食事中や就寝中、ふとした瞬間に歯が抜けてしまい、慌てて探したけれど見つからない。「もしかして、飲み込んでしまったかも…？」そんな経験、想像しただけでも不安になりますよね。体の中でどうなってしまうのか、何か悪い影響はないのか、病院に行くべきなのか、次から次へと疑問が湧いてくることでしょう。この記事では、大人が抜けた歯を飲み込んでしまった場合の体への影響や、正しい対処法について詳しく解説します。あなたの不安を解消し、落ち着いて行動するためのお手伝いができれば幸いです。
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【結論】大人が抜けた歯を飲み込んでも、ほとんどの場合は問題ない
まず最もお伝えしたいのは、抜けた歯を飲み込んでしまっても、多くの場合、健康上の大きな問題にはならないということです。突然の出来事にパニックになってしまうかもしれませんが、まずは深呼吸をして落ち着いてください。
飲み込んでしまった歯は、食べ物と同じように食道を通って胃に運ばれます。歯は骨と同じような硬い組織でできていますが、サイズが小さいため、消化管を傷つけることはほとんどありません。胃酸で溶かされることもなく、通常は2〜3日、長くても1週間ほどで便と一緒に体外へ自然に排出されます。 したがって、特に体に異変がなければ、過度に心配する必要はないのです。
本記事では、この後さらに詳しく以下の点について解説していきます。
- すぐに病院へ行くべき危険な症状
- 具体的な対処法の流れ
- 歯が抜けてしまった根本的な原因
- 今後のための予防策
こんな症状が出たら要注意！すぐに病院へ行くべきケース
ほとんどの場合は心配いらないとお伝えしましたが、まれに医療機関での処置が必要になるケースもあります。以下のような症状が見られる場合は、様子を見ずに速やかに病院を受診してください。
- 喉の痛みや違和感、息苦しさがある
飲み込んだ際に激しくむせたり、咳き込んだりした場合、歯が食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥（ごえん）」の可能性があります。 誤嚥は窒息の危険があるだけでなく、歯に付着していた細菌が原因で誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあります。 喉の違和感や痛みが続く、呼吸が苦しいといった症状があれば、すぐに耳鼻咽喉科や呼吸器内科を受診しましょう。 - 胸の痛みや強い腹痛、吐き気がある
飲み込んだ歯が食道や胃、腸などの消化管の壁を傷つけている可能性が考えられます。 特に、先端が尖った歯や、入れ歯の金属製のバネなどを飲み込んだ場合は、消化管を傷つけやすいため注意が必要です。 激しい腹痛や嘔吐、吐血などが見られる場合は、すぐに消化器内科を受診してください。 - 飲み込んだものが大きい、または鋭利である
抜けた歯だけでなく、数本の歯が連結されたブリッジや、金属の留め具がついた部分入れ歯などを飲み込んでしまった場合も注意が必要です。 大きな異物は消化管の途中で詰まってしまい、腸閉塞などを引き起こす可能性もゼロではありません。 不安な場合は、自己判断せずに医療機関に相談することをおすすめします。
抜けた歯を飲み込んだ時の正しい対処法
実際に抜けた歯を飲み込んでしまった、あるいはその可能性がある場合、どのように行動すればよいのでしょうか。落ち着いて対処するための手順を解説します。
まずは落ち着いて状況を確認
パニックにならず、まずは冷静に状況を整理しましょう。無理に吐き出そうとすると、かえって喉や食道を傷つける危険性があるため絶対にやめてください。 水を一杯飲むなどして、気持ちを落ち着かせることが大切です。
次に、以下の点を確認してみてください。
- 何を飲み込んだか？：自分の歯なのか、銀歯やセラミックなどの詰め物・被せ物なのか、入れ歯の一部なのか。形状や大きさを把握しておくと、病院を受診した際に説明しやすくなります。
- 現在の症状は？：喉の違和感、胸の痛み、腹痛、吐き気など、体にいつもと違う症状がないかを確認します。
これらの情報を整理することで、その後の対応がスムーズになります。
病院へ行く場合の準備と受診する科
先述した「病院へ行くべきケース」に当てはまる症状がある場合や、どうしても不安が拭えない場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
何科を受診すればよいか？
- 喉の違和感や息苦しさがある場合：耳鼻咽喉科、呼吸器内科
- 腹痛や吐き気がある場合：消化器内科、内科
受診の際は、医師に以下の情報を正確に伝えてください。
- いつ、何を飲み込んだか（例：「昨日の夕食時に、奥歯の銀歯を飲み込んだようです」）
- 現在の症状（例：「喉に何かが引っかかっているような感じがします」）
- 飲み込んだものの詳細（可能であれば、取れてしまった歯の反対側の歯などを見せて形状を伝えると分かりやすいです）
病院では、必要に応じてレントゲンやCT、内視鏡検査などを行い、異物の場所や状態を確認します。 金属製のものはレントゲンに写りやすいですが、歯やセラミックなどは写りにくい場合もあります。
様子を見る場合の注意点
特に症状がなく、自然排出を待つことにした場合でも、いくつか注意点があります。
- 自然排出までの期間：通常、2〜3日から1週間程度で便と一緒に排出されます。
- 便の確認：必ずしも便を確認する必要はありませんが、確認できればより安心できます。
- 食事：排出を促すために、食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻類などを積極的に摂ると良いでしょう。特別な食事制限はありませんが、消化の良いものを心がけると胃腸への負担が少なくなります。
- 体調の変化に注意：様子を見ている間に腹痛などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
そして最も重要なことは、飲み込んだこと自体よりも「なぜ歯が抜けたのか」という原因を放置しないことです。抜けた歯の治療のために、症状がなくても必ず歯科医院を受診しましょう。
なぜ歯が抜けてしまったのか？考えられる主な原因
大人の歯（永久歯）は、本来簡単に抜けるものではありません。歯が抜けてしまったということは、お口の中に何らかの問題が隠れているサインです。飲み込んだことへの対処とあわせて、根本的な原因を知り、治療することが非常に重要です。
本章では、大人の歯が抜ける主な原因について解説します。
- 歯周病の進行
- 虫歯の悪化
- 歯ぎしりや食いしばり（歯根破折）
- 外傷（事故や転倒）
歯周病の進行
大人が歯を失う最大の原因は、歯周病です。 歯周病は、歯と歯茎の境目に付着したプラーク（歯垢）の中の細菌によって引き起こされる感染症です。初期段階では歯茎の腫れや出血といった症状ですが、進行すると歯を支えている顎の骨（歯槽骨）が溶かされてしまいます。 骨という土台を失った歯は次第にグラグラになり、最終的には自然に抜け落ちてしまうのです。歯周病は自覚症状が少ないまま進行することが多いため、「年齢のせい」と勘違いされがちですが、適切なケアと治療で予防・改善が可能です。
虫歯の悪化
虫歯も歯を失う大きな原因の一つです。 虫歯を放置すると、歯の表面から内部へと進行し、やがて歯の神経にまで達します。さらに進行すると、歯の大部分が溶けてボロボロになり、歯の根っこしか残らない状態になります。こうなると、被せ物などで修復することが困難になり、抜歯せざるを得なくなったり、歯が根元から折れて抜け落ちてしまったりします。 神経を取った歯は痛みを感じにくいため、気づかないうちに内部で虫歯が再発・進行しているケースも少なくありません。
歯ぎしりや食いしばり（歯根破折）
就寝中の歯ぎしりや、日中の無意識の食いしばりも、歯が抜ける原因となり得ます。歯ぎしりなどで歯に過度な力がかかり続けると、歯の根っこにヒビが入ったり、割れたりすることがあります。これを「歯根破折（しこんはせつ）」と呼びます。 歯根が割れてしまうと、そこから細菌が入り込んで炎症を起こし、歯を保存することができず、抜歯が必要になることが多いです。特に神経のない歯は、もろくなっているため歯根破折を起こしやすい傾向にあります。
外傷（事故や転倒）
スポーツ中の衝突や、転倒、交通事故などで顔や口を強くぶつけた際に、歯が折れたり、抜け落ちたりすることもあります。 特に前歯は衝撃を受けやすいため注意が必要です。外傷によって抜けてしまった場合でも、歯の状態や抜けてからの時間によっては、再植（元の場所に戻すこと）が可能なケースもあります。
いずれの原因にせよ、抜けた歯をそのまま放置することは、さらなるお口のトラブルを招く原因となります。必ず歯科医院で適切な診断と治療を受けましょう。
今後のために！歯の健康を守るための予防策
一度失ってしまった永久歯は、二度と生えてくることはありません。これ以上歯を失わないために、そして今回のようなアクシデントを繰り返さないために、日頃からの予防ケアが何よりも大切です。
ここでは、歯の健康を守るための具体的な予防策をご紹介します。
- 正しいセルフケア（歯磨き、フロス）
- 定期的な歯科検診の重要性
- 歯ぎしり対策（マウスピースなど）
正しいセルフケア（歯磨き、フロス）
予防の基本は、毎日の丁寧なセルフケアです。歯が抜ける最大の原因である歯周病や虫歯は、どちらもプラーク（歯垢）が原因で起こります。このプラークを毎日の歯磨きでいかに取り除けるかが、歯の寿命を左右すると言っても過言ではありません。
歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することが非常に重要です。歯と歯の間や、歯と歯茎の境目は、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが最も残りやすい場所です。フロスなどを使うことで、歯ブラシだけでは落としきれないプラークを効率的に除去することができます。毎日の習慣に取り入れ、お口の中を清潔に保ちましょう。
定期的な歯科検診の重要性
セルフケアで落としきれなかったプラークは、やがて石のように硬い「歯石」になります。歯石になってしまうと、歯ブラシでは取り除くことができません。歯科医院での専門的なクリーニングで除去する必要があります。
また、初期の虫歯や歯周病は自覚症状がほとんどありません。 定期的に歯科検診を受けることで、自分では気づけない問題を早期に発見し、早期に治療することができます。 問題が小さいうちに対処できれば、治療の負担も少なく、歯を失うリスクを大幅に減らすことができます。特に症状がなくても、3ヶ月から半年に一度は歯科医院で検診を受けることを強くおすすめします。
歯ぎしり対策（マウスピースなど）
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、歯や顎に大きな負担がかかっています。自覚がある場合はもちろん、「朝起きると顎が疲れている」「歯がすり減っていると指摘された」という方も注意が必要です。 歯科医院では、就寝中に装着する「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを作製することができます。 ナイトガードを装着することで、歯ぎしりの力を緩和し、歯や顎へのダメージを軽減することができます。心当たりのある方は、一度歯科医師に相談してみましょう。
よくある質問
飲み込んだ歯はレントゲンに写りますか？
金属製の詰め物（銀歯）や入れ歯の金属部分はレントゲンに写ります。 しかし、ご自身の歯（歯質）や、セラミック、レジン（プラスチック）製の詰め物は、レントゲン写真には写りにくい、あるいは写らないことがあります。 病院を受診する際は、何を飲み込んだ可能性があるかを詳しく伝えることが重要です。
飲み込んだ歯は消化されますか？
いいえ、歯や詰め物、被せ物などが胃酸で消化・分解されることはありません。 歯は非常に硬い組織でできており、セラミックや金属も胃酸の影響を受けません。 そのため、飲み込んだものはほぼそのままの形で便と一緒に排出されます。
子供が歯を飲み込んだ場合も同じ対処で良いですか？
はい、基本的に大人と同じように対処して問題ありません。 子供の乳歯は小さいため、飲み込んでも自然に排出されることがほとんどです。ただし、飲み込んだ後に機嫌が悪かったり、お腹の痛みを訴えたり、いつもと違う様子が見られたりする場合は、小児科や歯科を受診してください。大人がしっかりと様子を観察してあげることが大切です。
飲み込んだのが銀歯やセラミックの詰め物でも大丈夫ですか？
はい、詰め物や被せ物を飲み込んだ場合も、歯そのものを飲み込んだ場合と同様に、ほとんどは自然に排出されるため心配いりません。 ただし、重要なのは「なぜ詰め物が取れたのか」です。詰め物が取れたということは、その下に虫歯ができていたり、接着剤が劣化していたりするサインです。 放置すると虫歯が進行してしまうため、飲み込んだものが排出されたかどうかに関わらず、できるだけ早く歯科医院を受診して、適切な治療を受ける必要があります。
腸閉塞になる可能性はありますか？
一本の歯や小さな詰め物で腸閉塞になる可能性は極めて低いです。しかし、複数の歯が連結されたブリッジや大きな部分入れ歯など、サイズが大きいものを飲み込んだ場合は、消化管の狭い部分で詰まってしまうリスクが全くないとは言い切れません。 強い腹痛や嘔吐が続く場合は、腸閉塞の可能性も考えて速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
- 抜けた歯を飲み込んでも、ほとんどは自然に排出され問題ない。
- まずは慌てず、無理に吐き出そうとしないことが大切。
- 喉の痛み、息苦しさ、強い腹痛などがあればすぐに病院へ。
- 気管に入ると「誤嚥性肺炎」のリスクがあるため特に注意が必要。
- 受診する科は症状に応じて耳鼻咽喉科や消化器内科を選ぶ。
- 様子を見る場合は、食物繊維の多い食事を心がける。
- 飲み込んだことより「歯が抜けた原因」の治療が重要。
- 大人が歯を失う最大の原因は「歯周病」。
- 虫歯の放置や歯根破折も歯が抜ける原因になる。
- 飲み込んだ歯や詰め物は胃酸では消化されない。
- 詰め物などが取れた場合は、必ず歯科で再治療を受ける。
- 今後の予防にはセルフケアと定期検診が不可欠。
- フロスや歯間ブラシの併用でプラーク除去率が向上する。
- 歯ぎしり対策にはナイトガード（マウスピース）が有効。
- 何か異常を感じたら、自己判断せず専門医に相談することが安心への近道。
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