親との別れは、誰にでもいつか必ず訪れるものです。頭ではわかっていても、その悲しみや喪失感は計り知れず、いざ直面すると何をどうすれば良いのか分からなくなってしまうかもしれません。本記事では、来るべき日に向けての後悔しないための心構え、親が元気なうちに準備しておくべきこと、そして、深い悲しみを乗り越えていくための方法を、あなたの心に寄り添いながら具体的にお伝えします。
親が亡くなる前の心構え|「いつか」に備えるために

親の死が現実味を帯びてくると、多くの人が不安や恐怖を感じるものです。しかし、事前に心構えをしておくことで、その時の衝撃を和らげ、後悔を減らすことができます。ここでは、親が亡くなる前に考えておきたい心の準備についてお伝えします。
- 親の死と向き合うことの難しさ
- 「死」について親子で話す機会を持つ
- 親との時間を大切にし、感謝を伝える
- 自分の感情を否定しない
親の死と向き合うことの難しさ
親の死は、多くの人にとって人生で最も大きな喪失体験の一つです。 長い年月を共に過ごした存在がいなくなるという事実は、受け入れがたいものでしょう。特に、親との絆が強ければ強いほど、そのショックは計り知れません。 死後の手続きや生活の変化など、現実的な問題も次々と押し寄せ、心身ともに大きな負担がかかります。しかし、「人は誰でもいつかは死を迎える」という事実から目を背けず、少しずつ向き合っていくことが、悲しみを乗り越える第一歩となります。 焦る必要はありません。自分のペースで、ゆっくりと現実を受け入れていくことが大切です。
「死」について親子で話す機会を持つ
親が元気なうちに、「死」について話すことは、少し気まずく感じるかもしれません。しかし、これはお互いのために非常に重要なことです。例えば、終末期医療の希望(延命治療など)や、葬儀、お墓についての考えを事前に聞いておくことで、いざという時に家族が迷わずに済みます。 また、こうした会話は、親が自分の人生の終わり方を考えるきっかけにもなります。 話しにくい場合は、「テレビで終活の特集をやっていたんだけど…」など、世間話を切り口にするのも良いでしょう。 親の意思を尊重し、穏やかな最期を迎えさせてあげるためにも、勇気を出して話し合う時間を持つことをおすすめします。
親との時間を大切にし、感謝を伝える
後悔を減らすために最も大切なことは、親が元気なうちにできるだけ多くの時間を共に過ごし、感謝の気持ちを伝えることです。 日常の些細な会話や、一緒に出かける時間、電話一本でも構いません。当たり前のようにそばにいる存在だからこそ、改めて「ありがとう」と伝えるのは照れくさいかもしれませんが、言葉にして伝えることで、親もあなたも温かい気持ちになれるはずです。 親孝行は、特別なことである必要はありません。日々のコミュニケーションを大切にすることが、何よりもの親孝行であり、あなた自身の心の支えにもなるでしょう。
自分の感情を否定しない
親の死が近づいていると感じると、悲しみ、不安、恐怖、時には怒りなど、様々な感情が湧き上がってくるかもしれません。 「しっかりしなければ」と気丈に振る舞おうとする人もいますが、自分の感情を無理に抑え込む必要はありません。 泣きたいときには泣き、誰かに話を聞いてほしいときには、信頼できる友人や家族に気持ちを打ち明けましょう。 自分の感情を素直に受け入れ、表現することは、心の健康を保つために非常に重要です。 悲しむことは決して弱いことではなく、大切な人を失う上での自然な心の反応なのです。
後悔しないために|親が元気なうちにやっておくべきことリスト

親が元気なうちに、実務的な準備を進めておくことも、いざという時の負担を大きく減らすことにつながります。親子で協力しながら、少しずつ整理を進めていきましょう。ここでは、具体的な準備項目をリストアップして解説します。
- 終活に関する意向の確認(エンディングノートなど)
- 医療や介護に関する希望の確認
- 財産や相続に関する情報の整理
- 葬儀やお墓に関する希望の確認
- 親戚や友人の連絡先の共有
終活に関する意向の確認(エンディングノートなど)
最近では「終活」という言葉も一般的になり、自らの人生の終焉に向けて準備をする人が増えています。その一環として便利なのが「エンディングノート」です。エンディングノートとは、自分の情報や希望を書き留めておくノートのことで、法的な効力はありませんが、残された家族が様々な判断や手続きを進める上で大きな助けとなります。
エンディングノートには、以下のような項目を書いてもらうと良いでしょう。
- 自分の基本情報(本籍地、マイナンバーなど)
- 資産について(預貯金、不動産、有価証券、保険など)
- 医療や介護の希望
- 葬儀やお墓の希望
- 大切な人へのメッセージ
エンディングノートを書いてもらうことで、親の希望を具体的に知ることができ、家族の精神的・物理的な負担を軽減できます。 市販のノートや、自治体、法務局などが配布しているものもあるので、活用してみるのがおすすめです。
医療や介護に関する希望の確認
親が病気になったり、介護が必要になったりした時、どのような医療やケアを望んでいるのかを事前に確認しておくことは非常に重要です。特に、人生の最終段階における医療(終末期医療)については、本人の意思が最も尊重されるべきです。
具体的には、以下のような点について話し合っておくと良いでしょう。
- 延命治療(人工呼吸器、胃ろうなど)を希望するかどうか
- 痛みを和らげる緩和ケアについての考え
- 介護が必要になった場合、どこで(自宅、施設など)どのように過ごしたいか
- 告知(病名や余命を本人に伝えること)を希望するかどうか
これらのデリケートな問題は、親が元気で、冷静に判断できるうちに話し合っておくことが望ましいです。本人の意思が分かっていれば、家族は迷いや罪悪感を感じることなく、最善の選択をしてあげることができます。
財産や相続に関する情報の整理
親が亡くなった後、避けては通れないのが相続手続きです。相続は、時に親族間のトラブルの原因にもなりかねません。そうした事態を避けるためにも、親が元気なうちに財産状況を整理し、情報を共有しておくことが大切です。
具体的には、以下の準備を進めておくと安心です。
- 銀行口座や証券口座の整理・集約: 使っていない口座は解約し、数を減らしておくと、死後の手続きが格段に楽になります。
- 財産目録の作成: 預貯金、不動産、株式、生命保険といったプラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産も一覧にしておくと、相続手続きがスムーズに進みます。
- 遺言書の作成: 財産の分け方について親の意思が明確であれば、法的に有効な遺言書を作成してもらうのが最も確実です。特に相続人が複数いる場合や、特定の誰かに財産を多く残したい意向がある場合は、遺言書の作成がトラブル防止に繋がります。
相続税の申告・納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内という期限があります。 事前に準備をしておくことで、慌てずに対処できます。
葬儀やお墓に関する希望の確認
葬儀やお墓についても、親の希望を事前に聞いておくことで、残された家族は故人の意思に沿った見送りをすることができます。 どのような葬儀にしたいか、誰を呼んでほしいか、お墓はどうしたいかなど、具体的な希望を確認しておきましょう。
話し合っておきたいポイントは以下の通りです。
- 葬儀の形式: 一般葬、家族葬、一日葬、火葬式(直葬)など、様々な形式があります。 故人の希望や社会的な関係性を考慮して選びます。
- 葬儀の規模と呼んでほしい人: 親しい人だけで静かに見送られたいのか、多くの人に参列してほしいのかを確認します。
- 遺影写真の準備: 生前に気に入った写真を遺影用に選んでおいてもらうと、いざという時に慌てずに済みます。
- お墓について: すでにお墓があるのか、新しく建てる必要があるのか、あるいは樹木葬や散骨など他の供養方法を希望するのかを確認します。
葬儀社の選定やプランの検討を生前から行っておくことも、費用の把握やスムーズな手配に繋がります。
親戚や友人の連絡先の共有
親が亡くなったことを知らせるべき親戚や友人、知人のリストを作成し、連絡先を共有しておいてもらうことも忘れてはならない準備の一つです。いざという時、誰に連絡すればよいのか分からず困ってしまうケースは少なくありません。
特に、年賀状のやり取りしかしていない遠い親戚や、親の友人関係は、子どもには分からないことが多いものです。 エンディングノートにリストを記載してもらったり、スマートフォンの連絡先を共有してもらったりするなど、分かりやすい形で情報を残してもらいましょう。訃報の連絡をスムーズに行うことは、故人に対する最後の務めの一つでもあります。
もしもの時、慌てないために|親の死後すぐにやるべき手続き

親が亡くなった直後は、深い悲しみの中でも、やらなければならない手続きが次々と発生します。事前に流れを把握しておくことで、少しでも落ち着いて対応することができます。ここでは、臨終直後から葬儀までの主な流れと手続きについて解説します。
- 臨終直後から葬儀までの流れ
- 死亡届の提出と火葬許可証の取得
- 葬儀社の選定と打ち合わせ
- 関係者への連絡
臨終直後から葬儀までの流れ
親が亡くなられた直後は、動揺してしまいがちですが、順を追って対応していく必要があります。一般的な流れは以下の通りです。
- 死亡診断書(死体検案書)の受け取り: 病院で亡くなった場合は医師から、自宅で亡くなった場合はかかりつけ医や警察の検案を経て発行されます。この書類は後の手続きで必ず必要になるため、大切に保管しましょう。
- 遺体の安置: 葬儀社に連絡し、ご遺体を自宅や斎場の安置施設へ搬送してもらいます。
- 葬儀社の決定と打ち合わせ: 葬儀の日程、内容、費用などを具体的に決めていきます。
- 関係者への連絡: 親族や親しい友人、勤務先などに訃報を連絡します。
- お通夜・葬儀・告別式: 葬儀社の担当者と決めた内容に沿って儀式を執り行います。
- 火葬・収骨: 火葬場でご遺体を火葬し、遺骨を骨壷に納めます。
この間、わずか数日のうちに多くのことを決定し、手配する必要があります。 家族や親族と協力し、役割分担をしながら進めていくことが大切です。
死亡届の提出と火葬許可証の取得
親が亡くなった後、法的に必要な手続きとして「死亡届」の提出があります。これは、死亡の事実を知った日から7日以内に、故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出しなければなりません。
死亡届を提出する際には、医師から受け取った「死亡診断書(または死体検案書)」の左半分が死亡届の様式になっているため、必要事項を記入して提出します。通常、この手続きは葬儀社が代行してくれることが多いです。
死亡届が受理されると、「火葬許可証」が交付されます。この許可証がなければ火葬を行うことができないため、非常に重要な書類です。火葬が終わると、火葬場で日付が記入され、「埋葬許可証」として返却されます。これは納骨の際に必要となるため、紛失しないように大切に保管しましょう。
葬儀社の選定と打ち合わせ
ご遺体を安置した後、速やかに葬儀社を決定し、打ち合わせを行う必要があります。生前に葬儀社を決めていない場合は、複数の会社から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
打ち合わせでは、主に以下の内容を決定します。
- 葬儀の日程と場所(斎場)
- 葬儀の形式と規模(一般葬、家族葬など)
- 祭壇や棺、返礼品などの具体的な内容
- 費用の見積もり
葬儀費用は、葬儀一式費用、飲食接待費、宗教者への謝礼(お布施など)で構成され、全国平均で120万円前後とされていますが、形式や規模によって大きく異なります。 後でトラブルにならないよう、見積もりの内容は詳細に確認し、不明な点は遠慮なく質問しましょう。故人の希望や予算を伝え、納得のいく葬儀プランを選ぶことが大切です。
関係者への連絡
葬儀の日程が決まったら、速やかに関係者へ訃報の連絡をします。連絡する範囲や方法は、故人との関係性や葬儀の規模によって異なります。
一般的に連絡する相手は以下の通りです。
- 親族: まずは三親等くらいまでの近親者に連絡します。
- 故人の友人・知人: 生前に用意しておいた連絡先リストをもとに連絡します。
- 会社・学校関係者: 故人や遺族の勤務先、学校などに連絡し、忌引き休暇の申請も行います。
- 町内会など: 故人が所属していた団体などにも必要に応じて連絡します。
連絡方法は、緊急を要するため電話が基本です。 伝える内容は、故人の氏名、亡くなった日時、喪主の氏名、通夜・葬儀の日時と場所などです。家族葬などで参列を辞退する場合は、その旨も明確に伝えましょう。連絡漏れがないよう、リストを作成してチェックしながら進めると確実です。
葬儀後の手続き完全ガイド|期限内に済ませるべきこと

葬儀が終わっても、悲しみに浸る間もなく、様々な手続きが待っています。期限が定められているものも多いため、計画的に進める必要があります。ここでは、葬儀後に行うべき手続きを、期限の目安とともに解説します。
- 期限が短い手続き(年金、健康保険など)
- 期限に比較的余裕がある手続き(相続、遺品整理など)
- 手続き一覧チェックリスト(表形式)
期限が短い手続き(年金、健康保険など)
葬儀後、まず優先して行うべきは、期限が短い手続きです。多くは死亡日から10日〜14日以内と定められているため、速やかに対応しましょう。
- 年金受給停止手続き(10日または14日以内): 故人が年金を受給していた場合、年金事務所または年金相談センターに「受給権者死亡届」を提出します。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。 手続きが遅れると、年金を多く受け取ってしまい、後で返還が必要になる場合があります。
- 健康保険・介護保険の資格喪失手続き(14日以内): 故人が加入していた健康保険の資格を喪失する手続きです。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は市区町村役場へ、会社の健康保険の場合は勤務先を通じて手続きします。 同時に、保険証を返却します。介護保険も同様に14日以内に資格喪失届を提出します。
- 世帯主変更届(14日以内): 故人が世帯主で、残された世帯員が2人以上いる場合に必要です。 新しい世帯主を決め、市区町村役場に届け出ます。
これらの手続きは、日常生活に直結するものばかりです。特に、故人の扶養に入っていた家族は、新たに国民健康保険に加入する手続きが必要になるため、注意が必要です。
期限に比較的余裕がある手続き(相続、遺品整理など)
期限が短い手続きが終わったら、次は相続関連やその他の契約に関する手続きを進めます。これらは数ヶ月単位の期限が設けられているものが多いですが、内容が複雑なため、早めに着手することが大切です。
- 相続放棄・限定承認(3ヶ月以内): 故人に借金などマイナスの財産が多い場合、相続を放棄する「相続放棄」や、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」を選択できます。これらは、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。
- 所得税の準確定申告(4ヶ月以内): 故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わって所得税の申告と納税を行います。
- 相続税の申告・納税(10ヶ月以内): 相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に必要です。相続人全員で遺産分割協議を行い、申告・納税します。
- 遺品整理: 期限は特にありませんが、賃貸住宅の場合は退去期限までに、持ち家の場合は相続手続きと並行して進めるのが一般的です。
- その他名義変更・解約: 預貯金口座、不動産、自動車、公共料金、クレジットカード、携帯電話など、故人名義のあらゆる契約について、名義変更または解約の手続きが必要です。
特に相続関連の手続きは専門的な知識が必要となるため、必要に応じて司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
手続き一覧チェックリスト(表形式)
葬儀後の手続きは多岐にわたるため、チェックリストを作成して管理すると漏れを防ぐことができます。以下に主な手続きをまとめましたので、ご活用ください。
期限 | 手続き内容 | 提出先・連絡先 |
---|---|---|
死亡後すぐ | 死亡診断書の受け取り | 病院、かかりつけ医 |
7日以内 | 死亡届・火葬許可申請 | 市区町村役場 |
10日・14日以内 | 年金受給停止 | 年金事務所など |
14日以内 | 健康保険・介護保険資格喪失 | 市区町村役場、勤務先 |
14日以内 | 世帯主変更届 | 市区町村役場 |
1ヶ月以内 | 雇用保険受給資格者証の返還 | ハローワーク |
3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 | 家庭裁判所 |
4ヶ月以内 | 所得税の準確定申告 | 税務署 |
10ヶ月以内 | 相続税の申告・納税 | 税務署 |
随時 | 公共料金・金融機関・クレジットカード等の名義変更・解約 | 各契約会社 |
随時 | 遺品整理 | – |
悲しみを乗り越えるために|グリーフケアという考え方

大切な人を失った悲しみは、簡単に癒えるものではありません。その悲しみに寄り添い、乗り越えていくための支援を「グリーフケア」と呼びます。ここでは、グリーフケアの考え方と、自分自身でできる心のケアについてお伝えします。
- グリーフ(悲嘆)とは何か?
- 悲しみを無理に抑え込まない
- 信頼できる人に気持ちを話す
- 専門家やサポート団体に相談する
- 「悲しくない」と感じても自分を責めない
グリーフ(悲嘆)とは何か?
グリーフとは、死別などによる喪失体験によって引き起こされる、心と身体の自然な反応のことを指します。「悲嘆」とも訳され、悲しみや寂しさだけでなく、怒り、罪悪感、不安、無気力感といった感情的な反応や、睡眠障害、食欲不振、疲労感などの身体的な反応、さらには引きこもりや過活動といった行動面の変化も含まれます。
このグリーフの現れ方や、回復にかかる時間は人それぞれです。 周囲と比べて「自分は立ち直りが遅い」などと焦る必要は全くありません。 グリーフは病気ではなく、愛する人を失ったことに対するごく自然な心のプロセスなのです。このプロセスを無理に止めようとせず、時間をかけてゆっくりと向き合っていくことが大切です。
悲しみを無理に抑え込まない
親を亡くした後、「自分がしっかりしなければ」「周りに心配をかけたくない」といった思いから、悲しい気持ちを無理に抑え込んでしまう人がいます。 しかし、感情を押し殺すことは、心身にさらなる負担をかけ、回復を遅らせてしまう可能性があります。
泣きたいときには、我慢せずに涙を流しましょう。 故人を思い出して感傷に浸る時間も必要です。 悲しみの感情をありのままに受け入れ、表現することは、心の傷を癒していく上で非常に重要な過程です。 自分の感情を否定せず、「悲しんで当然なんだ」と認めてあげることが、乗り越えるための第一歩となります。
信頼できる人に気持ちを話す
一人で悲しみを抱え込むのは非常につらいことです。兄弟や配偶者、親しい友人など、信頼できる人に今の気持ちを話してみましょう。 同じ悲しみを共有できる家族と話すことで、「自分だけではない」と感じられ、心が軽くなることもあります。
話す内容は、まとまっていなくても構いません。故人との思い出、後悔していること、今の不安な気持ちなど、心に浮かんだことをそのまま言葉にするだけで、気持ちが整理されていくことがあります。誰かに話を聞いてもらい、共感してもらうことは、孤独感を和らげ、大きな支えとなります。
専門家やサポート団体に相談する
悲しみが長く続いたり、日常生活に支障をきたすほどのつらさを感じたりする場合には、専門家の助けを求めることも大切な選択肢です。
グリーフケアを提供している専門家や団体には、以下のようなものがあります。
- カウンセラーや臨床心理士: 専門的なカウンセリングを通じて、悲しみと向き合う手助けをしてくれます。
- グリーフケア外来: 医療機関によっては、遺族の心のケアを専門とする外来が設けられています。
- 自助グループ(わかちあいの会): 同じように大切な人を亡くした人たちが集まり、お互いの体験や気持ちを語り合う場です。
専門家や同じ経験をした人に話を聞いてもらうことで、自分の感情を客観的に見つめ直したり、新たな気づきを得たりすることができます。 決して一人で抱え込まず、外部のサポートを頼ることをためらわないでください。
「悲しくない」と感じても自分を責めない
親が亡くなった後、思ったほど悲しみを感じられず、「自分は冷たい人間なのだろうか」と罪悪感を抱いてしまう人もいます。しかし、これもまた、グリーフの一つの形です。
悲しみを感じない理由としては、
- 突然のことで、まだ実感が湧いていない。
- 長い介護生活が終わり、安堵の気持ちが先に立っている。
- ショックが大きすぎて、感情が麻痺している。
などが考えられます。感情の現れ方は人それぞれであり、正しい形というものはありません。「悲しくない」と感じる自分を責める必要は全くありません。 時間が経つにつれて、じわじわと悲しみがこみ上げてくることもあります。どのような感情であっても、それが今のあなたの素直な気持ちなのです。自分自身を否定せず、ありのままを受け止めてあげましょう。
よくある質問

親の死、何から手をつければいい?
親が亡くなった直後は、まず「死亡診断書」を受け取り、葬儀社に連絡して遺体の搬送と安置を行います。 その後、葬儀社と打ち合わせをし、並行して親族や関係者に訃報を連絡します。法的な手続きとしては、7日以内に「死亡届」を役所に提出する必要があります。 葬儀が終わった後は、年金や健康保険の手続き、そして相続関連の手続きと続きます。やるべきことが多く混乱しがちなので、リストを作成し、家族で分担しながら進めるのがおすすめです。
親が死ぬのが怖くてたまらないです。どうすればいいですか?
親の死を怖いと感じるのは、ごく自然な感情です。 まずは、その恐怖心を否定せず、受け入れることから始めましょう。そして、後悔を減らすために「今できること」に目を向けるのが良いでしょう。例えば、親と過ごす時間を増やしたり、感謝の気持ちを伝えたり、親子で将来について(終末期医療や葬儀など)話し合っておくことも、心の準備につながります。 一人で抱え込まず、信頼できる友人やカウンセラーに気持ちを話してみるのも一つの方法です。
親の死後、悲しくないのはおかしいですか?
おかしくありません。悲しみの感じ方は人それぞれです。ショックが大きすぎて実感が湧かなかったり、感情が麻痺してしまったりすることもあります。 また、長い介護の末の死であれば、安堵の気持ちが先に立つこともあります。どのような感情であれ、それはあなたの自然な反応です。自分を「冷たい人間だ」などと責める必要は全くありません。時間が経つにつれて感情が変化することもありますので、焦らずご自身の心と向き合ってください。
兄弟で意見が合わない場合はどうすればいいですか?
葬儀や遺産分割など、親の死後は兄弟間で意見が対立することがあります。まずは、感情的にならず、お互いの意見を冷静に聞く場を設けることが大切です。それぞれの考えや事情を理解しようと努めましょう。それでも話がまとまらない場合は、親戚など信頼できる第三者に入ってもらったり、遺産分割であれば弁護士や司法書士などの専門家に相談したりすることも有効な手段です。 故人の意思を尊重することを第一に考え、円満な解決を目指しましょう。
葬儀費用はどのくらいかかりますか?
葬儀費用は、葬儀の形式や規模、地域によって大きく異なります。2024年の調査によると、葬儀費用の全国平均は約118.5万円です。 内訳としては、祭壇や棺などの「葬儀一式費用」、通夜振る舞いなどの「飲食接待費」、お布施などの「宗教者への謝礼」に分かれます。 家族葬や一日葬など、規模を小さくすれば費用を抑えることができます。 複数の葬儀社から見積もりを取り、内容をよく比較検討することが重要です。
遺品整理はいつから始めるべきですか?
遺品整理を始める時期に決まりはありません。四十九日や一周忌などの法要が終わったタイミングや、相続手続きが一段落してから始める人が多いようです。 しかし、賃貸物件の場合は退去期限があるため、早めに着手する必要があります。大切なのは、ご自身の気持ちの整理がついてから始めることです。 焦って進めると、後で「捨てなければよかった」と後悔することにもなりかねません。家族や親族と相談しながら、故人を偲びつつ、ゆっくりと進めていきましょう。
まとめ

- 親の死と向き合う覚悟を少しずつ持つことが大切です。
- 親子で「死」について話し合う機会を持つと後悔が減ります。
- 親が元気なうちに感謝を伝え、共に過ごす時間を大切にしましょう。
- 自分の悲しい感情を否定せず、ありのまま受け入れましょう。
- エンディングノートは親の希望を知るために有効です。
- 医療や介護、葬儀やお墓の希望を事前に確認しておきましょう。
- 財産状況を整理し、相続の準備をしておくと安心です。
- 親族や友人の連絡先リストを作成してもらいましょう。
- 死後7日以内に死亡届を提出する必要があります。
- 葬儀後の手続きには期限があるため計画的に進めましょう。
- 悲しみを乗り越える支援「グリーフケア」という考え方があります。
- 悲しい時は我慢せず、感情を表現することが大切です。
- 信頼できる人に気持ちを話すことで心が軽くなります。
- つらい時は専門家やサポート団体に相談しましょう。
- 「悲しくない」と感じても自分を責める必要はありません。