「家にヤモリがいるとシロアリが出ない」という話、耳にしたことはありませんか?昔から「家守(ヤモリ)」と呼ばれ、縁起の良い生き物とされるヤモリ。その一方で、家の土台を静かに蝕むシロアリは、住宅にとって最大の脅威の一つです。もし、ヤモリが本当にシロアリを食べてくれるなら、これほど心強いことはありませんよね。本記事では、シロアリとヤモリの意外な関係から、天敵だけでは防ぎきれないシロアリ被害の実態、そして本当に家を守るための確実な対策まで、詳しく解説していきます。
ヤモリはシロアリの天敵?驚きの捕食関係と「家守」の真実

結論から言うと、ヤモリはシロアリの天敵です。しかし、ヤモリがいるからといって、シロアリ対策が万全になるわけではありません。ここでは、ヤモリとシロアリの関係、そして「家守」と呼ばれる理由について詳しく見ていきましょう。
- ヤモリが食べるのはシロアリの「羽アリ」
- 「家守(ヤモリ)」は害虫ハンター
- ヤモリによるシロアリ駆除の限界
ヤモリが食べるのはシロアリの「羽アリ」
ヤモリは肉食性で、昆虫などを主食としています。 そのため、シロアリもヤモリの捕食対象となります。特に、繁殖期に巣から一斉に飛び立つ「羽アリ」は、ヤモリにとって格好の獲物です。 実際に、羽アリが群飛する時期には、家の窓や壁に集まったヤモリが次々と羽アリを捕食する光景が目撃されることもあります。 動きが比較的遅い羽アリは、俊敏なヤモリにとって捕まえやすいご馳走なのです。
シロアリは非常に栄養価が高く、ペットとして飼育されるカエルやトカゲの餌として販売されているほどです。 ヤモリにとっても、シロアリは貴重な栄養源の一つと言えるでしょう。
「家守(ヤモリ)」は害虫ハンター
ヤモリが「家守」と呼ばれるのは、シロアリだけでなく、ゴキブリ、クモ、蚊、ハエといった家の中に侵入する様々な害虫を食べてくれることに由来します。 人間にとって不快な虫を捕食してくれることから、古くから家の守り神として大切にされてきました。夜行性のため、私たちが寝静まった後に活動し、知らぬ間に害虫を退治してくれているのです。 益虫としての側面を持つヤモリが家にいることは、ある意味で自然の防虫システムが機能している証拠とも言えるかもしれません。
ヤモリによるシロアリ駆除の限界
ヤモリがシロアリを食べるのは事実ですが、残念ながらヤモリの力だけで家中のシロアリを根絶することは不可能です。ヤモリが捕食できるのは、主に地上や壁に出てきたシロアリや羽アリに限られます。 しかし、シロアリ被害の本体は、床下や木材の内部に巨大な巣(コロニー)を形成して活動する何万、何十万という数のシロアリたちです。
ヤモリが巣の中にまで入ってシロアリを駆除することはできません。そのため、ヤモリが数匹のシロアリを捕食している間にも、巣の中では女王アリが卵を産み続け、被害は着実に進行していくのです。ヤモリの存在は心強いですが、それだけで安心してしまうのは非常に危険と言わざるを得ません。
ヤモリだけじゃない!シロアリを狙う意外な天敵たち

シロアリは、自然界において多くの生物から狙われる、比較的弱い立場にある昆虫です。 ヤモリ以外にも、私たちの身近にはシロアリを捕食する天敵が数多く存在します。ここでは、シロアリを狙う代表的な天敵たちを紹介します。
- 最強の天敵「クロアリ」
- 巣を張って待ち構える「クモ」
- 昆虫を好む「カエル」や「トカゲ」
- 空からの捕食者「鳥類」
- その他にもいる多様な天敵
最強の天敵「クロアリ」
意外に思われるかもしれませんが、シロアリにとって最大の天敵は、実は「クロアリ」です。 名前に「アリ」と付くため混同されがちですが、シロアリはゴキブリの仲間、クロアリはハチの仲間であり、全く異なる生物です。 肉食性のクロアリはシロアリを好んで捕食し、時には集団でシロアリの巣を襲撃し、全滅させてしまうことさえあります。
「クロアリがいればシロアリはいない」と言われることがありますが、これは必ずしも正しくありません。両者が同じ家で、別々の場所で生息しているケースも確認されています。 クロアリの存在が、シロアリがいない証明にはならないのです。
巣を張って待ち構える「クモ」
クモもまた、シロアリの有力な天敵の一つです。 ハエトリグモやアシダカグモのように巣を張らずに徘徊するタイプのクモは、地上を歩くシロアリを見つけて積極的に捕食します。 一方、ジョロウグモのように巣を張るタイプのクモは、結婚飛行で飛び立った羽アリが巣にかかるのを待ち構えて捕らえます。 飛行能力が低い羽アリは、クモの巣から逃れることができず、格好の餌食となってしまうのです。
昆虫を好む「カエル」や「トカゲ」
ヤモリと同じ爬虫類のトカゲや、両生類のカエルもシロアリを好んで食べます。 特にカエルは昆虫を主食としており、栄養価の高いシロアリは好物の一つです。 羽アリが大量に発生する時期には、それを狙ってカエルが集まってくる光景も見られます。 地中や床下近くを活動範囲とするこれらの生き物は、シロアリと遭遇する機会も多く、重要な天敵と言えるでしょう。
空からの捕食者「鳥類」
空を飛ぶ鳥類、特にツバメやスズメなどもシロアリの天敵です。 昔の日本家屋では、ツバメが軒先に巣を作ると、床下から出てくる羽アリを捕食してくれるため、縁起が良いとされていました。 自分の家にいるシロアリだけでなく、外から飛来する羽アリも食べてくれるため、シロアリの侵入を防ぐ一助となっていたと考えられています。
その他にもいる多様な天敵
これまで紹介した生き物以外にも、シロアリの天敵は数多く存在します。地中ではモグラが巣を襲うことがありますし、ムカデやゲジゲジといった昆虫もシロアリを捕食します。 海外に目を向ければ、オオアリクイやツチブタなど、シロアリを専門に食べる哺乳類もいます。 このように、シロアリは常に多くの捕食者に囲まれて生活しているのです。
【結論】なぜ天敵だけではシロアリ被害を防げないのか?

ヤモリをはじめ、多くの天敵が存在するにもかかわらず、なぜシロアリによる住宅被害は後を絶たないのでしょうか。その理由は、シロアリが持つ驚異的な生態にあります。天敵による捕食だけでは、シロアリの勢いを止めることはできないのです。
- 理由1:シロアリの驚異的な繁殖力
- 理由2:天敵が届かない場所に巣を作る
- 理由3:天敵に頼るリスク
理由1:シロアリの驚異的な繁殖力
シロアリ被害がなくならない最大の理由は、その圧倒的な繁殖力にあります。 例えば、イエシロアリの女王アリは、成熟すると1日に数百個もの卵を産み続けると言われています。 巣の中には複数の女王アリや副女王アリが存在することもあり、コロニー全体では1日に数千から数万個の卵が産まれることも珍しくありません。
天敵が数十匹、数百匹のシロアリを捕食したとしても、巣の中ではそれをはるかに上回る数のシロアリが次々と生まれています。この爆発的な増加スピードに、天敵による捕食が追いつくことはないのです。
理由2:天敵が届かない場所に巣を作る
シロアリは非常に臆病で弱い生き物です。光や乾燥を嫌い、天敵に見つかりにくい土の中や木材の内部、壁の裏側といった閉鎖的な空間に巣を作ります。 産卵を担う女王アリは、巣の最も安全な奥深くにいるため、天敵に襲われる危険はほとんどありません。
ヤモリやクモ、鳥などが捕食できるのは、餌を探しに地上に出てきたり、巣別れのために飛び立ったりした、ごく一部のシロアリだけです。 被害の根源である巣本体には全く手が届かないため、根本的な解決には至らないのです。
理由3:天敵に頼るリスク
「シロアリを駆除するために、天敵を家に放せばいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、これは現実的ではありません。例えば、最強の天敵であるクロアリは、時に人を噛んだり、食品に群がったりと、それ自体が害虫となる可能性があります。また、ムカデやゲジゲジなども、人によってはシロアリ以上に不快な害虫でしょう。
天敵を利用する「生物的防除」は、生態系のバランスを崩したり、別の問題を引き起こしたりするリスクがあり、住宅のシロアリ対策としてコントロールすることは極めて困難です。結局のところ、天敵はあくまで自然界の捕食者であり、人間の都合の良いように働いてくれるわけではないのです。
ヤモリや天敵に頼らない!プロが実践する確実なシロアリ対策

天敵による駆除には限界がある以上、大切な家をシロアリから守るためには、より確実で効果的な対策を講じる必要があります。対策は大きく分けて「自分でできる予防」と「専門業者による駆除・予防」の2つがあります。両方を組み合わせることで、シロアリのリスクを大幅に減らすことができます。
- 自分でできる!今日から始めるシロアリ予防策
- 被害を見つけたら迷わず!専門業者による駆除
自分でできる!今日から始めるシロアリ予防策
専門業者に依頼する前に、まずは自分でできることから始めましょう。日々の少しの心がけが、シロアリを寄せ付けない環境を作ります。
家の周りに木材や段ボールを置かない
シロアリの主食は木材に含まれるセルロースです。 庭に放置された廃材や切り株、ウッドデッキの下の木くずなどは、シロアリを呼び寄せる原因になります。 木を原料とする段ボールも同様です。 家の周りは常に整理整頓し、シロアリのエサとなるものを置かないようにしましょう。
風通しを良くして湿気を溜めない
日本の住宅に多いヤマトシロアリは、湿った木材を好みます。 床下の風通しが悪いと湿気がこもり、シロアリが好む環境になってしまいます。基礎の通気口(換気口)の前に物を置いて塞がないように注意しましょう。 室内も定期的に換気を行い、湿気が溜まりやすい場所を作らないことが大切です。
水漏れや雨漏りを放置しない
雨漏りや水漏れによって湿った木材は、シロアリにとって最高の餌場です。 定期的に天井や壁にシミがないか、水道管から水が漏れていないかなどをチェックし、異常があれば早急に修理しましょう。特に浴室やキッチン、トイレなどの水回りは注意が必要です。
市販の薬剤を活用する
ホームセンターなどでは、スプレータイプやベイト剤(毒餌剤)など、様々な種類のシロアリ対策グッズが販売されています。 玄関先や庭で見かけたシロアリを駆除したり、家の基礎周りに予防的に薬剤を散布したりするのに有効です。 ただし、これらはあくまで補助的な対策であり、巣全体を駆除する効果は限定的です。
被害を見つけたら迷わず!専門業者による駆除
もし家の中で羽アリを大量に見つけたり、床がきしむ、柱を叩くと空洞音がするといったシロアリ被害のサインを見つけたら、迷わず専門業者に相談してください。 自己流の対策では被害を拡大させてしまう可能性があります。プロは専門的な知識と技術で、被害の根源からシロアリを徹底的に駆除してくれます。
専門業者に依頼するメリット
- 確実性:専門の機材と薬剤を使い、巣ごとシロアリを根絶します。
- 安全性:人やペットへの影響を考慮した安全な薬剤を使用します。
- 保証:多くの業者は施工後5年程度の保証を付けており、期間内に再発した場合は無償で対応してくれます。
主な駆除方法
- バリア工法:床下などに薬剤を散布し、シロアリが侵入できないようにバリアを張る方法。即効性が高く、予防効果も期待できます。
- ベイト工法:毒餌(ベイト剤)を建物の周りに設置し、働きアリに巣まで運ばせて巣ごと壊滅させる方法。薬剤を散布しないため、環境への負荷が少ないのが特徴です。
費用相場
シロアリ駆除の費用は、被害状況や建物の広さ、工法によって異なりますが、一般的な30坪の住宅で10万円~30万円程度が相場とされています。 複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討することが重要です。
信頼できるシロアリ駆除業者の選び方

いざ専門業者に依頼しようと思っても、数多くの業者の中からどこを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。残念ながら、中には高額な請求をしたり、不必要な工事を勧めたりする悪質な業者も存在します。 ここでは、後悔しないための信頼できる業者の選び方のポイントを解説します。
- 「日本しろあり対策協会」に加盟しているか
- 見積もりの内容が明確で丁寧か
- 保証やアフターサービスが充実しているか
- 担当者の説明が分かりやすく誠実か
「日本しろあり対策協会」に加盟しているか
一つの目安として、「公益社団法人 日本しろあり対策協会」の会員であるかを確認しましょう。 この協会は、シロアリ防除に関する技術の向上や安全な薬剤の使用などを目的とした団体です。加盟している業者は、一定の基準を満たした信頼性の高い業者である可能性が高いと言えます。協会のウェブサイトで加盟業者を検索することができます。
見積もりの内容が明確で丁寧か
必ず複数の業者から見積もりを取り、内容を比較検討してください。 信頼できる業者の見積書は、「一式」といった曖昧な表記ではなく、使用する薬剤の名前や量、単価、作業内容などが詳細に記載されています。 不明な点について質問した際に、丁寧に分かりやすく説明してくれるかどうかも重要な判断材料です。追加料金が発生する可能性についても、事前に確認しておきましょう。
保証やアフターサービスが充実しているか
シロアリ駆除は、施工後の保証が非常に重要です。多くの優良業者は、施工後5年間の保証を付けています。 保証期間内にシロアリが再発した場合の無償再施工や、定期的な点検など、アフターサービスの内容を契約前にしっかりと確認しましょう。万が一、新たな被害が発生した場合の修復費用を補償してくれる保証が付いていると、さらに安心です。
担当者の説明が分かりやすく誠実か
無料点検の際や問い合わせの際に、担当者の対応をよく観察しましょう。 床下の状況を写真で見せてくれたり、被害の状況や施工方法について専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれたりする業者は信頼できます。 こちらの不安や質問に真摯に耳を傾け、誠実に対応してくれる業者を選びましょう。逆に、契約を急がせたり、過度に不安を煽ったりするような業者は注意が必要です。
よくある質問

ここでは、シロアリと天敵に関してよく寄せられる質問にお答えします。
家にヤモリがいるのは良いことですか?
はい、基本的には良いことと考えてよいでしょう。ヤモリは「家守」という名の通り、シロアリやゴキブリなどの害虫を食べてくれる益虫です。 毒もなく、人に危害を加えることもありません。ただし、ヤモリがいるからといってシロアリ被害が防げるわけではないので、それだけで安心するのは禁物です。
クロアリがいればシロアリは来ませんか?
いいえ、そのようには言い切れません。クロアリはシロアリの天敵ですが、クロアリがいるからといってシロアリが絶対にいないとは限りません。 同じ家の中で、クロアリはキッチン、シロアリは床下というように、活動場所を分けて共存しているケースもあります。クロアリの存在を過信せず、シロアリ対策は別途行う必要があります。
シロアリ駆除の費用はいくらくらいかかりますか?
費用は建物の広さや被害状況、工法によって大きく異なりますが、一般的な木造住宅(1階床面積30坪程度)の場合、バリア工法で10万円~20万円、ベイト工法で15万円~30万円程度が目安です。 正確な費用を知るためには、複数の業者から無料の見積もりを取ることをお勧めします。
自分でシロアリ駆除はできますか?
市販の薬剤を使って、玄関先や庭などで見かけたシロアリを部分的に駆除することは可能です。 しかし、床下や壁の内部に広がった被害の根源である巣を完全に駆除するのは、専門的な知識と機材がなければ非常に困難です。 中途半端な対策は被害をかえって拡大させる恐れもあるため、被害が確認された場合はプロの業者に任せるのが最も確実で安全な方法です。
まとめ

- ヤモリはシロアリの天敵で、特に羽アリを捕食します。
- ヤモリは「家守」と呼ばれ、ゴキブリなど他の害虫も食べる益虫です。
- しかし、ヤモリだけでは巣の中にいる大量のシロアリは駆除できません。
- シロアリの天敵にはクロアリ、クモ、カエル、鳥類などもいます。
- 天敵がいても、シロアリの驚異的な繁殖力の前では効果は限定的です。
- 天敵に頼った駆除は現実的ではなく、リスクも伴います。
- 確実なシロアリ対策は、自分でできる予防策から始めることが大切です。
- 家の周りに木材を置かず、風通しを良くし、湿気を避けることが基本です。
- 水漏れや雨漏りはシロアリを呼び寄せるため、早急に修理しましょう。
- 市販の薬剤は、あくまで補助的な対策として活用するのが有効です。
- 家の中で羽アリを見つけるなど、被害のサインがあれば専門業者に相談が必要です。
- 専門業者は、バリア工法やベイト工法で巣ごとシロアリを根絶します。
- 信頼できる業者を選ぶには、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
- 日本しろあり対策協会の加盟や、保証内容の確認も業者選びのポイントです。
- ヤモリは家の守り神ですが、本当の守りは計画的な予防と専門家による対策です。