大切に育てている庭木や家庭菜園の葉っぱに、いつの間にか穴が…。「もしかして、あの変な動きの虫?」そう、その正体はシャクトリムシかもしれません。ユニークな動きでどこか可愛らしさも感じますが、放置すると植物が丸裸にされてしまうこともある厄介な害虫です。本記事では、シャクトリムシの駆除方法を、薬剤を使わない手軽な方法から効果的な殺虫剤まで、状況に合わせて徹底解説します。発生原因や二度と寄せ付けないための予防策もご紹介するので、ぜひ最後まで読んで、大切な植物を守り抜きましょう。
まずは敵を知ろう!シャクトリムシの正体と生態

効果的な駆除を行うためには、まず相手のことを知るのが一番の近道です。ここでは、シャクトリムシがどんな虫なのか、その特徴や生態について解説します。
- シャクトリムシの奇妙な動きの秘密
- シャクトリムシの成虫と発生サイクル
- シャクトリムシと間違えやすい虫
- シャクトリムシに毒はあるの?
シャクトリムシの奇妙な動きの秘密
シャクトリムシ最大の特徴は、体を「∩」の字に曲げながら進む、まるで長さを測っているかのようなユニークな歩き方です。 この動きから「尺取り虫」という名前が付きました。 なぜこのような動きをするのかというと、一般的なイモムシにあるお腹のあたりの脚(腹脚)が退化して少ないためです。 この脚の構造上、体を伸縮させて移動するしかないのです。
また、シャクトリムシは驚異的な擬態能力を持っています。枝や葉っぱにじっと止まっていると、どれが虫でどれが本物の枝なのか見分けるのが非常に困難な種類もいます。 危険を察知すると、口から糸を吐いてぶら下がり、風に揺られて逃げることもあります。
シャクトリムシの成虫と発生サイクル
シャクトリムシは、実は「シャクガ」という蛾の幼虫です。 日本には800種類近くのシャクガが生息していると言われています。
シャクトリムシの発生サイクルは、一般的に以下の通りです。
- 卵: 成虫であるシャクガが、植物の葉の裏や枝、幹などに卵を産み付けます。 越冬は卵の状態で行う種類もいます。
- 幼虫(シャクトリムシ): 卵から孵化した幼虫が、植物の葉や新芽、時には花や果実も食べて成長します。 活動時期は春から秋(4月~10月頃)で、特に6月~7月と9月~10月に発生のピークを迎えることが多いです。 年に2~4回発生します。
- 蛹: 十分に成長した幼虫は、土の中や落ち葉の下などで蛹になります。
- 成虫(シャクガ): 蛹から羽化して成虫の蛾となり、また卵を産み付けます。
このサイクルを知ることで、どのタイミングで対策をすれば効果的かが見えてきます。
シャクトリムシと間違えやすい虫
庭で見かけるイモムシやケムシが全てシャクトリムシというわけではありません。特に間違えやすいのが、アオムシやヨトウムシの幼虫です。見分けるポイントはやはり「歩き方」。体を波打たせるように進むのがアオムシやヨトウムシ、体を大きく曲げて進むのがシャクトリムシです。また、シャクトリムシは毛のないイモムシ状のものがほとんどです。
シャクトリムシに毒はあるの?
「蛾の幼虫」と聞くと、ドクガのように毒があるのではないかと心配になる方もいるかもしれません。しかし、基本的にシャクトリムシ(シャクガの幼虫)に毒はありません。 そのため、素手で触っても問題になることはほとんどありません。ただし、中にはレンゲツツジなど毒のある植物を食べて体内に毒を蓄える特殊な種類(ヒョウモンエダシャクなど)も存在します。 また、虫が苦手な方や肌が敏感な方は、念のため直接触るのは避け、割り箸や手袋を使うと安心です。
【状況別】シャクトリムシの駆除方法

シャクトリムシを見つけたら、被害が広がる前にすぐに対処することが大切です。ここでは、発生状況に合わせた最適な駆除方法をご紹介します。
- 数が少ない場合:手軽にできる物理駆除
- 広範囲・大量発生した場合:薬剤を使った徹底駆除
- 自分での駆除が難しい場合:プロの業者に依頼する
数が少ない場合:手軽にできる物理駆除
シャクトリムシの数がまだ少ない初期段階であれば、薬剤を使わずに駆除することが可能です。ペットや小さなお子様がいて、薬剤の使用に抵抗がある方におすすめの方法です。
最もシンプルで確実なのは、割り箸やピンセットで一匹ずつ捕まえて駆除する方法です。 見つけ次第、取り除いてしまいましょう。シャクトリムシは枝に擬態していることが多いので、葉の裏や枝をよく観察するのが見つけるコツです。 また、木を軽く揺すってみると、驚いたシャクトリムシが糸を垂らして降りてくることがあるので、これも有効な探し方です。
広範囲・大量発生した場合:薬剤を使った徹底駆除
シャクトリムシが大量に発生してしまったり、背の高い木で手が届かなかったりする場合は、殺虫剤を使った駆除が効率的です。殺虫剤には大きく分けて2つのタイプがあります。
一つは、虫に直接吹きかけて駆除するスプレータイプの殺虫剤です。即効性が高く、見つけたシャクトリムシをすぐに退治したい場合に適しています。
もう一つは、植物の根元に撒くことで成分を吸い上げさせ、葉を食べた害虫を駆除する浸透移行性の薬剤です。 効果が長期間持続するのが特徴で、予防にも繋がります。 スプレーのかけ残しが心配な場合や、定期的なメンテナンスとしておすすめです。
どの薬剤を選ぶべきかについては、後の章で詳しく解説します。
自分での駆除が難しい場合:プロの業者に依頼する
「高木で自分では作業できない」「虫が苦手でどうしても触れない」「薬剤の使い方がよくわからない」といった場合は、害虫駆除の専門業者に依頼するのも一つの手です。
プロに依頼するメリットは、徹底的な駆除と再発防止策を講じてもらえる点です。 専門的な知識と道具で、素人では難しい場所の駆除も安全に行ってくれます。また、発生原因を特定し、今後のための的確なアドバイスをもらえるのも心強いポイントです。 費用はかかりますが、確実性と安心感を得たい場合には最適な選択肢と言えるでしょう。
【薬剤を使わない】安心なシャクトリムシ駆除・対策

家庭菜園で育てている野菜や、小さなお子様、ペットがいるご家庭では、できるだけ薬剤を使わずに駆除したいもの。ここでは、自然由来の成分などを利用した安心な駆除・対策方法をご紹介します。
- 木酢液や食酢を使った手作りスプレー
- 天敵を利用した自然な駆除方法
木酢液や食酢を使った手作りスプレー
シャクトリムシは、木酢液やお酢のニオイを嫌う傾向があります。 これらを利用して、手作りの忌避スプレーを作ることができます。
木酢液スプレー
木酢液は、炭を焼くときに出る煙を冷やして液体にしたもので、独特の燻製のような香りがします。 この香りが害虫を遠ざける効果が期待できます。 使用する際は、製品の表示に従って水で薄めてから、スプレーボトルに入れて植物全体に散布します。 濃度が濃すぎると植物を傷める可能性があるので注意が必要です。
食酢スプレー
ご家庭にある食酢でも代用可能です。 水で25倍~50倍程度に薄めて使用します。こちらも木酢液と同様に、植物に散布することでシャクトリムシを寄せ付けにくくする効果が期待できます。
これらの手作りスプレーは、殺虫効果というよりは忌避(きひ)効果がメインです。そのため、発生する前から定期的に散布して、シャクトリムシが寄り付きにくい環境を作っておくのが効果的です。
天敵を利用した自然な駆除方法
自然界には、シャクトリムシを食べてくれる天敵が存在します。例えば、鳥類(シジュウカラなど)、アシナガバチ、クモ、カマキリなどがシャクトリムシを捕食します。
庭に鳥がやってきやすいように餌台を設置したり、むやみに益虫(天敵となる虫)を殺さないようにしたりすることで、自然の力で害虫の数をコントロールできる可能性があります。殺虫剤を多用すると、こうした天敵まで殺してしまうことがあるため、薬剤の使用は最小限に留めることが、生態系のバランスを保つ上でも重要です。
【薬剤を使う】効果的なシャクトリムシ駆除剤の選び方

薬剤を使って効率的に駆除したい場合、どの製品を選べば良いか迷いますよね。ここでは、シャクトリムシに効果的な殺虫剤の種類と、おすすめの製品を具体的にご紹介します。
- 即効性重視なら「スプレータイプ」
- 予防と持続性なら「浸透移行性タイプ」
- 薬剤を使用する際の注意点
即効性重視なら「スプレータイプ」
目の前のシャクトリムシを今すぐ退治したい、という場合に最適なのがスプレータイプの殺虫剤です。直接吹きかけることで、素早く効果を発揮します。
おすすめのスプレー剤
- 住友化学園芸 ベニカAスプレー: 害虫に素早く効き、病気の予防効果も期待できる製品です。幅広い植物に使えるのが魅力です。
- アースガーデン アースジェット: ジェット噴射で高い木の枝にも届きやすく、広範囲の害虫に効果があります。
使用する際は、風のない日に、風上から散布するようにしましょう。植物全体、特に葉の裏側にもしっかりとかかるようにするのがポイントです。
予防と持続性なら「浸透移行性タイプ」
効果を長持ちさせ、今後の発生も予防したい場合には、浸透移行性の薬剤がおすすめです。 粒剤を株元に撒くタイプや、水で薄めて与える液体タイプがあります。
おすすめの浸透移行性剤
- 住友化学園芸 オルトランDX粒剤: 株元に撒くだけで、薬剤が根から吸収されて植物全体に行き渡り、葉を食べたシャクトリムシを駆除します。 効果が約1ヶ月持続し、アブラムシなど他の害虫にも効くため、予防薬として非常に優れています。 ただし、効果が植物の先端まで届くのには限界があり、背の高い木には向かない場合があります。
- 住友化学園芸 スミチオン乳剤: 水で薄めて散布するタイプの殺虫剤です。 即効性があり、高い木にも散布できるため、大量発生時に効果的です。 予防効果も期待できます。
これらの薬剤は、効果が長続きする分、使用できる植物が限られている場合があるので、購入前に必ずラベルを確認してください。
薬剤を使用する際の注意点
殺虫剤は正しく使わないと、植物を傷めたり、人体に影響が出たりする可能性があります。使用する際は、以下の点に必ず注意してください。
- ラベルをよく読む: 対象となる植物や害虫、希釈倍率、使用回数などを必ず確認する。
- 保護具を着用する: マスク、手袋、保護メガネなどを着用し、薬剤を吸い込んだり、皮膚に付着したりしないようにする。
- 風のない日に行う: 風が強いと薬剤が飛散し、近隣や自分にかかる恐れがあります。
- 時間帯を選ぶ: 日中の高温時を避け、朝夕の涼しい時間帯に散布するのがおすすめです。
- 保管方法: 子供やペットの手の届かない、直射日光の当たらない冷暗所で保管する。
シャクトリムシはなぜ発生する?原因と予防策

駆除が終わったら、次は二度とシャクトリムシを発生させないための対策が重要です。ここでは、シャクトリムシが発生する原因と、効果的な予防策について解説します。
- シャクトリムシが好む環境と植物
- 成虫(蛾)を寄せ付けない対策
- 卵のうちに駆除する冬の対策
シャクトリムシが好む環境と植物
シャクトリムシの親であるシャクガは、雑草が生い茂っていたり、葉が密集して風通しが悪かったりする場所を好んで卵を産み付けます。 また、シャクトリムシは非常に食欲旺盛で、様々な植物の葉を食べますが、特に好む植物があります。
シャクトリムシが好む植物の例
- 庭木・花木: マサキ、ニシキギ、ウメ、モモ、サクラ、ツツジ、バラなど
- 野菜・果樹: ナス、インゲンマメ、ミカンなどの柑橘類、クリ、リンゴ、ダイズなど
- ハーブ類: ミント、大葉(シソ)など
ご自宅にこれらの植物がある場合は、特に春から秋にかけて注意深く観察することが大切です。
成虫(蛾)を寄せ付けない対策
シャクトリムシの発生を防ぐには、親であるシャクガを寄せ付けないことが最も効果的です。
定期的な剪定と除草
木の枝や葉が密集していると、シャクガが隠れやすく、卵を産み付ける絶好の場所になります。定期的に剪定を行い、風通しを良くしましょう。 また、庭やプランター周りの雑草もこまめに抜いて、シャクガが好む薄暗く湿った環境を作らないことが重要です。
防虫ネットの活用
家庭菜園などで野菜を育てている場合は、防虫ネットで物理的にシャクガの侵入を防ぐのが非常に効果的です。 特に苗が小さいうちからネットをかけておくことで、産卵を防ぐことができます。
卵のうちに駆除する冬の対策
シャクガの種類によっては、卵や蛹の状態で冬を越します。 葉が落ちた冬の時期は、枝や幹の様子がよく見えるため、卵を見つけて駆除するチャンスです。
冬の間に、木の幹や枝の分かれ目などをよく観察し、卵の塊を見つけたら、ヘラなどで掻き落としてしまいましょう。また、木の根元の落ち葉の下などで蛹が越冬していることもあるため、落ち葉はこまめに掃除することが、翌春の発生を抑えるのに繋がります。
シャクトリムシ駆除に関するよくある質問

ここでは、シャクトリムシの駆除に関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。
シャクトリムシの駆除に効く薬は?
シャクトリムシの駆除には、市販の園芸用殺虫剤が有効です。即効性を求めるなら「ベニカAスプレー」などのスプレータイプ、持続性や予防効果を期待するなら「オルトランDX粒剤」や「スミチオン乳剤」などの浸透移行性タイプがおすすめです。 使用する植物に対応しているか、必ずラベルを確認してから使いましょう。
シャクトリムシは何に弱い?
シャクトリムシは、市販の殺虫剤のほか、木酢液やお酢のニオイを嫌います。 そのため、これらを水で薄めたものを散布することで、寄せ付けにくくする効果が期待できます。また、鳥やアシナガバチ、カマキリなどの天敵にも弱いです。
シャクトリムシはどこから来る?
シャクトリムシは、成虫である「シャクガ」が飛んできて、庭木やベランダの植物に卵を産み付けることで発生します。 シャクガは風通しの悪い場所や雑草が生い茂った場所を好むため、そうした環境があると寄ってきやすくなります。
シャクトリムシに酢は効きますか?
はい、効果が期待できます。 食酢を水で25~50倍程度に薄めてスプレーすることで、シャクトリムシを寄せ付けにくくする忌避効果があります。ただし、殺虫効果は弱いため、すでに大量発生している場合は殺虫剤との併用がおすすめです。
駆除したシャクトリムシの死骸の処理方法は?
手で捕殺した場合や、薬剤で駆除した場合の死骸は、そのまま放置せず、土に埋めるか、ビニール袋などに入れてゴミとして処分しましょう。 放置すると、他の害虫を呼び寄せる原因になる可能性があります。
まとめ

- シャクトリムシはシャクガの幼虫で毒はない。
- ユニークな動きは腹脚が少ないため。
- 少ない場合は割り箸などで捕殺するのが確実。
- 大量発生時は殺虫剤の使用が効果的。
- 即効性ならスプレータイプがおすすめ。
- 持続性と予防なら浸透移行性粒剤が良い。
- 薬剤を使わないなら木酢液やお酢スプレーが有効。
- 鳥やカマキリなどの天敵も駆除してくれる。
- 発生原因は成虫(蛾)の産卵によるもの。
- 風通しの悪い場所や雑草が多い場所を好む。
- 予防には定期的な剪定と除草が重要。
- 防虫ネットで物理的に侵入を防ぐのも効果大。
- 冬の間に卵や蛹を駆除すると春の発生を抑えられる。
- 落ち葉の掃除も越冬させないために大切。
- 困ったらプロの駆除業者に相談するのも手。