年金生活を送る中で、日々の暮らしに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、公的年金だけでは生活費が不足しがちな場合、国からの支援は大きな助けとなります。本記事では、そんなあなたの生活を支える大切な制度の一つ、「補足的老齢年金生活者支援給付金」について、その概要から支給要件、申請方法まで、分かりやすく徹底解説します。
この給付金は、消費税率引き上げ分を財源として、所得が少ない年金受給者の生活を支援するために設けられました。あなたがこの給付金の対象となるかどうか、ぜひ一緒に確認していきましょう。
補足的老齢年金生活者支援給付金とは?年金生活を支える大切な制度

補足的老齢年金生活者支援給付金は、年金生活を送る方々の経済的な不安を和らげるために創設された、公的な支援制度です。この給付金は、消費税率の引き上げによって得られた財源を活用し、所得が一定基準以下の年金受給者に対して、年金に上乗せして支給されます。生活の安定を図る上で、非常に重要な役割を担っているのです。
年金生活者支援給付金の種類と補足的老齢年金生活者支援給付金の位置づけ
年金生活者支援給付金には、大きく分けて三つの種類があります。一つ目は、老齢基礎年金を受給している方を対象とした「老齢年金生活者支援給付金」。二つ目は、障害基礎年金を受給している方を対象とした「障害年金生活者支援給付金」。そして三つ目は、遺族基礎年金を受給している方を対象とした「遺族年金生活者支援給付金」です。
この中で、今回詳しくご紹介する「補足的老齢年金生活者支援給付金」は、老齢年金生活者支援給付金の一種として位置づけられています。具体的には、通常の老齢年金生活者支援給付金の所得基準をわずかに超えるものの、依然として経済的な支援が必要な方々を対象としている点が特徴です。
この給付金は、日本年金機構が窓口となり、厚生労働省が制度を所管しています。年金制度の複雑さに戸惑う方もいるかもしれませんが、この給付金は、あなたの生活をより安定させるための大切な支援だと理解してください。
なぜ「補足的」な給付金が必要なのか?制度の目的と背景
「補足的」という言葉が示す通り、この給付金は、通常の老齢年金生活者支援給付金の対象とならない方々への「補足」として設けられました。その背景には、所得が一定基準を少し超えただけで、給付金が全く支給されなくなり、結果として「基準以下の人よりも手取りが少なくなる」という、いわゆる「所得の逆転現象」を防ぐ目的があります。
このような不合理な状況を避けるため、所得が通常の基準を上回っても、一定の範囲内であれば、その所得水準に応じて調整された給付金が支給される仕組みとなっています。これにより、より多くの方が安心して生活を送れるよう、きめ細やかな支援が実現されているのです。
この制度は、年金だけでは生活が苦しいと感じる方々にとって、生活の質を維持するための重要なセーフティネットと言えるでしょう。消費税率の引き上げという社会全体の負担増の中で、特に経済的に弱い立場にある方々への配慮として、この給付金が導入されました。
補足的老齢年金生活者支援給付金の支給対象者と所得基準

補足的老齢年金生活者支援給付金を受け取るためには、いくつかの支給要件を満たす必要があります。特に重要なのが、所得に関する基準です。ご自身が対象となるかどうか、しっかりと確認していきましょう。
対象となる方の具体的な要件
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる方は、以下の三つの要件をすべて満たしている必要があります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること。
- 請求される方の世帯全員の市町村民税が非課税であること。
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得額の合計が、通常の老齢年金生活者支援給付金の所得基準額を超え、かつ、補足的老齢年金生活者支援給付金の所得基準額以下であること。
これらの要件は、年金生活者のうち、特に経済的に困難な状況にある方々を支援するために設けられています。ご自身の状況と照らし合わせ、一つずつ確認することが大切です。
所得基準額の具体的なラインと注意点
補足的老齢年金生活者支援給付金の所得基準額は、通常の老齢年金生活者支援給付金よりも高い範囲で設定されています。具体的な金額は、生まれた年月日によって異なる場合がありますが、例えば、昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得額の合計が809,000円を超え909,000円以下であることが目安となります。
昭和31年4月1日以前生まれの方の場合は、806,700円を超え906,700円以下が目安です。 これらの金額は、毎年度見直される可能性があるため、最新の情報を日本年金機構や厚生労働省のウェブサイトで確認することが重要です。
また、所得の計算にあたっては、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。この点も誤解しやすいポイントなので、注意が必要です。
世帯の市町村民税非課税とは?
支給要件の一つである「世帯全員の市町村民税が非課税であること」とは、あなたと同じ世帯に属する全ての方(世帯主、配偶者、扶養親族など)が、市町村民税の課税対象となっていない状態を指します。市町村民税は、前年の所得に基づいて課税される地方税であり、これが非課税であるということは、世帯全体の所得が低い水準にあることを意味します。
この要件は、給付金が本当に生活に困っている方々に届くようにするための重要な基準です。
ご自身の世帯が市町村民税非課税であるかどうかは、お住まいの市区町村役場で確認できます。不明な点があれば、遠慮なく問い合わせてみるのが良いでしょう。
補足的老齢年金生活者支援給付金の支給額と計算方法

補足的老齢年金生活者支援給付金の支給額は、個人の年金加入状況や所得に応じて細かく計算されます。ここでは、その計算方法と、通常の老齢年金生活者支援給付金との違いについて解説します。
給付金の基本的な計算方法
補足的老齢年金生活者支援給付金の支給額は、主に国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間に基づいて算出されます。基本的な計算式は、以下の二つの合計額となります。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額):5,450円 × 保険料納付済期間 ÷ 480月
- 保険料免除期間に基づく額(月額):11,551円 × 保険料免除期間 ÷ 480月
ただし、補足的老齢年金生活者支援給付金の場合、前年の年金収入額とその他の所得額の合計が、通常の老齢年金生活者支援給付金の所得基準額を超えているため、上記1の「保険料納付済期間に基づく額」に、所得に応じた一定割合を乗じて調整されます。この調整によって、所得がわずかに高い方でも、給付金を受け取れるようになっているのです。
具体的な計算は複雑に感じるかもしれませんが、日本年金機構から送付される通知書で、ご自身の支給額が確認できます。もし不明な点があれば、年金事務所に相談するのが一番確実な方法です。
所得に応じた調整支給率の考え方
補足的老齢年金生活者支援給付金の特徴は、所得に応じて支給額が調整される「調整支給率」が適用される点にあります。これは、所得が通常の老齢年金生活者支援給付金の基準を少し超えた方でも、急に給付金がゼロになることで生活が苦しくならないようにするための仕組みです。具体的には、「(補足的老齢年金生活者支援給付金の所得上限額 - 前年の年金収入と所得の合計額) ÷ 100,000円」といった計算式で調整率が算出されます。
この調整によって、所得が高いほど給付額は少なくなり、所得が低いほど給付額は多くなるように設計されています。
この調整支給率は、所得の逆転現象を防ぎ、公平な支援を実現するための大切な要素です。ご自身の所得水準がどの範囲に該当するかによって、受け取れる給付金の額が変わることを理解しておきましょう。
老齢年金生活者支援給付金との違い
補足的老齢年金生活者支援給付金と老齢年金生活者支援給付金の最も大きな違いは、所得基準額にあります。老齢年金生活者支援給付金は、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得額の合計が、例えば昭和31年4月2日以後生まれの方で809,000円以下の場合に支給されます。 一方、補足的老齢年金生活者支援給付金は、この809,000円を超え909,000円以下(昭和31年4月1日以前生まれの方は806,700円を超え906,700円以下)の所得の方を対象としています。
つまり、補足的老齢年金生活者支援給付金は、通常の老齢年金生活者支援給付金の対象から惜しくも外れてしまう方々を救済するための、より広い範囲をカバーする制度だと言えます。所得がわずかに基準を超えてしまった場合でも、諦めずに補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となるか確認することが大切です。
補足的老齢年金生活者支援給付金の申請方法と手続きの流れ

補足的老齢年金生活者支援給付金は、自動的に支給されるものではなく、ご自身で請求手続きを行う必要があります。手続きの流れを把握し、忘れずに申請しましょう。
請求書はいつ届く?手続きのタイミング
補足的老齢年金生活者支援給付金の請求書は、通常、日本年金機構から郵送で届きます。既に老齢基礎年金を受給している方で、新たに給付金の支給対象となる方には、令和3年9月頃から順次、請求手続きのご案内が送付されています。 また、これから65歳になり、老齢基礎年金を請求する方には、65歳の誕生月の約3カ月前に「年金請求書」と併せて「年金生活者支援給付金請求書」が同封された封筒が届くのが一般的です。
請求書が届いたら、内容をよく確認し、速やかに手続きを進めることが大切です。手続きが遅れると、その分給付金の支給も遅れてしまう可能性があります。
申請に必要な書類と提出先
年金生活者支援給付金請求書には、氏名や住所などを記入し、必要に応じて添付書類を添えて提出します。具体的な添付書類は、個人の状況によって異なりますが、例えば所得を証明する書類などが必要になる場合があります。請求書に同封されている案内をよく読み、必要な書類を漏れなく準備しましょう。提出先は、通常、日本年金機構の年金事務所または、お住まいの市区町村の年金担当窓口となります。
不明な点があれば、日本年金機構の相談窓口に問い合わせることで、正確な情報を得られます。
手続きを忘れてしまった場合の対応
もし、請求手続きを忘れてしまったり、請求書が届かなかったりした場合は、諦めずに対応しましょう。年金生活者支援給付金は、請求手続きを行った月の翌月分から支給対象となります。 したがって、手続きが遅れても、さかのぼって支給されるわけではありませんが、今後の生活を支援するためにも、気づいた時点で早めに手続きを行うことが重要です。
日本年金機構のウェブサイトを確認するか、最寄りの年金事務所に相談して、手続きの方法を確認してください。
手続きを忘れてしまった場合でも、決して手遅れではありません。まずは年金事務所に連絡し、状況を説明して指示を仰ぎましょう。
補足的老齢年金生活者支援給付金が支給されないケース

補足的老齢年金生活者支援給付金は、すべての年金受給者に支給されるわけではありません。特定の状況下では、給付金が支給停止になったり、不支給となったりする場合があります。どのようなケースが該当するのか、事前に把握しておくことが大切です。
給付金が停止・不支給となる主な理由
以下のような状況に該当する場合、補足的老齢年金生活者支援給付金は支給されません。
- 日本国内に住所がないとき。
- 老齢基礎年金が全額支給停止されているとき。
- 刑事施設や労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。
- 年金生活者支援給付金請求書を提出していないとき。
これらの要件は、給付金が真に支援を必要とする方々に適切に届くようにするためのものです。特に、海外に転居した場合や、年金が何らかの理由で全額停止されている場合は、給付金も停止される可能性が高いです。ご自身の状況に変化があった際は、速やかに日本年金機構に届け出る必要があります。
所得状況の変化と給付金への影響
補足的老齢年金生活者支援給付金は、前年の所得に基づいて支給の可否や金額が決定されます。そのため、所得状況に変化があった場合、翌年度の給付金に影響が出る可能性があります。例えば、前年の所得が増加し、補足的老齢年金生活者支援給付金の所得基準額を上回ってしまった場合、給付金が支給されなくなることがあります。
逆に、所得が減少して通常の老齢年金生活者支援給付金の基準額以下になった場合は、補足的老齢年金生活者支援給付金から老齢年金生活者支援給付金に切り替わり、支給額が増えることもあります。
所得の変動は、給付金の支給額や種類に直接影響するため、ご自身の所得状況を常に把握しておくことが重要です。毎年、日本年金機構から送付される「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」などで、支給額の変更が通知されます。
よくある質問

- 補足的老齢年金生活者支援給付金はいつから支給されますか?
- 補足的老齢年金生活者支援給付金は毎年申請が必要ですか?
- 夫婦の場合、二人とも補足的老齢年金生活者支援給付金を受け取れますか?
- 所得の計算方法で注意すべき点はありますか?
- 補足的老齢年金生活者支援給付金に関する相談窓口はどこですか?
補足的老齢年金生活者支援給付金はいつから支給されますか?
補足的老齢年金生活者支援給付金は、請求手続きを行った月の翌月分から支給対象となります。年金と同じく、偶数月の15日(金融機関が休業日の場合は前営業日)に、前2カ月分が年金と同じ口座に振り込まれます。 請求書が届いたら、できるだけ早く手続きを済ませることで、スムーズに給付金を受け取ることができます。
補足的老齢年金生活者支援給付金は毎年申請が必要ですか?
一度認定請求を行い、支給が決定された後は、原則として毎年改めて申請する必要はありません。日本年金機構が毎年、前年の所得状況などを確認し、引き続き支給要件を満たしているか審査を行います。ただし、所得状況に大きな変化があった場合や、日本年金機構から改めて請求書が送付された場合は、手続きが必要となることがあります。
疑問がある場合は、日本年金機構に確認するのが確実です。
夫婦の場合、二人とも補足的老齢年金生活者支援給付金を受け取れますか?
はい、夫婦それぞれが支給要件を満たしていれば、二人とも補足的老齢年金生活者支援給付金を受け取ることが可能です。給付金は、個人の年金受給状況や所得に基づいて判断されるため、夫婦であってもそれぞれが独立した対象者となります。ただし、世帯全員の市町村民税が非課税であるという要件は、世帯全体で判断されるため、夫婦の一方が課税されている場合は、二人とも対象外となる可能性があります。
所得の計算方法で注意すべき点はありますか?
所得の計算方法で特に注意すべき点は、公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額で判断されることです。障害年金や遺族年金などの非課税収入は、この所得には含まれません。 また、所得の基準額は生まれた年月日によって異なる場合があるため、ご自身の生年月日に応じた最新の基準額を確認することが重要です。不明な点があれば、年金事務所や市区町村の年金担当窓口に相談しましょう。
補足的老齢年金生活者支援給付金に関する相談窓口はどこですか?
補足的老齢年金生活者支援給付金に関する相談は、お近くの年金事務所、または日本年金機構の「ねんきんダイヤル」で受け付けています。また、お住まいの市区町村の年金担当窓口でも、一般的な相談や情報提供を行っています。制度の内容や申請手続きについて不明な点があれば、これらの窓口に問い合わせて、正確な情報を得るようにしてください。
まとめ
- 補足的老齢年金生活者支援給付金は、消費税増税分を財源とする生活支援制度です。
- 老齢年金生活者支援給付金の一種で、所得の逆転現象を防ぐ目的があります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給し、世帯全員が市町村民税非課税であることが要件です。
- 前年の公的年金等収入とその他の所得合計が一定基準額内であることが求められます。
- 所得基準額は通常の老齢年金生活者支援給付金より高い範囲です。
- 障害年金や遺族年金などの非課税収入は所得計算に含まれません。
- 支給額は保険料納付済期間と免除期間に基づき、所得に応じた調整があります。
- 日本年金機構から送付される請求書で申請手続きが必要です。
- 請求書が届いたら、内容を確認し速やかに提出しましょう。
- 手続きを忘れても、気づいた時点で年金事務所に相談することが大切です。
- 日本国内に住所がない場合や年金が全額停止されている場合は支給されません。
- 所得状況の変化は給付金の支給額や種類に影響を与えます。
- 給付金は請求月の翌月分から、年金と同じ偶数月に支給されます。
- 原則として毎年申請は不要ですが、所得変動時は確認が必要です。
- 夫婦それぞれが要件を満たせば、二人とも受け取ることが可能です。
- 不明な点は年金事務所やねんきんダイヤルに相談しましょう。
