大切に育てているバラが、春になるとアブラムシだらけに…なんて経験はありませんか?美しい花を守るため、害虫対策は欠かせません。そこで頼りになるのが「オルトラン」です。でも、「一体いつ撒くのが正解なの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、バラへのオルトラン散布に最適な時期や効果的な使い方、そして年間を通した害虫管理のコツまで、詳しく解説していきます。この記事を読めば、あなたも害虫の悩みから解放され、美しいバラを存分に楽しめるようになりますよ。
バラにオルトランを撒く最適な時期は春と秋

結論から言うと、バラにオルトランを撒く最も効果的な時期は、「春の芽吹き始める頃(3月~4月)」と「秋(9月~10月)」の年2回です。なぜなら、この時期に撒くことで、バラを悩ませる主要な害虫の活動サイクルに合わせて、先手を打って対策できるからです。春はアブラムシの予防、秋はコガネムシの幼虫対策が主な目的となります。もちろん、害虫の発生状況に応じて追加で散布することも有効ですが、まずはこの2つのタイミングを基本として押さえておきましょう。
この章では、なぜ春と秋が最適なのか、その理由をさらに詳しく掘り下げていきます。
- オルトランの基本知識 なぜバラに効くの?
- 【時期別】春と秋にオルトランを撒く目的
- オルトラン粒剤と液剤の違いと使い分け
オルトランの基本知識 なぜバラに効くの?
オルトランは、多くのガーデナーに長年愛用されている家庭園芸用の殺虫剤です。特に「オルトランDX粒剤」などの粒状タイプが人気で、その最大の特長は「浸透移行性」にあります。
浸透移行性とは、薬剤の成分が植物の根から吸収され、植物全体に行き渡る性質のことです。 つまり、株元に撒くだけで、薬剤成分が葉や茎、さらには新芽の先まで運ばれ、植物自体がバリアを張ったような状態になります。 そのため、葉や茎の汁を吸うアブラムシや、葉を食べるチュウレンジハバチの幼虫などが、バラを食べると殺虫成分によって退治されるという仕組みです。
直接スプレーをかける手間がなく、効果が約1ヶ月持続するため、手軽で効果的な害虫予防が可能になるのです。
【時期別】春と秋にオルトランを撒く目的
春と秋、それぞれの時期にオルトランを撒くのには、明確な目的があります。ターゲットとなる害虫の活動時期に合わせて使用することで、被害を最小限に抑えることができます。
春(3月~5月)の目的:アブラムシ対策
春になり、バラの新芽がぐんぐん伸び始めると、どこからともなくアブラムシが発生します。 アブラムシは繁殖力が非常に高く、あっという間に新芽や蕾にびっしり群がって樹液を吸い、バラの生育を妨げます。 そこで、新芽が動き出す3月下旬から4月上旬にオルトランを撒いておくことで、アブラムシが本格的に活動を始める前に予防線を張ることができます。
秋(9月~10月)の目的:コガネムシ幼虫対策
夏に活動したコガネムシの成虫は、株元の土に卵を産み付けます。秋になるとその卵が孵化し、幼虫が根を食べ始めます。 根が食害されると、バラは水を吸い上げられなくなり、株全体が弱って最悪の場合枯れてしまうことも。 9月から10月にかけてオルトランを撒くことで、土の中にいるコガネムシの幼虫を退治し、冬越しのための大切な根を守ることができるのです。
オルトラン粒剤と液剤の違いと使い分け
オルトランには、土に撒く「粒剤」と、水で薄めて散布する「液剤」があります。それぞれに特徴があるため、状況に応じて使い分けるのがおすすめです。
オルトラン粒剤(GFオルトラン粒剤、オルトランDX粒剤など)
- 特徴: 浸透移行性で効果が約1ヶ月持続。予防効果が高い。
- 使い方: 株元の土にパラパラと均一に撒く。
- おすすめの場面: 定期的な予防散布。特に春と秋の基本的な害虫対策に最適です。
オルトラン液剤
- 特徴: 速効性があるが、効果の持続期間は粒剤より短い(約1週間)。
- 使い方: 規定の倍率に水で薄め、噴霧器などで葉の裏表にしっかり散布する。
- おすすめの場面: すでに害虫が発生してしまい、すぐに退治したい時。粒剤の効果が切れたタイミングでの応急処置など。
基本的には、予防として「粒剤」を定期的に使用し、突発的に害虫が大発生してしまった場合に応急処置として「液剤」を使う、という使い分けが賢い方法です。
【完全ガイド】バラへのオルトランの効果的な使い方

オルトランの効果を最大限に引き出すには、正しい使い方をマスターすることが重要です。ここでは、具体的な散布量から効果を高めるコツまで、詳しく解説していきます。せっかく使うのですから、きっちり効かせていきましょう。
- 適切な使用量と撒く場所
- 効果を高める散布のタイミングとコツ
- 鉢植えと地植えでの使い方の違い
適切な使用量と撒く場所
オルトラン粒剤を使用する際、最も重要なのが「使用量を守る」ことです。多すぎると薬害の原因になり、少なすぎると十分な効果が得られません。製品のパッケージに記載されている使用量を必ず確認しましょう。
使用量の目安
一般的に「オルトランDX粒剤」の場合、1株あたり1~2gが目安とされています。 製品付属の計量スプーンやすりきり1杯で何gになるかを確認しておくと便利です。例えば、プリンについてくるような小さなスプーンで山盛り1杯が約1gです。
撒く場所
薬剤は、バラの株元を中心に、根が張っていそうな範囲の土の表面にパラパラと均一に撒きます。 幹に薬剤が直接大量にかからないように注意し、鉢植えの場合は鉢の縁に沿って撒くと良いでしょう。地植えの場合は、枝張りの範囲を目安に撒きます。
効果を高める散布のタイミングとコツ
同じ量のオルトランを撒くのでも、ちょっとしたコツで効果の出方が変わってきます。ぜひ実践してみてください。
土が湿っている時に撒く
オルトランの成分は、水分によって土の中に溶け出し、根から吸収されます。そのため、水やり後や雨が降った後など、土が湿っているタイミングで撒くのが最も効果的です。 乾いた土に撒く場合は、薬剤を撒いた後にたっぷりと水やりをして、成分を土に浸透させてあげましょう。
土を軽く耕す(地植えの場合)
地植えのバラで、土の表面が固くなっている場合は、薬剤を撒く前に軽く表面を耕してあげると、より成分が浸透しやすくなります。ただし、根を傷つけないように注意してください。
定期的な散布を心がける
オルトラン粒剤の効果は約1ヶ月です。 効果を持続させるためには、春から秋の生育期にかけて、月に1回程度の定期的な散布を計画的に行うことが、年間を通してバラを害虫から守る秘訣です。
鉢植えと地植えでの使い方の違い
オルトランの基本的な使い方は鉢植えも地植えも同じですが、いくつか注意点が異なります。
鉢植えの場合
- 使用量: 鉢の号数(大きさ)に合わせて使用量を調整します。例えば6号鉢で1g、8号鉢で2gなど、製品の指示に従ってください。
- 撒き方: 株元から少し離し、鉢の縁に沿って撒くと薬剤が均一に行き渡りやすくなります。
- 注意点: 鉢植えは水やりの頻度が高く、薬剤成分が流れ出しやすい傾向があります。効果の持続期間が少し短くなる可能性も考慮し、定期的な散布を忘れないようにしましょう。
地植えの場合
- 使用量: 1平方メートルあたり〇gといった形で記載されていることが多いです。 バラの株の大きさ(枝張り)を目安に、適切な量を計算して使用します。
- 撒き方: 根が広範囲に張っているため、株元だけでなく、枝葉が広がっている範囲の地面にまんべんなく撒くことが大切です。
- 注意点: つるバラなど、樹高が非常に高くなる品種の場合、根から吸収された薬剤が上部の枝先まで届きにくいことがあります。 地上1m程度までの害虫予防と割り切り、高い場所の害虫には液剤を散布するなど、他の対策と組み合わせるのがおすすめです。
オルトランが効かない?注意点と対処法

「オルトランを撒いているのに、アブラムシがいなくならない…」そんな経験はありませんか?万能に見えるオルトランですが、使い方を間違えたり、特定の条件下では効果が出にくいこともあります。ここでは、オルトランを使用する上での注意点と、「効かない」と感じた時の原因と対処法について解説します。
- オルトランが効きにくいケースとは?
- 薬害を防ぐための注意点
- 害虫に耐性をつけさせない「ローテーション散布」のすすめ
オルトランが効きにくいケースとは?
オルトランの効果が実感できない場合、いくつかの原因が考えられます。
害虫に耐性ができている
同じ殺虫剤を長期間使い続けていると、その薬剤に抵抗力を持つ「耐性害虫」が現れることがあります。 これが「効かない」と感じる最も多い原因の一つです。
使用時期や量が適切でない
害虫の活動がピークに達してから慌てて撒いても、大発生した害虫を抑えきれないことがあります。また、使用量が少なすぎれば効果は半減します。
つるバラなど背の高い植物
前述の通り、樹高が2m、3mと高くなるつるバラの場合、根から吸収された成分が最上部まで十分に行き渡らないことがあります。 そのため、株元は守られていても、高い位置にある新芽にアブラムシが発生してしまうケースが見られます。
対象外の害虫
オルトランは多くの害虫に有効ですが、ハダニなど一部の害虫には効果がありません。 被害の原因となっている虫の種類を特定することが大切です。
薬害を防ぐための注意点
害虫を退治する薬剤は、使い方を誤るとバラ自体にダメージを与えてしまう「薬害」を引き起こす可能性があります。以下の点に注意しましょう。
- 使用量を厳守する: 「たくさん撒けばもっと効くはず」と規定量以上を使用するのは絶対にやめましょう。根を傷めたり、生育不良の原因になります。
- 高温時の使用を避ける: 真夏の炎天下など、気温が高い時に薬剤を使用すると薬害が出やすくなります。 散布は比較的涼しい朝方や夕方に行うのが基本です。
- 弱っている株への使用は慎重に: 病気にかかっていたり、植え替えたばかりで弱っている株への使用は、状態を見ながら慎重に行いましょう。
- 年間使用回数を守る: 農薬には、同じ作物に年間に使用できる回数の制限が定められています。 オルトランDX粒剤の場合、バラへの使用は年間4回までなどの制限がありますので、製品表示を確認し、計画的に使用してください。
害虫に耐性をつけさせない「ローテーション散布」のすすめ
害虫に耐性をつけさせないために最も有効な方法が「薬剤のローテーション散布」です。これは、成分の異なる複数の殺虫剤を順番に使っていく方法です。
例えば、以下のような薬剤をローテーションに組み込むのがおすすめです。
薬剤名(例) | 有効成分(例) | 特徴 |
---|---|---|
オルトランDX粒剤 | アセフェート、クロチアニジン | 浸透移行性で予防効果が高い。コガネムシ幼虫にも効く。 |
ベニカXガード粒剤 | クロチアニジン、チアメトキサム | 殺虫成分に加え殺菌成分も配合。病気の予防も同時にできる。 |
ダイアジノン粒剤 | ダイアジノン | 土壌害虫専門。コガネムシ幼虫対策に特化して使いたい場合に有効。 |
例えば、「春はオルトランDX粒剤、初夏はベニカXガード粒剤、秋はダイアジノン粒剤」というように、時期や目的によって薬剤を使い分けることで、耐性リスクを大幅に減らすことができます。大切なバラを長く守るために、ぜひ取り入れてみてください。
【年間スケジュール】オルトランを活用したバラの害虫管理

ここでは、オルトランを中心とした年間の害虫管理スケジュールのモデルプランをご紹介します。お住まいの地域の気候やバラの品種によって微調整は必要ですが、一つの目安として参考にしてください。これをベースに、ご自身のバラ栽培に合った管理計画を立ててみましょう。
以下に、年間を通した管理のポイントをまとめました。
- 冬(12月~2月):休眠期の準備
- 春(3月~5月):予防の最重要時期
- 梅雨~夏(6月~8月):病害虫のピークに備える
- 秋(9月~11月):秋バラと来年に向けた対策
冬(12月~2月):休眠期の準備
この時期は害虫の活動はほとんどありませんが、来シーズンに向けた大切な準備期間です。
- 主な作業: 冬剪定、寒肥、カイガラムシ対策
- オルトランの役割: 基本的にこの時期の散布は不要です。
- ポイント: 剪定時に、枝にカイガラムシが付いていないかチェックしましょう。 見つけた場合は、歯ブラシなどでこすり落とします。また、株周りをきれいにしておくことで、病害虫の越冬場所を減らすことができます。
春(3月~5月):予防の最重要時期
気温が上がり、バラが活動を始めると同時に、害虫も動き出します。予防が何よりも重要な時期です。
- 主な作業: 芽出し肥、病害虫予防
- オルトランの役割:
- 3月下旬~4月上旬: 1回目のオルトラン粒剤を散布。 アブラムシやチュウレンジハバチの予防を目的とします。
- 5月上旬~中旬: 2回目のオルトラン粒剤を散布。一番花が咲き終わる頃、効果を持続させ、次々と発生する害虫に備えます。
- ポイント: バラゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)を見つけたら、すぐに捕殺しましょう。 新しい蕾が黒く萎れていたら、この虫の仕業の可能性が高いです。
梅雨~夏(6月~8月):病害虫のピークに備える
高温多湿になるこの時期は、黒星病などの病気や、コガネムシ、ハダニなどの害虫が最も発生しやすい時期です。
- 主な作業: 花がら摘み、シュートの管理、病害虫対策
- オルトランの役割:
- 6月中旬: 3回目のオルトラン粒剤を散布。コガネムシの成虫が活動を始める時期に合わせて、土の中の幼虫対策を強化します。
- 7月~8月: 猛暑期はバラも夏バテ気味になるため、薬剤散布は慎重に行います。粒剤の効果が切れるタイミングで、必要であれば4回目の散布を検討します。ただし、薬害が出やすいので涼しい時間帯を選びましょう。
- ポイント: ハダニは乾燥を好むため、葉裏に水をかける「葉水」が予防に効果的です。 コガネムシの成虫は飛来して花を食べるため、見つけ次第捕殺します。
秋(9月~11月):秋バラと来年に向けた対策
夏を乗り越えたバラが、再び美しい花を咲かせる時期。来年に向けて、株の体力を温存させることも重要です。
- 主な作業: 夏剪定(8月下旬~9月上旬)、追肥、病害虫対策
- オルトランの役割:
- 9月中旬~10月上旬: 年間最後の仕上げとして、オルトラン粒剤を散布します。 夏の間に産み付けられたコガネムシの卵から孵化した幼虫を退治するのが最大の目的です。 これで根を守り、安心して冬越しさせることができます。
- ポイント: 秋雨が続くと黒星病が発生しやすくなります。病気の葉は見つけ次第取り除き、蔓延を防ぎましょう。
よくある質問

オルトランは雨の前に撒くべきですか?それとも雨の後?
オルトラン粒剤は、雨が降った後や水やり後など、土が湿っている時に撒くのが最も効果的です。 薬剤の成分が水分で溶けて土に浸透し、根から吸収されやすくなるためです。もし乾いた土に撒く場合は、散布後にたっぷりと水やりをしてください。雨が降る直前に撒くのも良いですが、豪雨で薬剤が流されてしまう可能性がある場合は避けた方が無難です。
オルトラン粒剤の効果はいつから出て、どのくらい続きますか?
オルトラン粒剤は浸透移行性のため、撒いてすぐに効果が出るわけではありません。根から吸収され、植物全体に行き渡るまでに数日かかります。一般的に、効果を実感できるまでには3日~1週間程度かかると考えておくと良いでしょう。効果の持続期間は、製品にもよりますが約1ヶ月間です。 そのため、月に1回のペースで定期的に散布することが推奨されます。
オルトランはつるバラのような背の高いバラにも効きますか?
オルトラン粒剤は根から吸収されるため、樹高が非常に高い(2m以上など)つるバラの場合、薬剤成分が上部の枝先まで十分に行き渡らず、効果が薄れることがあります。 特に株元から離れた高い位置の新芽などは、アブラムシの被害に遭う可能性があります。そのため、つるバラに対しては「株元から地上1m程度を害虫から守る」という認識で使い、高い場所については別途スプレータイプの薬剤(液剤)を散布するなど、他の対策と組み合わせることをおすすめします。
オルトランDX粒剤と、赤いパッケージのGFオルトラン粒剤の違いは何ですか?
青いパッケージの「オルトランDX粒剤」と、赤いパッケージの「GFオルトラン粒剤」の大きな違いは、有効成分です。「オルトランDX粒剤」はアセフェートとクロチアニジンの2種類の殺虫成分を含んでおり、特にバラの重要害虫であるコガネムシの幼虫やバラゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)にも効果があります。 一方、「GFオルトラン粒剤」の有効成分はアセフェートのみで、適用害虫にコガネムシ幼虫は含まれていません。 バラに使用する場合は、より広範囲の害虫に対応できる「オルトランDX粒剤」を選ぶのがおすすめです。
オルトランを撒いた後、ペットや子供が庭で遊んでも大丈夫ですか?
オルトランは農薬ですので、取り扱いには注意が必要です。薬剤を撒いた直後は、ペットや子供がむやみに近づいたり、土に触れたりしないように配慮しましょう。特に粒剤を口にしてしまう危険性も考えられます。散布後は、薬剤が土にしっかり馴染むように水やりをし、可能であれば半日~1日程度は立ち入らないようにするとより安心です。使用する際は、製品の安全使用上の注意を必ずよく読んでください。
まとめ

- バラへのオルトラン散布は春(3-4月)と秋(9-10月)が最適。
- 春の散布はアブラムシ予防が主な目的。
- 秋の散布はコガネムシ幼虫対策に不可欠。
- オルトランは根から吸収され全体に効く「浸透移行性」が特長。
- 予防には効果が長持ちする「粒剤」がおすすめ。
- 害虫発生時の即時対応には「液剤」が向いている。
- 使用量は製品の規定を必ず守ること。
- 株元の土に均一にパラパラと撒くのが基本。
- 水やり後など土が湿っている時に撒くと効果が高まる。
- 効かない原因は害虫の薬剤耐性が考えられる。
- 成分の違う薬剤を交互に使う「ローテーション散布」が有効。
- つるバラなど背の高いバラの上部には効果が届きにくい場合がある。
- 年間使用回数の制限を守り、薬害を防ぐ。
- 年間スケジュールを立てて計画的に管理することが大切。
- バラにはコガネムシ幼虫にも効く「オルトランDX粒剤」がおすすめ。