大切に育てているバラや野菜、観葉植物に、赤い小さな虫がびっしり…。「これって何?」「どうやって駆除すればいいの?」と、不安でいっぱいになっていませんか?その赤い虫の正体は、植物の汁を吸って弱らせてしまう「アブラムシ」かもしれません。放置しておくと、あっという間に増えて植物を枯らしてしまうこともある厄介な害虫です。
でも、安心してください。この記事を読めば、赤いアブラムシの正体から、農薬を使わない安全な駆除方法、効果的な市販薬、そして二度と発生させないための徹底的な予防策まで、すべて分かります。あなたの大切な植物を守るための知識を、分かりやすく丁寧にお伝えします。さあ、一緒にアブラムシ問題を解決しましょう!
気持ち悪い!赤いアブラムシの正体と被害

まずは敵を知ることから始めましょう。植物に付いている赤い虫が本当にアブラムシなのか、そして放置するとどのような被害があるのかを解説します。正しい知識が、効果的な駆除への第一歩です。
この章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 赤いアブラムシの正体は?
- 放置は危険!アブラムシが植物に与える2つの被害
赤いアブラムシの正体は?
植物に付く赤い虫の多くは、その名の通り「アブラムシ」の一種です。アブラムシには様々な種類がおり、体色も緑色、黒色、茶色、そして赤色と多様です。 赤いアブラムシは、特にバラ科の植物やハイビスカス、野菜など多くの植物に発生します。体長は2mm~4mm程度と非常に小さいですが、群れで発生するため、見つけたときにはびっしりと付いていることが多いのが特徴です。
アブラムシは春から秋にかけて、特に4月~6月と9月~10月頃に活発に活動し、驚異的な繁殖力で増えていきます。 暖かい時期はメスだけで子どもを産む「単為生殖」を行い、1匹のメスが数十匹の子どもを産むことも。 そのため、数匹見つけたと思ったら、あっという間に大群になってしまうのです。
よく似た虫に「ハダニ」がいますが、ハダニはクモの仲間で、アブラムシよりもさらに小さく(0.5mm程度)、動きが素早いのが特徴です。被害を受けた葉に白いカスリ状の斑点ができる場合はハダニの可能性が高いでしょう。
放置は危険!アブラムシが植物に与える2つの被害
「少しぐらいなら大丈夫だろう」とアブラムシを放置するのは絶対にやめましょう。アブラムシは植物にとって、深刻な被害をもたらす恐ろしい害虫です。被害は大きく分けて「直接被害」と「間接被害」の2つがあります。
吸汁による直接的な被害
アブラムシの最も直接的な被害は、植物の汁を吸うことです。 アブラムシは細長い口を植物の茎や葉、新芽などに突き刺し、栄養分が豊富な師管液を吸い取ってしまいます。栄養を奪われた植物は生育が悪くなり、葉が縮れたり、花が咲かなくなったり、最悪の場合は枯れてしまいます。 特に、これから成長する新芽や若葉は柔らかくて狙われやすく、被害が集中すると植物全体の成長が著しく阻害されます。
「すす病」やウイルス病を媒介する間接的な被害
アブラムシの被害は、吸汁だけではありません。間接的な被害も非常に厄介です。アブラムシは、お尻から「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘い排泄物を出します。 この甘露が葉や茎に付着すると、それを栄養源にして黒いカビが発生することがあります。これが「すす病」です。 すす病になると、葉が黒いすすで覆われたようになり、光合成が妨げられて植物の生育がさらに悪化します。
さらに恐ろしいのが、ウイルス病の媒介です。 アブラムシはウイルスに感染した植物の汁を吸った後、健康な植物に移動して汁を吸うことで、ウイルスを次々と広めてしまいます。 モザイク病などが代表的で、一度ウイルス病に感染すると治療法はなく、その植物は処分するしかありません。 このように、アブラムシは植物にとってまさに「病気の運び屋」なのです。
【即効性あり】赤いアブラムシの駆除方法7選

赤いアブラムシの恐ろしさが分かったところで、いよいよ具体的な駆除方法を見ていきましょう。ここでは、ご家庭で簡単に試せる方法から、効果の高い薬剤まで、7つの方法を厳選してご紹介します。状況に合わせて最適な方法を選んでください。
この章で紹介する駆除方法は以下の通りです。
- まずは物理的に取り除く
- 【農薬を使わない】安全な手作りスプレーでの駆除方法
- 【頼れる味方】天敵に食べてもらう
- 【効果てきめん】市販の薬剤で駆除する
まずは物理的に取り除く
アブラムシの数がまだ少ない初期段階であれば、物理的に取り除くのが最も手軽で確実な方法です。薬剤を使いたくない方や、今すぐに対処したい場合に有効です。
テープでペタペタ取る
セロハンテープやガムテープなどの粘着テープを使って、アブラムシを貼り付けて取り除く方法です。 指に粘着面を外側にして巻き付け、アブラムシがいる場所を軽く叩くようにしてくっつけていきます。植物を傷つけないように、粘着力が強すぎないテープを選ぶのがコツです。手軽にできますが、大量発生している場合は根気が必要です。
水で勢いよく洗い流す
ホースのシャワーや霧吹きを使って、水圧でアブラムシを洗い流す方法も効果的です。 特に葉の裏にびっしり付いている場合に有効です。ただし、水圧が強すぎると植物を傷めてしまう可能性があるので、水量を調整しながら行いましょう。洗い流されたアブラムシが他の植物に移らないように注意も必要です。
【農薬を使わない】安全な手作りスプレーでの駆除方法
「野菜やハーブに薬剤は使いたくない」「小さな子供やペットがいるから安全な方法がいい」という方には、ご家庭にあるもので作れる手作りスプレーがおすすめです。手軽に作れて環境にも優しい駆除方法です。
牛乳スプレーの作り方と使い方
牛乳を使ったスプレーは、アブラムシ駆除の代表的な自然農薬です。牛乳が乾くときに膜を作り、アブラムシの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させる効果があります。
- 作り方: 牛乳と水を1:1の割合で混ぜるだけ。
- 使い方: スプレーボトルに入れ、アブラムシに直接、まんべんなく吹きかけます。
- 注意点: 効果を発揮させるには、牛乳がしっかり乾く必要があります。そのため、よく晴れた日の午前中に散布するのがおすすめです。 散布後、そのまま放置すると牛乳が腐敗して悪臭やカビの原因になるため、駆除できたら水でしっかりと洗い流してください。
石鹸水(油石鹸水)スプレーの作り方と使い方
食器用洗剤や石鹸を水で薄めたものも、アブラムシ駆除に有効です。界面活性剤の力で、アブラムシの体の表面を覆う油分を溶かし、乾燥させたり窒息させたりする効果が期待できます。さらに油を加えた「油石鹸水」はより効果が高いとされています。
- 作り方(油石鹸水):
- 空のペットボトルに食器用洗剤をキャップ1杯、サラダ油をキャップ2杯入れる。
- 水(約1リットル)を加えてよく振って混ぜる。
- 泡が落ち着いたら、さらに水を加えて合計2リットル程度にして再度混ぜる。
- 使い方: スプレーボトルでアブラムシに直接吹きかけます。
- 注意点: 濃度が高すぎると植物にダメージを与える可能性があります。使用後は牛乳スプレー同様、水で洗い流すのが安心です。 植物に使う前に、目立たない葉で試してから全体に使うと良いでしょう。
木酢液スプレーの作り方と使い方
木酢液は、木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りが特徴です。 この香りをアブラムシが嫌うため、忌避(寄せ付けない)効果が期待できます。 殺虫効果は直接的にはありませんが、予防として使うのに適しています。
- 作り方: 市販の木酢液を、製品の表示に従って水で200~500倍程度に薄めます。
- 使い方: スプレーボトルに入れ、葉の表裏や茎に定期的に(週に1回程度)散布します。
- 注意点: 木酢液は酸性度が強いため、必ず薄めて使用してください。 原液で使うと植物が枯れてしまうことがあります。土壌改良効果も期待できますが、使いすぎには注意が必要です。
【頼れる味方】天敵に食べてもらう
自然の生態系を利用した、究極にエコな駆除方法です。アブラムシにはたくさんの天敵がいます。これらの益虫を味方につければ、薬剤を使わずにアブラムシの数をコントロールできます。
テントウムシを味方につける
アブラムシの天敵として最も有名なのがテントウムシです。特にナナホシテントウは、成虫だけでなく幼虫もアブラムシを大好物として食べます。成虫は1日に100匹近くのアブラムシを食べるとも言われています。 庭でテントウムシを見かけたら、むやみに駆除せず、大切にしましょう。テントウムシが好むキク科の植物(カモミールなど)を近くに植えておくと、集まってきやすくなります。天敵を利用した防除は、環境への負荷が最も少ない方法と言えるでしょう。
【効果てきめん】市販の薬剤で駆除する
「大量発生してしまって手に負えない」「すぐにでも根絶したい」という場合には、市販の殺虫剤を使うのが最も確実で速効性があります。用途に合わせてスプレータイプと粒剤タイプを選びましょう。
スプレータイプのおすすめ薬剤(ベニカXファインスプレーなど)
見つけたアブラムシに直接噴射して駆除するタイプです。速効性が高く、すぐに効果を実感できます。
住友化学園芸の「ベニカXファインスプレー」は、アブラムシに約1ヶ月の持続効果があり、病気の予防もできるため非常に人気があります。 害虫に直接かけるだけでなく、植物全体に散布することで、薬剤が浸透し、内側から植物を守る効果(浸透移行性)も期待できます。 使用する際は、風のない日に、マスクや手袋を着用し、周囲に飛散しないよう注意してください。
粒剤タイプのおすすめ薬剤(オルトラン粒剤など)
土に混ぜたり、株元にまいたりして使用するタイプです。薬剤の成分が根から吸収され、植物全体に行き渡ります。 これにより、植物の汁を吸ったアブラムシを駆除することができます。効果が長期間持続するのが最大のメリットです。
住友化学園芸の「GFオルトラン粒剤」は、アブラムシだけでなく、様々な害虫に効果があり、効果が約2~3週間持続するため、予防としても非常に有効です。 野菜などに使用する場合は、収穫までの使用回数や時期が定められているので、必ず製品ラベルの指示を守って使用してください。
もう発生させない!赤いアブラムシの徹底予防策

アブラムシを一度駆除しても、環境が変わらなければ再び発生してしまう可能性があります。大切なのは、アブラムシが「住みにくい」環境を作ること。ここでは、今日から実践できる効果的な予防策をご紹介します。
この章では、以下の内容について詳しく解説します。
- アブラムシが発生する原因とは?
- 今日からできる!アブラムシを寄せ付けない5つの習慣
アブラムシが発生する原因とは?
アブラムシの発生を防ぐには、まず彼らがどのような環境を好むのかを知ることが重要です。主な原因は「肥料」と「風通し」にあります。
窒素肥料の与えすぎ
植物の成長を促すために与える肥料ですが、特に「窒素(チッソ)」成分の多い肥料を与えすぎると、アブラムシの発生を助長してしまいます。 なぜなら、窒素分が多いと植物体内のアミノ酸が増加し、これがアブラムシの大好物だからです。 良かれと思って与えた肥料が、結果的にアブラムシを呼び寄せるご馳走になってしまうのです。
風通しの悪い環境
葉が密集して風通しが悪く、湿気がこもりやすい場所は、アブラムシにとって絶好の隠れ家であり、繁殖場所となります。 特に葉の裏側は天敵からも見つかりにくく、アブラムシが安心して増えることができる環境です。また、日当たりが悪い場所も同様に好みます。
今日からできる!アブラムシを寄せ付けない5つの習慣
アブラムシの好む環境がわかったら、次は具体的な対策です。少しの工夫で、アブラムシが寄り付きにくい環境を作ることができます。
肥料のやり方を見直す
まずは肥料管理の見直しから。窒素過多にならないよう、肥料は規定量を守り、与えすぎないようにしましょう。 特に、植物の成長が緩やかになる時期は、肥料を控えめにするのがポイントです。有機肥料を使うなど、ゆっくりと効果が現れるタイプの肥料を選ぶのも良い方法です。
風通しを良くする(剪定)
植物の株間を適切にとり、密集させないようにしましょう。 茂りすぎた枝や葉は、思い切って剪定(せんてい)して、株の中心部まで風と光が通るようにしてあげてください。これだけで、アブラムシの発生を大幅に抑えることができます。病気の予防にも繋がるので、一石二鳥です。
防虫ネットを活用する
特に家庭菜園で野菜を育てている場合、目の細かい防虫ネットでトンネルを作るのが非常に効果的です。 物理的にアブラムシの侵入を防ぐことができるため、卵を産み付けられる心配もありません。ただし、受粉が必要な野菜の場合は、花が咲く時期にはネットを外すなどの工夫が必要です。
キラキラ光るものを置く(シルバーマルチなど)
アブラムシは、キラキラと乱反射する光を嫌う習性があります。 この習性を利用して、植物の株元にシルバーマルチ(銀色の農業用シート)やアルミホイルを敷いておくと、アブラムシが寄り付きにくくなります。 地温の上昇を抑える効果や、雑草防止の効果も期待できます。
コンパニオンプランツを植える
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることでお互いに良い影響を与え合う植物のことです。アブラムシ対策としては、香りの強いハーブ類が有効です。 例えば、マリーゴールド、ミント、カモミール、ニンニクなどを近くに植えると、その香りを嫌ってアブラムシが寄り付きにくくなります。見た目も華やかになり、ガーデニングの楽しみも増えるでしょう。
アブラムシに関する豆知識

駆除や予防法だけでなく、アブラムシの生態についてもう少し詳しく知ると、ガーデニングがさらに面白くなるかもしれません。ここでは、アブラムシにまつわるちょっとした豆知識をご紹介します。
アブラムシとアリの意外な共生関係
アブラムシがいる場所に、よくアリが集まっているのを見かけませんか?これは偶然ではありません。実は、アブラムシとアリは「共生関係」にあります。 アブラムシは排泄物として甘い「甘露」を出しますが、アリはこの甘露が大好きです。 アリは甘露をもらう代わりに、アブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブなどを追い払い、アブラムシを守ってあげます。 まるで、アブラムシが牧場の牛で、アリが牧場主のような関係です。そのため、植物にアリがたくさんいる場合は、アブラムシが発生しているサインかもしれません。
アブラムシが黄色い色に集まる習性
アブラムシには、黄色い色に引き寄せられるという面白い習性があります。 この習性を利用したのが、市販されている「黄色い粘着シート」です。 黄色でアブラムシをおびき寄せ、粘着シートで捕獲するという仕組みです。物理的な駆除方法の一つとして、畑やビニールハウスなどで広く利用されています。もし庭に黄色いものを置く場合は、アブラムシが集まってこないか少し注意して見てみると良いかもしれません。
赤いアブラムシ駆除に関するよくある質問

Q. 赤いアブラムシと赤いハダニ(タカラダニ)の違いは何ですか?
A. 赤いアブラムシは体長2~4mm程度の昆虫で、動きは比較的ゆっくりです。一方、赤いハダニ(タカラダニなど)は体長0.5mm~1mm程度と非常に小さく、クモの仲間です。動きが素早く、葉に白いカスリ状の食害痕を残すのが特徴です。見分けるポイントは、大きさと動きの速さ、そして被害の痕です。
Q. 駆除した後の植物の手入れはどうすれば良いですか?
A. アブラムシを駆除した後は、まず被害を受けた葉や枯れた部分を取り除きましょう。牛乳スプレーや石鹸水を使った場合は、水でしっかりと洗い流してください。 アブラムシの排泄物(甘露)が残っていると、すす病の原因になるため、葉の裏まで丁寧に洗い流すことが大切です。その後は、風通しを良くし、植物が元気になるように適切な水やりと肥料管理を心がけてください。
Q. 牛乳スプレーはなぜ効くのですか?使用後の注意点は?
A. 牛乳スプレーは、牛乳に含まれる脂肪分が乾燥する際に膜を作り、アブラムシの呼吸器官である気門を塞いで窒息させることで駆除します。 効果を発揮させるためには、よく晴れた日に散布し、しっかりと乾燥させることが重要です。 使用後の最大の注意点は、必ず水で洗い流すことです。そのまま放置すると牛乳が腐敗し、悪臭を放ったり、カビや他の病原菌を呼び寄せたりする原因になります。
Q. 木酢液に殺虫効果はありますか?
A. 木酢液に直接的な殺虫効果はほとんど期待できません。 主な効果は、その独特の燻製のような香りを害虫が嫌うことによる「忌避効果(寄せ付けない効果)」です。 そのため、発生してしまったアブラムシを退治するというよりは、発生を予防する目的で定期的に散布するのが効果的な使い方です。
Q. 薬剤を使う際の注意点はありますか?
A. 薬剤を使用する際は、必ず製品ラベルに記載されている使用方法、使用量、対象植物、使用回数を守ってください。 特に野菜や果物などの食用植物に使う場合は、収穫前日数(散布してから収穫できるまでの期間)の規定を厳守する必要があります。散布する際は、マスク、手袋、長袖の服を着用し、薬剤を吸い込んだり皮膚に付着したりしないように注意しましょう。 風の強い日を避け、早朝や夕方の風のない時間帯に、周囲の植物や洗濯物、ペットなどに飛散しないように配慮することも大切です。
まとめ

- 赤い虫の正体はアブラムシの一種である可能性が高いです。
- アブラムシは植物の汁を吸い、生育を阻害します。
- すす病やウイルス病を媒介し、植物を枯らす原因になります。
- 初期段階ならテープや水流で物理的に駆除できます。
- 農薬を使わない方法として牛乳や石鹸水のスプレーが有効です。
- 牛乳スプレー使用後は必ず水で洗い流す必要があります。
- 木酢液は殺虫より予防(忌避)効果が期待できます。
- 天敵のテントウムシはアブラムシを食べてくれる益虫です。
- 大量発生時には市販の薬剤(スプレー・粒剤)が効果的です。
- 薬剤の使用時は必ずラベルの指示に従ってください。
- 窒素肥料の与えすぎはアブラムシの発生原因になります。
- 風通しを良くすることが最大の予防策です。
- 防虫ネットやシルバーマルチの活用も予防に有効です。
- 香りの強いハーブ(コンパニオンプランツ)も効果的です。
- アブラムシとアリは甘露を介した共生関係にあります。