お子さんやご自身の熱が高く、座薬を使ってもなかなか熱が下がらないと、不安な気持ちになりますよね。特に小さなお子さんの場合、熱が下がらないと「何か重い病気なのでは」と心配になる方も多いでしょう。本記事では、座薬を使っても熱が下がらない時に考えられる原因や、家庭でできる対処法、そして病院を受診する目安について詳しく解説します。
座薬で熱が下がらないのはなぜ?考えられる原因と対処法

座薬を使用しても熱が下がらない場合、いくつかの原因が考えられます。まずは、座薬の作用メカニズムや効果が発現するまでの時間、そして効きにくいケースについて理解を深めましょう。その上で、家庭でできる適切な対処法を実践することが大切です。
座薬の効果が出るまでの時間と持続時間
座薬は直腸から吸収され、体温調節中枢に作用して熱を下げる薬です。一般的に、座薬を挿入してから効果が出始めるまでには、個人差はありますが30分から1時間程度かかると言われています。効果の持続時間は、薬の種類や用量によって異なりますが、およそ4時間から6時間程度が目安です。
もし座薬を入れてすぐに熱が下がらないと感じても、焦らずにしばらく様子を見ることが大切です。
座薬が効きにくいケースとは?
座薬を使っても熱が下がりにくい場合、いくつかの状況が考えられます。薬が効かないと感じる背景には、病気の種類や薬の使い方が関係していることもあります。
そもそも解熱剤が効きにくい病気
熱の原因となっている病気によっては、解熱剤が効きにくいことがあります。例えば、インフルエンザやアデノウイルス感染症など、ウイルス性の疾患では高熱が出やすく、解熱剤を使っても一時的にしか熱が下がらない、あるいはあまり効果を感じられないというケースも少なくありません。これは、解熱剤が病気そのものを治すのではなく、あくまで熱という症状を和らげるためのものだからです。
体内でウイルスや細菌と戦っている間は、熱が上がりやすい状態が続くことがあります。
適切な量や使い方ができていない
座薬の用量が体重に対して適切でなかったり、挿入方法が正しくなかったりすると、十分な効果が得られないことがあります。特に小児の場合、体重に見合った用量を守ることが非常に重要です。また、座薬を挿入する際は、奥までしっかりと入れ、しばらく排便を我慢させるなど、薬が吸収されるための工夫も必要です。もし挿入後すぐに排便してしまった場合は、薬が吸収されていない可能性も考えられます。
熱以外の症状が重い場合
高熱だけでなく、頭痛や関節痛、倦怠感などの他の症状が強く出ている場合、解熱剤を使っても熱が下がりにくいと感じることがあります。これは、体全体の炎症反応が強く、解熱剤だけでは症状を完全に抑えきれないためです。このような場合は、熱を下げることだけでなく、他の症状を和らげるためのケアも同時に行う必要があります。
また、熱以外の症状が重い場合は、病状が悪化している可能性も考慮し、医療機関への相談も検討しましょう。
熱が下がらない時に試せる家庭での対処法
座薬を使っても熱が下がらない時でも、家庭でできる対処法はたくさんあります。体を楽にして、少しでも快適に過ごせるように工夫しましょう。
体を冷やす場所と方法
熱が高い時は、体を冷やすことで一時的に楽になることがあります。特に効果的なのは、太い血管が通っている場所を冷やすことです。具体的には、首の付け根、脇の下、足の付け根(鼠径部)などが挙げられます。これらの部位を冷たいタオルや冷却シート、氷枕などで冷やすと、効率的に体温を下げることができます。
ただし、冷やしすぎると体が震えてかえって熱が上がってしまうこともあるため、様子を見ながら行いましょう。手足が冷たい場合は、無理に冷やさず、温めてあげる方が良いこともあります。
水分補給の重要性
発熱時は汗をかきやすく、脱水状態になりやすいので、こまめな水分補給が非常に重要です。特に、熱が下がらない時は体力の消耗も激しいため、意識的に水分を摂るように心がけましょう。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク、薄めた果汁などもおすすめです。少量ずつ頻繁に与えるのがコツです。吐き気がある場合は、無理に飲ませず、氷をなめさせるなど工夫してみましょう。
快適な環境づくり
熱がある時は、安静にして体を休めることが何よりも大切です。室温は、暑すぎず寒すぎない快適な温度(一般的には25~28℃程度)に保ち、湿度も適度に保つようにしましょう。厚着をさせすぎると熱がこもりやすいので、薄着にして、必要に応じてタオルケットなどで調整するのが良いでしょう。また、静かで落ち着ける環境を整え、十分な睡眠が取れるように配慮することも、回復を早めるための重要な要素です。
病院を受診する目安と緊急性の高い症状

座薬を使っても熱が下がらない場合、いつまで様子を見て良いのか、病院に行くべきなのか迷うこともあるでしょう。特に、特定の症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
小児科を受診すべきタイミング
お子さんの熱が下がらない場合、年齢や他の症状によって受診の目安が変わります。保護者の方は、お子さんの様子をよく観察し、適切なタイミングで医療機関を受診する決定をしましょう。
月齢・年齢別の注意点
乳幼児は、大人に比べて体温調節機能が未熟なため、高熱が出やすい傾向にあります。生後3ヶ月未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出した場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。生後3ヶ月から6ヶ月未満の赤ちゃんも、38.5℃以上の熱が続く場合や、機嫌が悪い、ミルクの飲みが悪いなどの症状があれば受診を検討しましょう。
1歳以上のお子さんであれば、熱が高くても比較的元気なこともありますが、ぐったりしている、水分が取れないなどの症状があれば受診が必要です。
ぐったりしている、水分が取れないなどの症状
熱の高さだけでなく、お子さんの全身状態をよく観察することが重要です。たとえ熱がそれほど高くなくても、顔色が悪い、ぐったりして元気がない、呼びかけに反応が鈍い、水分を全く摂ろうとしない、おしっこの量が著しく少ないなどの症状が見られる場合は、脱水症状や重い感染症の可能性も考えられます。
このような場合は、夜間や休日であっても迷わず医療機関を受診しましょう。特に、嘔吐や下痢を伴う場合は、脱水の進行が早いため注意が必要です。
熱性けいれんの既往がある場合
過去に熱性けいれんを起こしたことがあるお子さんの場合、再びけいれんを起こす可能性も考慮し、より慎重な対応が求められます。熱が上がり始めたら、早めに解熱剤を使用するなど、医師の指示に従って対応しましょう。また、けいれんが起きた場合は、落ち着いて状況を観察し、必要であれば救急車を呼ぶ準備もしておきましょう。
けいれんが短時間で治まっても、念のため医療機関を受診し、医師の診察を受けることが推奨されます。
大人が病院に行くべき症状
大人も、座薬を使っても熱が下がらない場合や、特定の症状を伴う場合は、医療機関を受診することが大切です。無理をせず、早めに医師の診察を受けましょう。
呼吸困難や胸の痛み
発熱に加えて、呼吸が苦しい、息切れがする、胸に痛みを感じるなどの症状がある場合は、肺炎や心臓の病気など、重篤な疾患の可能性も考えられます。これらの症状は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。特に、持病がある方や高齢者の方は、症状が急速に悪化する可能性もあるため、注意が必要です。
意識障害や強い頭痛
熱が高い時に、意識が朦朧とする、呼びかけへの反応が鈍い、言動がおかしい、あるいは経験したことのないような強い頭痛が続く場合は、脳炎や髄膜炎などの重い病気のサインである可能性があります。これらの症状は、命に関わることもあるため、直ちに救急車を要請し、医療機関を受診してください。
自己判断で様子を見るのは非常に危険です。
持病がある場合
糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患などの持病がある方が発熱した場合、基礎疾患が悪化するリスクが高まります。また、免疫抑制剤を服用している方なども、感染症が重症化しやすい傾向にあります。このような場合は、熱が下がらないだけでなく、普段とは違う症状が見られたら、かかりつけ医に相談するか、早めに医療機関を受診しましょう。
自己判断で市販薬を使用する前に、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
熱性けいれんが起きた場合の対応
お子さんが熱性けいれんを起こすと、保護者の方は非常に驚き、パニックになってしまうかもしれません。しかし、落ち着いて適切な対応をすることが、お子さんの安全を守る上で最も重要です。
けいれん時の観察ポイント
けいれんが始まったら、まずは落ち着いてお子さんの安全を確保し、以下の点を観察しましょう。
- けいれんが始まった時間と終わった時間(持続時間)
- けいれんの様子(全身か、体の一部か、左右対称か非対称か)
- 目の動き(上を向いているか、一点を見つめているか)
- 顔色(青ざめているか)
- 意識の状態(呼びかけに反応するか)
これらの情報は、医療機関を受診した際に医師が診断を下す上で非常に重要な情報となります。スマートフォンなどで動画を撮影することも、医師への情報提供に役立ちます。
救急車を呼ぶべき状況
熱性けいれんは、ほとんどの場合、数分で自然に治まりますが、以下のような場合は緊急性が高いため、迷わず救急車を呼びましょう。
- けいれんが5分以上続く場合
- けいれんが止まっても意識が戻らない、または呼吸が苦しそうな場合
- けいれんが短時間で繰り返して起こる場合
- けいれんの様子がいつもと違う、または初めてのけいれんで不安が大きい場合
けいれん中は、無理に体を抑えたり、口の中に物を入れたりしないようにしてください。衣服を緩め、吐いたものが喉に詰まらないよう、顔を横向きにしてあげましょう。
座薬に関するよくある質問

座薬の使用に関して、多くの方が疑問に感じる点についてまとめました。正しい知識を持つことで、安心して座薬を使用し、適切に対処できるようになります。
- 座薬は何回まで使えますか?
- 座薬と飲み薬の解熱剤は併用できますか?
- 座薬を入れた後、排便してしまったらどうすればいいですか?
- 熱が下がっても元気がない場合はどうすればいいですか?
- 座薬以外で熱を下げる方法はありますか?
- 座薬の保管方法で注意することはありますか?
- 座薬は大人にも使えますか?
座薬は何回まで使えますか?
座薬の使用回数は、薬の種類や成分、年齢、体重によって異なります。一般的には、1日2回から3回までとされていることが多いですが、必ず添付文書を確認し、医師や薬剤師の指示に従ってください。決められた間隔(通常は4時間から6時間以上)を空けて使用することが重要です。短時間で続けて使用すると、薬の成分が過剰になり、副作用のリスクが高まる可能性があります。
座薬と飲み薬の解熱剤は併用できますか?
基本的に、座薬と飲み薬の解熱剤の併用は推奨されません。同じ解熱成分が含まれている場合、過剰摂取となり、肝臓への負担などの副作用のリスクが高まります。ただし、医師の指示があった場合は、異なる成分の解熱剤を時間をずらして使用することもあります。自己判断での併用は避け、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
座薬を入れた後、排便してしまったらどうすればいいですか?
座薬を挿入してから10分から15分以内に排便してしまった場合、薬が十分に吸収されていない可能性があります。この場合は、もう一度座薬を挿入し直すことを検討しても良いでしょう。しかし、それ以上の時間が経過している場合は、ある程度薬が吸収されていると考えられるため、追加の挿入はせずに様子を見ることが一般的です。
判断に迷う場合は、医師や薬剤師に相談してください。
熱が下がっても元気がない場合はどうすればいいですか?
熱が下がった後も、お子さんやご自身がぐったりして元気がない場合は、まだ体力が回復していないか、病気が完全に治りきっていない可能性があります。無理に活動させず、引き続き安静にして休ませることが大切です。水分補給を続け、消化の良い食事を摂るように心がけましょう。もし、元気がない状態が長く続く、他の症状が出てきたなどの場合は、再度医療機関を受診して相談することをおすすめします。
座薬以外で熱を下げる方法はありますか?
座薬以外にも、熱を下げるための方法はいくつかあります。体を冷やす方法としては、脇の下や股の付け根を冷やす、冷たいタオルで体を拭くなどがあります。また、水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐことも重要です。薄着にして、室温を快適に保つことも効果的です。これらの方法は、解熱剤と併用することで、より快適に過ごせる助けとなります。
座薬の保管方法で注意することはありますか?
座薬は、一般的に高温多湿を避けて涼しい場所で保管する必要があります。特に夏場など、室温が高くなる時期は、冷蔵庫での保管が推奨されることが多いです。ただし、凍結させてしまうと薬の品質が変化する可能性があるため、凍らせないように注意しましょう。また、お子さんの手の届かない場所に保管し、誤って口に入れたりしないよう厳重に管理してください。
使用期限も必ず確認し、期限切れのものは使用しないようにしましょう。
座薬は大人にも使えますか?
座薬は、子供だけでなく大人用のものも存在します。大人用の座薬は、子供用よりも有効成分の量が多く配合されています。市販されている解熱鎮痛剤の中にも座薬タイプのものがあり、飲み薬が苦手な方や、胃腸への負担を避けたい場合に選択肢となります。ただし、大人用座薬も、使用量や使用間隔は添付文書の指示に従い、自己判断で過剰に使用しないように注意が必要です。
持病がある方や、他の薬を服用している方は、使用前に医師や薬剤師に相談しましょう。
まとめ
- 座薬の効果発現には30分~1時間程度かかる。
- 効果持続時間は4~6時間程度が目安。
- ウイルス性疾患など、病気によっては座薬が効きにくい場合がある。
- 適切な用量や挿入方法を守ることが大切。
- 熱が下がらない時は、首、脇、股の付け根を冷やす。
- こまめな水分補給で脱水を防ぐ。
- 安静にして快適な環境で休むことが重要。
- 生後3ヶ月未満の赤ちゃんは38℃以上の熱で即受診。
- ぐったりしている、水分が取れない場合は緊急性が高い。
- 大人の場合、呼吸困難や意識障害があればすぐに受診。
- 持病がある方は発熱時にかかりつけ医へ相談。
- 熱性けいれん時は落ち着いて観察し、5分以上続く場合は救急車を呼ぶ。
- 座薬の使用回数や間隔は添付文書に従う。
- 座薬と飲み薬の解熱剤の自己判断での併用は避ける。
- 熱が下がっても元気がない場合は安静を継続し、必要なら再受診。
