「最近、物忘れが多くなった気がする…」「もしかして、認知症の始まり?」そんな不安を感じていませんか?年齢とともに物忘れが増えるのは自然なことですが、中にはMCI(軽度認知障害)という、認知症の一歩手前の段階が隠れていることもあります。本記事では、自分でできる13項目のMCIチェックリストをご紹介します。もし当てはまる項目があっても、大丈夫。その後の対処法や、今日から始められる予防法まで詳しく解説しますので、ぜひ最後まで読んで不安を解消してくださいね。
もしかしてMCI?まずは13項目のチェックリストで確認

「最近、人の名前が思い出せない」「同じことを何度も聞いてしまう」など、ご自身やご家族のことで気になることはありませんか?まずは、MCIの可能性をセルフチェックできる13項目のリストを試してみましょう。 これは診断ではありませんが、ご自身の状態を知るための大切な第一歩です。
以下の項目に、最近当てはまるものがないか確認してみてください。
- 1. 同じことを言ったり聞いたりする
- 2. 物の名前がなかなか出てこない
- 3. 置き忘れやしまい忘れが目立つ
- 4. 財布などを盗まれたと人を疑うことがある
- 5. 慣れているはずの道で迷うことがある
- 6. 時間や場所の感覚が不確かになることがある
- 7. 蛇口やガス栓の閉め忘れなど、うっかりミスが増えた
- 8. 以前は好きだったことや趣味への興味が薄れてきた
- 9. 日課にしていたことをやらなくなった
- 10. 服装に気を使わなくなるなど、だらしなくなった
- 11. ささいなことで怒りっぽくなった
- 12. テレビドラマの内容が複雑で理解しにくくなった
- 13. 夜中に突然起きて騒ぐことがある
いかがでしたか?もし複数の項目に当てはまるようであれば、一度専門家へ相談することを考えてみても良いかもしれません。 不安を一人で抱え込まず、客観的な視点で状態を把握することが大切です。
MCI(軽度認知障害)とは?認知症との違いを解説

チェックリストを試してみて、「MCIってそもそも何?」「認知症とは違うの?」と疑問に思った方も多いでしょう。ここでは、MCIの基本的な知識と、多くの人が混同しやすい「認知症」や「加齢による物忘れ」との違いを分かりやすく解説します。
本章で解説する内容は以下の通りです。
- MCI(軽度認知障害)の正体
- MCI・認知症・物忘れの違いが一目でわかる比較表
- なぜMCIの早期発見が重要なのか
MCI(軽度認知障害)の正体
MCI(Mild Cognitive Impairment)とは、日本語で「軽度認知障害」と訳されます。これは、健康な状態と認知症の中間にあたる段階のことです。 記憶力や注意力などの認知機能に低下が見られるものの、日常生活に大きな支障は出ていない状態を指します。 例えば、「料理の手順を間違えることが増えたけれど、なんとか一人で食事の準備はできる」といった状態がMCIにあたります。
重要なのは、MCIはまだ認知症ではないということです。しかし、MCIを放置すると、年間約10%の人が認知症に進行するというデータもあります。 逆に言えば、この段階で適切な対策を講じることで、健常な状態に回復したり、認知症への進行を遅らせたりできる可能性があるのです。
MCI・認知症・物忘れの違いが一目でわかる比較表
「物忘れがひどいだけなのか、それともMCIや認知症の始まりなのか…」その違いは分かりにくいものです。以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | 加齢による物忘れ | MCI(軽度認知障害) | 認知症 |
---|---|---|---|
忘れる内容 | 体験の一部(例:昨日の夕食のおかず) | 体験の一部または全体 | 体験したこと自体を忘れる(例:夕食を食べたこと自体) |
自覚 | 物忘れの自覚がある | 本人や家族が物忘れを指摘することがある | 物忘れの自覚がないことが多い |
日常生活への影響 | ほとんど支障はない | 支障はないが、工夫や努力が必要になることがある | 日常生活に支障が出ている(例:金銭管理ができない) |
進行 | あまり進行しない | 認知症に進行する可能性がある | 症状が進行していく |
このように、MCIは「自覚はあるけれど、日常生活はなんとか送れている」というグレーゾーンの状態です。 だからこそ、見過ごされやすいのですが、この段階での気づきが非常に重要になります。
なぜMCIの早期発見が重要なのか
MCIの段階で気づくことの最大のメリットは、「回復の可能性がある」という点です。MCIと診断された人の中には、適切な対応によって認知機能が正常な状態に戻るケースも報告されています。 また、たとえ認知症への進行が避けられない場合でも、そのスピードを緩やかにすることが期待できます。
認知症は一度発症すると、根本的な治療法がまだ確立されていません。 しかし、MCIの段階であれば、生活習慣の改善や知的活動などを通じて、脳の健康を保ち、認知症のリスクを減らすための対策を打つ時間があります。 「もしかして?」と感じた時が、行動を起こす絶好のタイミングなのです。
チェックリストで多く当てはまったら?一人で悩まず相談を

チェックリストの結果を見て、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大切なのは一人で抱え込まないことです。専門家や専門機関に相談することで、的確なアドバイスや必要なサポートを受けることができます。ここでは、具体的な相談先や病院での検査について解説します。
この章でお伝えすることは以下の通りです。
- どこに相談すればいい?主な相談窓口
- 病院ではどんな検査をするの?
どこに相談すればいい?主な相談窓口
「MCIかもしれない」と思ったら、どこに相談すれば良いのでしょうか。主な相談先をいくつかご紹介します。
- かかりつけ医
まずは、日頃から健康状態を相談しているかかりつけ医に話してみるのが第一歩です。 いつもの様子を知っている医師だからこそ、変化に気づきやすいという利点があります。必要であれば、専門の医療機関を紹介してもらうこともできます。 - 物忘れ外来・認知症外来
認知症や物忘れを専門に診る外来です。 精神科、脳神経内科、老年科などに設置されていることが多いです。専門医による詳しい診察や検査を受けることができます。 - 地域包括支援センター
高齢者の暮らしを支える総合相談窓口です。 市区町村が設置しており、保健師や社会福祉士などの専門職が、介護、福祉、医療に関する様々な相談に応じてくれます。 どこに相談していいか分からない場合に、まず訪ねてみる場所として最適です。
相談に行く際は、チェックリストの結果や、いつから、どのような症状が気になっているかをメモしていくと、医師や相談員に状況が伝わりやすくなります。 可能であれば、ご本人の様子をよく知るご家族が付き添うと、よりスムーズです。
病院ではどんな検査をするの?
専門の医療機関では、MCIや認知症の診断のために、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。 不安に思う必要はありません。どのような検査があるのか、事前に知っておきましょう。
- 問診
医師が本人や家族から、現在の症状、生活の様子、既往歴などを詳しく聞き取ります。 この情報が診断の基礎となります。 - 神経心理学検査
質問に答えたり、簡単な作業を行ったりすることで、記憶力、注意力、判断力などの認知機能を評価する検査です。 「長谷川式簡易知能評価スケール」や「MMSE」などがよく用いられます。 - 画像検査(CT、MRIなど)
脳の萎縮の程度や、脳梗塞、脳腫瘍など、認知機能低下の原因となる他の病気がないかを調べるために行います。 - 血液検査
近年では、少量の採血でMCIのリスクを判定できる「MCIスクリーニング検査」も登場しています。 これは、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβに関連するタンパク質の血中量を調べる検査です。 ただし、これはあくまでリスクを調べるもので、確定診断ではありません。 また、健康保険が適用されない自費診療となる場合があります。
これらの検査を通して、現在の状態を正確に把握し、今後の対策を立てていくことになります。
MCIの進行を防ぐ!今日からできる5つの予防法

MCIと診断されたり、その可能性を指摘されたりしても、落ち込む必要はありません。MCIの段階であれば、生活習慣を見直すことで、認知機能の維持・改善や、認知症への進行を遅らせることが期待できます。 ここでは、今日からすぐに始められる5つの予防法をご紹介します。
この章でご紹介する予防法はこちらです。
- バランスの良い食事を心がける
- 適度な運動を習慣にする
- 知的好奇心を刺激する活動に取り組む
- 人との交流を楽しむ
- 質の良い睡眠をとる
バランスの良い食事を心がける
脳の健康を保つためには、食事が非常に重要です。特に、野菜や果物、魚を中心としたバランスの良い食事が推奨されています。 青魚に多く含まれるDHAやEPA、野菜や果物に含まれる抗酸化物質(ビタミンC、E、ポリフェノールなど)は、脳の神経を保護する働きがあると言われています。 いわゆる「地中海食」が、認知機能の低下リスクを減らすとして注目されています。
一方で、塩分や糖分、動物性脂肪の摂りすぎは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病につながり、MCIのリスクを高める可能性があるため注意が必要です。 毎日の食事で、少しずつ意識してみましょう。
適度な運動を習慣にする
運動は、体だけでなく脳にも良い影響を与えます。ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行うことで、脳の血流が良くなり、神経細胞の活性化につながります。 目安としては、少し息が弾むくらいの速さで1日20分から30分程度歩くことがおすすめです。
さらに、運動しながら計算やしりとりをするなど、頭と体を同時に使う「コグニサイズ」と呼ばれるトレーニングも、認知機能の低下を抑制する効果が報告されており、注目されています。 無理のない範囲で、楽しみながら続けられる運動を見つけることが長続きのコツです。
知的好奇心を刺激する活動に取り組む
脳は使わなければ衰えてしまいます。脳に新しい刺激を与え続けることが、認知機能の維持につながります。例えば、以下のような活動がおすすめです。
- 新聞や本を読む
- パズルやボードゲームをする
- 楽器の演奏や絵画など、新しい趣味を始める
- 料理の新しいレシピに挑戦する
- 日記をつける
大切なのは、「楽しい」と感じながら、少し頭を使う活動を日常に取り入れることです。 これまで興味があったけれど手を出せなかったことに、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。
人との交流を楽しむ
孤立は認知機能低下のリスクを高めることが知られています。 家族や友人と会話をしたり、地域の集まりや趣味のサークルに参加したりと、積極的に社会的なつながりを持つことが大切です。
人と話すことは、相手の話を理解し、自分の考えをまとめて言葉にするという、非常に高度な脳の活動です。また、笑ったり、共感したりすることは、心の健康にもつながり、うつ状態の予防にもなります。 外出が億劫に感じる日もあるかもしれませんが、少し勇気を出して人と関わる機会を作ってみましょう。
質の良い睡眠をとる
睡眠は、脳が休息し、日中に得た情報を整理するための重要な時間です。睡眠不足は、脳の老廃物(アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβなど)の排出を妨げ、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きるなど、規則正しい生活リズムを心がけましょう。 寝る前のスマートフォンの使用を控える、リラックスできる音楽を聴くなど、自分に合った入眠儀式を見つけるのも良い方法です。質の良い睡眠で、脳をしっかりと休ませてあげましょう。
よくある質問

MCIに関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
MCIは治りますか?
MCIは、必ずしも認知症に進行するわけではありません。研究によっては、MCIと診断された人のうち、1年で約16%から41%の人が健常な状態に回復したという報告もあります。 早期に発見し、食事や運動などの生活習慣の改善、知的活動への取り組みなど、適切な対策を行うことで、認知機能が改善する可能性は十分にあります。
MCIのチェックリストは何歳からやるべきですか?
MCIのチェックリストを始めるのに決まった年齢はありません。しかし、MCIや認知症のリスクは年齢とともに高まるため、65歳を過ぎて物忘れが気になり始めたら、一度セルフチェックをしてみることをお勧めします。 また、アルツハイマー型認知症の原因物質は、発症の20年以上前から脳に蓄積し始めるとも言われています。 そのため、もっと若い年代からでも、予防的な観点で自身の状態に関心を持つことは非常に有意義です。
家族がMCIかもしれない場合、どう接すればいいですか?
ご家族がMCIかもしれないと感じた場合、接し方には配慮が必要です。まずは、本人のプライドを傷つけないように、優しく寄り添う姿勢が大切です。「物忘れがひどい」と責めるのではなく、「最近、少し疲れているんじゃない?」「一緒に病院で相談してみない?」など、心配している気持ちを伝えましょう。 また、本人ができなくなったことを責めるのではなく、さりげなく手助けしたり、一緒に作業したりすることで、本人の自尊心を守りながらサポートすることができます。何よりも、本人が安心して話せる環境を作ることが第一歩です。
MCIの治療に保険は適用されますか?
MCIの診断のために行われる問診や神経心理学検査、CT・MRIなどの画像検査は、医師が必要と判断すれば健康保険が適用されます。 しかし、MCIのリスクを調べる血液検査(MCIスクリーニング検査など)は、自費診療となることが多いです。 また、アルツハイマー病の新薬治療に関連する一部の特殊な検査(アミロイドPET検査など)は、特定の条件を満たした場合に保険適用となることがあります。 費用については、事前に医療機関に確認することをおすすめします。
まとめ

- MCIは認知症の一歩手前の段階で、回復の可能性がある。
- 13項目のチェックリストで、MCIの兆候を自分で確認できる。
- MCIは日常生活に大きな支障はないが、放置は禁物。
- 物忘れの自覚がない場合は、認知症の可能性も考える。
- 早期発見が、認知症への進行を防ぐ鍵となる。
- 不安な場合は、一人で悩まず専門家へ相談することが大切。
- 相談先はかかりつけ医や物忘れ外来、地域包括支援センター。
- 病院では問診や画像検査、血液検査などで総合的に診断する。
- MCIの進行予防には、生活習慣の見直しが効果的。
- バランスの良い食事、特に野菜や魚を積極的に摂る。
- ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化する。
- 趣味や学習など、脳を刺激する活動を続ける。
- 家族や友人との交流は、脳と心の健康につながる。
- 質の良い睡眠で、脳をしっかり休ませることが重要。
- MCIは適切な対策で改善が期待できる病態である。