手のひらや足の裏に、次々と現れる水ぶくれや膿(うみ)。かゆみや痛みも伴い、見た目も気になる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」。その辛い症状に、毎日悩まされている方も多いのではないでしょうか。「病院に行く時間はないけれど、なんとかこの症状を和らげたい…」そんな思いから、市販の塗り薬を探していませんか?本記事では、掌蹠膿疱症の症状緩和に役立つ市販薬の選び方から、使用上の注意点、そして根本的な改善に向けたセルフケアまで、詳しく解説していきます。
【結論】掌蹠膿疱症に”効く”市販の塗り薬はある?

まず知っておいていただきたい大切なことがあります。それは、現時点で「掌蹠膿疱症専用」として販売されている市販の塗り薬はないということです。
掌蹠膿疱症は、単なる手荒れや水虫とは異なり、免疫の異常が関係していると考えられている複雑な皮膚の病気です。 そのため、根本的な治療には皮膚科専門医による正確な診断と、それに基づいた処方薬が必要となります。 市販薬で安易に自己判断してしまうと、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあるため注意が必要です。
しかし、がっかりする必要はありません。掌蹠膿疱症そのものを治すことはできなくても、辛い「かゆみ」「炎症」「ひび割れ」といった症状を一時的に和らげるのに役立つ市販薬は存在します。 この記事では、それらの薬をどのように選べば良いのか、そしてどのように付き合っていけば良いのかを、あなたの辛い症状に寄り添いながら解説していきます。
掌蹠膿疱症の症状緩和に役立つ市販の塗り薬の選び方

掌蹠膿疱症の症状を市販薬で少しでも和らげたい場合、どのような成分に着目すれば良いのでしょうか。ここでは、症状別に有効な成分と、市販薬を選ぶ際のポイントを解説します。大切なのは、ご自身の今の症状に合った成分を選ぶことです。
この章では、以下の点について詳しく見ていきましょう。
- かゆみが強い場合:かゆみを鎮める成分
- 赤み・炎症が気になる場合:炎症を抑える成分
- ガサガサ・ひび割れがひどい場合:保湿と皮膚修復を助ける成分
かゆみが強い場合:かゆみを鎮める成分
掌蹠膿疱症の初期や、水ぶくれができる時期には、我慢できないほどのかゆみが出ることがあります。 かきむしってしまうと、皮膚が傷つき、そこから細菌が入って化膿したり、症状が悪化したりする原因にもなりかねません。そんな辛いかゆみには、かゆみを鎮める成分が配合された市販薬を選びましょう。
代表的なかゆみ止め成分には、「ジフェンヒドラミン塩酸塩」や「クロタミトン」などがあります。 これらの成分は、かゆみの原因となるヒスタミンの働きをブロックしたり、皮膚の知覚神経に作用してかゆみを和らげたりする効果が期待できます。メンソール(l-メントール)配合のものは、スーッとした清涼感で一時的にかゆみを紛らわすことができますが、肌への刺激になることもあるため、傷がある部位への使用は避けた方が良いでしょう。
赤み・炎症が気になる場合:炎症を抑える成分
膿疱の周りが赤く腫れたり、熱感を持ったりするのは、皮膚で炎症が起きているサインです。 このような炎症を抑えるためには、「ステロイド成分」や、非ステロイド性の抗炎症成分である「グリチルリチン酸」や「グリチルレチン酸」が有効です。
特にステロイド外用薬は、炎症を抑える作用が強く、赤みやかゆみに高い効果が期待できます。 しかし、市販のステロイド薬は強さにランクがあり、自己判断で長期間使用すると副作用のリスクもあるため注意が必要です。 詳しくは後の章で解説しますが、まずは薬剤師に相談し、症状に合った強さの薬を、短期間の使用に留めるようにしましょう。第一三共ヘルスケアの「ベトネベートN軟膏AS」や田辺三菱製薬の「フルコートf」などは、ステロイド成分に加え、化膿を防ぐ抗生物質も配合されています。
ガサガサ・ひび割れがひどい場合:保湿と皮膚修復を助ける成分
膿疱が破れてかさぶたになり、皮膚が硬くゴワゴワしたり、ひび割れて痛んだりする症状も掌蹠膿疱症の辛い特徴の一つです。 このような状態には、硬くなった角質を柔らかくし、皮膚のバリア機能をサポートする成分が役立ちます。
代表的な成分としては、「尿素」や「ヘパリン類似物質」が挙げられます。尿素は硬くなった角質を柔らかくし、水分を保持する働きがあります。 興和の「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」などが有名です。 ヘパリン類似物質は、高い保湿力に加え、血行を促進し、皮膚の再生を助ける働きが期待できます。小林製薬の「さいき」シリーズなどがこれにあたります。 また、皮膚の修復を助ける「アラントイン」や「パンテノール」が配合された、池田模範堂の「ヒビケア軟膏a」なども、ひび割れの改善におすすめです。
【症状別】掌蹠膿疱症におすすめの市販塗り薬

前の章では、症状別に有効な成分について解説しました。ここでは、それらの成分を含む具体的な市販薬を、症状のタイプに合わせてご紹介します。薬局やドラッグストアで薬を選ぶ際の参考にしてください。ただし、これらの薬はあくまで症状を緩和するための対症療法であり、掌蹠膿疱症そのものを治す薬ではないことをご理解の上、ご使用ください。
この章でご紹介する市販薬のタイプは以下の通りです。
- かゆみ・炎症をしっかり抑えたい方向けの薬
- 化膿してジュクジュクした患部にも使える薬
- ガサガサ・ひび割れを集中ケアしたい方向けの薬
- 乾燥による肌荒れも同時にケアしたい方向けの薬
かゆみ・炎症をしっかり抑えたい方向けの薬(ステロイド配合)
強いかゆみや赤み、膿疱といった炎症症状には、抗炎症作用のあるステロイド外用薬が有効です。 市販薬の中でも、比較的強めのステロイド成分を配合した製品を選ぶことで、辛い症状を効果的に抑えることが期待できます。
例えば、田辺三菱製薬の「フルコートf」は、「ストロング」ランクに分類されるステロイド成分「フルオシノロンアセトニド」を配合しており、優れた抗炎症作用を発揮します。 また、第一三共ヘルスケアの「ベトネベートN軟膏AS」も「ストロング」ランクのステロイド成分「ベタメタゾン吉草酸エステル」を含み、湿疹やかぶれなどの皮膚炎に高い効果を示します。 これらの薬は、短期間で炎症を抑えたい場合に適していますが、漫然とした長期使用は避け、5〜6日使用しても改善しない場合は使用を中止し、専門医に相談することが重要です。
化膿してジュクジュクした患部にも使える薬(ステロイド+抗生物質)
掌蹠膿疱症では、膿疱が破れたり、かき壊したりすることで、細菌に感染して化膿(ジュクジュクした状態)してしまうことがあります。このような場合は、炎症を抑えるステロイド成分に加えて、細菌の増殖を防ぐ抗生物質が配合された薬が適しています。
先ほども紹介した「ベトネベートN軟膏AS」や「フルコートf」は、どちらも抗菌作用のある抗生物質「フラジオマイシン硫酸塩」を配合しています。 そのため、化膿を伴う湿疹や皮膚炎にも効果が期待できます。 患部を保護する油性の軟膏タイプは、ジュクジュクした患部にも、カサカサした患部にも使いやすいのが特徴です。
ガサガサ・ひび割れを集中ケアしたい方向けの薬
炎症が落ち着いた後の、皮膚のゴワつきやガサガサ、痛みを伴うひび割れには、保湿と皮膚の修復を促す成分が配合された薬を選びましょう。硬くなった角質を柔らかくし、皮膚の再生を助けることで、しっとりとした状態へと導きます。
興和の「ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム」は、その名の通り尿素を20%配合しており、体内の水分を角質層に集めて皮膚をみずみずしくする効果があります。 硬くなった皮膚を柔らかくし、なめらかな状態に整えます。一方、池田模範堂の「ヒビケア軟膏a」は、ひび修復促進成分である「アラントイン」と「パンテノール」を