夫の扶養に入っているパートの年末調整の書き方

夫の扶養に入りながらパートで働く皆さん、年末調整の時期になると「どう書けばいいの？」「私の収入だと扶養から外れる？」といった疑問や不安を感じることはありませんか？ 年末調整は、毎月の給与から天引きされている所得税を正確な金額に精算するための大切な手続きです。特に、扶養内で働くパート主婦（夫）にとっては、自身の収入が夫の税金や社会保険に影響を与えるため、正しい知識と書き方を理解しておくことが重要になります。本記事では、夫の扶養に入っているパートの方が年末調整で迷わないよう、必要な書類の書き方から、収入の「壁」と呼ばれる上限額、よくある疑問まで、分かりやすく徹底解説します。

夫の扶養とパート収入の基本を理解しよう

夫の扶養に入ってパートで働く場合、税金や社会保険の面でいくつかの「壁」が存在します。これらの壁を理解することは、ご自身の働き方を考える上で非常に重要です。まずは、税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い、そしてそれぞれの収入上限について確認していきましょう。

• 税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い
• 扶養の「壁」とは？103万円、130万円、150万円、201万円

税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い

「扶養」と一言で言っても、実は「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があることをご存じでしょうか。これらはそれぞれ異なる基準で判断され、影響も大きく異なります。税法上の扶養は、夫が所得税や住民税の控除を受けられるかどうかに関わるものです。一方、社会保険上の扶養は、妻が夫の健康保険や厚生年金に被扶養者として加入できるかどうかに関わります。どちらの扶養も、パート収入の金額によってその適用が変わってくるため、それぞれの違いをしっかりと把握しておくことが大切です。

扶養の「壁」とは？103万円、130万円、150万円、201万円

パートで働く方がよく耳にする「〇〇万円の壁」という言葉は、ご自身の収入が税金や社会保険に与える影響を示すものです。これらの壁を意識せずに収入が増えてしまうと、思わぬ税金や社会保険料の負担が発生し、結果的に手取りが減ってしまう可能性もあります。主な「壁」として、103万円、106万円、130万円、150万円、201万円といった金額が挙げられます。

年末調整とは？パート主婦が知るべき基礎知識

年末調整は、給与所得者にとって非常に重要な手続きです。特にパートで働く方にとっては、自身の収入が夫の扶養に影響を与えるため、その仕組みを正しく理解しておくことが求められます。ここでは、年末調整の目的と対象者、そして確定申告との違いについて解説します。

• 年末調整の目的と対象者
• 確定申告との違い

年末調整の目的と対象者

年末調整の主な目的は、毎月の給与から天引きされている所得税の過不足を精算することです。会社員やパート、アルバイトなど、給与を受け取っている多くの人が対象となります。毎月の給与から差し引かれる所得税（源泉徴収税額）はあくまで概算であり、その年の正確な所得税額とは異なる場合があります。年末調整を行うことで、生命保険料控除や扶養家族の状況などを反映させ、正確な所得税額を再計算し、過払い分があれば還付され、不足分があれば追加で徴収されることになります。

確定申告との違い

年末調整と並んで税金の手続きとしてよく聞かれるのが「確定申告」です。どちらも所得税を精算する手続きですが、対象者や申告する主体、控除できる内容などに違いがあります。年末調整は勤務先が従業員に代わって行うのに対し、確定申告は納税者自身が行うものです。この違いを理解しておくことで、ご自身がどちらの手続きを行うべきか、または両方が必要なのかを判断できます。

夫の扶養パート年末調整の書き方ステップバイステップ

夫の扶養に入っているパートの方が年末調整を行う際、いくつかの書類を提出する必要があります。これらの書類の書き方を正しく理解し、記入漏れや間違いがないように進めることが大切です。ここでは、年末調整に必要な書類の種類と入手方法、そして主要な書類の書き方について、ステップバイステップで解説します。

• 提出書類の種類と入手方法
• 「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」の書き方
• 「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の書き方
• 「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方（該当する場合）

提出書類の種類と入手方法

年末調整で提出する書類は、主に以下の2種類です。ご自身の状況によっては、追加で提出が必要な書類もあります。これらの書類は、通常、勤務先から配布されますが、もし手元にない場合は勤務先に確認するか、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることも可能です。

• 給与所得者の扶養控除等（異動）申告書：年末調整を受けるすべての給与所得者が提出する書類です。
• 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書：基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除を受けるために提出する書類です。

上記以外に、ご自身で生命保険や地震保険、iDeCo（個人型確定拠出年金）などに加入している場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」の提出も必要となります。また、住宅ローン控除（住宅借入金等特別控除）を受ける場合は「住宅借入金等特別控除申告書」の提出も必要です。これらの書類は、それぞれ記入する内容が異なりますので、ご自身の状況に合わせて必要な書類を準備しましょう。特に、保険料控除申告書を提出する際には、保険会社から送られてくる保険料控除証明書が必要になりますので、大切に保管しておいてください。

「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」の書き方

「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」は、年末調整を受けるすべての人が提出する最も基本的な書類です。パートで扶養内の範囲で働いている方は、主に自身の個人情報を記入することになります。この書類を提出することで、毎月の給与から源泉徴収される所得税が正しく計算され、年末調整が行われます。提出がない場合、高い税率で源泉徴収される「乙欄課税」となり、手取りが減るだけでなく、年末調整の対象外となるデメリットがあるため、忘れずに提出しましょう。

• 申告書上部の基本情報：氏名、個人番号（マイナンバー）、住所または居所、生年月日、世帯主の氏名、あなたとの続柄、配偶者の有無などを正確に記入します。
• A 源泉控除対象配偶者について：夫が配偶者控除や配偶者特別控除を受ける場合、妻（あなた）の情報を記入します。あなたの氏名、個人番号、生年月日、所得の見積額などを記入しましょう。給与収入のみの場合は、収入金額から給与所得控除額（最低55万円）を引いた額が所得の見積額となります。
• B 控除対象扶養親族（16歳以上）について：16歳以上の扶養親族がいる場合に記入します。例えば、お子さんがいる場合は、そのお子さんの氏名、個人番号、生年月日、続柄、所得の見積額などを記入します。
• C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生：ご自身や同一生計の配偶者、扶養親族がこれらのいずれかに該当する場合にチェックを入れ、必要な情報を記入します。
• D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等：夫婦共働きで子どもがいる場合など、同一生計内で複数の所得者がいる場合、同じ方を重複して扶養親族として申告することはできません。例えば、夫が子どもを扶養親族として申告している場合、妻は「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄にその子どもの情報を記入します。
• 住民税に関する事項（16歳未満の扶養親族）：16歳未満の扶養親族がいる場合に記入します。氏名、個人番号、続柄、生年月日、住所または居所などを記入しましょう。

企業情報の欄は、あらかじめ企業側で印字されていれば記載する必要はありません。万が一印字されていない場合は、企業側の指示に従って記入しましょう。

「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の書き方

この書類は、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除の適用を受けるために提出するものです。特にパートで働く方にとっては、ご自身の収入が夫の配偶者控除や配偶者特別控除に影響するため、正確な記入が求められます。

• 基礎控除申告書：ご自身のその年の合計所得金額の見積額を記入します。給与収入のみの場合は、収入金額から給与所得控除額（最低55万円）を引いた額が所得の見積額となります。この所得金額に応じて、基礎控除額が決定されます。
• 配偶者控除等申告書：夫が配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合に記入します。あなたの氏名、個人番号、生年月日、そしてその年の合計所得金額の見積額を記入します。この所得金額によって、夫が受けられる控除額が変わってきます。
• 所得金額調整控除申告書：年収が850万円を超え、かつ、ご自身や配偶者、扶養親族のうち特別障害者がいる人、または23歳未満の子どもがいる人が記入できます。該当する場合は、要件にチェックを入れ、扶養親族等の氏名、個人番号、生年月日、続柄、所得金額、住所または居所を記入します。この控除は夫婦どちらも受けることができるため、該当する場合は夫婦それぞれが記入することで控除適用を受けられます。

ご自身の収入の見込み額を正確に把握し、該当する項目に漏れなく記入することが重要です。もし、年収の計算が難しい場合は、勤務先の担当者に相談してみるのも良いでしょう。

「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方（該当する場合）

ご自身で生命保険や地震保険、iDeCo（個人型確定拠出年金）などの保険料を支払っている場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することで、所得税の控除を受けられます。この控除は、支払った保険料に応じて所得税が軽減される制度であり、節税につながる大切な手続きです。

• 生命保険料控除：一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3種類に分かれています。それぞれの区分ごとに、支払った保険料の金額を記入し、控除額を計算します。最大で12万円まで控除されます。
• 地震保険料控除：地震保険料を支払っている場合に記入します。支払った保険料の金額を記入し、控除額を計算します。
• 社会保険料控除：国民年金保険料や国民健康保険料などを自分で支払っている場合に記入します。支払った金額を証明する書類（国民年金保険料控除証明書など）が必要です。
• 小規模企業共済等掛金控除：iDeCo（個人型確定拠出年金）の掛金などを支払っている場合に記入します。

保険料控除申告書は、控除の種類によって記入箇所が異なりますので、証明書の内容と照らし合わせながら、間違いのないように記入を進めてください。不明な点があれば、保険会社や勤務先の担当者に確認することをおすすめします。

扶養から外れてしまうケースと対処法

パートで働く方が、ご自身の収入が扶養の「壁」を超えてしまうと、夫の扶養から外れてしまうことがあります。扶養から外れると、税金や社会保険料の負担が増えるなど、家計に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、収入が扶養の壁を超えてしまった場合の対処法と、夫の会社への連絡や手続きについて解説します。

• 収入が扶養の壁を超えてしまったら
• 夫の会社への連絡と手続き

収入が扶養の壁を超えてしまったら

もし、ご自身のパート収入が、税法上や社会保険上の扶養の「壁」を超えてしまった場合、いくつかの影響が生じます。例えば、税法上の扶養の壁（2025年からは160万円）を超えると、ご自身に所得税が課税されるようになります。また、社会保険上の扶養の壁（130万円）を超えると、夫の社会保険の被扶養者ではなくなり、ご自身で社会保険に加入し、保険料を支払う必要が出てきます。

夫の会社への連絡と手続き

妻の収入が夫の扶養の壁を超えてしまった場合、夫の会社への連絡と、それに伴う手続きが必要になることがあります。特に、社会保険上の扶養から外れる場合は、夫の会社の健康保険組合や年金事務所への届け出が必要となるため、速やかに対応することが求められます。

よくある質問

夫の扶養に入ってパートで働く皆さんが抱きがちな年末調整に関する疑問をまとめました。一つずつ確認していきましょう。

• パート収入が103万円を超えたらどうなりますか？
• 年末調整で配偶者控除と配偶者特別控除はどちらが適用されますか？
• 扶養控除等申告書は毎年提出が必要ですか？
• 年末調整の書類を書き間違えたらどうすればいいですか？
• 夫の扶養に入っているパートでも年末調整は必要ですか？
• 扶養内で働くメリット・デメリットは何ですか？
• 夫の年末調整で妻の収入を記入する欄はどこですか？
• パートの源泉徴収票はいつ、どこでもらえますか？
• 扶養の範囲内で働くには、月収いくらまでが目安ですか？
• 年末調整で提出する書類が足りない場合はどうすればいいですか？

パート収入が103万円を超えたらどうなりますか？

パート収入が103万円を超えると、所得税が課税される可能性があります。ただし、2025年の税制改正により、給与所得控除と基礎控除の引き上げが決定し、課税最低限が160万円となる新制度がスタートします。これにより、年収160万円以下であれば所得税はかかりません。しかし、これは所得税の制度変更であり、社会保険や住民税の要件は変わらないため、他の「壁」にも注意が必要です。

年末調整で配偶者控除と配偶者特別控除はどちらが適用されますか？

夫が受けられる配偶者控除と配偶者特別控除は、妻の年収によってどちらか一方が適用されます。妻の年収が103万円以下（所得48万円以下）であれば配偶者控除が適用され、夫は38万円の控除を受けられます。妻の年収が103万円を超え201.6万円未満（所得48万円超133万円以下）であれば、年収に応じて配偶者特別控除が適用され、控除額は段階的に減少します。妻の年収が201.6万円以上になると、配偶者特別控除は受けられません。

扶養控除等申告書は毎年提出が必要ですか？

はい、「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」は原則として毎年提出が必要です。この書類は、その年の扶養状況などを申告するためのものであり、毎月の給与から天引きされる所得税額を正しく計算するために使われます。扶養状況に変動がなくても、毎年提出を求められるのが一般的です。

年末調整の書類を書き間違えたらどうすればいいですか？

年末調整の書類を書き間違えてしまった場合は、二重線で訂正し、訂正印を押すのが一般的な対処法です。修正液や修正テープの使用は避けるようにしましょう。もし、訂正箇所が多い場合や、どのように訂正すれば良いか分からない場合は、勤務先の人事・労務担当者に相談し、指示を仰ぐのが最も確実です。場合によっては、新しい書類に書き直すよう指示されることもあります。

夫の扶養に入っているパートでも年末調整は必要ですか？

はい、夫の扶養に入っているパートの方でも、原則として年末調整は必要です。「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」を勤務先に提出していれば、年収が123万円以下で所得税が課税されない場合でも、年末調整の対象となります。これは、その年の所得税額が0円であることを正式に確定させるために必要な手続きだからです。

扶養内で働くメリット・デメリットは何ですか？

扶養内で働くメリットとしては、夫が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられることによる税負担の軽減、そして妻自身が社会保険料を支払う必要がないことが挙げられます。これにより、家計全体の手取り額が増える可能性があります。デメリットとしては、収入に上限があるため、働ける時間や仕事内容が制限されること、将来の年金額が少なくなる可能性があることなどが考えられます。

夫の年末調整で妻の収入を記入する欄はどこですか？

夫の年末調整で妻の収入を記入する欄は、主に「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の中の「配偶者控除等申告書」の欄です。ここに妻の氏名、個人番号、生年月日、そしてその年の合計所得金額の見積額を記入します。この情報に基づいて、夫が受けられる配偶者控除または配偶者特別控除の額が決定されます。

パートの源泉徴収票はいつ、どこでもらえますか？

パートの源泉徴収票は、通常、年末調整後に勤務先から交付されます。一般的には、12月の最終給与の支払い時や、翌年の1月中に発行されることが多いです。退職した場合は、退職後1ヶ月以内を目安に発行されます。もし、年末調整の時期を過ぎても源泉徴収票が手元に届かない場合は、勤務先の人事・経理担当者に問い合わせてみましょう。

扶養の範囲内で働くには、月収いくらまでが目安ですか？

扶養の範囲内で働く際の月収の目安は、どの「壁」を意識するかによって異なります。例えば、社会保険上の扶養（130万円の壁）を意識する場合、年収130万円を12ヶ月で割ると、月収は約10万8千円が目安となります。ただし、これはあくまで目安であり、残業代や交通費なども収入に含まれる場合があるため、年間収入で正確に判断することが重要です。また、106万円の壁を意識する場合は、月収8.8万円以上が目安となります。

年末調整で提出する書類が足りない場合はどうすればいいですか？

年末調整で提出する書類が足りない場合は、まずは勤務先の人事・労務担当者に相談しましょう。必要な書類を再発行してもらうか、国税庁のウェブサイトからダウンロードして自分で印刷することも可能です。特に、保険料控除証明書などは、再発行に時間がかかる場合があるため、早めに確認し、対応することが大切です。書類の提出期限に間に合わない場合は、確定申告で対応することも可能ですが、手間がかかるため、できるだけ年末調整で済ませることをおすすめします。

まとめ

• 夫の扶養パート年末調整は、所得税の過不足を精算する手続きです。
• 税法上の扶養と社会保険上の扶養は異なる基準があります。
• 103万円、106万円、130万円、150万円、201万円の「壁」を理解しましょう。
• 2025年の税制改正で所得税の課税最低限が160万円に引き上げられます。
• 年末調整の対象者は、給与所得者の多くが含まれます。
• 確定申告は、年末調整で対応できない場合に納税者自身が行う手続きです。
• 提出書類は「扶養控除等申告書」と「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」が基本です。
• 保険料控除を受ける場合は「保険料控除申告書」も必要です。
• 各書類は、自身の個人情報や収入の見込み額を正確に記入します。
• 扶養から外れると、税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。
• 収入が扶養の壁を超えたら、夫の会社への連絡と手続きが必要です。
• 年末調整の書類を書き間違えたら、二重線で訂正し、訂正印を押しましょう。
• 扶養控除等申告書は毎年提出が原則です。
• 扶養内で働くメリット・デメリットを理解し、働き方を検討しましょう。
• 源泉徴収票は年末調整後に勤務先から交付されます。