お庭の手入れをしている時や、プランターの土を入れ替えている時に、土の中に小さな粒々の集まりを見つけて「これって何かの卵…?」と不安に思ったことはありませんか。もしかしたら、それはヤスデの卵かもしれません。見た目が苦手な方も多く、大量発生すると不快に感じるヤスデ。その卵を見つけたら、どうすれば良いのでしょうか。
本記事では、ヤスデの卵の特徴や産卵場所、見つけた時の正しい対処法から、そもそもヤスデを寄せ付けないための予防策まで、あなたの疑問と不安を一つひとつ解消していきます。
その粒々、ヤスデの卵かも?特徴と見分け方

庭先や植木鉢の土の中で見慣れない粒々を発見すると、気味が悪いと感じる方も多いでしょう。それが本当にヤスデの卵なのか、まずはその特徴を知り、正しく見分けることが対策の第一歩です。ここでは、ヤスデの卵の具体的な見た目や、よく産み付けられる場所、そして間違いやすい他の虫の卵との比較について詳しく解説します。
- ヤスデの卵の見た目(大きさ・色・形)
- 卵はどこに産み付けられる?主な産卵場所
- 【写真で比較】ヤスデ・ムカデ・ダンゴムシの卵の違い
ヤスデの卵の見た目(大きさ・色・形)
ヤスデの卵は、一粒一粒が非常に小さいのが特徴です。その大きさは直径わずか0.5mmほどしかありません。 色は乳白色や半透明で、光沢がある球形をしています。
一粒では小さすぎて肉眼で確認するのは困難ですが、ヤスデは一度に150個から300個もの卵をまとめて産み付けるため、卵塊(らんかい)と呼ばれる塊となって発見されることがほとんどです。 この卵塊は、数センチほどの大きさになることもあり、土の中にあると白っぽい粒々の集まりとして認識できます。特に、外来種のヤンバルトサカヤスデは、扇状に卵を産み付けることが知られています。
卵はどこに産み付けられる?主な産卵場所
ヤスデは、湿気が多く、暗くて人目につかない場所を好んで卵を産み付けます。 彼らにとって、卵が乾燥せず、安全に孵化できる環境が何よりも重要だからです。
具体的には、以下のような場所が主な産卵スポットとなります。
- 落ち葉や枯れ草の下: 湿度と温度が保たれ、孵化した幼虫のエサも豊富な絶好の環境です。
- 植木鉢やプランターの土の中: 水やりで常に湿っているため、ヤスデにとって格好の産卵場所になります。
- 腐葉土や堆肥の中: 栄養分が豊富で、身を隠しやすいため好まれます。
- 石や倒木の下: 日光が当たらず、湿った状態が維持されやすい場所です。
基本的に、ヤスデが家の中に侵入して産卵し、繁殖する可能性は低いです。 なぜなら、室内はヤスデが好む湿った土や腐葉土といった環境がほとんどないからです。ただし、観葉植物の土に卵が混入しているケースは考えられるため、注意が必要です。
【写真で比較】ヤスデ・ムカデ・ダンゴムシの卵の違い
土の中で卵の塊を見つけたとき、ヤスデ以外の虫の可能性も考えられます。特に、ヤスデとよく似た環境に生息するムカデやダンゴムシの卵とは、どのように見分ければ良いのでしょうか。
種類 | 卵の特徴 | 産卵場所・方法 |
---|---|---|
ヤスデ | 直径0.5mm程度の乳白色の球形。150~300個の卵塊を作る。 | 湿った土の中や落ち葉の下に産みっぱなし。 |
ムカデ | 直径1~2mm程度の白い球形。 50個程度の塊になることが多い。 | 土の中などに産み、母親が体を丸めて卵を抱きかかえるように保護する習性がある。 |
ダンゴムシ | 黄色っぽい卵。 | 土の中には産まない。メスのお腹にある「保育のう」と呼ばれる袋の中で卵を育て、孵化させる。 |
最大の違いは、卵の保護の仕方です。ヤスデは卵を産みっぱなしにしますが、ムカデは母親が卵を守ります。 そして、ダンゴムシの卵は土の中では見つからず、メスのお腹の中で育てられます。 この点を覚えておけば、見つけた卵がどの虫のものか、ある程度推測することができるでしょう。
ヤスデの産卵シーズンはいつ?生態サイクルを知ろう

ヤスデの対策を効果的に行うためには、彼らの生態、特に一生のサイクルを理解することが重要です。いつ卵を産み、いつ孵化して、なぜ特定の時期に大量発生するのか。そのメカニズムを知ることで、先回りした対策が可能になります。ここでは、ヤスデの産卵時期から大量発生の謎まで、そのライフサイクルを紐解いていきます。
- ヤスデの産卵時期は主に秋!
- 卵から孵化、そして成虫へ(ライフサイクル)
- なぜ梅雨に大量発生するの?
ヤスデの産卵時期は主に秋!
多くのヤスデは、8月から10月にかけての秋の季節に産卵期を迎えます。 この時期、メスは湿った土の中や落ち葉が堆積した場所に潜り込み、一度に数百個というたくさんの卵を産み付けます。
産卵を終えた成虫は、その多くが冬を越せずに死んでしまいます。 そして、土の中に残された卵は、そのまま冬を越し、翌年の春に向けて静かに孵化の時を待つのです。この産卵時期を知っておくことは、予防策を講じる上で非常に重要になります。秋のうちにヤスデが好む環境をなくしておくことで、翌年の大発生を抑えることにつながります。
卵から孵化、そして成虫へ(ライフサイクル)
ヤスデの一生は、卵から始まります。そのサイクルは以下のようになっています。
- 産卵(8月~10月): 成虫が土の中に150~300個の卵を産み付けます。
- 孵化・越冬(10月~翌4月): 秋に孵化した幼虫は、そのまま土の中で脱皮を繰り返しながら冬を越します。 この時期は地上に出てくることはほとんどありません。
- 成虫・活動期(5月~7月): 暖かくなり、梅雨の時期になると幼虫が一斉に成虫となり、エサを求めて地上に出てきて活発に活動を始めます。 これが、私たちがヤスデをよく見かける時期です。
- 繁殖・産卵(8月~10月): そして再び繁殖の季節を迎え、次の世代の卵を産み、一生を終えます。
このように、ヤスデのライフサイクルは約1年です。 ただし、キシャヤスデのように、幼虫の期間が7年にも及び、8年周期で大量発生するという特殊な種類も存在します。
なぜ梅雨に大量発生するの?
ヤスデの姿を特によく見かけるのが、5月末から7月初旬にかけての梅雨の時期です。 これには、ヤスデの生態と梅雨の気候が密接に関係しています。
主な理由は2つあります。
一つは、前年の秋に生まれた幼虫が、この時期に成虫になるからです。 越冬して成長したヤスデたちが、一斉に地上での活動を開始するため、私たちの目に触れる機会が急増するのです。
もう一つの理由は、大雨による避難行動です。 ヤスデは湿った環境を好みますが、水浸しになるのは嫌います。 長雨で土の中が水で満たされると、溺れるのを避けるために一斉に地上へ這い出してきます。そして、水を避けられる乾いた場所を求めて、家の壁やブロック塀などをよじ登るのです。 この集団での避難行動が、私たちの目には「大量発生」として映るわけです。
ヤスデの卵を見つけたら?正しい駆除と対処法

もし庭やプランターでヤスデの卵らしきものを見つけてしまったら、どう対処すればよいのでしょうか。そのまま放置して大量発生につながるのは避けたいものです。ここでは、卵の段階での駆除方法から、すでに成虫になってしまった場合の対策、そしてヤスデという生き物の意外な一面まで、具体的な対処法を解説します。
- 卵の駆除は土ごと処分が基本
- 成虫になってしまった場合の駆除方法
- 駆除は必要?ヤスデは実は益虫という側面も
卵の駆除は土ごと処分が基本
ヤスデの卵は非常に小さく、土と混ざり合っているため、卵だけを完全に取り除くのは困難です。そのため、卵が産み付けられている周辺の土ごと処分するのが最も確実で効果的な方法です。
スコップなどで卵塊を含む土をすくい取り、厚手のビニール袋などに入れます。この際、袋を二重にするとより安心です。袋の口をしっかりと縛り、燃えるゴミとして自治体のルールに従って処分してください。卵が孵化して幼虫が土の中に広がってしまう前に、早期に発見し対処することが、後の大量発生を防ぐ鍵となります。
成虫になってしまった場合の駆除方法
すでに成虫が大量に発生してしまった場合は、状況に応じた駆除が必要です。ヤスデは刺激を与えると不快な臭いを放つことがあるため、なるべく直接触れずに駆除するのがおすすめです。
市販の殺虫剤を使う
家の中や壁などで見つけたヤスデには、即効性のある殺虫スプレーが有効です。 ヤスデなどの這う虫に効果がある、ピレスロイド系の成分を含んだ製品を選ぶと良いでしょう。 薬剤がヤスデの体にかかると、神経系に作用して素早く駆除できます。
熱湯や凍結スプレーも効果的
殺虫成分の使用に抵抗があるご家庭では、他の方法も試せます。例えば、熱湯をかけるという原始的な方法も非常に効果的です。 ただし、植物の近くでは根を傷める可能性があるので注意が必要です。
また、殺虫成分を含まない凍結スプレーもおすすめです。 害虫を瞬間的に凍らせて動きを止めるため、小さなお子さんやペットがいる場所でも安心して使用できます。
駆除した後の処理方法
駆除したヤスデの死骸は、ほうきとちりとりで集め、ビニール袋に入れて燃えるゴミとして処分します。 大量にいる場合は、見た目に不快感を覚える方も多いので、新聞紙などで包んでから袋に入れると良いでしょう。
駆除は必要?ヤスデは実は益虫という側面も
見た目の不快さから「害虫」として扱われがちなヤスデですが、実は自然界においては重要な役割を担う「益虫」としての一面を持っています。
ヤスデの主なエサは、落ち葉や枯れ木などの腐った植物(腐植質)です。 彼らはこれらを食べることで土壌の有機物を分解し、栄養豊富なフンとして土に還します。 この働きは、ミミズなどと同じく、土壌を豊かにし、植物の成長を助ける「森の掃除屋」としての役割を果たしているのです。
また、ムカデのように人を咬んだり刺したりすることもありません。 そのため、家の中に侵入してくるなどの実害がない限り、屋外にいるヤスデを積極的に駆除する必要はないとも言えます。 もちろん、大量発生による不快感や家屋への侵入は問題ですので、その場合は適切な対策が必要です。
もう見たくない!ヤスデを寄せ付けないための徹底予防策

ヤスデの駆除も大切ですが、最も効果的なのは「そもそもヤスデを寄せ付けない」環境を作ることです。ヤスデが好む場所をなくし、家への侵入経路を断つことで、不快な遭遇を未然に防ぐことができます。ここでは、今日から始められる具体的な予防策を詳しくご紹介します。
- ヤスデが好む環境をなくすことが最重要
- 家への侵入を防ぐ対策
ヤスデが好む環境をなくすことが最重要
ヤスデ対策の基本は、彼らが好む「暗くてジメジメした場所」を徹底的になくすことです。 庭や家の周りを見渡し、ヤスデの隠れ家や産卵場所になりそうなところを改善していきましょう。
落ち葉や枯れ草はこまめに掃除する
ヤスデにとって、落ち葉や枯れ草の堆積は、最高の住処でありエサ場です。 庭の落ち葉や刈り取った雑草は放置せず、こまめに掃除して処分しましょう。特に、ヤスデが活動を始める梅雨前や、産卵期を迎える秋には念入りな清掃を心がけることが、翌シーズンの発生を抑えるのに効果的です。
庭の水はけと日当たりを改善する
ジメジメした土壌はヤスデの温床となります。 庭に水たまりができやすい場所があれば、砂利を敷いたり、溝を掘ったりして水はけを良くする工夫をしましょう。 また、生い茂った雑草を刈り取ったり、庭木の枝を剪定したりして、地面に日光が当たるようにすると、土壌が乾燥しやすくなり、ヤスデが住みにくい環境になります。
植木鉢の置き方を工夫する
植木鉢やプランターの底は、常に湿っており、ヤスデにとって絶好の隠れ場所です。 地面に直接置くのではなく、レンガやブロック、専用のラックなどの上に置いて、鉢底の風通しを良くするだけでも大きな効果があります。 これにより、鉢底の過度な湿気を防ぎ、ヤスデが寄り付くのを防ぐことができます。
家への侵入を防ぐ対策
屋外の環境を整えても、ヤスデが家の近くまでやってくることはあります。最後の砦として、家の中への侵入を物理的に防ぐ対策も重要です。
忌避剤(粉剤・スプレー)を家の周りに撒く
ヤスデの侵入を防ぐ最も効果的な方法の一つが、家の基礎周りや玄関、窓の下などに忌避剤(きひざい)を帯状に撒くことです。 忌避剤にはヤスデが嫌がる成分が含まれており、物理的なバリアとなって侵入を防ぎます。粉剤タイプは雨に強い製品も多く、長期間効果が持続します。 壁面など粉剤が撒きにくい場所には、スプレータイプが便利です。
隙間を徹底的に塞ぐ
ヤスデは非常に体が細く、わずかな隙間からでも侵入してきます。 家の周りをチェックし、侵入経路になりそうな隙間を塞ぎましょう。
- エアコンの配管(ドレンホース)の貫通部
- 基礎コンクリートのひび割れ
- 窓サッシの隙間
- 換気口
これらの隙間は、パテやシーリング材、隙間テープなどを使ってしっかりと埋めておきましょう。
木酢液など自然由来のもので対策する
薬剤の使用に抵抗がある方は、自然由来のものを試してみるのも一つの手です。木酢液(もくさくえき)は、木炭を作る際に出る煙を液体にしたもので、その独特の燻製のような臭いを多くの虫が嫌います。 火事を連想させるため、本能的に避けると言われています。水で薄めた木酢液を家の周りに撒くことで、ヤスデを遠ざける効果が期待できます。ただし、雨で流れてしまうため、定期的な散布が必要です。
よくある質問

ヤスデの卵や成虫に毒性や害はありますか?
ヤスデはムカデと違い、人に噛みついたり刺したりすることはなく、毒のアゴも持っていません。 基本的に人体に直接的な害を与える虫ではありません。
ただし、多くのヤスデは危険を感じると、体から刺激性のある液体(臭液)を分泌します。 この液体にはシアン化合物などが含まれていることがあり、皮膚に付着するとヒリヒリとした痛みや、水ぶくれなどの皮膚炎を起こす可能性があります。また、特有の不快な臭いを発します。万が一、液体に触れてしまった場合は、すぐに石鹸でよく洗い流してください。
観葉植物の土にヤスデの卵がある場合はどうすればいいですか?
購入した観葉植物の土に、元々ヤスデの卵が混入していることがあります。 もし土の表面などで卵や幼虫を見つけた場合は、その部分の土を取り除いて処分するのが良いでしょう。
根本的な対策としては、土を全て入れ替える(植え替え)のが最も確実です。ヤスデのいない新しい土に植え替えることで、室内での繁殖を防ぐことができます。植え替えが難しい場合は、土に差し込むタイプや撒くタイプの不快害虫用殺虫剤を使用する方法もありますが、植物への影響を確認してから使用してください。
ヤスデの駆除を業者に頼むと費用はいくらくらいですか?
ヤスデの駆除を専門業者に依頼する場合、費用は建物の広さや被害状況、作業内容によって大きく異なります。一般的には、1回あたりの駆除作業で数万円からが目安となりますが、薬剤の散布範囲や侵入経路の封鎖作業などが加わると、さらに高額になることもあります。
多くの業者では無料で見積もりを行っていますので、まずは複数の業者に相談し、作業内容と料金を比較検討することをおすすめします。
日本でよく見かけるヤスデの種類は?
日本には250種類以上のヤスデが生息していると言われていますが、私たちの身の回りでよく見かけるのは主に以下の種類です。
- ヤケヤスデ: 体長2cmほどで、日本で最も一般的に見られる種類。焼けたような茶褐色をしていることからこの名がつきました。
- キシャヤスデ: 体長3.5cm以上と大型。8年周期で大発生し、線路を覆うほどの大群が列車を止めてしまうことがあるため「キシャ(汽車)ヤスデ」と呼ばれます。
- ヤンバルトサカヤスデ: 台湾原産の外来種。体長3cmほどで、在来種より大きい。繁殖力が非常に強く、各地で大量発生して問題になることがあります。
ヤスデとムカデ、ゲジゲジの違いは何ですか?
見た目が似ているため混同されがちですが、生態や特徴は大きく異なります。
ヤスデ | ムカデ | ゲジゲジ | |
---|---|---|---|
脚の生え方 | 1つの体節から2対(4本) | 1つの体節から1対(2本) | 非常に長い脚が多数 |
動き | ゆっくり、鈍い | 素早い | 非常に素早い |
食性 | 腐った植物(益虫) | 昆虫など(肉食) | ゴキブリなど(益虫) |
毒 | なし(ただし臭液を出す) | あり(咬む) | なし(咬まない) |
危険を感じた時 | 体を丸める | 攻撃してくる | 素早く逃げる |
まとめ

- ヤスデの卵は直径0.5mm程の乳白色の粒。
- 一度に150~300個の卵を塊で産む。
- 産卵場所は湿った土の中や落ち葉の下。
- 産卵時期は主に秋(8月~10月)。
- 卵を見つけたら土ごと袋に入れ処分する。
- 梅雨に大量発生するのは成虫になる時期だから。
- 大雨で土中から一斉に避難してくる。
- 成虫の駆除には殺虫スプレーや熱湯が有効。
- ヤスデは人を咬まず、基本的には無害。
- 落ち葉を分解する「益虫」の側面も持つ。
- 予防の基本は、庭の掃除と水はけ改善。
- 落ち葉や雑草をなくし、日当たりを良くする。
- 家の周りに忌避剤を撒くと侵入防止に効果的。
- エアコン配管などの隙間を塞ぐことも重要。
- ムカデは卵を守り、ダンゴムシは腹で育てる。