まぶたの腫れや痛み、かゆみといったものもらいの辛い症状に悩んでいる方は多いでしょう。市販薬で手軽にケアしたいけれど、どんな塗り薬を選べばいいか迷っていませんか？実は、ものもらいに直接効く市販の「塗り薬（眼軟膏）」は限られています。本記事では、市販で手に入るものもらいケアの選択肢と、その効果的な使い方、そして病院に行くべきタイミングを詳しく解説します。
適切なケアで、ものもらいの不快な症状を早く和らげましょう。
ものもらいとは？種類と症状を理解しよう
ものもらいは、まぶたにできる炎症性の疾患で、一般的には「めばちこ」や「めいぼ」とも呼ばれます。医学的には主に「麦粒腫（ばくりゅうしゅ）」と「霰粒腫（さんりゅうしゅ）」の2種類に分けられ、それぞれ原因や症状が異なります。自分のものもらいがどちらのタイプかを知ることは、適切な対処法を選ぶ上で大切です。
麦粒腫（ばくりゅうしゅ）と霰粒腫（さんりゅうしゅ）の違い
麦粒腫は、まぶたの縁にあるまつ毛の毛根や皮脂腺、汗腺に細菌が感染して起こる急性の化膿性炎症です。黄色ブドウ球菌などの常在菌が原因となることが多く、疲労や寝不足で体の抵抗力が落ちている時に発症しやすくなります。一方、霰粒腫は、まぶたの奥にあるマイボーム腺という脂腺が詰まり、分泌物が溜まってしこりになる病気です。
細菌感染を伴わないことが多いですが、炎症を起こすと麦粒腫と似た症状が現れることもあります。この二つの違いを理解することが、適切な治療への第一歩となります。
ものもらいの主な症状
ものもらいの初期症状としては、まぶたの一部に赤みや軽いかゆみ、違和感が生じることが一般的です。進行すると、まぶたが腫れて痛みが増し、まばたきをするたびに不快感を感じるようになります。さらに炎症が進むと、患部に膿が溜まって黄色く見えたり、目やにが出たりすることもあります。重症化すると、まぶた全体が腫れ上がり、発熱を伴うケースもあるため、症状の変化には注意が必要です。
ものもらいに市販の「塗り薬（眼軟膏）」は使える？
ものもらいの症状が出た際、ドラッグストアで手軽に購入できる市販薬で対処したいと考える方は多いでしょう。しかし、ものもらいに直接効く市販の「塗り薬（眼軟膏）」は、実はあまり多くありません。多くの市販薬は点眼薬タイプが主流となっています。
市販薬の現状：目薬が主流である理由
現在、ものもらいに使える市販薬のほとんどは、目薬（点眼薬）タイプです。これは、目薬が手軽に点眼でき、目の表面全体に薬液を行き渡らせやすいという利点があるためです。市販の目薬には、ものもらいの原因菌の増殖を抑える抗菌成分や、炎症を鎮める抗炎症成分などが配合されています。一方で、眼軟膏は目の中に塗る性質上、一時的に視界がぼやけるなどの使用感が伴うため、市販薬としては点眼薬の方が一般的になっていると考えられます。
処方される「眼軟膏」の役割と特徴
眼科で処方されるものもらいの治療薬には、点眼薬の他に眼軟膏（塗り薬）があります。例えば、「タリビッド眼軟膏」や「エコリシン眼軟膏」といった抗菌成分を含む軟膏が処方されることがあります。これらの眼軟膏は、患部に長く留まることで薬効を持続させ、特にまぶたの縁や内側にできたものもらいに効果を発揮しやすいのが特徴です。
また、小さなお子さんで目薬を嫌がる場合や、点眼が難しい場合にも、眼軟膏が選択されることがあります。処方薬の眼軟膏は、医師の診断に基づいて適切なものが選ばれるため、自己判断での使用は避け、必ず医師の指示に従いましょう。
市販の「ものもらい用目薬」おすすめ成分と選び方
市販のものもらい用目薬を選ぶ際には、配合されている成分に注目することが大切です。症状の種類や程度に合わせて、効果的な成分が配合された目薬を選ぶことで、つらい症状の緩和が期待できます。薬剤師に相談しながら、ご自身の症状に合ったものを見つけるのがおすすめです。
抗菌成分（サルファ剤など）で原因菌にアプローチ
ものもらいの主な原因が細菌感染である場合、抗菌成分が配合された目薬が有効です。市販薬でよく見られる抗菌成分としては、「スルファメトキサゾール」などのサルファ剤があります。これらの成分は、細菌の増殖を抑えることで、ものもらいの根本的な原因に働きかけ、症状の改善を早める効果が期待できます。赤みや腫れがひどい場合は、特に抗菌成分がしっかり配合された目薬を選びましょう。
抗炎症成分で腫れや痛みを和らげる
ものもらいによるまぶたの腫れや痛み、赤みが気になる場合は、抗炎症成分が配合された目薬が適しています。「グリチルリチン酸二カリウム」や「イプシロン-アミノカプロン酸」などが代表的な抗炎症成分です。これらの成分は、炎症を鎮めることで、不快な症状を和らげ、目の回復を助けます。特に、炎症が強く出ている初期段階での使用が効果的です。
かゆみがある場合は抗ヒスタミン成分も
ものもらいの症状にかゆみを伴う場合は、抗ヒスタミン成分が配合された目薬を選ぶと良いでしょう。「クロルフェニラミンマレイン酸塩」などがこれにあたります。抗ヒスタミン成分は、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑え、不快なかゆみや充血を緩和する作用があります。ただし、抗ヒスタミン成分によっては眠気が出やすいものもあるため、使用上の注意をよく確認することが大切です。
使いやすさで選ぶ：使い切りタイプや防腐剤フリー
目薬を選ぶ際には、衛生面や使用感も重要なポイントです。1回使い切りタイプの目薬は、常に清潔な状態で使用できるため、雑菌の繁殖を防ぎたい方や、持ち運びが多い方におすすめです。また、防腐剤無添加の目薬は、目に刺激が少なく、敏感な方やドライアイの方に適しています。特に、小さなお子さんに使用する場合は、防腐剤フリーで刺激の少ないタイプを選ぶと安心です。
【症状別】おすすめの市販ものもらい目薬
ものもらいの症状は人それぞれ異なります。赤みや腫れが中心なのか、強い痛みがあるのか、それともかゆみが気になるのかによって、適した市販薬も変わってきます。ここでは、症状別におすすめの市販目薬をご紹介します。ご自身の症状に合うものを選んで、効果的にケアしましょう。
赤みや腫れが気になる方へ
まぶたの赤みや腫れが目立つ場合は、細菌感染による炎症が進行している可能性が高いです。このような症状には、
抗菌成分であるサルファ剤と抗炎症成分がバランス良く配合された目薬がおすすめです。例えば、「ロート抗菌目薬EX」や「サンテメディカル抗菌」は、原因菌の増殖を抑えつつ、炎症を鎮める効果が期待できます。
これらの目薬は、目の表面に長く留まるように工夫された製剤設計のものもあり、効果的に患部に作用します。
痛みや違和感が強い方へ
ものもらいによる痛みやゴロゴロとした異物感が強い場合は、炎症が強く出ているサインです。この場合は、
抗炎症成分がしっかり配合された目薬を選びましょう。例えば、「ロートクリニカル抗菌目薬i」のように、複数の抗炎症成分が配合されている製品は、つらい痛みや腫れを効果的に和らげることが期待できます。
また、抗菌成分も含まれているため、原因菌へのアプローチも同時に行えます。
かゆみを伴う方へ
ものもらいにかゆみを伴う場合は、炎症だけでなく、アレルギー反応が関与している可能性も考えられます。このような症状には、
抗菌成分に加えて抗ヒスタミン成分が配合された目薬が適しています。例えば、かゆみ止め成分が含まれている製品を選ぶことで、不快なかゆみを抑え、目をこすってしまうことによる症状の悪化を防ぐことができます。
清涼感のあるタイプは、かゆみによる不快感を一時的に和らげる効果も期待できます。
ものもらいの市販薬（目薬・軟膏）の正しい使い方
市販薬を使う際は、その効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを減らすためにも正しい使い方をすることが重要です。特に目に使用する薬はデリケートなため、清潔に保ち、指示された方法で慎重に使いましょう。ここでは、目薬と眼軟膏の基本的な使い方と注意点について解説します。
目薬のさし方
目薬をさす前には、必ず石鹸で手をきれいに洗いましょう。下まぶたを軽く引き下げ、容器の先がまつ毛や目に触れないように注意しながら、1滴を点眼します。点眼後は、まぶたを閉じて数分間静かに待ち、薬液が目全体に行き渡るようにします。目から溢れた薬液は、清潔なティッシュやガーゼで優しく拭き取りましょう。複数回点眼する場合は、5分以上の間隔を空けることが大切です。
眼軟膏の塗り方（処方された場合、またはまぶたの皮膚に塗る場合）
眼軟膏を塗る際も、まず手を清潔にすることが基本です。処方された眼軟膏をまぶたの縁や内側に塗る場合は、清潔な指先や綿棒に米粒大の軟膏を取り、下まぶたを軽く引き下げて、まぶたの裏側に薄く伸ばすように塗ります。上まぶたに塗る場合は、上まぶたを引き上げてまつ毛の生え際に塗布します。塗布後は、まぶたを閉じて軽くまばたきをすることで、軟膏が目全体に広がりやすくなります。
軟膏は油性のため、一時的に視界がぼやけることがありますが、これは正常な反応です。運転前や精密な作業を行う前は使用を控えましょう。
使用上の注意点
市販薬を使用する際は、添付文書をよく読み、用法・用量を守ることが大切です。特に、以下の点に注意しましょう。まず、容器の先端が目や皮膚、まつ毛に触れないようにし、汚れた手で触らないことで雑菌の混入を防ぎます。また、コンタクトレンズを装着している場合は、一時的に使用を中止し、メガネに切り替えるのが望ましいです。
薬を使用している期間は、アイメイクも控えめにしましょう。症状が改善しない、悪化する、または3～4日使用しても効果が見られない場合は、すぐに眼科を受診してください。
こんな時は眼科へ！受診の目安
ものもらいは市販薬で対処できる場合もありますが、症状によっては専門医の診察が必要です。自己判断で放置したり、市販薬を使い続けたりすることで、症状が悪化したり、治療が長引いたりする可能性もあります。適切なタイミングで眼科を受診し、専門的な治療を受けることが、目の健康を守る上で非常に重要です。
市販薬を使っても改善しない・悪化する場合
市販の目薬や軟膏を3～4日程度使用しても症状が改善しない、またはかえって悪化していると感じる場合は、すぐに眼科を受診しましょう。ものもらいの原因が細菌感染ではない場合や、市販薬では対応できない種類の菌が原因である可能性も考えられます。また、症状が長引くことで、より重い目の病気へと進行してしまうリスクもあります。
強い痛みや腫れ、発熱を伴う場合
ものもらいの症状が強く、まぶた全体が赤く腫れ上がっている、強い痛みを伴う、さらには発熱などの全身症状が出ている場合は、重症化している可能性があります。このような状態は、細菌感染が広範囲に及んでいることを示唆しており、市販薬では対応しきれません。速やかに眼科を受診し、医師の診察を受けて適切な処方薬や治療を受ける必要があります。
しこりが残る場合（霰粒腫の可能性）
ものもらいの炎症が治まった後も、まぶたにしこりが残ってしまうことがあります。これは、霰粒腫（さんりゅうしゅ）である可能性が高いです。霰粒腫は、マイボーム腺の詰まりが原因で、自然に吸収されることもありますが、大きなしこりとして残る場合は、ステロイド注射や切開手術が必要になることがあります。しこりが気になる場合は、早めに眼科を受診して相談しましょう。
子どもにものもらいができた場合
子どものものもらいは、大人よりも症状が急速に進行したり、重症化したりするケースがあります。特に乳幼児の場合、まぶた全体に炎症が広がりやすく、蜂窩織炎（ほうかしきえん）と呼ばれる強い炎症に発展することもあるため、注意が必要です。子どもにものもらいができた場合は、自己判断で市販薬を使用するのではなく、できるだけ早く眼科を受診し、小児眼科医の診察を受けることをおすすめします。
ものもらいを繰り返さないための予防方法
ものもらいは一度治っても、生活習慣や目のケアが不十分だと再発しやすい病気です。日頃から目の周りを清潔に保ち、体の抵抗力を高めることで、ものもらいの発症リスクを減らすことができます。ここでは、ものもらいを繰り返さないための具体的な予防方法をご紹介します。
目元を清潔に保つ習慣
ものもらいの主な原因は細菌感染です。そのため、目元を清潔に保つことが最も基本的な予防策となります。外出から帰ったら、石鹸で丁寧に手を洗い、汚れた手で目をこすらないように心がけましょう。特に、コンタクトレンズを使用する際は、装着前後に必ず手を洗い、レンズやケースも清潔に保つことが重要です。アイメイクは目の際まで塗らないようにし、寝る前には必ずきれいに落とす習慣をつけましょう。
免疫力を高める生活習慣
体の抵抗力が低下していると、常在菌であるブドウ球菌などが原因でものもらいを発症しやすくなります。十分な睡眠をとり、バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を取り入れることで、免疫力を高めましょう。ストレスも免疫力低下の一因となるため、リラックスできる時間を作り、ストレスをため込まないようにすることも大切です。
規則正しい生活を送ることで、ものもらいだけでなく、様々な病気の予防につながります。
コンタクトレンズやアイメイクの注意点
コンタクトレンズの不適切な使用やアイメイクの汚れは、ものもらいの原因となることがあります。コンタクトレンズは、使用期間やケア方法をしっかり守り、清潔な状態で使用しましょう。特に、ワンデータイプ以外のレンズは、毎日洗浄・消毒を行い、定期的に新しいものに交換することが大切です。アイメイクは、まつ毛の生え際やマイボーム腺の開口部を塞がないように注意し、使用期限の過ぎた化粧品は使わないようにしましょう。
よくある質問
Q: ものもらいは人にうつる？
A: 一般的なものもらい（麦粒腫）は、細菌感染が原因ですが、人から人へうつることはほとんどありません。黄色ブドウ球菌などの常在菌による感染なので、過度に心配する必要はありません。ただし、目をこすった手で他の人に触れるなど、間接的に菌が広がる可能性はゼロではないため、手洗いを徹底することが大切です。
Q: ものもらいは温める？冷やす？
A: 麦粒腫（細菌感染によるものもらい）の場合、急性期の腫れや痛みが強い時は、冷やすことで炎症を抑え、症状を和らげることが推奨されます。一方、霰粒腫（しこりタイプのものもらい）や、麦粒腫の炎症が落ち着いてきた段階では、温めることで血行を促進し、詰まった脂の排出や治癒を早める効果が期待できます。症状によって適切な対処法が異なるため、判断に迷う場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
Q: 子どもに市販薬を使っても大丈夫？
A: 子どもに市販薬を使用する際は、必ず対象年齢を確認し、薬剤師に相談することをおすすめします。特に乳幼児の場合、症状の進行が早く、重症化するリスクもあるため、自己判断での使用は避け、早めに眼科を受診することが最も安心です。子ども用の抗菌目薬もありますが、医師の指示に従うのが賢明です。
Q: ものもらいはどれくらいで治る？
A: ものもらい（麦粒腫）は、適切な治療を行えば通常2～3日で症状が軽くなり、遅くとも1～2週間で治ることが多いです。しかし、症状を放置したり、市販薬で改善が見られない場合は、治療が長引く可能性があります。霰粒腫の場合は、しこりが残ると完治までに数ヶ月かかることもあります。早期発見・早期治療が大切です。
まとめ
- ものもらいは麦粒腫と霰粒腫の2種類がある。
- 麦粒腫は細菌感染、霰粒腫は脂腺の詰まりが原因。
- 市販の「塗り薬（眼軟膏）」は種類が少なく、目薬が主流。
- 市販の目薬は抗菌成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分配合を選ぶ。
- 抗菌成分（サルファ剤）は原因菌の増殖を抑える。
- 抗炎症成分（グリチルリチン酸二カリウムなど）は腫れや痛みを和らげる。
- かゆみには抗ヒスタミン成分（クロルフェニラミンマレイン酸塩）が有効。
- 目薬は手を清潔にし、容器が目に触れないよう注意して点眼する。
- 眼軟膏は清潔な指や綿棒でまぶたの縁に塗布する。
- 眼軟膏は一時的に視界がぼやけることがある。
- 市販薬で3～4日改善しない場合は眼科を受診する。
- 強い痛み、腫れ、発熱を伴う場合はすぐに眼科へ。
- しこりが残る場合は霰粒腫の可能性があり、専門医の診察が必要。
- 子どものものもらいは重症化しやすいため、早めの眼科受診が大切。
- ものもらい予防には目元の清潔保持と免疫力向上が重要。
