家庭菜園で人気のピーマン。愛情を込めて育てているのに、気づけば葉っぱに小さな虫がびっしり…なんて経験はありませんか?「この虫は何?」「どうやって退治すればいいの?」「できれば農薬は使いたくない…」そんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。大切に育てたピーマンが虫の被害にあうのは、本当に悲しいですよね。でも、安心してください。この記事を読めば、ピーマンを悩ませる害虫の種類から、誰でも簡単にできる対策方法まで、全てが分かります。
【要チェック】ピーマンに虫が!代表的な害虫と被害のサイン

まずは敵を知ることから始めましょう。ピーマンには、さまざまな種類の虫が発生します。ここでは、特に被害の多い代表的な害虫とその特徴、被害のサインについて詳しく解説します。ご自身のピーマンの状態と見比べて、どの害虫の仕業なのか特定しましょう。
- アブラムシ|葉や新芽にびっしり!生育を阻害する厄介者
- ヨトウムシ|夜間に葉を食い尽くす!神出鬼没の夜盗虫
- カメムシ|実を吸って変形させる!悪臭を放つ不快害虫
- ハダニ|葉の色が抜ける?見えないほどの小さな大敵
- タバコガ・オオタバコガ|実の中に侵入!気づきにくい内部の敵
- コナジラミ|白い粉が舞う?ウイルス病を媒介する虫
- アザミウマ|葉や花を傷つける!微小なスリップス
アブラムシ|葉や新芽にびっしり!生育を阻害する厄介者
ピーマン栽培で最もよく見かける害虫の一つがアブラムシです。体長1~4mmほどの小さな虫で、緑色や黒色、黄色など様々な色をしています。 新芽や葉の裏に群がって、植物の汁を吸うのが特徴です。
被害が進むと、葉が縮れたり、生育が著しく悪くなったりします。 さらに、アブラムシの排泄物は「すす病」という黒いカビを発生させる原因にもなり、光合成を妨げてしまうのです。 また、ウイルス病を媒介することもあり、植物全体を弱らせてしまう非常に厄介な存在と言えるでしょう。 単為生殖で爆発的に増えるため、見つけ次第、早急に対処することが重要です。
ヨトウムシ|夜間に葉を食い尽くす!神出鬼没の夜盗虫
ヨトウムシは「夜盗虫」という名前の通り、夜間に活動して葉や実を食い荒らすガの幼虫です。 昼間は土の中や葉の裏に隠れているため、被害はあっても姿が見えないという厄介な特徴があります。
体長は3~5cmほどで、緑色や褐色の体をしています。 孵化したばかりの幼虫は集団で葉の裏を食害し、成長するにつれて広範囲に移動して、葉脈を残して食べ尽くすほどの食欲旺盛さを見せます。 新芽や柔らかい実も好んで食べるため、放置すると収穫量が激減してしまうことも。 ピーマンの株元に不審なフンが落ちていたら、ヨトウムシの存在を疑いましょう。
カメムシ|実を吸って変形させる!悪臭を放つ不快害虫
独特の悪臭で知られるカメムシも、ピーマンに被害をもたらす害虫です。特にナス科の植物を好むホオズキカメムシなどがよく発生します。
成虫や幼虫が集団で茎や葉、そして大切な実に口針を突き刺して汁を吸います。 吸われた部分は色が抜けたり、ブヨブヨになって傷んだり、変形したりしてしまいます。 これにより、ピーマンの商品価値は大きく下がり、家庭菜園であっても食べる気が失せてしまうかもしれません。葉の裏に卵を産み付けることも多いので、定期的な葉の裏のチェックが欠かせません。
ハダニ|葉の色が抜ける?見えないほどの小さな大敵
ハダニは体長0.3~0.5mm程度と非常に小さく、肉眼での確認が難しい害虫です。 しかし、その被害は甚大。葉の裏に寄生して汁を吸い、葉に白いカスリ状の斑点を残します。
被害が進行すると、葉全体の色が抜けたように白っぽくなり、光合成ができなくなってしまいます。 やがて葉は枯れ落ち、株全体の生育が著しく悪化します。 高温で乾燥した環境を好み、特に梅雨明けから夏にかけて爆発的に増殖することがあります。 葉に元気がない、色が薄くなってきたと感じたら、葉の裏をよく観察してみてください。細かいクモの巣のようなものが見られたら、ハダニが発生しているサインです。
タバコガ・オオタバコガ|実の中に侵入!気づきにくい内部の敵
タバコガやオオタバコガは、ガの幼虫で、ピーマン栽培における最重要害虫の一つです。成虫が夜間に飛来し、葉やガクに卵を産み付けます。 孵化した幼虫は、最初は新芽や花を食害しますが、やがてピーマンの実に穴を開けて内部に侵入します。
実の中で果肉や種子を食い荒らすため、外から見ると小さな穴しか開いていなくても、中はフンだらけで食べられない状態になっていることが多いのです。 1匹の幼虫が複数の実を渡り歩いて被害を広げるため、発生数が少なくても被害は大きくなりがちです。 ヘタの周りに穴やフンを見つけたら、この虫の被害を疑いましょう。
コナジラミ|白い粉が舞う?ウイルス病を媒介する虫
コナジラミは、その名の通り体長1mm程度の白い小さな虫です。 ピーマンの株を揺らすと、白い粉のようなものがフワッと舞うことがあれば、それはコナジラミかもしれません。
アブラムシと同様に葉の裏に寄生して汁を吸い、株を弱らせます。 排泄物が原因ですす病を誘発する点もアブラムシと同じです。 さらに厄介なのは、ウイルス病を媒介すること。一度ウイルス病に感染すると治療法はなく、株ごと処分しなければならないこともあります。繁殖力が非常に高いため、早期発見と初期防除が何よりも大切です。
アザミウマ|葉や花を傷つける!微小なスリップス
アザミウマは、体長1~2mmほどの非常に細長い虫で、スリップスとも呼ばれます。 葉や花に寄生し、ヤスリのような口で組織を傷つけて汁を吸います。
被害を受けた葉には、銀白色の細かいカスリ状の傷が残ります。 被害がひどくなると葉が縮れたり、生育が悪くなったりします。花が加害されると、実がうまく育たなかったり、奇形になったりすることもあります。アザミウマもコナジラミと同様にウイルス病を媒介することが知られており、注意が必要な害虫です。
今すぐできる!ピーマンの虫対策【発生前後の対処法】

害虫の種類が特定できたら、次はいよいよ対策です。ここでは、害虫の発生を防ぐための「予防策」と、発生してしまった場合の「駆除方法」を具体的にご紹介します。農薬を使わない方法もたくさんありますので、ぜひご自身の栽培環境に合わせて取り入れてみてください。
- 【予防が肝心】虫を寄せ付けない環境づくり
- 【発生してしまったら】状況別の駆除方法
【予防が肝心】虫を寄せ付けない環境づくり
害虫対策で最も重要なのは、そもそも虫を寄せ付けない、増やさない環境を作ることです。日々の少しの工夫で、害虫の発生リスクを大きく減らすことができます。
防虫ネット・シルバーマルチで物理的にシャットアウト
最も確実で効果的な予防法の一つが、防虫ネットでピーマンの株全体を覆うことです。 アブラムシやコナジラミ、ガの仲間など、飛んでくる害虫の侵入を物理的に防ぐことができます。ネットの目が細かいほど防除効果は高まりますが、風通しが悪くなる可能性もあるため、適切な目の細かさのものを選びましょう。
また、アブラムシやアザミウマはキラキラした光を嫌う性質があります。 この性質を利用して、畝をシルバーマルチで覆うのも非常に効果的です。 地温の上昇を抑えたり、雑草の発生を防いだりする効果も期待できるため、一石二鳥の対策と言えるでしょう。
風通しを良くして健康な株を育てる
株が密集して葉が茂りすぎると、風通しが悪くなり、湿気がこもってしまいます。このような環境は、病害虫にとって絶好の住処となります。
適切な株間を確保し、成長に合わせて古い葉や内側に向かって伸びる枝を摘み取る「整枝・摘葉」を行いましょう。 株元までしっかりと日光が当たり、風が通るようにすることで、ピーマン自体が健康に育ち、病害虫への抵抗力も高まります。健康な株は、害虫の被害を受けにくいのです。
コンパニオンプランツを活用する
ピーマンの近くに植えることで、良い影響を与え合う「コンパニオンプランツ」を活用するのもおすすめです。例えば、ミントの香りはカメムシを遠ざける効果があると言われています。
また、ネギやニラ、マリーゴールドなども、特定の害虫を忌避する効果が期待できます。化学薬品に頼らず、自然の力を借りて害虫を防ぐ、環境にも優しい方法です。ただし、ミントのように繁殖力が非常に強い植物は、鉢植えのまま近くに置くなどの工夫が必要です。
周辺の雑草はこまめに除去
畑やプランターの周りに生えている雑草は、害虫の隠れ家や発生源になります。 アブラムシやハダニなどは、雑草地で増えてからピーマンに飛来してくるケースが少なくありません。
特に、栽培しているピーマンの近くの雑草は、こまめに除去するように心がけましょう。 これだけで、害虫の発生を大幅に抑えることができます。畑全体の環境を清潔に保つことが、害虫予防の基本です。
【発生してしまったら】状況別の駆除方法
予防策を講じていても、害虫が発生してしまうことはあります。大切なのは、被害が広がる前に迅速に対処することです。ここでは、発生してしまった害虫の駆除方法をいくつかご紹介します。
見つけ次第、手で取り除く原始的だが効果的な方法
ヨトウムシやカメムシ、タバコガの幼虫など、比較的大きな害虫は、見つけ次第、手で捕殺するのが最も手っ取り早く確実な方法です。 粘着テープなどを使うと、直接触れずに捕獲できます。
アブラムシが少数発生している場合は、指でこすり落としたり、被害の出ている葉ごと切り取って処分したりするのも有効です。地道な作業ですが、初期段階であればこの方法で十分に対応可能です。駆除した害虫や被害のあった葉は、必ず畑の外に持ち出して処分しましょう。
牛乳・木酢液・石鹸水など、身近なもので作る手作りスプレー
農薬を使いたくない方におすすめなのが、身近な材料で作る手作りスプレーです。例えば、牛乳を水で薄めてスプレーすると、乾くときに膜ができてアブラムシを窒息させる効果があります。
また、木酢液や食酢を希釈したスプレーも、害虫の忌避効果が期待できます。 ニンニクや唐辛子を焼酎に漬け込んだものを希釈して使う方法も、アブラムシやうどんこ病対策として知られています。 ただし、これらの手作りスプレーは濃度が濃すぎると植物を傷める可能性があるので、必ず薄めてから、まずは一部の葉で試してから全体に散布するようにしてください。
天敵を利用した生物的防除
自然界には、害虫を食べてくれる益虫(天敵)が存在します。例えば、テントウムシはアブラムシを食べてくれますし、カマキリは様々な虫を捕食します。
畑でこれらの益虫を見つけても、駆除せずに大切にしましょう。また、農家向けにはなりますが、コレマンアブラバチ(アブラムシの天敵)などの天敵製剤を利用する方法もあります。 化学農薬に頼らず、生態系のバランスを利用して害虫をコントロールする、環境に優しい防除方法です。
農薬を使う場合の注意点とおすすめの殺虫剤

害虫が大量発生してしまい、手作業や自然由来のスプレーでは追いつかない場合、農薬(殺虫剤)の使用も有効な選択肢となります。しかし、使い方を間違えると効果がなかったり、ピーマンや人体に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。ここでは、農薬を安全かつ効果的に使うためのポイントを解説します。
- 農薬を使う前に知っておきたいこと
- 【害虫別】効果的な農薬の選び方
- 安全な使い方と注意点
農薬を使う前に知っておきたいこと
まず大前提として、農薬を使用する際は、必ず製品のラベルをよく読み、記載されている使用方法、対象作物、対象害虫、希釈倍率、使用時期、使用回数を厳守してください。 ピーマンに登録のない農薬は使用できません。
また、同じ系統の農薬を連続して使用すると、その農薬が効きにくい「薬剤抵抗性」を持つ害虫が現れることがあります。 これを防ぐため、作用性の異なる複数の農薬を順番に使う「ローテーション散布」を心がけましょう。
【害虫別】効果的な農薬の選び方
農薬には様々な種類があり、害虫によって効果のある成分が異なります。
- アブラムシ: ウララDFやモベントフロアブルなどが効果的です。 アーリーセーフのように、有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用できる天然物由来の製品もあります。
- ヨトウムシ・タバコガ: 若齢幼虫のうちに散布するのが効果的です。 コテツフロアブルやプレバソンフロアブルなどが知られています。
- ハダニ: コテツフロアブルやアカリタッチ乳剤など、ダニ類に特化した殺ダニ剤が有効です。
- カメムシ: スタークル顆粒水溶剤などが利用できますが、飛来してくる成虫への対策が中心となります。
どの農薬を選べばよいか分からない場合は、園芸店やホームセンターの専門スタッフに相談するのが確実です。
安全な使い方と注意点
農薬を散布する際は、マスク、ゴーグル、手袋、長袖長ズボンの作業着を着用し、薬剤が皮膚に付着したり、吸い込んだりしないように万全の対策をしましょう。風の強い日や雨の日、日中の高温時を避けて、早朝や夕方の涼しい時間帯に散布するのが基本です。
散布後は、ラベルに記載されている収穫前日数を必ず守り、その期間内はピーマンを収穫しないようにしてください。また、周辺の作物やミツバチなどの益虫に影響が出ないよう、風向きにも十分注意が必要です。
よくある質問

ここでは、ピーマンの害虫に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
ピーマンにつく白い虫の正体は何ですか?
ピーマンの株を揺らしたときにフワッと舞う白い虫は、コナジラミである可能性が高いです。 体長1mmほどの小さな虫で、葉の裏にびっしりと付いて汁を吸い、ウイルス病を媒介することもある厄介な害虫です。見つけ次第、粘着シートで捕獲したり、薬剤を散布したりして早めに対処しましょう。
ピーマンの実に穴が開いているのですが、何の虫ですか?
ピーマンの実に小さな穴が開いている場合、犯人はタバコガやオオタバコガの幼虫である可能性が非常に高いです。 これらのガの幼虫は、実に侵入して内部を食い荒らします。 被害果を見つけたら、中に幼虫がいる可能性が高いので、すぐに摘み取って畑の外で処分してください。 放置すると、他の実にも被害が広がってしまいます。
虫食いのピーマンは食べても大丈夫ですか?
虫が食べた跡があるピーマンでも、虫やフン、傷んだ部分をきれいに取り除けば食べることは可能です。 虫が食べるほど美味しい野菜、という見方もできます。しかし、タバコガのように内部が広範囲にわたって食害されている場合や、腐敗が進んでいる場合は、残念ですが食べるのは諦めた方が安全です。
無農薬でピーマンを育てるコツはありますか?
無農薬でピーマンを育てるためのコツは、「予防」に徹することです。具体的には、防虫ネットで物理的に害虫の侵入を防ぐ、シルバーマルチでアブラムシを忌避する、整枝をして風通しを良くし株を健康に保つ、コンパニオンプランツを一緒に植える、といった対策が有効です。 また、木酢液や手作りスプレーなどを定期的に散布して、害虫が寄り付きにくい環境を維持することも大切です。
手作りの虫除けスプレーの作り方を教えてください。
ご家庭で簡単に作れる虫除けスプレーとして、「お酢スプレー」がおすすめです。 作り方は簡単で、水1リットルに対して、家庭用の食酢を20~30ml(大さじ1.5~2杯程度)混ぜるだけです。 これをスプレーボトルに入れ、アブラムシなどが発生している場所に吹きかけます。お酢の酸性の匂いを虫が嫌うため、忌避効果が期待できます。散布は、日差しの強い時間帯を避け、早朝か夕方に行いましょう。
まとめ

- ピーマンにはアブラムシやヨトウムシなど多様な虫がつく。
- 害虫の種類によって被害の症状は異なる。
- まずは害虫を特定することが対策の第一歩。
- 予防策として防虫ネットやシルバーマルチが非常に有効。
- 風通しを良くし、株を健康に育てることが重要。
- コンパニオンプランツの活用もおすすめ。
- 畑周りの除草はこまめに行うこと。
- 発生初期は手で取り除くのが確実。
- 牛乳やお酢で手作りスプレーが作れる。
- 天敵のテントウムシはアブラムシを食べる益虫。
- 農薬は用法・用量を守って正しく使用する。
- 同じ農薬の連続使用は薬剤抵抗性を生む。
- 虫食いでも傷んだ部分を除けば食べられることが多い。
- 実に穴が開いていたらタバコガの幼虫の可能性大。
- 無農薬栽培成功の鍵は「予防」にある。