2021年に放送され、大きな話題を呼んだNHK大河ドラマ「青天を衝け」。主演の吉沢亮さんの熱演や、近代日本経済の父・渋沢栄一の生涯を描いた希望に満ちたストーリーは、多くの視聴者から高い評価を得ました。しかし、その一方で「見てはいけない」「つまらない」といった批判的な声が上がっているのも事実です。一体なぜなのでしょうか?
本記事では、「青天を衝け」が見てはいけないと言われる理由を、史実との違いや脚本への批判など、様々な角度から徹底的に掘り下げていきます。視聴を迷っている方や、作品に対する多様な意見を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ?「青天を衝け」が見てはいけないと言われる5つの理由

高い評価を得た一方で、なぜ「青天を衝け」は「見てはいけない」とまで言われてしまうのでしょうか。その背景には、主に5つの理由が考えられます。歴史の描き方からストーリー展開まで、視聴者が抱いた疑問や不満のポイントを詳しく見ていきましょう。
- 理由1:主人公・渋沢栄一が美化されすぎている?
- 理由2:史実との相違点や大胆な脚色が多すぎる
- 理由3:展開が早く「ダイジェスト感」が否めない
- 理由4:ホームドラマ要素が強く大河ドラマらしくない
- 理由5:特定の思想が反映されているとの指摘
理由1:主人公・渋沢栄一が美化されすぎている?
「青天を衝け」を見てはいけないと言われる最も大きな理由の一つが、主人公・渋沢栄一の描かれ方です。ドラマでは、常にエネルギッシュで、日本の未来を憂い、人々を幸せにしようと奮闘する理想的な人物として描かれていました。その姿は多くの視聴者に感動を与えましたが、歴史上の人物としての渋沢栄一の全てを描いていたわけではありません。
例えば、渋沢栄一は生涯にわたって多くの女性と関係を持ったと言われており、その女性関係の派手さは有名な話です。 ドラマでは妻の千代(橋本愛)との愛情深い関係が中心に描かれましたが、こうした負の側面はほとんど触れられませんでした。 また、実業家としての彼は、時には冷徹ともいえる判断を下す場面もあったはずです。しかし、ドラマでは常に人情味あふれる人物として描かれており、その点が「美化しすぎではないか」「綺麗すぎる」という批判につながりました。 英雄の光の部分だけでなく、影の部分も描いてこそ人間的な深みが生まれると考える視聴者にとって、この点は物足りなく感じられたのかもしれません。
理由2:史実との相違点や大胆な脚色が多すぎる
大河ドラマは歴史に基づいたフィクションであり、ある程度の脚色はつきものです。しかし、「青天を衝け」では、その脚色が大胆すぎると感じた歴史ファンが少なくありませんでした。特に指摘されたのが、渋沢栄一と徳川慶喜(草彅剛)の関係性です。
ドラマでは、二人が運命的な出会いを果たし、深い信頼関係で結ばれていく様子が感動的に描かれました。 しかし、史実では二人の身分には大きな隔たりがあり、ドラマで描かれたような頻繁な交流や深い精神的な結びつきがあったとは考えにくい、という意見があります。 また、栄一の幼なじみや家族など、架空の人物や創作のエピソードも多く、史実を重視する視聴者からは「嘘だらけ」「ご都合主義」といった厳しい声も上がりました。 物語を面白くするための演出であることは理解できても、歴史的事実との乖離が大きいと感じる人にとっては、受け入れがたい部分があったようです。
理由3:展開が早く「ダイジェスト感」が否めない
渋沢栄一は91歳という長寿を全うし、その生涯は幕末から昭和初期までという激動の時代に及びます。 この長大な生涯を全41話という限られた放送回で描くため、どうしても展開が駆け足になってしまった感は否めません。
特にドラマの後半、栄一が実業家として次々と会社を設立していく様は、まるで彼の功績をダイジェストで見ているかのようでした。 一つ一つの出来事が丁寧に描かれるというよりは、次から次へと事象が羅列されていくような印象を受けた視聴者も多かったようです。 そのため、「一つ一つのエピソードが薄い」「感情移入する前に話が進んでしまう」といった不満の声が見られました。じっくりと腰を据えて重厚な物語を楽しみたい視聴者にとっては、このテンポの速さが物足りなさを感じさせる一因となったのでしょう。
理由4:ホームドラマ要素が強く大河ドラマらしくない
「青天を衝け」は、血洗島の家族とのコミカルなやり取りや、妻・千代との心温まるエピソードなど、ホームドラマ的な要素が多く盛り込まれていました。 これは、渋沢栄一という人物の人間的な魅力を伝える上で効果的な演出であり、ドラマを親しみやすいものにしていました。しかし、従来の重厚で骨太な大河ドラマを期待していた視聴者からは、「朝ドラのようだ」「大河ドラマらしくない」といった批判もありました。
特に、物語序盤の農村での暮らしが長く描かれたことに対し、「いつになったら話が動くのか」と退屈に感じた人もいたようです。 政治的な駆け引きや合戦シーンといった、いわゆる“大河ドラマらしい”スペクタクルを求めていた層にとっては、家族愛や人情に重きを置いた作風が期待外れに映ってしまったのかもしれません。
理由5:特定の思想が反映されているとの指摘
渋沢栄一は「日本資本主義の父」と称される人物です。 ドラマでは、彼が日本の近代化と経済発展に尽力する姿が、一貫して肯定的に描かれました。未来を信じ、社会を豊かにするために突き進む栄一の姿は、まさに希望の象徴でした。
しかし、この描き方に対して、一部の視聴者からは「近代資本主義を手放しで礼賛しすぎている」という批判的な見方も存在します。資本主義がもたらした光だけでなく、格差や公害といった影の部分にはほとんど触れられず、あまりに楽観的で一面的ではないか、という指摘です。 また、徳川家康(北大路欣也)がナビゲーターとして登場し、物語を解説する演出も、「説教臭い」と感じる人がいました。 このように、作品の根底にある思想やメッセージ性に違和感を覚えたことも、「見てはいけない」と言われる理由の一つとして考えられます。
「見てはいけない」は嘘?「青天を衝け」が高く評価される魅力

ここまで「見てはいけない」と言われる理由を解説してきましたが、もちろん「青天を衝け」は批判ばかりの作品ではありません。むしろ、多くの視聴者から熱狂的に支持され、数々の賞を受賞するなど、非常に高く評価された名作です。 ここからは、批判的な意見とは対照的に、「青天を衝け」が持つ圧倒的な魅力についてご紹介します。
- 魅力1:吉沢亮の圧倒的な演技力と魅力的なキャラクター
- 魅力2:「近代日本経済の父」の生涯をテンポよく学べる
- 魅力3:豪華なキャスト陣による魅力的な登場人物たち
- 魅力4:希望に満ちた未来志向のストーリー
魅力1:吉沢亮の圧倒的な演技力と魅力的なキャラクター
「青天を衝け」の成功を語る上で、主演・吉沢亮さんの存在は欠かせません。10代のエネルギッシュで純粋な青年期から、日本の未来を背負う実業家としての壮年期、そして重厚なオーラを放つ晩年まで、91年という長い生涯を見事に演じきりました。 その表情の豊かさ、力強い眼差し、そして心を揺さぶるセリフ回しは、多くの視聴者を魅了しました。
特に、感情を爆発させるシーンでの演技は圧巻で、SNSなどでも「吉沢亮の演技がすごい」「栄一が乗り移っているかのよう」と絶賛の声が相次ぎました。彼が演じたからこそ、渋沢栄一というキャラクターがこれほどまでに生き生きと、そして魅力的に輝いたのは間違いありません。吉沢亮さんの代表作の一つとして、長く記憶されることでしょう。
魅力2:「近代日本経済の父」の生涯をテンポよく学べる
渋沢栄一が関わった企業は500以上、その他にも約600もの社会公共事業に貢献したと言われています。 その功績は多岐にわたり、全てを理解するのは容易ではありません。しかし、「青天を衝け」は、その複雑で膨大な業績を、非常に分かりやすくテンポの良い物語にまとめ上げていました。
幕末の動乱から明治維新、そして近代国家として日本が発展していく過程を、栄一の視点を通して追体験できるため、歴史の大きな流れを楽しく学ぶことができます。 批判の理由として挙げた「展開の速さ」も、見方を変えれば、難解になりがちな経済史を飽きさせずに見せるための巧みな構成だったと言えるでしょう。歴史、特に近代経済史の入門編として、これほど優れた教材はないかもしれません。
魅力3:豪華なキャスト陣による魅力的な登場人物たち
「青天を衝け」の魅力は、主役だけにとどまりません。脇を固める豪華なキャスト陣もまた、大きな見どころでした。特に、もう一人の主人公とも言える徳川慶喜を演じた草彅剛さんの演技は、多くの称賛を集めました。 ミステリアスでありながら人間的な弱さも併せ持つ、複雑な内面の慶喜を見事に体現し、物語に深い奥行きを与えました。
その他にも、栄一の盟友・渋沢喜作役の高良健吾さん、妻・千代役の橋本愛さん、栄一を見出す平岡円四郎役の堤真一さん、そして五代才助(友厚)役のディーン・フジオカさんなど、実力派俳優たちがそれぞれの役柄を魅力的に演じ、重層的な人間ドラマを織りなしていました。 彼らの熱演がぶつかり合う様は、まさに圧巻の一言です。
魅力4:希望に満ちた未来志向のストーリー
「青天を衝け」が多くの人々の心を掴んだ最大の理由は、その未来志向で希望に満ちたストーリーにあるでしょう。 幕末から明治、大正、昭和という激動の時代、日本は多くの困難に直面しました。しかし、栄一はどんな逆境にあっても決して諦めず、「みんなが嬉しいのが一番」という信念を胸に、より良い未来を信じて走り続けました。
その姿は、コロナ禍という先行き不透明な時代を生きていた私たちに、大きな勇気と希望を与えてくれました。 誰かを蹴落とすのではなく、皆で豊かになろうとする「合本主義」の考え方は、現代社会が抱える問題に対する一つの答えを示しているようにも感じられます。見終わった後に、前向きな気持ちになれる。それこそが、「青天を衝け」が持つ最大の魅力と言えるでしょう。
「青天を衝け」の評価は?世間の声や評判を調査

では、実際のところ「青天を衝け」は世間からどのように評価されたのでしょうか。視聴率や受賞歴、そしてSNSでのリアルな口コミを通して、その評判を客観的に見ていきましょう。
- 視聴率の推移
- 輝かしい受賞歴
- SNSでのポジティブな口コミ・感想
- SNSでのネガティブな口コミ・感想
視聴率の推移
「青天を衝け」の視聴率は、放送当時大きな注目を集めました。初回の世帯平均視聴率は関東地区で20.0%を記録。 これは、2013年の「八重の桜」以来8年ぶりとなる初回20%超えの快挙であり、大きな期待の中でスタートしたことがうかがえます。
その後、視聴率は10%台半ばで安定して推移し、一時は12%台まで落ち込むこともありましたが、最終回に向けて再び上昇。 全41話の期間平均総合視聴率は関東地区で19.6%と、近年の大河ドラマの中では高い水準を記録しました。 この数字は、一部で批判の声はあったものの、多くの視聴者が継続して物語を楽しんでいたことを示しています。
輝かしい受賞歴
「青天を衝け」の評価の高さは、その受賞歴にも表れています。特に特筆すべきは、優れたテレビ番組に贈られる第30回橋田賞を受賞したことです。主演の吉沢亮さんと、徳川慶喜役の草彅剛さんも同賞を受賞し、作品・俳優ともに高い評価を受けました。
また、テレビドラマの国際コンクールである「東京ドラマアウォード2022」では、草彅剛さんが助演男優賞を、脚本を担当した大森美香さんが脚本賞を受賞しています。こうした客観的な評価は、「青天を衝け」が国内外で認められた質の高い作品であったことの証明と言えるでしょう。
SNSでのポジティブな口コミ・感想
放送当時、SNS、特にTwitterでは毎週のように「#青天を衝け」がトレンド入りし、多くの視聴者が感想を投稿していました。ポジティブな意見としては、以下のような声が多く見られました。
- 「吉沢亮の演技が圧巻。栄一の成長から目が離せない!」
- 「草彅剛の慶喜が素晴らしすぎる。ミステリアスで魅力的。」
- 「ストーリーがテンポ良くて面白い。近代史の勉強になる。」
- 「登場人物がみんな魅力的。キャストが豪華すぎる。」
- 「毎週、栄一から元気と勇気をもらっている。明日からまた頑張ろうと思えるドラマ。」
やはり、俳優陣の演技、特に吉沢亮さんと草彅剛さんへの賛辞が目立ちました。また、ストーリーの面白さや、前向きなメッセージ性が多くの視聴者の心に響いていたことがわかります。
SNSでのネガティブな口コミ・感想
一方で、もちろんネガティブな意見も存在しました。その多くは、本記事の前半で紹介した「見てはいけない理由」と共通するものです。
- 「渋沢栄一を美化しすぎ。もっとダークな部分も描いてほしかった。」
- 「史実と違う部分が多くて冷める。もう少し丁寧に描いてほしい。」
- 「展開が早すぎてダイジェストみたい。感情移入できない。」
- 「ホームドラマ感が強くて、大河っぽくないのが残念。」
- 「家康の解説が説教臭くて苦手…。」
これらの意見は、主に歴史に詳しいファンや、従来の重厚な大河ドラマを好む層から出ていたようです。作品に何を求めるかによって、評価が大きく分かれる典型的な例と言えるかもしれません。
「青天を衝け」は結局見るべき?どんな人におすすめ?

ここまで様々な角度から「青天を衝け」を分析してきましたが、結局のところ、このドラマは「見るべき」なのでしょうか。結論から言うと、多くの人にとって見る価値のある素晴らしい作品です。しかし、人によっては合わない可能性もあります。ここでは、どんな人におすすめで、どんな人が慎重に考えた方が良いかをまとめました。
- 「青天を衝け」の視聴をおすすめする人
- 「青天を衝け」の視聴を慎重に考えた方がいい人
「青天を衝け」の視聴をおすすめする人
以下のような方には、「青天を衝け」を心からおすすめします。
- 歴史、特に幕末から明治の時代に興味を持ち始めたばかりの人
難しい歴史背景や経済の話も、エンターテイメントとして楽しく学ぶことができます。歴史への入り口として最適な作品です。 - 元気が出るサクセスストーリーが好きな人
主人公・栄一が次々と困難を乗り越え、夢を叶えていく姿は爽快です。見終わった後に、前向きな気持ちになれること間違いなしです。 - 豪華キャストの競演を楽しみたい人
吉沢亮さん、草彅剛さんをはじめ、日本を代表する俳優陣の素晴らしい演技を堪能できます。演技派俳優たちのぶつかり合いは必見です。 - 新しい時代を切り拓く物語にワクワクする人
古い常識を打ち破り、新しい日本のために奮闘する人々の熱いドラマに胸が熱くなるでしょう。
「青天を衝け」の視聴を慎重に考えた方がいい人
一方で、以下のような方は、少し期待と違うと感じるかもしれません。
- 厳密な史実性を求める歴史ファン
ドラマチックな脚色や創作部分が多いため、史実との違いが気になる方は楽しめない可能性があります。 - 重厚でシリアスな作風の大河ドラマを期待する人
コミカルなシーンやホームドラマ的な要素も多いため、常に緊張感が続くような作風を好む方には物足りないかもしれません。 - 主人公の負の側面や人間臭さも描いてほしい人
主人公がかなり理想的に描かれているため、英雄の光と影の両面を見たい方には、少し綺麗すぎると感じる可能性があります。
よくある質問

「青天を衝け」の脚本は誰ですか?
「青天を衝け」の脚本は、大森美香(おおもり みか)さんが担当しました。大森さんは、NHK連続テレビ小説「あさが来た」や「風のハルカ」、ドラマ「眩(くらら)〜北斎の娘〜」など、数々の人気作を手掛けてきた脚本家です。「あさが来た」も幕末から明治にかけて活躍した実業家・広岡浅子をモデルにしており、近代経済史を描く手腕には定評があります。
「青天を衝け」の時代設定はいつですか?
「青天を衝け」は、主人公・渋沢栄一の生涯を描いているため、時代設定は非常に長期間にわたります。物語は、栄一が生まれた天保11年(1840年)から始まり、彼が亡くなる昭和6年(1931年)までを描いています。 具体的には、江戸時代末期(幕末)の動乱期から、明治、大正、そして昭和初期までの日本の近代化の歩みそのものが舞台となっています。
渋沢栄一は何をした人ですか?
渋沢栄一は、「日本資本主義の父」と称される実業家です。 生涯において、第一国立銀行(現・みずほ銀行)をはじめとする約500もの企業の設立・経営に関わりました。 また、東京証券取引所や東京商工会議所の設立にも尽力しました。 さらに、利益追求だけでなく、教育機関や福祉施設など約600もの社会公共事業にも貢献し、「道徳経済合一説」を唱え、倫理と経済の両立を目指した人物として知られています。
「青天を衝け」の視聴方法は?
「青天を衝け」は、NHKの公式動画配信サービス「NHKオンデマンド」で全話視聴することが可能です。NHKオンデマンドは、月額料金で見放題の「まるごと見放題パック」に加入するか、1話ずつ単品で購入することで視聴できます。Amazonプライム・ビデオやU-NEXTなどの動画配信サービスでも、「NHKオンデマンド」のチャンネルに登録することで視聴できる場合があります。
まとめ

- 「青天を衝け」が見てはいけない理由は主に5つ。
- 主人公・渋沢栄一が美化されすぎているとの批判がある。
- 史実との違いや大胆な脚色に違和感を覚える声も。
- 展開が早く、ダイジェスト感があるという指摘。
- ホームドラマ要素が強く、大河らしくないとの意見。
- 近代資本主義を礼賛しすぎているという見方もある。
- 一方で、吉沢亮の圧倒的な演技力は高く評価された。
- 近代経済史をテンポよく学べるという魅力がある。
- 草彅剛をはじめとする豪華キャストの競演も見どころ。
- 未来志向で希望に満ちたストーリーが多くの共感を呼んだ。
- 視聴率は初回20%超え、期間平均も高水準を記録。
- 橋田賞など数々の賞を受賞し、作品の質は高い。
- 歴史初心者や元気をもらいたい人には特におすすめ。
- 厳密な史実性を求める歴史ファンは注意が必要。
- 最終的には多くの人に愛された名作大河ドラマである。