家庭菜園で愛情を込めて育てている大根。すくすく育つ様子を見るのは嬉しいものですが、ある日ふと葉っぱを見ると「なんだこの黒い虫は!?」と驚いた経験はありませんか?葉が穴だらけにされたり、集団で群がっていたりすると、どうすればいいのか不安になりますよね。本記事では、そんな悩みを抱えるあなたのために、大根に発生する黒い虫の正体から、具体的な駆除方法、そして今後の発生を防ぐための予防策まで、詳しく解説していきます。
【まず結論】大根につく黒い虫の正体はこの2匹!

大切に育てている大根に黒い虫を見つけると、とても心配になりますよね。その正体は、主に2種類の害虫であることが多いです。まずは、敵の正体を知ることから始めましょう。
これらの虫の特徴を理解することが、効果的な対策への第一歩です。
ダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ)
体長3~5mmほどの、黒くて丸い光沢のある甲虫がいたら、それはダイコンハムシの可能性が高いです。 別名ダイコンサルハムシとも呼ばれます。成虫だけでなく幼虫も大根の葉を食害し、特に若い葉を好んで食べます。
成虫は葉に円形の食害痕を残し、幼虫は葉の裏側から食べるため、葉が透かし彫りのようにレース状になってしまうのが特徴です。 繁殖力が旺盛で、放置するとあっという間に増えて葉を食べ尽くされてしまうこともある厄介な害虫です。 危険を感じるとポトッと地面に落ちて死んだふりをする習性があります。
カブラハバチ(ナノクロムシ)
イモムシ状の、全身が真っ黒でツヤのある虫がいたら、それはカブラハバチの幼虫です。 その見た目から「ナノクロムシ(菜の黒虫)」とも呼ばれています。 名前に「ハチ」とありますが、成虫はハチの仲間で、幼虫がアブラナ科の植物の葉を食害します。
カブラハバチの幼虫は食欲が非常に旺盛で、集団で発生することが多く、若い葉を中心に葉脈だけを残して食べ尽くしてしまうこともあります。 刺激を与えると体を丸めて地面に落ちる習性があります。
その他に注意すべき黒い害虫:アブラムシ
大根には、黒っぽい色をしたアブラムシが発生することもあります。 体長は1~4mm程度と非常に小さく、葉の裏や新芽にびっしりと群がって汁を吸います。
アブラムシの被害が進行すると、大根の生育が悪くなるだけでなく、排泄物(甘露)が原因ですす病という黒いカビが発生したり、ウイルス病を媒介したりすることもあります。 繁殖力が非常に高いため、見つけたらすぐに対処することが重要です。
写真で見る!大根の害虫被害と黒い虫の見分け方

「私の大根についている黒い虫はどっちだろう?」と迷う方のために、被害の状況と虫の見分け方を解説します。食害の痕や虫の見た目をよく観察して、正しく特定しましょう。
葉がレース状に…ダイコンハムシの食害痕
ダイコンハムシの成虫は、葉にポツポツと小さな円い穴を開けるように食害します。 一方、幼虫は葉の裏から表面の薄皮を残すように食べるため、葉が白っぽく透けて見え、まるでレース編みのような状態になります。 このような特徴的な食害痕を見つけたら、ダイコンハムシの発生を疑いましょう。成虫は黒くてツヤのある丸い甲虫、幼虫は黒っぽいイモムシ状ですが、カブラハバチよりは小さく、少し毛が生えているのが特徴です。
集団で葉を食べ尽くす!カブラハバチの被害
カブラハバチの幼虫(ナノクロムシ)は、葉の縁からギザギザに食べていくのが特徴です。 数匹から十数匹の集団でいることが多く、食欲が旺盛なため、被害の進行が非常に早いです。 気づいたときには葉脈だけを残して葉がほとんどなくなっていた、ということも少なくありません。 全身が真っ黒でツルッとしたイモムシがいたら、カブラハバチの幼虫です。
葉の裏にびっしり!アブラムシの被害
アブラムシは、葉の裏や成長点付近の柔らかい新芽に密集していることが多いです。 肉眼でも確認できますが、非常に小さいため見逃しやすいので注意が必要です。被害が進むと、吸汁によって葉が縮れたり、黄色く変色したりします。 また、アブラムシの排泄物である甘露にカビが発生し、葉が黒いすすで覆われたようになる「すす病」を引き起こすこともあります。 アリが葉の上を歩き回っているときは、アブラムシが発生しているサインかもしれません。アリはアブラムシの出す甘露が好物で、天敵からアブラムシを守ることがあります。
【農薬を使わない】大根の黒い虫を駆除する7つの方法

「できるだけ農薬は使いたくない」と考える方は多いでしょう。ここでは、家庭菜園でも手軽に試せる、農薬を使わない駆除方法を7つご紹介します。被害が広がる前に、こまめに対処することが大切です。
- 原始的だけど効果絶大!手で捕殺する
- 粘着テープや歯ブラシで捕まえる
- 牛乳スプレーで窒息させる
- 木酢液・竹酢液で忌避する
- 唐辛子・ニンニクエキスも効果あり
- アブラムシにはお湯も有効
- 天敵の力を借りる(テントウムシなど)
原始的だけど効果絶大!手で捕殺する
最も確実で、すぐにできる方法が手で取り除くことです。 ダイコンハムシやカブラハバチの幼虫は、見つけ次第、割り箸やピンセットでつまんで捕殺しましょう。 これらの虫は危険を感じると地面に落ちてしまう習性があるため、葉の下に受け皿やビニール袋を置いておくと、逃さず捕獲できます。
アブラムシも、数が少なければ指で潰したり、粘着テープで貼り付けて取ったりするのが有効です。地道な作業ですが、環境への負荷が最も少ない方法です。
粘着テープや歯ブラシで捕まえる
虫に直接触るのが苦手な方におすすめなのが、粘着テープや歯ブラシを使う方法です。ガムテープや梱包用の粘着テープを裏返して手に巻き、葉の裏などにいるアブラムシをペタペタと貼り付けて取り除きます。
また、ダイコンハムシは、柔らかい筆や歯ブラシの先に糊をつけ、虫に触れて捕獲する方法も紹介されています。 危険を感じて落下する前に、素早くくっつけてしまいましょう。
牛乳スプレーで窒息させる
アブラムシに対して特に効果的なのが牛乳スプレーです。 牛乳を水で1:1程度に薄めたものをスプレーボトルに入れ、アブラムシに直接吹きかけます。牛乳が乾くときに膜を作り、アブラムシの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させる効果があります。
散布後は、牛乳が腐敗して臭いが出たり、カビの原因になったりするのを防ぐため、乾いた後に水で洗い流すのを忘れないようにしましょう。
木酢液・竹酢液で忌避する
木酢液や竹酢液を水で薄めて散布すると、その独特の燻製のような香りを害虫が嫌い、寄り付きにくくする忌避効果が期待できます。 製品に記載されている希釈倍率を守って使用しましょう。
これは殺虫効果ではなく、あくまで「虫を遠ざける」効果が主目的です。そのため、発生する前から定期的に散布することで、予防として活用するのがおすすめです。土壌の微生物を活性化させる効果も期待できると言われています。
唐辛子・ニンニクエキスも効果あり
身近な食材を使った手作りスプレーも有効です。唐辛子に含まれるカプサイシンや、ニンニクの匂いは、多くの害虫が嫌がります。
作り方は簡単で、唐辛子数本やニンニクひとかけを潰して水に入れ、一晩置いたものの上澄み液をスプレーします。 お酢に漬け込んだものも効果的です。 ただし、濃度が濃すぎると植物に害を与える可能性があるので、最初は薄めのものから試してみましょう。
アブラムシにはお湯も有効
アブラムシは熱に弱く、50℃以上のお湯をかけると死滅します。 野菜自体には影響が少ない温度なので、収穫間近で薬剤を使いたくない時期などに有効な方法です。
ただし、熱すぎるお湯は植物にダメージを与える可能性があるため、温度管理には注意が必要です。ジョウロなどで、アブラムシがいる部分にピンポイントでかけるようにしましょう。
天敵の力を借りる(テントウムシなど)
アブラムシの天敵であるテントウムシの力を借りるのも一つの手です。テントウムシの幼虫は、成虫よりもさらに多くのアブラムシを食べてくれます。
むやみに殺虫剤を使うと、こうした益虫まで殺してしまい、かえって害虫が増える原因になることもあります。 畑にテントウムシを見つけたら、大切に見守りましょう。
【農薬を使う場合】大根の害虫に効果的な殺虫剤

害虫が大量発生してしまい、手作業での駆除では追いつかない場合は、農薬の使用も検討しましょう。使用する際は、必ず用法・用量を守り、安全に配慮することが最も重要です。
農薬を使用する際の注意点
農薬を使用する前には、必ずラベルをよく読み、対象となる害虫と作物(大根)に登録があるかを確認してください。 また、使用時期(収穫何日前まで使えるか)、使用回数、希釈倍率などの決まりを厳守することが大切です。 同じ系統の薬剤を連続して使用すると、害虫が抵抗性を持って効きにくくなることがあるため、異なる系統の薬剤をローテーションで散布するのが効果的です。
大根に使える代表的な殺虫剤
大根のダイコンハムシやカブラハバチ、アブラムシに登録のある代表的な殺虫剤には、以下のようなものがあります。
- ダイアジノン粒剤: 土に混ぜ込むタイプで、キスジノミハムシやネキリムシなど土壌害虫にも効果があります。
- オルトラン粒剤/水和剤: 浸透移行性があり、散布した薬剤が植物に吸収され、汁を吸ったアブラムシなどを駆除します。
- モスピラン顆粒水溶剤: アブラムシやカブラハバチなど幅広い害虫に効果があります。
- ベニカベジフルスプレー: 家庭菜園向けのスプレータイプで、手軽に使うことができます。
- プレバソンフロアブル: コナガやアオムシ、カブラハバチなどに効果的です。
これらは一例であり、ホームセンターや園芸店で相談し、自分の状況に合った薬剤を選ぶことをおすすめします。
有機JAS認定の農薬も
化学合成農薬に抵抗があるけれど、手作りスプレーでは効果が不十分という場合には、有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用が認められている農薬を選択肢に入れるのも良いでしょう。
これらは、天然物由来の成分(除虫菊エキス、デンプンなど)を利用したものが多く、環境への負荷が比較的少ないとされています。代表的なものに、アーリーセーフや粘着くん液剤などがあります。
もう寄せ付けない!大根の害虫を予防する5つの鉄則

害虫を駆除することも大切ですが、それ以上に重要なのが「そもそも害虫を発生させない」環境を作ることです。ここでは、害虫を寄せ付けないための5つの鉄則をご紹介します。日々の少しの工夫で、被害を大きく減らすことができます。
- 鉄則1:防虫ネットで物理的にシャットアウト!
- 鉄則2:コンパニオンプランツで害虫を遠ざける
- 鉄則3:健康な土作りで大根自体を強くする
- 鉄則4:連作を避けて土壌環境を良好に保つ
- 鉄則5:畑の周りの雑草管理を徹底する
鉄則1:防虫ネットで物理的にシャットアウト!
最も効果的で基本的な予防策が、防虫ネットの使用です。 種まきや植え付け直後からトンネル状にネットをかけることで、ダイコンハムシやカブラハバチの成虫が飛来して産卵するのを物理的に防ぎます。
ネットの網目は、1mm以下の細かいものを選ぶと、アブラムシなどの小さな虫の侵入も防ぐことができます。設置する際は、裾に隙間ができないように土でしっかりと埋めるのがポイントです。
鉄則2:コンパニオンプランツで害虫を遠ざける
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることで互いによい影響を与え合う植物のことです。大根の近くに特定の植物を植えることで、害虫を遠ざける効果が期待できます。
- マリーゴールド: 根に寄生するセンチュウ類を抑制する効果で有名ですが、その独特の香りで地上部の害虫も遠ざけます。
- ニンジン: セリ科のニンジンを一緒に植えると、お互いの害虫を寄せ付けにくくする効果があると言われています。
- レタス・春菊: キク科の植物の香りが、モンシロチョウなどのアブラナ科を好む害虫を遠ざけてくれます。
- ネギ類: 独特の強い香りでアブラムシなどを忌避する効果が期待できます。
鉄則3:健康な土作りで大根自体を強くする
病害虫の被害を受けにくい、丈夫な大根を育てることが根本的な対策になります。そのためには、健康な土作りが欠かせません。 堆肥や腐葉土などの有機物を十分にすき込んで、水はけと水持ちのよい、ふかふかの土を目指しましょう。
健康な土壌で育った野菜は、抵抗力が高まり、害虫の被害を受けにくくなります。 また、窒素分が多すぎる肥料は、葉が軟弱に育ち、アブラムシなどの害虫を呼び寄せやすくなるため、与えすぎには注意しましょう。
鉄則4:連作を避けて土壌環境を良好に保つ
同じ場所で毎年同じアブラナ科の野菜(大根、カブ、白菜、キャベツなど)を栽培し続ける「連作」は避けましょう。 連作をすると、土壌中の特定の栄養素が失われるだけでなく、その作物を好む病原菌や害虫が土の中に増えやすくなります。
ダイコンハムシは土の中で越冬するため、連作は翌年の発生リスクを高めます。 最低でも1〜2年は、アブラナ科以外の野菜(トマト、ナス、キュウリ、枝豆など)を育てるように計画しましょう。
鉄則5:畑の周りの雑草管理を徹底する
畑やプランターの周りの雑草は、害虫の隠れ家や食料源、発生源になります。 特に、アブラナ科の雑草(ナズナなど)が生えていると、そこから害虫が移動してくる可能性があります。
こまめに除草を行い、畑の周辺を清潔に保つことが、害虫の発生を抑制する上で非常に重要です。風通しを良くすることにもつながり、病気の予防にもなります。
よくある質問

虫に食われた大根の葉や根は食べられますか?
はい、食べられます。虫食いの穴が開いていたり、葉が少し食べられていたりしても、その部分を取り除けば問題なく食べることができます。大根の葉は栄養価が高いので、ぜひ活用してください。ただし、あまりにも食害がひどい場合や、カビが生えている場合、異臭がする場合などは食べるのを避けた方が安全です。
黒い虫の糞のようなものがありますが何ですか?
葉の上や株元に黒くて丸い粒々が落ちていたら、それはカブラハバチやコナガなどのイモムシ類の糞である可能性が高いです。 糞があるということは、近くに幼虫が潜んでいる証拠です。葉の裏などをよく観察し、虫を見つけて駆除しましょう。
被害にあった大根は復活しますか?
被害の程度によります。葉が多少食べられたくらいであれば、害虫を駆除すれば、新しい葉が出てきて十分に復活できます。 しかし、成長点(中心の新しい芽が出てくる部分)をシンクイムシなどに食べられてしまうと、その後の生育は難しくなります。 根が大きくなる前に葉がほとんど食べられてしまうと、光合成ができずに根が太れないこともあります。早期発見・早期駆除が重要です。
大根の表面に黒い点々があるのは虫のせいですか?
大根の表面にできる黒い点は、いくつかの原因が考えられます。キスジノミハムシの幼虫が根の表面を食害して傷がつくこともありますが、「黒点病」や「黒芯症」といった生理障害の可能性もあります。 黒点病は土壌の菌が原因で、黒芯症はホウ素などの微量要素の欠乏が原因で起こります。 表面の黒い部分を厚めに剥けば、食べても問題ないことが多いです。
まとめ

- 大根につく黒い虫は主に「ダイコンハムシ」と「カブラハバチ」。
- ダイコンハムシは黒く丸い甲虫で、葉をレース状に食害する。
- カブラハバチの幼虫は真っ黒なイモムシで、集団で葉を食べ尽くす。
- アブラムシも黒っぽいものがおり、汁を吸って生育を阻害する。
- 無農薬での駆除は、手で取る、牛乳スプレーなどが有効。
- 被害がひどい場合は、大根に登録のある農薬を正しく使用する。
- 最も効果的な予防は、種まき直後からの防虫ネット。
- コンパニオンプランツを植えることで害虫を遠ざける効果が期待できる。
- マリーゴールドやニンジン、レタスなどがおすすめ。
- 健康な土作りで、大根自体を害虫に強い株に育てることが基本。
- 窒素肥料の与えすぎは、害虫を呼び寄せるので注意が必要。
- – 同じアブラナ科の連作は避け、土壌の害虫密度を上げない。
– 畑の周りの雑草は、害虫の隠れ家になるためこまめに除草する。
– 虫食いの葉や根も、ひどくなければ取り除いて食べることができる。
– 害虫対策は、早期発見と迅速な対応が何よりも重要。