便に粘液が混じっていたり、お腹のガスが気になったりして、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。これらの症状は、一時的な体調の変化から、時には注意が必要な病気のサインまで、さまざまな原因が考えられます。本記事では、粘液便とガスの原因、そして日常生活でできる対策について詳しく解説します。
粘液便とは?その正体と役割

粘液便とは、便にゼリー状の粘液が肉眼で確認できるほど付着している状態を指します。健康な便にも粘液は含まれていますが、それが過剰に分泌されると粘液便として認識されるのです。腸から分泌される粘液は、便をスムーズに送り出す役割や、腸の粘膜を保護する大切な役割を担っています。
健康な便にも粘液は含まれる
私たちの腸内では、常に粘液が分泌されており、便の表面を滑らかにして排便を助けています。そのため、健康な便にも少量の粘液が付着しているのは自然なことです。便が黄褐色でバナナ状、においが少なく、するりと出るのが理想的な状態とされています。
異常な粘液便の見分け方
異常な粘液便は、その色や量、期間によって判断できます。透明な粘液便が一時的に出るだけであれば、ほとんど心配はいりません。しかし、粘液の量が多い、何日も続く、繰り返す場合は注意が必要です。特に、粘液に血液が混じった粘血便や、発熱、激しい腹痛、下痢、体重減少を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
粘液便の色から考えられる体の不調は以下の通りです。
- 白色の粘液便:下痢、食あたり、消化不良、冷え、ストレスなどが原因で、腸の粘膜が傷ついている可能性があります。
- ピンク色の粘液便:肛門近くの粘膜が傷ついている可能性が疑われます。便秘で硬い便が出た際などに、少量の血液と粘液が混じることがあります。
- 赤色の粘液便(粘血便):最も注意が必要な症状です。大腸をはじめとする消化器の疾患が疑われるため、早急な医療機関の受診が推奨されます。
- 緑色の粘液便:酸化した胆汁によるものが多いです。小腸や大腸の働きが低下している可能性があり、腹痛や下痢を伴う場合はブドウ球菌感染症も疑われます。
粘液便とガスが同時に起こる主な原因

粘液便とガスが同時に現れる場合、その背景にはさまざまな原因が考えられます。一時的な体調不良から、医療機関での検査が必要な病気まで、多岐にわたるため、症状を注意深く観察することが大切です。
ストレスや食生活の乱れ
過度なストレスは、腸の働きに大きな影響を与えます。ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、腸の動きが過敏になったり、逆に鈍くなったりすることがあります。これにより、粘液の分泌が増えたり、ガスが溜まりやすくなったりするのです。
また、暴飲暴食や偏った食生活も、腸内環境を悪化させる原因となります。特に、肉類や脂質の多い食事は消化に時間がかかり、腸内でガスを発生させやすくなります。
早食いや、あまり噛まずに食べる癖も、空気を多く飲み込む「呑気症(どんきしょう)」につながり、お腹の張りの原因になることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や腹部の不快感を伴い、便秘や下痢を繰り返す病気です。 検査をしても腸に明らかな異常が見られないのが特徴で、ストレスや自律神経の乱れが主な原因とされています。 IBSの症状として、粘液便やガスが溜まってお腹が張ることも少なくありません。
炎症性腸疾患(IBD)
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)は、腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が生じる病気です。 これらの病気では、粘液便や粘血便、下痢、腹痛、発熱、体重減少などの症状が見られます。 原因は不明な点が多いですが、免疫機能の異常や腸内細菌叢の変化などが関与していると考えられています。
感染性腸炎
細菌やウイルスによる感染性腸炎も、粘液便やガス、腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状を引き起こします。 腸の粘膜が炎症を起こし、傷を保護するために粘液が多く分泌されるため、粘液便が出ることがあります。
その他の消化器系の病気
粘液便やガスは、以下のような他の消化器系の病気でも見られることがあります。
- 大腸憩室炎:大腸の壁にできた小さな袋(憩室)に便が溜まり、炎症を起こすと、粘液が混じった便が出ることがあります。
- 大腸がん:大腸がんが進行すると、粘液便や粘血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる、お腹の張りなどの症状が現れることがあります。
- 消化不良:食べ過ぎや飲酒、ストレスなどが原因で消化機能が低下すると、お腹の張りやガス、便秘、下痢などの症状が出ることがあります。
- 呑気症:無意識に空気を飲み込みすぎることで、お腹にガスが溜まり、膨満感やげっぷ、おならが増える症状です。
粘液便とガスが示す体のサイン
粘液便やガスは、単なる不快な症状だけでなく、私たちの体が発する大切なサインであることがあります。これらの症状が示す体の状態を理解することは、適切な対処や早期の医療機関受診につながります。
腸内環境の乱れ
腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3種類の腸内細菌がバランスを取りながら存在しています。このバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になると、腸内環境が乱れます。 悪玉菌は、食べ物のカスを分解する際に有害なガスを発生させ、お腹の張りやにおいの強いおならの原因となります。 また、腸内環境の乱れは、腸のバリア機能の低下にもつながり、粘液の過剰分泌を引き起こすことがあります。
腸内環境が乱れると、便秘や下痢といったお腹の不調だけでなく、免疫力の低下や肌荒れ、疲れやすさなど、全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。
消化不良
消化不良は、胃や腸の機能が低下し、食べ物が十分に分解・吸収されない状態です。 消化不良が起こると、未消化の食べ物が大腸に届き、腸内細菌によって異常発酵することで、ガスが大量に発生しやすくなります。 また、消化不良は腸の粘膜に負担をかけ、粘液の分泌を増やす原因となることもあります。
消化不良の症状には、お腹の張りや不快感、吐き気、げっぷ、食欲不振、便秘、下痢などがあります。 食べ過ぎや飲酒、特定の刺激物、ストレスなどが消化不良を引き起こす主な要因です。
粘液便とガスで病院を受診する目安
粘液便やガスは、一時的な体調不良で起こることもありますが、時には医療機関での診察が必要な病気のサインであることもあります。どのような場合に病院を受診すべきかを知っておくことは、早期発見・早期治療につながります。
こんな症状があったら要注意
以下の症状が見られる場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
- 粘液便が何日も続く、または繰り返す:一時的なものではなく、慢性的に症状が現れる場合。
- 粘液に血が混ざる(粘血便)、または黒い便が出る:消化管からの出血が疑われ、大腸がんや炎症性腸疾患などの重篤な病気の可能性があります。
- 発熱、激しい腹痛、下痢が伴う:感染性腸炎や炎症性腸疾患など、急性の炎症が考えられます。
- 食事の摂取が困難、または体重が急激に減少する:消化器系の重い病気が進行している可能性があります。
- 中高年(40歳以上)で初めて粘液便の症状が現れた:年齢が上がるにつれて、大腸がんなどのリスクも高まります。
- お腹の張りが続く、または悪化する:便秘やガスの溜まりがひどく、日常生活に支障をきたす場合。
- 便なのかガスなのか分かりにくい:潰瘍性大腸炎などで直腸の知覚異常が起こっている可能性があります。
何科を受診すべきか
粘液便やガスでお悩みの場合は、消化器内科を受診するのが適切です。消化器内科では、胃や腸などの消化器全般の病気を専門としています。 症状によっては、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)が必要になることもありますが、これにより正確な診断と適切な治療につながります。
日常生活でできる粘液便とガス対策

粘液便やガスのお悩みは、日々の生活習慣を見直すことで改善が期待できます。食生活の工夫やストレス管理、適度な運動を取り入れることで、腸内環境を整え、症状の軽減を目指しましょう。
食事の工夫で腸を整える
腸内環境を整えるためには、バランスの取れた食事が非常に重要です。
- 善玉菌を増やす食品を摂る:ヨーグルト、納豆、味噌、漬物などの発酵食品には、腸内の善玉菌を増やすプロバイオティクスが含まれています。
- 善玉菌のエサとなる食品を摂る:食物繊維(水溶性・不溶性)やオリゴ糖は、善玉菌のエサとなり、腸内環境を良好に保ちます。野菜、果物、海藻類、きのこ類、穀類、大豆製品などを積極的に摂りましょう。
- 消化に良いものを食べる:胃腸に負担をかけないよう、脂質の多い食事や香辛料などの刺激物は避け、消化しやすいものを中心に摂るように心がけましょう。
- ゆっくりよく噛んで食べる:早食いは空気を飲み込みやすく、ガスが溜まる原因になります。一口ずつよく噛んで、ゆっくりと食事を楽しみましょう。
- 水分を十分に摂る:水分不足は便秘の原因となり、腸内環境の悪化につながります。意識してこまめに水分補給を行いましょう。
ストレスを上手に管理するコツ
ストレスは腸の働きに大きく影響するため、上手に管理することが大切です。
- 十分な睡眠と休息:睡眠は脳の疲労を取り、自律神経のバランスを整えるために不可欠です。質の良い睡眠を心がけましょう。
- リラックスする時間を作る:趣味に没頭したり、入浴で体を温めたり、アロマテラピーを取り入れたりするなど、自分に合ったリラックス方法を見つけましょう。
- ストレスの原因を特定し、対処する:可能であれば、ストレスの原因となっているものから距離を置いたり、解決策を考えたりすることも重要です。
適度な運動と生活習慣の見直し
適度な運動は、腸の動きを活発にし、便通を促す効果が期待できます。
- ウォーキングやストレッチ:軽いウォーキングやジョギング、お腹周りを動かすストレッチなどは、手軽に始めやすく、腸に刺激を与えてガスの排出を助けます。
- 便意やガスを我慢しない:便意やガスを我慢すると、腸内に溜まりやすくなり、お腹の張りを悪化させることがあります。できるだけ我慢せずに排泄しましょう。
- 規則正しい生活リズム:毎日決まった時間に食事を摂り、睡眠をとることで、体のリズムが整い、腸の働きも安定しやすくなります。
よくある質問
粘液便は癌のサインですか?
粘液便が出たからといって、必ずしも癌であるとは限りません。ストレスや食生活の乱れ、感染症、過敏性腸症候群など、さまざまな原因で粘液便は起こります。しかし、粘液に血液が混じった粘血便や、発熱、激しい腹痛、体重減少などの症状を伴う場合は、大腸がんの可能性も考えられます。特に40歳以上で初めて粘液便が出た場合は、早めに消化器内科を受診し、検査を受けることをおすすめします。
子供の粘液便は心配いりませんか?
子供の粘液便も、大人と同様にさまざまな原因が考えられます。一時的なものであれば、風邪や胃腸炎などによるものが多いです。しかし、粘液便が続く、血が混じっている、腹痛や発熱、嘔吐などの症状を伴う場合は、感染症や炎症性腸疾患、腸重積(赤ちゃんに多い病気)などの可能性も否定できません。心配な場合は、小児科または消化器内科を受診しましょう。
粘液便が出た時に避けるべき食べ物はありますか?
粘液便が出ている時は、腸に負担をかける食べ物を避けるのが賢明です。具体的には、脂質の多い肉類、揚げ物、香辛料を多く使った刺激物、アルコール、カフェインなどは控えめにしましょう。これらは消化に時間がかかったり、腸を刺激したりして、症状を悪化させる可能性があります。代わりに、消化しやすく、食物繊維が豊富な野菜や果物、発酵食品などを積極的に摂るように心がけてください。
ガスが溜まりやすいのはなぜですか?
お腹にガスが溜まる主な原因は、口から飲み込んだ空気と、腸内細菌が食べ物を分解する際に発生するガスです。早食いやストレスによる空気の飲み込みすぎ(呑気症)、便秘によるガスの滞留、肉類や食物繊維の多い食品の過剰摂取、腸内環境の乱れなどが挙げられます。また、過敏性腸症候群や慢性胃炎、炎症性腸疾患、大腸がんなどの病気が原因でガスが溜まりやすくなることもあります。
粘液便は自然に治りますか?
一時的な粘液便であれば、生活習慣の改善やストレスの軽減によって自然に治まることもあります。特に、透明な粘液便が1日程度で治まる場合は、心配いらないことが多いです。しかし、粘液便が何日も続く、繰り返す、血液が混じる、腹痛や発熱などの他の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。病気が原因の場合は、適切な治療が必要になります。
まとめ
- 粘液便は、便にゼリー状の粘液が混じる状態です。
- 健康な便にも粘液は含まれますが、過剰な分泌は異常のサインです。
- 白色、ピンク色、赤色、緑色など、粘液の色によって考えられる原因が異なります。
- 粘血便(血液が混じる)は特に注意が必要で、早急な医療機関受診が推奨されます。
- ストレスや食生活の乱れは、粘液便とガスの一般的な原因です。
- 過敏性腸症候群(IBS)は、粘液便やガスを伴う機能性疾患です。
- 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)も原因となります。
- 細菌やウイルスによる感染性腸炎でも粘液便やガスが見られます。
- 大腸がんや大腸憩室炎、消化不良なども原因となることがあります。
- 粘液便やガスは、腸内環境の乱れや消化不良のサインであることも多いです。
- 粘液便が続く、血が混じる、激しい腹痛や発熱を伴う場合は医療機関を受診しましょう。
- 消化器内科での診察が適切です。
- 食事の工夫(善玉菌を増やす、食物繊維を摂る)で腸を整えましょう。
- ストレス管理(十分な睡眠、リラックス)は腸の健康に不可欠です。
- 適度な運動(ウォーキング、ストレッチ)で腸の動きを促しましょう。
- 便意やガスを我慢しないことも大切です。