毎年やってくる年末調整の時期、保険料控除の申告は少し複雑に感じられるかもしれません。特に、身近な保障として多くの人が利用している県民共済について、「どう書けばいいの?」「何が控除対象になるの?」といった疑問を抱えている方も少なくないでしょう。本記事では、県民共済を年末調整で正しく申告するための具体的な書き方から、必要な書類、よくある疑問まで、分かりやすく徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたの年末調整手続きがスムーズに進むこと間違いなしです。
年末調整における県民共済の基本を理解する

年末調整は、会社員や公務員の方が毎月の給与から天引きされている所得税を、年末に再計算して過不足を調整する大切な手続きです。この手続きの中で、生命保険料控除などの所得控除を申告することで、納める税金が少なくなる可能性があります。県民共済の掛金も、この生命保険料控除の対象となる場合があるため、正しく理解して申告することが重要です。
県民共済は、各都道府県に設立された非営利の協同組合が運営する共済制度です。手頃な掛金で充実した保障を受けられるのが特徴で、多くの家庭で利用されています。年末調整で県民共済の掛金を申告する際には、その種類や控除の区分を把握しておくことが、スムーズな手続きのコツとなります。
県民共済が生命保険料控除の対象となる理由
県民共済の掛金が生命保険料控除の対象となるのは、その保障内容が生命保険の機能を持っているためです。具体的には、死亡保障や入院保障など、生命保険と同様の目的で支払われる掛金が控除の対象となります。これにより、加入者は税制上の優遇を受けられ、実質的な負担を軽減できるメリットがあります。
生命保険料控除は、納税者が支払った生命保険料に応じて、一定額を所得から差し引くことができる制度です。所得から差し引かれることで、課税所得が減少し、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。県民共済の掛金も、この制度の対象となることで、家計の助けとなるのです。
控除対象となる県民共済の種類と対象外の共済
県民共済には様々な種類があり、すべてが生命保険料控除の対象となるわけではありません。控除の対象となる共済と、そうでない共済を明確に区別することが、年末調整を正しく行う上で非常に大切です。
生命保険料控除の対象となる共済
一般的に、死亡保障や入院保障、介護保障など、人の生命や身体に関する保障を目的とした県民共済の掛金は、生命保険料控除の対象となります。例えば、総合保障型、入院保障型、熟年型、こども型などの生命共済がこれに該当します。これらの共済は、保障内容に応じて「一般生命保険料控除」または「介護医療保険料控除」のいずれかに区分されます。控除証明書には、どの区分に該当するかが明記されているため、確認するようにしましょう。
地震保険料控除の対象となる共済
火災共済に地震特約が付帯している場合、その地震特約部分の掛金は地震保険料控除の対象となります。ただし、火災共済の掛金自体は控除の対象外です。地震保険料控除は、地震等による損害に備える保険料を対象とするもので、生命保険料控除とは別の枠で控除が受けられます。控除証明書が別途発行される場合があるので、見落とさないように注意が必要です。
控除対象外となる共済
一方で、傷害保障のみを目的とした共済や、火災共済(地震特約部分を除く)、個人賠償責任保険などは、生命保険料控除の対象外となります。これらの共済は、税法上の生命保険料控除の要件を満たさないため、年末調整で申告することはできません。ご自身の加入している県民共済がどの種類に該当するかは、毎年10月頃に送付される「共済掛金払込証明書(控除証明書)」で確認できます。
新生命保険料控除と旧生命保険料控除の区分
生命保険料控除には、平成24年1月1日を境に「新生命保険料控除」と「旧生命保険料控除」の2つの制度が存在します。この区分によって、控除額の計算方法や上限額が異なります。しかし、県民共済のほとんどは、新税制の生命保険料控除の対象です。旧税制の生命保険料控除が適用される共済は、現在ではほとんど取り扱われていません。
新生命保険料控除では、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの区分があり、それぞれに控除額の上限が設定されています。県民共済の掛金は、主に「一般生命保険料控除」または「介護医療保険料控除」に該当します。控除証明書には「新制度」と明記されていることがほとんどなので、確認して申告書に記入しましょう。
「給与所得者の保険料控除申告書」への県民共済の書き方

年末調整で県民共済の掛金を申告するには、「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、勤務先に提出する必要があります。この申告書は、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の4つの控除をまとめて申告するための書類です。ここでは、県民共済に関する記入箇所に焦点を当て、具体的な書き方を解説します。
申告書を記入する際は、お手元に県民共済から送られてくる「共済掛金払込証明書(生命保険料控除用)」を準備してください。この証明書には、申告に必要な情報がすべて記載されています。証明書の内容を正確に転記することが、間違いなく手続きを進めるための第一歩です。
控除証明書(共済掛金払込証明書)の準備
県民共済の掛金を年末調整で申告する際に最も重要な書類が、「共済掛金払込証明書」、通称「控除証明書」です。この証明書は、毎年10月上旬頃に県民共済から郵送で送付されます。
控除証明書には、以下の情報が記載されています。
- 共済の名称(例:○○県民共済)
- 共済の種類(例:総合保障型、入院保障型)
- 共済期間(例:1年)
- 本年中に支払った共済掛金の金額
- 生命保険料控除の区分(一般生命保険料、介護医療保険料など)
- 新・旧の区分(ほとんどが「新」)
これらの情報は、後述する「給与所得者の保険料控除申告書」に正確に転記する必要があります。証明書が届いたら、年末調整の時期まで大切に保管しておきましょう。
申告書の記入箇所と具体的な書き方
「給与所得者の保険料控除申告書」には、生命保険料控除に関する記入欄があります。県民共済の掛金は、この欄に記入することになります。控除証明書を見ながら、以下の手順で記入を進めましょう。
「保険会社等の名称」欄の記入
控除証明書に記載されている「○○県民共済」など、正式な共済の名称を記入します。例えば、埼玉県民共済であれば「埼玉県民共済」と記載します。複数の県民共済に加入している場合は、それぞれの名称を記入してください。
「保険等の種類」欄の記入
控除証明書に記載されている共済の種類を記入します。例えば、「総合保障型」「入院保障型」「定期生命共済」などです。 複数の種類に加入している場合は、それぞれを記入します。
「保険期間」欄の記入
県民共済の多くは1年更新のため、「1年」と記入します。 控除証明書に記載されている期間を確認し、正確に記入しましょう。
「本年中に支払った保険料等の金額」欄の記入
控除証明書に記載されている「本年中に支払った保険料等の金額」を記入します。この金額は、1月から12月までに実際に支払った掛金の合計額です。 割戻金がある場合、その金額が差し引かれた後の金額が記載されていることがありますので、証明書の記載額をそのまま転記してください。
「新・旧の区分」欄の記入
県民共済はほとんどが「新制度」の対象です。 控除証明書にも「新」と記載されているはずなので、該当する欄に〇をつけましょう。
「生命保険料控除額の計算」欄の記入
申告書の右側には、記入した保険料の合計額から控除額を計算する欄があります。新制度の生命保険料控除は、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの区分に分かれています。県民共済の掛金は、控除証明書に記載されている区分(一般生命保険料または介護医療保険料)に従って、それぞれの欄に合計額を記入し、所定の計算式に当てはめて控除額を算出します。
各区分の控除額は、年間支払保険料に応じて以下の計算式で求められます。
- 年間支払保険料が20,000円以下の場合:支払保険料の全額
- 年間支払保険料が20,001円~40,000円の場合:支払保険料 × 1/2 + 10,000円
- 年間支払保険料が40,001円~80,000円の場合:支払保険料 × 1/4 + 20,000円
- 年間支払保険料が80,001円以上の場合:一律40,000円
所得税の控除額は各区分で最大4万円、合計で最大12万円です。住民税の控除額は各区分で最大2.8万円、合計で最大7万円となります。
家族分の県民共済を申告する場合の注意点
家族が加入している県民共済の掛金も、あなたが支払っていれば控除の対象となります。例えば、配偶者や子供の県民共済の掛金をあなたが支払っている場合、あなたの年末調整で申告することが可能です。この際、契約者名ではなく、実際に掛金を支払っている人が申告者となる点に注意しましょう。
控除証明書は契約者宛に送付されるため、家族の分を申告する場合は、その証明書を忘れずに受け取り、あなたの申告書に添付して提出してください。誰が掛金を負担しているかを明確にすることが大切です。
県民共済の年末調整でよくある疑問と対処法

年末調整の手続きは年に一度のため、毎年同じような疑問を抱く方も多いでしょう。特に県民共済に関する疑問は、控除証明書の取り扱いや申告を忘れた場合の対応など、多岐にわたります。ここでは、そうしたよくある疑問とその対処法について詳しく解説します。
これらの情報を事前に知っておくことで、いざという時に慌てずに対応でき、スムーズに年末調整を完了させることができます。疑問を解消し、安心して手続きを進めましょう。
控除証明書が届かない・紛失した場合の対処法
「共済掛金払込証明書(控除証明書)」は、毎年10月上旬頃に県民共済から郵送で送付されます。 しかし、引越しなどで住所が変わっていたり、誤って捨ててしまったりして、手元に届かない、あるいは紛失してしまうケースも考えられます。
もし控除証明書が届かない、または紛失してしまった場合は、以下の方法で再発行が可能です。
- 電話での問い合わせ:各都道府県の県民共済に直接電話で再発行を依頼できます。
- インターネット(マイページ)からの手続き:多くの県民共済では、加入者向けのマイページが用意されており、そこから電子版の控除証明書をダウンロードしたり、再発行を申請したりできます。 電子データで年末調整を行う場合は、勤務先が電子提出に対応しているか確認が必要です。
- 窓口での手続き:一部の県民共済では、窓口で直接再発行の手続きが可能な場合もあります。
再発行には時間がかかる場合があるため、年末調整の提出期限に間に合うよう、早めに手続きを行うことが大切です。
控除申告を忘れてしまった場合の対応
もし年末調整で県民共済の控除申告を忘れてしまったとしても、諦める必要はありません。その場合は、ご自身で「確定申告」を行うことで、控除を受けることが可能です。
確定申告は、通常、翌年の2月16日から3月15日の間に行います。この際も、控除証明書が必要となりますので、手元にない場合は再発行の手続きを忘れずに行いましょう。確定申告を行うことで、払いすぎた税金が還付される「還付申告」となります。手間はかかりますが、控除を受けられるチャンスを逃さないためにも、積極的に活用しましょう。
医療費控除との違い
年末調整には様々な控除がありますが、県民共済の掛金が対象となる生命保険料控除と、医療費控除は全く異なる制度です。生命保険料控除は、保険料(共済掛金)の支払いに対して適用される所得控除です。
一方、医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に適用される所得控除です。 県民共済から受け取った共済金は、医療費控除の対象となる医療費から差し引いて計算する必要がありますが、県民共済の掛金自体が医療費控除の対象になるわけではありません。両者は混同しやすいですが、それぞれ異なる要件と申告方法があるため、注意が必要です。
よくある質問

ここでは、県民共済の年末調整に関する、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。これらの疑問を解消し、安心して年末調整に臨みましょう。
- 県民共済は年末調整でいくら戻りますか?
- 県民共済の控除証明書はいつ届きますか?
- 県民共済の生命保険料控除は新旧どちらに該当しますか?
- 県民共済の火災共済は年末調整の対象になりますか?
- 複数加入している県民共済はどのように申告しますか?
県民共済は年末調整でいくら戻りますか?
県民共済の掛金が生命保険料控除の対象となることで、所得税と住民税が軽減されます。具体的にいくら戻るかは、年間の支払掛金や所得額、他の控除の適用状況によって異なります。 所得税の控除額は最大4万円、住民税の控除額は最大2.8万円(各区分ごと)であり、これらの控除額に税率をかけた金額が還付額の目安となります。
県民共済の控除証明書はいつ届きますか?
県民共済の「共済掛金払込証明書(控除証明書)」は、毎年10月上旬頃に郵送で送付されます。 年末調整の時期に間に合うように発送されるため、届いたら大切に保管しておきましょう。もし10月を過ぎても届かない場合は、再発行の手続きが必要です。
県民共済の生命保険料控除は新旧どちらに該当しますか?
現在、県民共済の生命保険料控除は、ほとんどが「新制度」に該当します。 平成24年1月1日以降に契約した共済は新制度の対象となり、控除証明書にもその旨が明記されています。旧制度の共済は現在ほとんど取り扱われていません。
県民共済の火災共済は年末調整の対象になりますか?
県民共済の火災共済の掛金は、原則として生命保険料控除の対象にはなりません。ただし、火災共済に「地震特約」が付帯している場合、その地震特約部分の掛金のみが地震保険料控除の対象となります。 地震保険料控除は生命保険料控除とは別の枠で申告します。
複数加入している県民共済はどのように申告しますか?
複数の県民共済に加入している場合でも、それぞれの共済から送付される控除証明書に基づいて、個別に「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、合計額を計算して申告します。 各共済の名称、種類、支払掛金などを正確に記載し、すべての控除証明書を添付して提出してください。
まとめ

- 県民共済の掛金は生命保険料控除の対象となる。
- 年末調整で申告することで税負担を軽減できる。
- 控除対象は生命共済や介護医療共済、地震特約付き火災共済の地震部分。
- 傷害保障のみの共済や火災共済本体は控除対象外。
- ほとんどの県民共済は新生命保険料控除の対象。
- 「給与所得者の保険料控除申告書」に記入が必要。
- 「共済掛金払込証明書」は申告に必須の書類。
- 証明書は毎年10月上旬頃に郵送される。
- 控除証明書を紛失したら再発行が可能。
- 申告を忘れた場合は確定申告で控除を受けられる。
- 家族の掛金も支払者が申告できる。
- 医療費控除とは異なる制度である。
- 控除額は年間の支払掛金や所得で変動する。
- 複数加入の場合も個別に記入し合計額を申告する。
- 正確な記入と書類添付がスムーズな手続きのコツ。
