、小仏の政五郎役の米倉斉加年、九頭竜役の岸田森、そして嵐寛寿郎、滝沢修といった豪華なベテラン俳優陣が脇を固め、物語に深みを与えています。それぞれのキャラクターが持つ人間的な葛藤や欲望が、金塊を巡る争いの中で複雑に絡み合い、見応えのある人間ドラマを紡ぎ出しています。
観客を惹きつけた「最後の対決」の真実と評価
『座頭市と用心棒』は、公開前から多くの観客が期待した「座頭市と用心棒、どちらが強いのか？」という問いに対する答えが、作品の大きな焦点でした。しかし、その結末は観客の予想を良い意味でも悪い意味でも裏切るものだったと言われています。
期待された一騎打ち、その意外な結末
物語の終盤、金塊を巡る争いが激化し、多くの悪党たちが倒れていく中で、ついに座頭市と用心棒・佐々大作は対峙します。観客は二大スターによる息をのむような一騎打ちを期待しましたが、実際の決闘シーンは「気の抜けた演出で一杯食わされた感」という評価もあるほど、意外な展開を見せます。
市の仕込み杖が折れ、用心棒の太股に刺さるという結末は、従来の時代劇の定石を破るものでした。この「煮え切らない」とも評される結末は、観客の期待を裏切るものだった一方で、岡本喜八監督の意図的な演出であり、単なるヒーロー対決ではない、より深いテーマを提示しようとしたものと解釈することもできます。
公開当時の評価と現代に語り継がれる魅力
本作は、シリーズ最高の興行収入を記録する大ヒットとなりましたが、その結末については賛否両論がありました。しかし、時代劇に西部劇の要素を取り入れた岡本喜八監督の斬新な演出や、勝新太郎と三船敏郎という二人の名優がスクリーンで共演したという事実そのものが、この作品を日本映画史に残る記念碑的なものとしています。
現代においても、その豪華なキャストと、時代劇の常識を打ち破る挑戦的な内容は、多くの映画ファンに語り継がれ、再評価されています。二人のヒーローが織りなす人間ドラマと、金塊を巡る欲望の物語は、今なお色褪せることのない魅力を放っています。
『座頭市と用心棒』を視聴する方法
『座頭市と用心棒』は、現在でも様々な方法で鑑賞することが可能です。
DVD・Blu-rayでの鑑賞
本作はDVDやBlu-rayとしてリリースされており、高画質で作品を楽しみたい方にはおすすめです。特典映像が収録されている場合もあり、作品の世界をより深く知ることができます。主要なオンラインストアや家電量販店などで購入が可能です。
主要動画配信サービスでの視聴
多くの動画配信サービスでも『座頭市と用心棒』を視聴することができます。
- U-NEXT: 見放題で視聴可能です。
- ひかりTVビデオ: レンタル・購入で視聴可能です。
- FODプレミアム: レンタル・購入で視聴可能です。
- Apple TV+: レンタル・購入で視聴可能です。
- DMM TV: レンタル・購入で視聴可能です。
- Amazon Prime Video: レンタル・購入で視聴可能です。
これらのサービスを利用すれば、ご自身の都合の良い時間に、手軽に名作を鑑賞することができます。
よくある質問
- 映画『座頭市と用心棒』の監督は誰ですか？
- 『座頭市と用心棒』の公開年はいつですか？
- 座頭市と用心棒はどちらが強いですか？
- 『座頭市と用心棒』は黒澤明監督の作品ですか？
- 『座頭市と用心棒』の用心棒は黒澤映画の三十郎と同じキャラクターですか？
映画『座頭市と用心棒』の監督は誰ですか？
映画『座頭市と用心棒』の監督は、岡本喜八です。彼はテンポの良い演出と、時代劇に西部劇の要素を取り入れるなど、革新的な作風で知られる映画監督です。
『座頭市と用心棒』の公開年はいつですか？
『座頭市と用心棒』は1970年1月15日に公開されました。この作品は、座頭市シリーズの第20作目にあたります。
座頭市と用心棒はどちらが強いですか？
作中では、座頭市と用心棒・佐々大作は直接的な決着をつけるような明確な勝敗は描かれません。両者ともに圧倒的な強さを持つ剣客であり、互いを認め合う描写があります。観客の期待を裏切るような結末は、この作品の大きな特徴の一つと言えるでしょう。
『座頭市と用心棒』は黒澤明監督の作品ですか？
いいえ、『座頭市と用心棒』は岡本喜八監督の作品です。三船敏郎が用心棒役で出演しているため、黒澤明監督の『用心棒』と混同されることがありますが、異なる作品です。
『座頭市と用心棒』の用心棒は黒澤映画の三十郎と同じキャラクターですか？
『座頭市と用心棒』に登場する用心棒は、三船敏郎が演じており、黒澤明監督の『用心棒』に登場する桑畑三十郎と酷似したキャラクター設定ですが、作中では「佐々大作」という別の名前で登場します。公式には同一人物とはされていませんが、多くの観客は三十郎を意識して鑑賞しました。
まとめ
- 『座頭市と用心棒』は1970年公開の時代劇映画。
- 勝新太郎の座頭市シリーズ第20作目にあたる。
- 勝新太郎と三船敏郎という二大スターが共演した夢の企画。
- 監督は岡本喜八、音楽は伊福部昭が担当。
- 勝プロダクション製作、大映配給で「5社協定」を乗り越え実現。
- 平和な村が金塊を巡る争いで荒廃する物語。
- 座頭市と用心棒・佐々大作が一時的に協力関係を築く。
- 岡本喜八監督の西部劇風味の演出が特徴。
- 岸田森演じる九頭竜など豪華キャスト陣が脇を固める。
- 期待された最後の対決は意外な結末を迎える。
- シリーズ最高の興行収入を記録した大ヒット作。
- DVDやBlu-ray、主要動画配信サービスで視聴可能。
- U-NEXTでは見放題で鑑賞できる。
- 黒澤明監督作品の用心棒とは異なる。
- 三船敏郎の用心棒は「佐々大作」という別名で登場。
新着記事
ポチップ
ポチップ
ポチップ
