大切に育てている梅の木に、緑色や黒色の小さな虫がびっしり…!そんな光景を見て、ショックを受けていませんか?その虫の正体は、植物の汁を吸って弱らせてしまう「アブラムシ」かもしれません。放置しておくと、梅の木の生育が悪くなるだけでなく、病気の原因になることもあります。でも、ご安心ください。この記事を読めば、アブラムシの生態から、今すぐできる駆除方法、そして二度と発生させないための予防策まで、大切な梅の木を守るための全ての方法が分かります。農薬を使いたくない方も必見の、環境に優しい対策も詳しくご紹介します。
【緊急対策】今すぐできる!梅の木のアブラムシ駆除方法5選

梅の木にアブラムシを見つけたら、とにかく迅速な対応が重要です。繁殖力が非常に高いため、あっという間に増えてしまいます。ここでは、ご家庭で今すぐ試せる駆除方法を、手軽なものから効果的なものまで5つご紹介します。状況に合わせて最適な方法を選んでください。
- ①【農薬を使わない】牛乳スプレーで窒息させる
- ②【農薬を使わない】木酢液・竹酢液で追い払う
- ③【物理的に除去】粘着テープや歯ブラシで取り除く
- ④【天敵に任せる】テントウムシを味方につける
- ⑤【最終手段】効果的な薬剤(殺虫剤)を使う
①【農薬を使わない】牛乳スプレーで窒息させる
「農薬は使いたくないけど、効果的な方法はないの?」という方にまず試していただきたいのが牛乳スプレーです。これは、牛乳が乾燥する際に膜を作り、アブラムシの呼吸器官である気門を塞いで窒息させるという仕組みを利用したものです。 化学薬品を使わないため、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して試すことができます。
作り方はとても簡単。牛乳と水を1:1の割合で霧吹きに入れてよく混ぜるだけです。 これをアブラムシが発生している場所にまんべんなくスプレーします。特に葉の裏はアブラムシが隠れていることが多いので、念入りに散布しましょう。散布後は、牛乳がしっかりと乾くまで待ちます。乾いたら、牛乳の腐敗による悪臭やカビの発生を防ぐため、必ず水で洗い流してください。 天気の良い日の午前中に行うのがおすすめです。
②【農薬を使わない】木酢液・竹酢液で追い払う
木酢液や竹酢液も、アブラムシ対策に有効なアイテムです。これらは炭を焼くときに出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りが特徴です。 この香りをアブラムシが嫌うため、忌避効果が期待できます。殺虫効果はありませんが、アブラムシを寄せ付けにくくする予防薬として役立ちます。
使用する際は、製品のパッケージに記載されている希釈倍率を守って水で薄め、スプレーボトルで散布します。 葉の表面や裏、枝全体にいきわたるように散布しましょう。木酢液には土壌を改良する効果も期待できるため、土に散布するのも良いでしょう。 ただし、濃度が濃すぎると植物を傷める可能性があるので注意が必要です。
③【物理的に除去】粘着テープや歯ブラシで取り除く
アブラムシの数がまだ少ない初期段階であれば、物理的に取り除いてしまうのが最も手軽で確実な方法です。ガムテープやセロハンテープのような粘着テープを使い、アブラムシがいる部分にペタペタと貼り付けて捕獲します。 葉を傷つけないように、粘着力の強すぎないテープを選ぶのがコツです。
また、カイガラムシのように幹や枝にびっしりついている害虫には、使い古した歯ブラシでこすり落とす方法も有効です。 この方法は、薬剤を使わないので安全ですが、アブラムシが大量発生してしまっている場合には手間がかかるため、他の方法と組み合わせることをおすすめします。
④【天敵に任せる】テントウムシを味方につける
自然の力を借りるという方法もあります。アブラムシには、テントウムシやヒラタアブ、カゲロウといった天敵となる昆虫が存在します。 特にテントウムシは、幼虫も成虫もアブラムシを主食としており、1日に100匹ものアブラムシを食べることがあると言われています。 もし庭でテントウムシを見かけたら、それは梅の木を守ってくれる心強い味方です。駆除せずに、そっと見守ってあげましょう。
天敵を呼び寄せるためには、彼らが好む環境を作ってあげることが大切です。例えば、アブラムシの天敵は、キク科やセリ科の植物の花の蜜を好む傾向があります。コンパニオンプランツとしてこれらの植物を梅の木の近くに植えることで、天敵が集まりやすい環境を作ることができます。
⑤【最終手段】効果的な薬剤(殺虫剤)を使う
アブラムシが大量に発生してしまい、手作業での駆除や自然由来の方法では追いつかない場合は、薬剤の使用も検討しましょう。梅の木に使えるアブラムシ用の殺虫剤は、ホームセンターや園芸店で手に入ります。 スプレータイプは手軽に使え、即効性が期待できます。 粒剤タイプは、木の根元にまくことで成分が木全体に行き渡り、長期間の効果が期待できます。
薬剤を使用する際は、必ず製品のラベルに記載されている使用方法や希釈倍率、使用回数を守ってください。 特に梅の実を収穫する予定がある場合は、収穫時期に使用できる薬剤かどうかを必ず確認しましょう。 また、散布する際はマスクや手袋、ゴーグルを着用し、薬剤が体にかからないように注意が必要です。
なぜ?梅の木にアブラムシが発生する3つの原因

アブラムシの駆除と同時に、なぜ発生してしまったのか、その原因を知ることが再発防止への第一歩です。アブラムシが好む環境を知り、改善していくことで、大切な梅の木を害虫から守りましょう。主な原因は以下の3つです。
原因1:窒素肥料の与えすぎ
植物の成長に欠かせない肥料ですが、与えすぎはかえって害虫を呼び寄せる原因になります。特に、葉や茎の成長を促す窒素成分の多い肥料を過剰に与えると、植物体内のアミノ酸が増加します。 実は、このアミノ酸がアブラムシの大好物なのです。栄養豊富な状態になった梅の木は、アブラムシにとって格好の餌場となってしまいます。
梅の木への施肥は、基本的に年に1回、6月ごろのお礼肥と、11月ごろの冬肥で十分です。 肥料を与える際は、製品に記載されている適量を守り、窒素・リン酸・カリのバランスが良いものを選ぶようにしましょう。
原因2:風通しの悪い環境
枝や葉が密集して風通しが悪く、日当たりの悪い場所もアブラムシが好む環境です。 このような場所は湿度が高くなりがちで、アブラムシだけでなく、うどんこ病などの病気の発生源にもなります。 アブラムシは、直射日光や雨風が直接当たらない葉の裏などに隠れて繁殖するため、密集した枝葉は絶好の隠れ家となってしまうのです。
定期的な剪定を行い、木全体の風通しと日当たりを良くすることが非常に重要です。 不要な枝や混み合った枝を切り落とすことで、アブラムシが住みにくい環境を作ることができます。剪定の適切な時期は、落葉期の冬(11月下旬~12月中旬)と、実の収穫後の夏(6月~7月ごろ)です。
原因3:アリとの共生関係
梅の木にアブラムシがいると、その周りでアリをよく見かけませんか?実は、アブラムシとアリは「共生関係」にあります。 アブラムシは、植物の汁を吸った後、余分な糖分を含んだ甘い排泄物「甘露(かんろ)」を出します。アリはこの甘露が大好きで、アブラムシから甘露をもらう代わりに、テントウムシなどの天敵からアブラムシを守るボディガードの役割を果たしているのです。
そのため、梅の木にアリがたくさんいる場合は、アブラムシが発生しているサインかもしれません。アリを見かけたら、アブラムシがいないか葉の裏などを注意深く観察してみましょう。
もう悩まない!梅の木のアブラムシを徹底予防する5つの方法

一度アブラムシを駆除しても、環境が変わらなければ再発する可能性があります。ここでは、アブラムシを寄せ付けないための予防策を5つご紹介します。日頃の管理に取り入れて、健康な梅の木を育てましょう。
予防策1:適切な剪定で風通しを良くする
アブラムシ予防の基本は、適切な剪定によって風通しと日当たりを確保することです。 枝が混み合っていると、湿気がこもりやすくなり、アブラムシにとって快適な環境になってしまいます。 内側に向かって伸びている枝や、他の枝と交差している枝、枯れた枝などを中心に切り落とし、木全体に光と風が通るようにしましょう。
梅の木の剪定は、主に葉が落ちた後の冬(11月下旬~12月中旬)と、実の収穫後の夏(6月~7月ごろ)に行うのが一般的です。 冬の剪定では不要な枝を整理して木の骨格を作り、夏の剪定では伸びすぎた徒長枝などを切って日当たりを改善します。 適切な剪定は、アブラムシ予防だけでなく、花付きや実付きを良くする効果も期待できます。
予防策2:肥料の与え方を見直す
原因の章でも触れましたが、窒素過多の土壌はアブラムシを呼び寄せます。 肥料は植物の成長に必要ですが、与えすぎは禁物です。特に窒素(N)成分の割合が高い肥料は避け、リン酸(P)やカリ(K)とのバランスが取れたものを選びましょう。 肥料を与えるタイミングは、実の収穫後のお礼肥(6月ごろ)と、根の活動が始まる前の冬肥(11月ごろ)が基本です。 パッケージに記載された適量を守り、与えすぎないように注意してください。
予防策3:コンパニオンプランツを活用する
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることでお互いに良い影響を与え合う植物のことです。 特定の植物が持つ香りや成分が、害虫を遠ざけたり、天敵を呼び寄せたりする効果があります。 アブラムシ対策としては、キラキラした葉を持つ植物や、強い香りを持つハーブ類が有効です。
例えば、マリーゴールドやカモミール、ミント、ローズマリーなどは、その香りでアブラムシを寄せ付けにくくする効果があると言われています。 また、これらの植物はアブラムシの天敵であるテントウムシなどを引き寄せる効果も期待できます。 梅の木の株元にこれらのコンパニオンプランツを植えて、自然の力でアブラムシを防ぎましょう。
予防策4:発生初期に防虫ネットをかける
まだ木が小さい場合や、特にアブラムシの被害を受けやすい新芽の時期には、防虫ネットで物理的にガードするのも効果的な方法です。 アブラムシは羽を持つ成虫が飛来して発生することが多いため、ネットで覆うことで侵入そのものを防ぐことができます。目の細かいネットを選び、隙間ができないようにしっかりと覆うことがポイントです。ただし、木が大きくなると全体を覆うのは難しくなりますし、受粉が必要な場合は開花時期には外す必要があります。
予防策5:キラキラ光るものを設置する
アブラムシは、キラキラと乱反射する光を嫌う習性があります。この性質を利用して、アルミホイルやシルバーのビニールテープなどを梅の木の根元や枝に設置するのも、手軽にできる予防策の一つです。 太陽の光が反射して、アブラムシが寄り付きにくくなります。市販の防虫用のシルバーマルチシートなどを利用するのも良いでしょう。見た目が気になるかもしれませんが、特に新芽が出てくる春先の被害が多い時期に試してみる価値はあります。
知っておきたいアブラムシの基礎知識

敵を知り、己を知れば百戦殆うからず。アブラムシの効果的な対策を行うためには、その生態を理解しておくことも大切です。ここでは、梅の木に被害をもたらすアブラムシの基本的な情報について解説します。
梅の木に発生しやすいアブラムシの種類
日本には約700種類ものアブラムシがいると言われていますが、梅の木に特に発生しやすいのは「オカボノアカアブラムシ」や「スモモオマルアブラムシ」といった種類です。 オカボノアカアブラムシは淡い紫色で白い粉に覆われているのが特徴で、春に新梢に群生します。 スモモオマルアブラムシは淡緑色で、被害を受けた葉は裏側に巻き込むように変形します。 種類によって多少見た目や生態は異なりますが、いずれも植物の汁を吸って加害するという点は共通しています。
アブラムシが引き起こす二次被害「すす病」とは?
アブラムシの被害は、樹液を吸われることによる生育不良だけではありません。最も厄介なのが、「すす病」という病気を誘発することです。 アブラムシは甘い排泄物(甘露)を出しますが、この甘露を栄養源として黒いカビが発生します。 このカビが葉や枝、果実の表面を覆い、まるで黒いすすをかぶったような状態になるのが「すす病」です。すす病になると、葉の光合成が妨げられ、木の成長がさらに悪化したり、見た目も悪くなったりします。
アブラムシの発生時期
アブラムシは、春(4月~6月ごろ)と秋(9月~10月ごろ)の、気候が穏やかな時期に特に活発に繁殖します。 特に春は、梅の木が新芽を伸ばす時期と重なるため、柔らかい新芽にびっしりと群生することがよくあります。 この時期は特に注意深く梅の木を観察し、発生初期に駆除することが被害を最小限に抑える鍵となります。真夏や真冬は活動が鈍りますが、種類によっては一年中発生することもあります。
よくある質問

アブラムシがついた梅の実は食べられますか?
アブラムシ自体に毒はなく、人体に直接的な害はありません。そのため、アブラムシが付着していた梅の実でも、よく洗えば食べることは可能です。しかし、アブラムシの排泄物によって「すす病」が発生している場合、黒いカビが付着しているため、見た目も悪く、風味も損なわれている可能性があります。また、大量に発生している場合は、梅の木の栄養が吸われてしまい、実の生育が悪くなっていることも考えられます。食べる際は、見た目や状態をよく確認し、衛生面を考慮して判断してください。
牛乳スプレーの作り方と注意点は?
牛乳スプレーは、牛乳と水を1:1の割合で混ぜるだけで簡単に作れます。 スプレーボトルに入れて、アブラムシに直接かかるように散布します。注意点として、散布後は必ず牛乳が乾くのを待ち、その後水でしっかりと洗い流すことが重要です。 牛乳が残ったままだと、腐敗して悪臭を放ったり、カビや他の病気の原因になったりすることがあります。 また、散布は晴れた日の午前中に行い、夕方までには洗い流せるようにするのが理想的です。
木酢液の正しい使い方は?
木酢液は、原液のままでは刺激が強すぎるため、必ず水で希釈して使用します。 希釈倍率は製品によって異なりますが、一般的には200~500倍程度です。パッケージの説明をよく読んで、正しい濃度で使いましょう。 葉の裏表や枝にまんべんなく散布します。土壌改良を目的とする場合は、株元に散布します。 殺虫効果ではなく忌避効果を目的とするため、アブラムシが発生する前から定期的に(1~2週間に1回程度)散布すると、予防としてより効果的です。
アブラムシとアリはどんな関係ですか?
アブラムシとアリは「相利共生」という、お互いに利益のある関係を築いています。 アブラムシは植物の汁を吸い、お尻から「甘露」という甘い蜜を出します。アリはこの甘露をエサとしてもらう代わりに、アブラムシの天敵であるテントウムシなどを追い払い、アブラムシを守ります。 そのため、庭木にアリが行列を作っている場合、その先にアブラムシがいる可能性が高いと言えます。
おすすめの殺虫剤はありますか?
梅の木に使用できるアブラムシ用の殺虫剤は多数販売されています。代表的なものには「スミチオン乳剤」や「マラソン乳剤」などがあります。 これらは幅広い害虫に効果があります。また、ペットやお子様への影響が気になる場合は、食品成分由来の「ベニカマイルドスプレー」のような、安全性の高い製品もおすすめです。 根元にまくタイプの「オルトラン粒剤」は、効果が持続し予防にも適しています。 いずれの薬剤を使用する場合も、必ず対象植物が「梅」であることを確認し、使用方法、時期、回数を守って正しく使用してください。
まとめ

- 梅の木のアブラムシは早期発見・早期駆除が重要です。
- 農薬を使わない駆除方法として牛乳スプレーが有効です。
- 木酢液や竹酢液にはアブラムシを遠ざける忌避効果があります。
- 数が少なければテープや歯ブラシで物理的に除去できます。
- テントウムシはアブラムシを食べる益虫なので大切にしましょう。
- 大量発生時は適切な薬剤の使用も検討しましょう。
- アブラムシの発生原因は窒素肥料の過多が挙げられます。
- 風通しの悪い環境もアブラムシの発生原因です。
- アブラムシとアリは互いに利益のある共生関係にあります。
- 予防の基本は適切な剪定で風通しを良くすることです。
- 肥料の与えすぎに注意し、適量を守りましょう。
- コンパニオンプランツの活用も予防に効果的です。
- アブラムシは「すす病」を誘発し、木の生育を阻害します。
- 発生しやすい時期は春と秋なので特に注意が必要です。
- 大切な梅の木を守るために、日頃からの観察を心がけましょう。