大切なお住まいを脅かすシロアリ被害。「もしシロアリが出たら、加入している三井住友海上の火災保険で修理費用は出るのだろうか?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、残念ながらシロアリ被害そのものは、多くの場合、火災保険の補償対象外です。しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。特定の条件下では、保険が適用されるケースもあるのです。本記事では、三井住友海上の火災保険でシロアリ被害が補償される例外的なケースや、保険が使えない場合の対処法まで、詳しく解説していきます。
【結論】三井住友海上の火災保険ではシロアリ被害は原則「補償対象外」

多くの方が期待を寄せる火災保険によるシロアリ被害の補償ですが、三井住友海上の火災保険を含め、ほとんどの保険ではシロアリによる損害は原則として補償の対象外とされています。これは、シロアリ被害が火災保険の基本的な補償の考え方に合致しないためです。なぜ対象外となってしまうのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
なぜ補償されない?その理由は「経年劣化」
保険会社がシロアリ被害を補償対象外とする最大の理由は、その被害が「経年劣化」や「自然の消耗」と見なされるためです。 火災保険は、火事や台風、盗難といった、予期せぬ突発的な事故によって生じた損害を補償するためのものです。一方で、シロアリ被害は、ある日突然発生するものではなく、長い時間をかけてゆっくりと進行していきます。そのため、建物の老朽化と同じように扱われ、「突発的な事故」には該当しないと判断されてしまうのです。
三井住友海上の「GK すまいの保険」の補償内容を見ても、火災、落雷、風災、水災、盗難、水ぬれ、破損・汚損などが挙げられていますが、シロアリ被害(虫害)に関する記載は含まれていません。 このことからも、シロアリ被害が標準的な補償の範囲外であることがわかります。
火災保険の基本的な考え方「突発的・偶発的な事故」
火災保険の根底には「偶然性」という原則があります。 これは、予測できず、偶然に発生した損害に対してのみ保険金が支払われるという考え方です。シロアリ被害は、定期的な点検や予防措置によって防ぐことが可能であるとされています。 そのため、被害が発生した場合は「防げたはずの損害」や「管理不足」と見なされ、偶然性が低いと判断されることが、保険適用を難しくしている一因です。
つまり、時間をかけて進行し、予防が可能とされるシロアリ被害は、火災保険が想定している「突発的・偶発的な事故」という枠組みから外れてしまう、というわけです。
例外あり!三井住友海上の火災保険でシロアリ被害が補償される3つのケース

原則として対象外のシロアリ被害ですが、実は例外的に保険が適用される可能性があります。それは、シロアリが発生した「原因」が、火災保険の補償対象となる突発的な事故にある場合です。ここでは、三井住友海上の火災保険でシロアリ被害が補償される可能性のある3つの具体的なケースについて解説します。
ケース1:台風や豪雨などの「風災・水災」が原因の場合
台風や暴風、豪雨などの自然災害によって屋根や外壁が破損し、そこから雨漏りが生じた結果、木材が湿ってシロアリが発生した、というケースです。 この場合、シロアリの駆除費用そのものは対象外ですが、原因となった雨漏りを引き起こした建物の損害(屋根や壁の修理費用)は、「風災」や「水災」の補償でカバーされる可能性があります。
例えば、「台風で屋根瓦が飛んで雨漏りが発生し、その湿気で柱にシロアリが湧いた」という状況であれば、屋根の修理費用は保険金の支払い対象となる可能性があります。シロアリ被害の拡大を防ぐための根本原因の修繕に、保険が役立つわけです。
ケース2:給排水管の事故による「水濡れ」が原因の場合
日常生活において、給排水設備の故障や破損による水漏れは起こりうるトラブルです。もし、この水漏れが原因で床下などが湿り、シロアリを呼び寄せてしまった場合、「水濡れ補償」が適用される可能性があります。
具体的には、「お風呂場の給水管が突然破裂し、床下が水浸しに。その結果、湿った土台にシロアリが発生した」といったケースです。この場合も、シロアリ駆除費用は対象外ですが、水漏れによって被害を受けた床や壁の修繕費用、そして原因となった給排水管自体の修理費用が補償の対象となることがあります。
ケース3:第三者による建物の損壊が原因の場合
あまりないケースかもしれませんが、例えば「隣家の解体工事の振動で自宅の基礎に亀裂が入り、そこからシロアリが侵入した」など、第三者の行為によって建物が損壊し、それが原因でシロアリ被害が発生した場合も、保険が使える可能性があります。この場合、加害者側が加入している保険や、自身の火災保険の「建物外部からの物体の落下・飛来・衝突」などの補償が関係してくることがあります。 原因を特定し、因果関係を証明することが重要になります。
三井住友海上の火災保険「GK すまいの保険」の補償内容を確認しよう

ご自身のケースが保険適用の可能性があるかどうかを判断するためには、まず加入している保険の内容を正確に把握することが不可欠です。ここでは、三井住友海上の代表的な火災保険である「GK すまいの保険」を例に、どこを確認すればよいのかを見ていきましょう。
補償される事故の種類
「GK すまいの保険」では、火災、落雷、破裂・爆発といった基本的な補償に加え、様々なリスクに備えることができます。 シロアリ被害に間接的に関連する可能性があるのは、主に以下の補償です。
- 風災、雹(ひょう)災、雪災: 台風や大雪などで建物が損壊した場合。
- 水濡れ: 給排水設備の事故や、他の住戸で生じた水漏れによる損害。
- 破損、汚損等: 偶然な事故で建物を壊してしまった場合。
これらの補償がご自身の契約に含まれているかどうかが、最初のチェックポイントになります。
シロアリ被害に関連する可能性のある補償項目
保険証券や約款を確認する際は、特に「水濡れ損害」や「風災・水災損害」の項目を注意深く読んでみましょう。どのような場合に保険金が支払われ、どのような場合が対象外(免責事由)となるのかが詳細に記載されています。 「虫害」や「自然の消耗」が免責事由として明記されていることがほとんどですが、その原因となった事故が補償対象であれば、道が開ける可能性があります。
保険証券の確認方法
保険の内容を確認するには、手元にある保険証券を見るのが一番確実です。もし見当たらない場合は、契約した代理店または三井住友海上のカスタマーセンターに問い合わせてみましょう。契約内容を再発行してもらったり、現在の補償内容を説明してもらったりすることができます。 不明な点や分かりにくい専門用語があれば、遠慮せずに質問することが大切です。自分の家のリスクを正しく理解し、万が一の際に慌てないように備えておきましょう。
もしやと思ったら!保険金請求の具体的な流れと注意点

「もしかしたら、うちのシロアリ被害は保険の対象になるかも?」と思ったら、正しい手順で行動することが重要です。焦って間違った対応をしてしまうと、受け取れるはずの保険金が受け取れなくなる可能性もあります。ここでは、保険金請求の具体的な流れと、特に注意すべき点について解説します。
ステップ1:被害状況の確認と写真撮影
まず、被害の状況を冷静に確認します。シロアリそのものだけでなく、被害の原因と考えられる箇所の写真を複数枚撮影してください。例えば、雨漏りのシミ、水漏れ箇所、建物の破損部分などです。写真は、被害の程度や原因を客観的に示す重要な証拠となります。 いつ、何が原因で、どのような被害が出たのかを時系列でメモしておくと、後の説明がスムーズになります。
ステップ2:保険会社への連絡
次に、保険証券に記載されている三井住友海上の事故受付窓口や代理店に速やかに連絡します。 「シロアリ被害を発見したこと」と、「その原因が自然災害や水漏れの可能性があること」を具体的に伝えましょう。この段階で、保険が適用される可能性があるか、今後の手続きはどうすればよいか、といった点について指示を仰ぎます。
ステップ3:保険会社による損害調査
連絡を受けると、保険会社は損害鑑定人(アジャスター)を手配し、現地調査を行うことがあります。鑑定人は、被害状況を専門家の目で確認し、被害額の算出や事故原因の特定を行います。調査には立ち会い、撮影した写真やメモを元に状況を詳しく説明しましょう。ここでの説明が、保険金支払いの判断に大きく影響します。
ステップ4:保険金の請求と支払い
調査結果に基づき、保険会社から必要な書類が送られてきます。保険金請求書や修理業者の見積書などを揃えて提出します。書類に不備がなければ、審査が行われ、承認されると保険金が支払われます。保険金の支払いをもって、修理業者に工事を依頼するという流れが一般的です。
注意点:駆除業者に先に依頼しないこと
最も重要な注意点は、保険会社に連絡する前に、自己判断でシロアリ駆除業者やリフォーム業者に修理を依頼しないことです。先に修理を済ませてしまうと、被害の原因と損害の因果関係を保険会社が確認できなくなり、保険金が支払われない可能性があります。 必ず、保険会社の指示を待ってから行動するようにしてください。
火災保険が使えない…でも諦めないで!費用負担を軽くする他の方法

残念ながら火災保険の適用が難しいと判断された場合でも、高額になりがちなシロアリ対策費用を軽減する方法はあります。ここでは、代表的な2つの方法、「駆除業者の保証」と「雑損控除」について解説します。
シロアリ駆除業者の「保証サービス」を活用する
多くのシロアリ駆除業者は、施工後に5年間程度の保証を付けています。 この保証は、万が一シロアリが再発した場合に無償で再施工してくれる「再処理保証」が基本です。 業者によっては、シロアリ被害によって損傷した建物の修繕費用を一定額まで補償してくれる「修復費用保証」が付いている場合もあります。
ただし、保証には適用条件があり、例えば、無断で増改築を行った場合や、保証期間中に所有者が変わった場合などは対象外となることがあります。 業者を選ぶ際には、駆除費用だけでなく、保証内容が充実しているかもしっかりと比較検討することが大切です。
再施工保証と修復費用保証の違い
保証内容を比較する際は、2つの保証の違いを理解しておくことが重要です。
- 再施工保証: 保証期間内にシロアリが再発した場合、無料で再度駆除作業を行ってくれる保証。ほとんどの業者が提供しています。
- 修復費用保証(賠償責任保険): 再発したシロアリによって建物に新たな損害が出た場合、その修繕費用を補償してくれる保証。業者によって有無や補償上限額が異なります。
保証期間(5年が一般的)と保証対象外のケース
シロアリ駆除に使用される薬剤の効果が5年程度持続することから、保証期間も5年とするのが一般的です。 一部の業者は10年保証をうたっていますが、5年ごとの再施工が条件であったり、自社保証を上乗せしていたりするケースがあるため、内容はよく確認する必要があります。 また、以下のようなケースでは保証対象外となる可能性があるので注意しましょう。
- 業者に無断で増改築を行った
- 保証期間中に家の所有者が変わった(名義変更手続きが必要な場合も)
- 地震や洪水など、天災によって薬剤の効果が失われた
確定申告で「雑損控除」を受ける
シロアリによる被害は、所得税法上「害虫その他の生物による異常な災害」と見なされ、その駆除にかかった費用は確定申告で「雑損控除」の対象となります。 雑損控除は、災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた場合に適用される所得控除の一種です。これにより、課税対象となる所得を減らし、結果的に所得税や住民税の負担を軽減することができます。
対象となる費用(駆除費用)
雑損控除の対象となるのは、シロアリの「駆除」のために直接かかった費用です。シロアリ被害を受けた柱などを修繕する費用も含まれる場合があります。 ただし、将来の被害を防ぐための「予防」にかかった費用は対象外となるため注意が必要です。 業者に領収書を発行してもらう際は、「駆除費用」と「予防費用」を分けて記載してもらうと良いでしょう。
申告方法と必要な書類
雑損控除を受けるには、会社員の方でも年末調整とは別に確定申告を行う必要があります。申告の際には、以下の書類が必要となります。
- 確定申告書
- シロアリ駆除費用の領収書
- (保険金などで補てんされた場合)その金額がわかる書類
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
手続きが不安な方は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
【比較】シロアリ保険と駆除業者の保証、どっちがいい?

シロアリへの備えとして、損害保険会社が提供する(可能性のある)補償と、駆除業者が提供する保証サービスがあります。どちらが自分の家にとって最適なのか、それぞれの特徴を比較してみましょう。
補償範囲の違い
最大の違いは補償の範囲です。三井住友海上のような損害保険会社の火災保険は、前述の通り、シロアリ被害そのものではなく、その原因となった事故(風災や水濡れなど)による建物の損害を補償するのが基本です。 一方、駆除業者の保証は、シロアリの再発防止(再施工)や、再発による被害の修復に特化しています。
つまり、突発的な事故への備えが火災保険、シロアリ被害そのものへの直接的な備えが業者保証、と役割が異なります。
費用の違い
費用面でも考え方が異なります。火災保険は、住まいに関する様々なリスクをまとめてカバーするため、保険料は高額になる傾向があります。シロアリ被害のためだけに加入するものではありません。対して、駆除業者の保証は、シロアリ駆除・予防工事の料金に含まれているのが一般的です。 5年ごとの再施工が必要になるため、長期的なメンテナンスコストとして捉える必要があります。
どちらを選ぶべきかの判断基準
結論として、これらは二者択一で考えるものではなく、両方をうまく活用するのが賢明です。火災保険は、予期せぬ災害や事故から住まい全体を守るための基本的な備えとして必須です。その上で、シロアリという特定の脅威に対しては、専門家である駆除業者に定期的な点検と予防工事を依頼し、その保証を受けるのが最も確実な対策と言えるでしょう。 特に、築年数が経過した住宅や、過去にシロアリ被害があった住宅では、専門業者による定期的なメンテナンスが欠かせません。
よくある質問

Q. 三井住友海上にシロアリ専用の保険はありますか?
A. 2025年7月現在、三井住友海上が「シロアリ保険」という単独の商品を販売しているという情報は見つかりませんでした。シロアリ被害への備えは、火災保険の特約や、駆除業者が提供する保証サービスを利用するのが一般的です。
Q. シロアリの予防費用は保険や控除の対象になりますか?
A. 残念ながら、シロアリの「予防」にかかる費用は、火災保険の補償対象外です。また、確定申告の雑損控除も、実際に発生した被害に対する「駆除」費用が対象であり、「予防」費用は対象外となります。
Q. 賃貸住宅でシロアリが発生した場合、費用は誰が負担しますか?
A. 賃貸住宅でシロアリが発生した場合、駆除費用は原則として建物の所有者である大家さん(貸主)が負担します。 貸主には、入居者が安全で快適に暮らせる住環境を提供する義務があるためです。ただし、入居者の過失(例えば、水漏れを長期間放置したなど)でシロアリが発生したと判断された場合は、入居者が費用の一部または全部を負担するケースもあります。 シロアリを発見したら、まずは大家さんや管理会社に速やかに連絡しましょう。
Q. 中古住宅を購入したらシロアリがいました。保険は使えますか?
A. 中古住宅の購入後にシロアリが発見された場合、火災保険の適用は新築住宅と同様に原則対象外です。しかし、売買契約の「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」を追及できる可能性があります。 これは、売主が買主に対して、契約内容に適合しない欠陥(シロアリ被害など)について責任を負うというものです。契約書の内容によりますが、売主の負担で駆除や修繕ができる場合がありますので、まずは契約書を確認し、不動産会社や弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ

- 三井住友海上の火災保険ではシロアリ被害は原則「補償対象外」。
- 理由は、シロアリ被害が「経年劣化」と見なされるため。
- 例外的に、台風や水漏れが原因の場合は保険適用の可能性あり。
- 保険請求時は、原因を特定し、業者依頼前に保険会社へ連絡する。
- 保険適用外でも、駆除業者の「保証サービス」が利用できる。
- 駆除業者の保証は「再施工保証」が基本で、5年保証が一般的。
- 業者によっては「修復費用保証」が付帯する場合もある。
- シロアリの「駆除」費用は確定申告の「雑損控除」の対象になる。
- 「予防」費用は保険も控除も対象外なので注意が必要。
- 賃貸住宅のシロアリ駆除は、原則として大家さんの負担。
- 入居者の過失が原因の場合は、費用負担を求められることも。
- 中古住宅のシロアリは「契約不適合責任」を追及できる場合がある。
- 火災保険と業者保証は役割が違うため、両方を活用するのが賢明。
- シロアリ対策は、専門業者による定期的な点検と予防が最も重要。
- 不安な点は、保険会社や専門業者にためらわずに相談する。