「シュガーレス」や「糖類ゼロ」と書かれたお菓子を手に取ると、原材料に「マルチトール」という文字を見かけることが増えました。「砂糖じゃないなら虫歯にならないの?」と、甘いものが好きだけど虫歯が気になる方なら、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
本記事では、そんなマルチトールと虫歯の関係について、プロのブロガーが徹底的にリサーチした情報をお届けします。マルチトールが虫歯になりにくい理由から、よく比較されるキシリトールとの違い、気になる安全性まで、あなたの疑問にすべてお答えします。この記事を読めば、マルチトールと上手に付き合い、おやつの時間を楽しみながら虫歯予防ができるようになりますよ。
マルチトールは虫歯にならない?気になる真相を解説

早速、結論からお伝えします。マルチトールは、虫歯の直接的な原因にはなりません。 なぜなら、虫歯の原因であるミュータンス菌が、マルチトールをエサにして歯を溶かす「酸」をほとんど作ることができないからです。 砂糖(ショ糖)を摂取すると、お口の中の虫歯菌がそれを分解して酸を作り出し、歯の表面のエナメル質を溶かしてしまいます。 これが虫歯の始まりです。しかし、マルチトールは糖アルコールという種類で、砂糖とは化学的な構造が異なるため、虫歯菌がうまく利用できないのです。 そのため、マルチトールを使ったお菓子は、砂糖を使ったものに比べて虫歯になるリスクが低いと言えます。 実際に、シュガーレスガムやチョコレートなど、多くの虫歯になりにくいことを謳った食品に利用されています。
なぜマルチトールは虫歯になりにくいのか?そのメカニズム

マルチトールが虫歯になりにくいと言われるのには、明確な理由があります。お口の中で起こる虫歯のプロセスと、マルチトールがそれにどう作用するのかを詳しく見ていきましょう。虫歯予防に関心のある方は、このメカニズムを理解することで、より効果的なオーラルケアを実践できます。
この章では、以下の点について解説します。
- 虫歯菌が酸を産生できないから
- 歯垢(プラーク)の形成を抑制する効果も
虫歯菌が酸を産生できないから
虫歯の最大の原因は、虫歯菌(主にミュータンス菌)が作り出す「酸」です。 私たちが食事で糖分(特に砂糖)を摂ると、口の中の虫歯菌がそれを栄養源にして酸を産生します。 この酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされる「脱灰(だっかい)」という現象が起こり、虫歯が進行していくのです。 しかし、マルチトールは虫歯菌が酸を作るための材料としてほとんど利用できません。 糖アルコールに分類されるマルチトールは、砂糖とは化学構造が異なるため、虫歯菌が分解するための酵素を持っていないのです。 その結果、口の中が酸性に傾くのを防ぎ、歯が溶かされるリスクを大幅に減らすことができます。つまり、甘さは感じられても、虫歯菌の活動を活発にさせない、歯にやさしい甘味料と言えるでしょう。
歯垢(プラーク)の形成を抑制する効果も
マルチトールの虫歯予防効果は、酸を作らせないだけではありません。実は、虫歯菌のすみかである歯垢(プラーク)の形成を抑える働きも報告されています。 虫歯菌は、砂糖を分解する過程で「グルカン」というネバネバした物質を作り出します。このグルカンが歯の表面に付着し、細菌の塊であるプラークを形成するのです。 プラークは、虫歯菌にとって格好の隠れ家となり、酸を効率的に産生するための足場にもなります。マルチトールは、このグルカンの生成を抑制する作用があるため、プラークが歯に付きにくくなるのです。 プラークが少なければ、虫歯菌の活動も抑えられ、結果的に虫歯予防につながります。酸産生の抑制とプラーク形成の抑制、この2つの働きによって、マルチトールは私たちの歯を虫歯から守ってくれるのです。
マルチトールとキシリトールの違いは?どっちがいいの?

「虫歯予防」といえば「キシリトール」を思い浮かべる方も多いでしょう。マルチトールもキシリトールも、同じ糖アルコールの仲間で、虫歯になりにくい甘味料として知られています。 では、この2つにはどのような違いがあり、どちらを選べば良いのでしょうか。それぞれの特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることが大切です。
この章では、以下の点について比較しながら解説します。
- 甘さやカロリーの違い
- 虫歯予防効果の違い
- 体への影響(下痢のしやすさ)
- 結局どちらを選ぶべき?シーン別のおすすめ
甘さやカロリーの違い
まず、甘さとカロリーについて見ていきましょう。甘味度は、砂糖を100とした場合、マルチトールは約80〜90%と、砂糖に近い自然な甘さが特徴です。 一方のキシリトールは砂糖とほぼ同じ100%の甘味度を持ち、口に入れるとスッとする清涼感があります。
カロリーについては、どちらも砂糖(1gあたり約4kcal)より低く、マルチトールは1gあたり約2kcal、キシリトールは約3kcalです。 わずかですが、マルチトールの方が低カロリーです。
| 項目 | マルチトール | キシリトール |
|---|---|---|
| 甘味度(砂糖を100) | 約80〜90 | 約100 |
| カロリー(1gあたり) | 約2kcal | 約3kcal |
| 特徴 | 砂糖に近い自然な甘さ | スッとする清涼感のある甘さ |
虫歯予防効果の違い
虫歯予防効果においても、両者には少し違いがあります。マルチトール、キシリトールともに、虫歯菌による酸の産生を抑制する効果があります。 これが、両者が「虫歯になりにくい」と言われる基本的な理由です。
しかし、キシリトールには、それに加えてさらに積極的な虫歯予防効果が期待できます。具体的には、虫歯菌(ミュータンス菌)の活動自体を弱める働きや、歯の再石灰化(酸で溶けかけた歯の表面を修復する働き)を促進する効果が報告されています。
一方で、マルチトールにも虫歯菌の活動を抑制する効果があるとされており、虫歯予防に役立つ甘味料であることに違いはありません。
研究では、虫歯の発生を「防ぐ」効果が証明されているのはキシリトールとソルビトールであり、特にキシリトールの効果が優れているとされています。 マルチトールは「虫歯の原因にならない」という点で非常に有効な甘味料です。
体への影響(下痢のしやすさ)
マルチトールやキシリトールのような糖アルコールは、小腸で消化・吸収されにくい性質を持っています。 そのため、一度にたくさん摂取すると、大腸の浸透圧が高まり、お腹が緩くなったり、下痢を起こしたりすることがあります。 これは一過性の生理現象であり、体に害があるわけではありません。
一般的に、キシリトールよりもマルチトールの方が、ややお腹が緩くなりにくいと言われることもありますが、感受性には個人差が大きいです。どちらの甘味料を使った食品でも、パッケージに「一度に多量に食べると、体質によりお腹がゆるくなる場合があります」といった注意書きが記載されていることが多いので、 様子を見ながら適量を摂ることが大切です。
結局どちらを選ぶべき?シーン別のおすすめ
では、結局どちらを選べば良いのでしょうか。結論としては、目的や好みに合わせて使い分けるのが賢い選択です。
- より積極的な虫歯予防をしたい場合:キシリトールがおすすめです。 特に、キシリトール含有率が高い(50%以上が望ましい)ガムやタブレットを食後に摂ることは、虫歯予防に効果的とされています。
- 砂糖の代わりに自然な甘さを楽しみたい場合:マルチトールが適しています。 砂糖に近い味わいなので、チョコレートや焼き菓子など、幅広いお菓子に違和感なく使えます。 カロリーもキシリトールより少し低いので、カロリーが気になる方にも良いでしょう。
- お腹への影響が心配な方:どちらも少量から試すのが基本ですが、比較的マルチトールの方が影響が少ないと感じる人もいるかもしれません。ただし、これは個人差が大きいことを覚えておきましょう。
どちらの甘味料も、虫歯予防の観点からは砂糖よりはるかに優れた選択肢です。それぞれの特性を理解して、おやつの時間を賢く楽しみましょう。
マルチトールの安全性と副作用は?食べ過ぎに注意!

「虫歯になりにくいのは分かったけど、体に害はないの?」と、マルチトールの安全性が気になる方もいるかもしれません。特に、聞き慣れない名前の成分だと、不安に感じるのは当然のことです。ここでは、マルチトールの安全性と、摂取する上での注意点について解説します。
この章では、以下の点について詳しく見ていきます。
- マルチトールは安全な食品素材
- ただし、一度にたくさん食べるとお腹がゆるくなる可能性が
- 1日の摂取量の目安は?
マルチトールは安全な食品素材
結論から言うと、マルチトールは安全性の高い食品素材です。マルチトールは、トウモロコシやジャガイモのでんぷんから作られる麦芽糖(マルトース)を原料としており、 食品添加物ではなく、一般の食品素材に分類されています。 長年にわたる研究で、発がん性や遺伝毒性(遺伝子を傷つける性質)などがないことが確認されており、世界中で広く使用されています。 日本でも、厚生労働省がその安全性を認めており、様々な食品に利用されています。科学的に合成されたものではありますが、その安全性は十分に評価されているため、過度に心配する必要はありません。
ただし、一度にたくさん食べるとお腹がゆるくなる可能性が
安全性の高いマルチトールですが、一つだけ注意点があります。それは、一度に多量に摂取すると、お腹が緩くなる(下痢をする)可能性があることです。 これは、マルチトールが糖アルコールの一種であり、小腸で消化・吸収されにくいという性質を持っているためです。 消化されなかったマルチトールがそのまま大腸に達すると、腸内の水分量が増加し、お腹がゴロゴロしたり、緩くなったりするのです。 これは「浸透圧性下痢」と呼ばれるもので、体質による個人差が大きいですが、誰にでも起こりうる一過性の症状です。 体に害があるわけではありませんが、 快適に過ごすためには、食べ過ぎには注意が必要です。
1日の摂取量の目安は?
では、具体的にどのくらいの量なら問題ないのでしょうか。マルチトールには、国が定める一日摂取許容量(ADI)は特に設定されていません。 これは、安全性が高いと評価されていることを意味します。
ただし、下痢を起こさないための目安量は存在します。研究によると、一度に摂取する場合の最大無作用量(下痢などの症状が出ない最大の量)は、体重1kgあたり0.3g程度という報告があります。また、成人男性が一度に100g(チョコレート10枚分に相当)などを摂取するとお腹が緩くなる可能性があるという目安も示されています。
しかし、これはあくまで平均的な数値であり、感受性には大きな個人差があります。初めてマルチトール入りの食品を食べる際は、まず少量から試してみて、ご自身の体調を確認することをおすすめします。商品のパッケージに記載されている注意書きも参考に、適量を守って楽しむようにしましょう。
マルチトールが含まれる食品にはどんなものがある?

マルチトールは、その優れた特性から、私たちの身の回りにある様々な「シュガーレス」や「低カロリー」を謳った食品に利用されています。 虫歯になりにくく、砂糖に近い甘さを持ち、カロリーも低いことから、多くの食品メーカーが砂糖の代替として採用しています。 ここでは、具体的にどのような食品にマルチトールが使われているのかをご紹介します。これを読めば、スーパーやコンビニで商品を選ぶ際の参考になるはずです。
マルチトールがよく使われている食品の代表例は以下の通りです。
- チョコレート:砂糖不使用チョコレートの甘味料として非常にポピュラーです。 マルチトールは熱に強く、砂糖に近い風味を持つため、チョコレートの味を損なうことなく、ヘルシーに仕上げることができます。
- ガム・飴:虫歯予防を目的としたシュガーレスガムやキャンディーの多くに、マルチトールやキシリトールが使われています。 口の中に長く留まる製品だからこそ、虫歯になりにくい甘味料が選ばれています。
- 焼き菓子(クッキー、ビスケットなど):低カロリーや糖質オフをコンセプトにした焼き菓子にもマルチトールは活用されています。 保湿性があるため、しっとりとした食感を保つ効果も期待できます。
- 飲料・ジャム・デザート類:カロリーオフの飲料や、砂糖不使用のジャム、ゼリーなどにも幅広く利用されています。
これらの商品は、パッケージに「シュガーレス」「糖類ゼロ」「還元麦芽糖使用」などと表示されていることが多いので、成分表示をチェックしてみると良いでしょう。 「還元麦芽糖」や「還元麦芽糖水飴」と書かれている場合も、主成分はマルチトールです。 甘いものを楽しみながらも健康を意識したいというニーズに応えるため、今後もマルチトールを使用した商品は増えていくと考えられます。
虫歯予防のために知っておきたい!マルチトールとの上手な付き合い方

マルチトールが虫歯になりにくい甘味料であることは間違いありません。しかし、「マルチトールを摂っていれば絶対に虫歯にならない」というわけではないのです。本当の意味で虫歯を予防するためには、マルチトールを上手に活用しつつ、基本的なオーラルケアを怠らないことが何よりも重要です。ここでは、マルチトールと上手に付き合い、健康な歯を保つためのポイントを解説します。
この章では、以下の3つの重要なポイントについてお伝えします。
- マルチトール入りでも歯磨きは必須
- ダラダラ食べは避ける
- 他の虫歯予防(フッ素など)と組み合わせることが大切
マルチトール入りでも歯磨きは必須
最も大切なことは、マルチトール入りの食品を食べた後でも、必ず歯磨きをするということです。マルチトール自体は虫歯の直接的な原因になりにくいですが、 一緒に食べた他の食品に含まれる糖分や、食べカスが歯に残っていれば、それが虫歯の原因になります。 また、お菓子にはマルチトール以外の糖質が含まれている場合もあります。プラーク(歯垢)は食べ物の種類に関わらず形成されるため、物理的にブラシで除去することが不可欠です。 「シュガーレスだから大丈夫」と油断して歯磨きを怠ると、虫歯のリスクを高めてしまいます。食後の歯磨き習慣は、どんなものを食べたかに関わらず、徹底するようにしましょう。
ダラダラ食べは避ける
マルチトール入りのお菓子であっても、「ダラダラ食べ」は避けるべきです。 お口の中は、食事をすると酸性に傾き、唾液の働きによって時間をかけて中性に戻ります(再石灰化)。 しかし、間食の時間が長かったり、頻繁に食べ物を口にしたりすると、お口の中が酸性になっている時間が長くなり、再石灰化が追いつかなくなってしまいます。 これでは、いくら虫歯になりにくい甘味料を選んでいても、歯が溶けやすい環境を自ら作っていることになります。おやつは時間を決めて、メリハリをつけて楽しむことが、歯の健康を守る上で非常に重要です。
他の虫歯予防(フッ素など)と組み合わせることが大切
マルチトールの利用は、あくまで虫歯予防の補助的な手段の一つです。 より確実な虫歯予防のためには、他の方法と組み合わせることが効果的です。特に、フッ素の活用は欠かせません。フッ素には、歯の再石灰化を促進し、歯質を強化して酸に溶けにくい歯を作る効果があります。 フッ素配合の歯磨き粉を毎日使用することは、虫歯予防の基本中の基本です。さらに、歯科医院で定期的に高濃度のフッ素を塗布してもらったり、プロによるクリーニングで歯石や自分では落としきれないプラークを除去してもらったりすることも、虫歯予防の効果を大きく高めます。 マルチトールを賢く選びつつ、日々のセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせることで、最強の虫歯予防が実現できるのです。
よくある質問

マルチトールは歯に悪いですか?
いいえ、マルチトールは歯に悪くありません。むしろ歯にやさしい甘味料です。 虫歯菌がマルチトールを分解して歯を溶かす酸をほとんど作れないため、虫歯の直接的な原因にはなりません。 そのため、砂糖の代わりにマルチトールを使用した食品は、虫歯のリスクを低減するのに役立ちます。
マルチトールは砂糖の代わりになりますか?
はい、なります。マルチトールの甘味度は砂糖の80~90%程度で、非常に砂糖に近い自然で温和な甘味質を持っています。 また、熱や酸にも強く安定しているため、 チョコレートや焼き菓子、飲料など、様々な食品で砂糖の代替として広く利用されています。
マルチトールは天然ですか?人工ですか?
マルチトールは、天然に存在するでんぷん(トウモロコシなど)から作られる麦芽糖(マルトース)を原料に、人工的に水素を添加して作られる糖アルコールです。 そのため、「人工甘味料」に分類されることもありますが、 化学的に合成された甘味料(アスパルテームなど)とは異なり、糖質系の甘味料に分類されます。 食品衛生法上は、添加物ではなく食品素材として扱われています。
マルチトールは何から作られていますか?
マルチトールは、トウモロコシやジャガイモ、小麦などのでんぷんを原料としています。 まず、でんぷんを酵素で分解して麦芽糖(マルトース)という二糖類を作ります。そして、この麦芽糖に高圧下で水素を反応させる(還元する)ことで、マルチトールが製造されます。
還元麦芽糖は虫歯になりますか?
いいえ、還元麦芽糖(マルチトール)は虫歯の原因になりません。 「還元麦芽糖」はマルチトールの別名です。 虫歯菌が酸を作る材料として利用できないため、非う蝕性(虫歯にならない)の甘味料として、シュガーレス食品などに広く使われています。
マルチトールを摂りすぎるとどうなりますか?
マルチトールを一度にたくさん摂取すると、体質によってはお腹が緩くなったり、下痢をしたりすることがあります。 これは、マルチトールが小腸で消化・吸収されにくい性質を持つためで、一過性のものです。 体に害はありませんが、 適量を守って摂取することが推奨されます。
まとめ

- マルチトールは虫歯の直接的な原因にならない。
- 虫歯菌が酸をほとんど作れないため歯にやさしい。
- プラーク(歯垢)の形成を抑制する効果も期待できる。
- 甘さは砂糖の約8割で、カロリーは砂糖の約半分。
- キシリトールはより積極的な虫歯予防効果を持つ。
- マルチトールは砂糖に近い自然な甘さが特徴。
- 安全性は高く評価されている食品素材である。
- 一度に多量摂取すると下痢をすることがある。
- 1日の摂取許容量は特に定められていない。
- シュガーレスのチョコやガム、お菓子に使われる。
- 「還元麦芽糖」はマルチトールの別名である。
- マルチトール入りでも食後の歯磨きは必須。
- ダラダラ食べは口内環境を悪化させるため避ける。
- フッ素塗布など他の虫歯予防との併用が効果的。
- 自分に合った甘味料を賢く選ぶことが大切。
