日光を浴びた後、肌に赤みやかゆみ、ブツブツができて「もしかして光線過敏症かも?」と不安に思っていませんか。ドラッグストアで塗り薬を探してみたけれど、どれを選べばいいかわからない、そもそも市販薬で対処できるのか知りたい、という方も多いのではないでしょうか。つらい症状をなんとかしたい、その一心で情報を探しているあなたの悩みに寄り添います。本記事では、光線過敏症に使える塗り薬について、市販薬の有無から病院で処方される薬の種類、そして症状を悪化させないための正しい対処法まで、詳しく解説していきます。
光線過敏症かも?そのつらい症状、まずはセルフチェック

「光線過敏症」とは、日光(紫外線)に対して皮膚が過剰に反応し、炎症を起こしてしまう状態の総称です。 普通の日焼けとは異なり、わずかな日光でも症状が出ることがあります。まずは、ご自身の症状が光線過敏症の典型的な症状に当てはまるか確認してみましょう。
光線過敏症の主な症状には、以下のようなものがあります。
- 日光に当たった部分の皮膚が赤くなる
- 強いかゆみやヒリヒリとした痛みを感じる
- 小さなブツブツ(丘疹)や水ぶくれができる
- じんましんのように皮膚が盛り上がる
- 症状がひどいと、ただれたり、色素沈着が残ったりすることもある
これらの症状は、日光を浴びてから数分後~数時間後、場合によっては数日後に現れることもあります。 もし、新しい薬を飲み始めたり、湿布薬を使い始めたりしてから症状が出るようになった場合は、薬剤が原因の「薬剤性光線過敏症」の可能性も考えられます。
ただし、これらの症状は他の皮膚疾患と見分けるのが難しい場合もあります。自己判断で対処すると症状が悪化する恐れもあるため、気になる症状があれば早めに皮膚科を受診することが大切です。
【結論】光線過敏症に効く市販の塗り薬はある?

つらい症状を今すぐなんとかしたいと考えたとき、まず思いつくのがドラッグストアなどで手軽に購入できる市販薬でしょう。ここでは、光線過敏症に対する市販の塗り薬の有無と、その選び方について解説します。
本章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 光線過敏症「専用」の市販薬はない
- 症状緩和に使える!市販の塗り薬の選び方と具体例
光線過敏症「専用」の市販薬はない
まず知っておいていただきたいのは、現在のところ「光線過敏症」という病名に対して、効能・効果が認められた市販の塗り薬は販売されていません。 光線過敏症は原因が多岐にわたり、症状の出方も人それぞれ異なるため、専門医の診断に基づいた治療が必要になるからです。
特に、症状が広範囲に及んでいたり、水ぶくれができていたり、強いかゆみで日常生活に支支障をきたしたりしている場合は、セルフケアでの対応は困難です。このような場合は、自己判断で市販薬を使用せず、速やかに皮膚科を受診してください。
症状緩和に使える!市販の塗り薬の選び方と具体例
光線過敏症専用の市販薬はありませんが、症状が比較的軽く、赤みやかゆみだけといった場合には、一時的な症状緩和を目的として市販薬を使用することも選択肢の一つです。 その際は、炎症を抑える「ステロイド成分」や、かゆみを鎮める「抗ヒスタミン成分」が配合された塗り薬を選びましょう。
ステロイド外用薬は、炎症を抑える強さによってランク分けされています。市販薬として購入できるのは、比較的マイルドな「ストロング」「ミディアム」「ウィーク」の3つのランクです。
市販で購入できるステロイド外用薬の例
- リンデロンVs軟膏/クリーム(ストロング): 医療用と同成分のステロイドが配合されており、しっかりとした効果が期待できます。
- ベトネベートN軟膏AS(ストロング): ステロイドに加えて抗生物質も配合されており、かき壊して化膿してしまった患部にも使用できます。
- フルコートf(ストロング): こちらもステロイドと抗生物質の配合剤です。
- リビメックスコーワローション(ミディアム): ローションタイプで伸びが良く、広範囲や毛の生えている部位にも使いやすいのが特徴です。
ただし、これらの市販薬はあくまでも応急処置です。5~6日間使用しても症状が改善しない、あるいは悪化するような場合は、使用を中止して必ず皮膚科を受診してください。 また、顔などのデリケートな部分への使用や、長期間の使用は副作用のリスクもあるため避けるべきです。購入の際は、薬剤師や登録販売者に相談し、自分の症状に合った薬を選ぶようにしましょう。
病院で処方される光線過敏症の塗り薬

皮膚科を受診した場合、光線過敏症の治療には主に炎症を抑えるための塗り薬が処方されます。市販薬で対応するよりも、医師の診断のもとで症状の重さや部位に適した薬を使用する方が、安全かつ効果的です。ここでは、病院で処方される代表的な塗り薬について解説します。
本章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 炎症を抑える「ステロイド外用薬」
- ステロイド以外の選択肢「免疫抑制外用薬」
炎症を抑える「ステロイド外用薬」
光線過敏症による皮膚の炎症を抑える治療の基本となるのが、ステロイド外用薬(塗り薬)です。 ステロイドには優れた抗炎症作用があり、赤み、腫れ、かゆみなどの症状を速やかに鎮める効果が期待できます。
医療用のステロイド外用薬は、作用の強さによって5段階にランク分けされています。
- ストロンゲスト(最も強い)
- ベリーストロング(かなり強い)
- ストロング(強い)
- ミディアム(おだやか)
- ウィーク(弱い)
医師は、患者さんの年齢、症状の重さ、症状が出ている部位(顔、体、手足など)を考慮して、最適な強さのステロイド薬を選択します。例えば、皮膚の薄い顔には弱いランクのものを、皮膚の厚い手足には強いランクのものを使うなど、きめ細やかな使い分けが行われます。自己判断で以前処方された薬を使ったり、他人の薬を借りたりすることは絶対にやめましょう。
副作用が心配な方もいるかもしれませんが、医師の指示通りに適切な期間、適切な量を使用すれば、過度に心配する必要はありません。 不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に質問してください。
ステロイド以外の選択肢「免疫抑制外用薬」
ステロイド外用薬で効果が不十分な場合や、長期間の使用による副作用が懸念される場合、特に顔などのデリケートな部位の治療には、免疫抑制外用薬が選択されることがあります。
代表的な薬には「タクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏)」があります。この薬は、皮膚の免疫反応を局所的に抑えることで炎症を鎮める働きをします。ステロイドとは異なる作用機序を持つため、ステロイドの長期使用でみられる皮膚が薄くなるなどの副作用が起こりにくいのが特徴です。
ただし、使い始めにヒリヒリとした刺激感やほてりを感じることがあります。通常は使用を続けるうちにおさまってきますが、症状が強い場合は医師に相談しましょう。また、この薬も医師の処方が必要な医療用医薬品です。
塗り薬と併せて、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の飲み薬が処方されることもあります。
塗り薬と併用したい!光線過敏症の基本対策

光線過敏症の症状を改善し、再発を防ぐためには、塗り薬による治療と並行して、原因となる日光(紫外線)を避けるための対策が何よりも重要です。また、日々のスキンケアで肌の状態を整えておくことも、症状の悪化を防ぐ上で役立ちます。
本章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 最重要!今日から始める紫外線対策
- 意外と盲点?日々のスキンケア
最重要!今日から始める紫外線対策
光線過敏症の対策において、最も重要なのは原因となる紫外線を徹底的にブロックすることです。 塗り薬で炎症を抑えても、紫外線を浴び続けていては症状は改善しません。以下の対策を日常生活に取り入れましょう。
- 日焼け止めを正しく使う:
- 選び方: 光線過敏症の原因となりやすいUVA波を防ぐ効果を示す「PA」値が高いもの(PA++++が最高値)を選びましょう。 また、肌への刺激が少ない「紫外線吸収剤不使用」や「ノンケミカル」と表示された製品がおすすめです。
- 使い方: 外出の30分前には塗り、2~3時間おきにこまめに塗り直すことが大切です。汗をかいたり、タオルで拭いたりした後は、その都度塗り直しましょう。
- 物理的な遮光を心がける:
- 衣服: 長袖、長ズボンを着用し、肌の露出をできるだけ少なくしましょう。色の濃い服や、紫外線カット(UPF)機能のある衣類が効果的です。
- 小物類: つばの広い帽子、日傘、サングラスなどを活用し、顔や首周りを紫外線から守りましょう。
- 外出時間を工夫する: 紫外線が最も強くなる午前10時から午後2時頃の外出は、できるだけ避けるようにしましょう。
室内でも窓ガラスを通して紫外線は入ってきます。 症状が強い場合は、室内でも日焼け止めを塗ったり、遮光カーテンを利用したりするなどの対策が必要です。
意外と盲点?日々のスキンケア
紫外線対策と合わせて、日々のスキンケアで肌の健康を保つことも大切です。肌が乾燥していると、外部からの刺激を受けやすくなる「バリア機能」が低下してしまいます。バリア機能が低下した肌は、わずかな紫外線でも過敏に反応しやすくなるため、保湿を徹底して肌のうるおいを保つことが、光線過敏症の予防・悪化防止につながります。
スキンケア製品を選ぶ際は、以下の点を参考にしてください。
- 低刺激性のものを選ぶ: 「敏感肌用」「アルコールフリー」「無香料・無着色」などと表示された、肌にやさしい製品を選びましょう。
- 保湿成分に注目: セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が配合された化粧水や乳液、クリームがおすすめです。
- 洗浄時も優しく: 洗顔や体を洗う際は、洗浄力の強すぎる製品は避け、よく泡立ててから手で優しく洗い、ぬるま湯で十分にすすぎましょう。ゴシゴシこするのは禁物です。
お風呂上がりは肌が乾燥しやすいため、タオルで優しく水分を押さえるように拭き取った後、すぐに保湿ケアを行うのが効果的です。
その湿布、大丈夫?薬剤性光線過敏症の原因と注意点

光線過敏症の中には、特定の薬剤の使用が引き金となって発症する「薬剤性光線過敏症」というタイプがあります。 特に、肩こりや腰痛で日常的に湿布薬を使っている方は注意が必要です。ここでは、薬剤性光線過敏症の原因となりやすい薬や、特に注意すべき点について解説します。
本章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 原因となりやすい薬剤(湿布・飲み薬)
- 剥がした後も油断禁物!注意すべき期間
原因となりやすい薬剤(湿布・飲み薬)
薬剤性光線過敏症は、薬の成分が皮膚に残り、そこに紫外線が当たることでアレルギー反応や毒性反応が引き起こされて起こります。 原因となる薬剤には、塗り薬や貼り薬などの外用薬と、飲み薬があります。
特に原因として報告が多いのが、「ケトプロフェン」という成分を含む湿布薬(貼り薬)や塗り薬です。 「モーラステープ」などの商品名で処方されることが多く、市販薬にも含まれている場合があります。
その他、原因となる可能性のある薬剤には以下のようなものがあります。
- 外用薬:
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ジクロフェナクなど
- 一部の日焼け止め成分:オキシベンゾン、オクトクリレンなど
- 内服薬(飲み薬):
- 降圧利尿薬:ヒドロクロロチアジドなど
- 抗菌薬:ニューキノロン系など
- 抗ヒスタミン薬
- 痛み止め(NSAIDs)
これらの薬を使用していて、日光に当たった部分に皮膚症状が出た場合は、薬剤性光線過敏症の可能性があります。すぐに薬の使用を中止し、処方した医師や薬剤師、または皮膚科医に相談してください。
剥がした後も油断禁物!注意すべき期間
薬剤性光線過敏症で最も注意すべき点の一つが、原因となる湿布薬などを剥がした後も、すぐに安心はできないということです。
薬の成分は、剥がした後もしばらくの間、皮膚の内部に残っています。そのため、使用を中止してから時間が経っていても、その部位に紫外線が当たることで症状が誘発されることがあるのです。
特にケトプロフェン含有の湿布薬の場合、使用中はもちろん、使用後少なくとも4週間は、貼っていた部位を衣服やサポーターなどで覆い、徹底的に紫外線を避ける必要があります。
「もう痛みもないし、剥がしたから大丈夫だろう」と油断して半袖や半ズボンで外出し、数日後、あるいは数週間後に突然、湿布を貼っていた形のまま赤く腫れ上がってしまうケースも少なくありません。 薬を使用していた期間だけでなく、使用後のケアがいかに重要であるかを覚えておきましょう。
光線過敏症に関するよくある質問

ここでは、光線過敏症に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
光線過敏症は治りますか?
光線過敏症が治るかどうかは、その原因によって異なります。例えば、薬剤が原因の「薬剤性光線過敏症」であれば、原因となる薬の使用を中止し、適切な遮光と治療を行えば、症状は改善し治癒が期待できます。
一方で、体質などが関わる「多形日光疹」などの場合は、症状が出やすい状態が続くことがあります。 しかし、適切な紫外線対策や治療を行うことで、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることは可能です。また、繰り返し日光に当たることで、皮膚が慣れて症状が出にくくなること(ハードニング現象)もあります。 いずれにせよ、自己判断せずに皮膚科専門医に相談し、正しい診断と指導を受けることが重要です。
光線過敏症に効く飲み薬はありますか?
はい、症状に応じて飲み薬が処方されることがあります。特に、かゆみの症状が強い場合や、日光じんましんのタイプでは、アレルギー反応を抑える「抗ヒスタミン薬」や「抗アレルギー薬」の内服が効果的です。 これらの薬は、かゆみの原因となるヒスタミンという物質の働きをブロックし、つらいかゆみを和らげます。
また、炎症が非常に強い、あるいは症状が全身に及ぶような重症例では、炎症を強力に抑えるために「ステロイド薬」の飲み薬が短期間処方されることもあります。 これらの飲み薬は、いずれも医師の処方が必要な医療用医薬品であり、症状や体質に合わせて適切に選択される必要があります。
ケトプロフェン含有の湿布でなぜ光線過敏症になるのですか?
ケトプロフェンという成分は、紫外線、特に波長の長いUVA波のエネルギーを吸収しやすい性質を持っています。 湿布を貼ると、ケトプロフェンの成分が皮膚に浸透します。その状態で皮膚が紫外線を浴びると、皮膚の中にあるケトプロフェンが光エネルギーを吸収して化学変化を起こし、アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)に変わってしまいます。
この変化した物質に対して、体の免疫システムが「異物だ」と認識して攻撃を始めることで、かぶれや水ぶくれといった強い皮膚炎(光アレルギー性接触皮膚炎)が引き起こされるのです。 この反応は、一度起こすと体が記憶してしまうため、その後わずかな量のケトプロフェンと紫外線に接触しただけでも、再び症状が現れやすくなります。
子供でも光線過敏症になりますか?
はい、子供でも光線過敏症になることがあります。子供にみられる光線過敏症には、大人と同様の「多形日光疹」や「日光じんましん」のほか、遺伝的な要因が関わるまれな疾患(例:色素性乾皮症など)も含まれます。
特に、春から夏にかけて、急に強い日差しを浴びた後に、顔や腕などに赤いブツブツが現れる場合は「多形日光疹」の可能性があります。子供の皮膚は大人よりもデリケートで紫外線の影響を受けやすいため、日頃から紫外線対策を徹底することが非常に重要です。子供用の肌にやさしい日焼け止めをこまめに塗ったり、帽子やUVカット機能のある衣類を活用したりして、大切な肌を守ってあげましょう。 もし気になる症状が見られたら、小児科または皮膚科に相談してください。
まとめ

- 光線過敏症専用の市販塗り薬はない。
- 軽度の症状には市販のステロイド薬が使える場合がある。
- 市販薬を5~6日使っても改善しない場合は皮膚科へ。
- 病院では症状に応じたランクのステロイド外用薬が処方される。
- ステロイド以外の選択肢として免疫抑制外用薬もある。
- 治療の基本は原因となる紫外線を徹底的に避けること。
- 日焼け止めはPA値が高く、ノンケミカル処方がおすすめ。
- 長袖や帽子など物理的な遮光も非常に重要。
- 保湿ケアで肌のバリア機能を高めることも大切。
- 薬剤性光線過敏症の原因としてケトプロフェン湿布が有名。
- 湿布は剥がした後も最低4週間は遮光が必要。
- 降圧薬や抗菌薬などの飲み薬が原因になることもある。
- かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方される。
- 子供でも光線過敏症になるため紫外線対策が重要。
- 自己判断せず、気になる症状は皮膚科専門医に相談する。