大切に育てているもみじに、緑色や黒色の小さな虫がびっしり…その正体はアブラムシかもしれません。放置すると、もみじの生育が悪くなるだけでなく、見た目も損なわれてしまいます。本記事では、もみじのアブラムシに悩むあなたのために、すぐにできる駆除方法から、発生の原因、二度と寄せ付けないための予防策まで、詳しく解説します。薬剤を使わない方法も紹介するので、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心です。
もみじのアブラムシ、放置は危険!起こりうる3つの被害

もみじにアブラムシがついても「少しだけだから大丈夫だろう」と油断してはいけません。アブラムシは驚異的な繁殖力を持っており、あっという間に増えてしまいます。 放置することで、もみじに様々な悪影響が及ぶ可能性があります。まずは、アブラムシが引き起こす主な被害について理解しておきましょう。
- 生育不良を引き起こす
- 見た目を損なう「すす病」を誘発する
- ウイルス病を媒介する
生育不良を引き起こす
アブラムシは、もみじの新芽や若い葉、茎に口針を突き刺して樹液を吸います。 これが大量発生すると、もみじは栄養分を奪われてしまい、生育不良に陥ります。 新芽の伸びが悪くなったり、葉が縮れたり、最悪の場合、枝ごと枯れてしまうこともあります。特に、植えたばかりの若木や、勢いのないもみじは被害を受けやすいので注意が必要です。大切なもみじの美しい姿を保つためにも、早期発見と早期駆除が何よりも重要になります。
見た目を損なう「すす病」を誘発する
アブラムシの被害は、吸汁だけではありません。アブラムシは、吸った樹液の中からアミノ酸などの栄養分だけを吸収し、余分な糖分を「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘くベタベタした排泄物として体外に出します。 この甘露が葉や枝に付着すると、それを栄養源にして黒いカビが発生することがあります。これが「すす病」と呼ばれる病気です。 すす病になると、葉の表面が黒いすすで覆われたようになり、見た目が著しく悪くなります。 さらに、葉が黒く覆われることで光合成が妨げられ、もみじの生育がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまうのです。
ウイルス病を媒介する
アブラムシの最も厄介な被害の一つが、ウイルス病の媒介です。 アブラムシは、様々な植物のウイルスを運ぶ運び屋(ベクター)としての役割も持っています。ウイルスに感染した植物の樹液を吸ったアブラムシが、次に健康なもみじの樹液を吸うことで、ウイルスを伝染させてしまうのです。 モザイク病などのウイルス病に一度かかってしまうと、現在のところ有効な治療薬はなく、回復させることは非常に困難です。 被害が広がらないように、感染した枝や株を処分するしかありません。アブラムシを駆除することは、こうした恐ろしい病気から、もみじを守ることにも繋がるのです。
今すぐできる!もみじのアブラムシ駆除方法5選

アブラムシを見つけたら、とにかく早く駆除することが大切です。ここでは、薬剤を使わない手軽な方法から、効果の高い薬剤を使用する方法まで、具体的な駆除方法を5つ紹介します。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選んでください。
- 【薬剤を使わない】手軽にできる駆除方法
- 【薬剤を使う】効果的な駆除方法
【薬剤を使わない】手軽にできる駆除方法
薬剤の使用に抵抗がある方や、アブラムシの発生がごく初期の段階であれば、まずは薬剤を使わない方法を試してみましょう。身近なもので手軽にできる方法を紹介します。
ホースの水で洗い流す
アブラムシの数がまだ少ない初期段階であれば、ホースの水圧で物理的に洗い流してしまうのが最も手軽で簡単な方法です。 葉の裏など、アブラムシが潜んでいる場所を狙って、シャワー状の水流で優しく洗い流してあげましょう。ただし、水圧が強すぎると新芽や若い葉を傷つけてしまう可能性があるので注意が必要です。 あくまで優しく、丁寧に洗い流すのがコツです。この方法は、アブラムシを殺すわけではないので、地面に落ちたアブラムシが再び木に登ってくる可能性もゼロではありません。定期的に様子を見て、必要であれば繰り返し行いましょう。
牛乳スプレー
家庭にある牛乳を使った駆除方法も効果的です。牛乳を水で薄めずに、そのままスプレーボトルに入れてアブラムシに直接噴射します。 牛乳が乾燥する際に膜を作り、その収縮する力でアブラムシを窒息死させる仕組みです。 この方法は、よく晴れた日の午前中に行うのがポイントです。 散布後、牛乳が乾いたら、そのまま放置すると腐敗して悪臭やカビの原因になるため、必ず水で綺麗に洗い流してください。 薬剤を使わない安全な方法ですが、散布後の手間がかかる点と、大量発生した場合には効果が薄い点を覚えておきましょう。
粘着テープで捕殺
ガムテープやセロハンテープなどの粘着テープを使って、アブラムシをペタペタと貼り付けて取り除く物理的な方法です。 葉を傷つけないように、粘着力の強すぎないテープを選ぶのがおすすめです。葉の裏など、見えにくい場所にいるアブラムシも確実に捕殺できます。薬剤を使わず、準備も不要なので、見つけ次第すぐに対処できるのがメリットです。ただし、アブラムシが大量に発生している場合は、非常に手間と時間がかかってしまいます。 あくまで部分的な発生や、他の方法と組み合わせる補助的な手段として考えましょう。
【薬剤を使う】効果的な駆除方法
アブラムシが大量に発生してしまった場合や、手軽に確実に駆除したい場合は、園芸用の殺虫剤を使用するのが最も効果的です。殺虫剤には様々なタイプがあるので、それぞれの特徴を理解して使い分けましょう。
スプレータイプの殺虫剤
スプレータイプの殺虫剤は、見つけたアブラムシに直接噴射するだけで駆除できる手軽さが魅力です。 速効性が高く、すぐに効果を実感できます。商品によっては、殺虫成分が葉に浸透し、効果が持続するタイプもあります。 例えば、「ベニカXファインスプレー」は、アブラムシに対して約1ヶ月間の持続効果が期待でき、病気の予防も同時にできるため人気があります。 使用する際は、風のない日に、風上から散布するようにしましょう。また、植物全体、特に葉の裏までムラなくかかるように散布するのがポイントです。使用前には必ず製品のラベルをよく読み、対象植物や使用方法を確認してください。
粒剤タイプの殺虫剤
粒剤タイプの殺虫剤は、もみじの株元に撒くだけで効果を発揮する便利な薬剤です。 薬剤の成分が根から吸収され、植物全体に行き渡る「浸透移行性」という性質を持っています。 これにより、樹液を吸ったアブラムシを内側から駆除することができます。効果が長期間持続するのが最大のメリットで、害虫の予防にも繋がります。「オルトラン粒剤」などが代表的な商品で、アブラムシだけでなく、他の害虫にも効果があります。 手軽で効果も長持ちしますが、薬剤が植物全体に行き渡るまでには少し時間がかかります。そのため、今いるアブラムシをすぐに駆除したい場合はスプレータイプと併用するのがおすすめです。
なぜ発生する?もみじにアブラムシがつく3つの原因

アブラムシを駆除しても、なぜか毎年発生してしまう…そんな経験はありませんか?それは、アブラムシが好む環境になっているのかもしれません。ここでは、もみじにアブラムシが発生しやすくなる主な原因を3つ解説します。原因を知ることで、効果的な予防に繋がります。
- 窒素肥料の与えすぎ
- 風通しの悪さ
- アリとの共生関係
窒素肥料の与えすぎ
植物の成長に欠かせない肥料ですが、与えすぎはかえって害虫を呼び寄せる原因になります。特に、葉や茎の成長を促す「窒素(チッソ)」成分の多い肥料を与えすぎると、植物の体内でアミノ酸が過剰に作られます。 実は、このアミノ酸はアブラムシの大好物なのです。 栄養豊富なもみじは、アブラムシにとって格好の餌場となり、大量発生を招いてしまいます。もみじを元気に育てたいという思いから、つい肥料を多く与えがちですが、適量を守ることが大切です。肥料を与える際は、製品に記載されている規定量を必ず守り、窒素過多にならないように注意しましょう。
風通しの悪さ
アブラムシは、日当たりが悪く、湿気がこもりやすい場所を好みます。 もみじの枝葉が密集して茂りすぎていると、内部の風通しが悪くなり、アブラムシにとって絶好の住処となってしまいます。 風通しが悪いと、一度発生したアブラムシが他の枝へ移動しやすく、あっという間に全体に広がってしまいます。また、湿気が多い環境は、すす病などの病気の発生リスクも高めます。 定期的に剪定を行い、不要な枝や混み合った枝を取り除いて、株全体の風通しと日当たりを良くしてあげることが、アブラムシの発生しにくい環境作りの第一歩です。
アリとの共生関係
もみじの周りでアリをよく見かける場合、アブラムシが発生しているサインかもしれません。アリとアブラムシは「共生関係」にあります。アブラムシが出す甘い排泄物(甘露)をアリが餌にする代わりに、アリはアブラムシの天敵であるテントウムシなどからアブラムシを守ります。 それだけでなく、アリはアブラムシを他の枝や新しい葉へと運び、餌場を拡大させる手助けまでするのです。 もし、もみじの幹や枝にアリが行列を作っているのを見かけたら、葉の裏などを注意深く観察してみてください。高い確率でアブラムシが見つかるはずです。 アリの存在が、アブラムシの繁殖を助長していることを覚えておきましょう。
もう発生させない!アブラムシの発生を未然に防ぐ予防策

アブラムシの被害を防ぐには、駆除だけでなく、そもそも発生させないための「予防」が非常に重要です。日頃のちょっとした心がけで、アブラムシが寄り付きにくい環境を作ることができます。ここでは、今日から始められる予防策を具体的に紹介します。
- 栽培環境を見直す
- 物理的に防ぐ
- 天敵を利用する
栽培環境を見直す
アブラムシの予防は、まず栽培環境を見直すことから始まります。アブラムシが好まない環境を意図的に作ることで、発生リスクを大幅に減らすことができます。
適切な剪定で風通しを良くする
アブラムシは風通しの悪い場所を好むため、定期的な剪定が非常に効果的な予防策となります。 混み合っている枝や、内側に向かって伸びている不要な枝を切り落とし、株全体の風通しと日当たりを改善しましょう。 風通しが良くなることで、湿気がこもりにくくなり、アブラムシだけでなく、うどんこ病などの病気の予防にも繋がります。 剪定は、もみじの休眠期である冬(12月~2月)に行うのが基本ですが、軽度の剪定であれば生育期でも問題ありません。もみじの美しい樹形を保ちながら、健康な状態を維持するためにも、適切な剪定を心がけましょう。
窒素肥料を控える
前述の通り、窒素肥料の与えすぎはアブラムシを呼び寄せる大きな原因となります。 肥料は植物の成長に必要ですが、常に適量を守ることが重要です。特に、春の新芽が伸びる時期はアブラムシが発生しやすいタイミングなので、窒素成分が控えめの肥料を選ぶか、施肥の量自体を調整するなどの工夫をしましょう。有機肥料などを活用し、ゆっくりと効果が現れるようにするのも一つの手です。健全な土壌環境を整えることが、結果的に病害虫に強いもみじを育てることに繋がります。
物理的に防ぐ
薬剤を使わずに、物理的な方法でアブラムシの飛来を防ぐ方法もあります。手軽に試せるものが多いので、ぜひ取り入れてみてください。
アルミホイルやシルバーマルチを敷く
アブラムシは、キラキラと光るものを嫌う習性があります。 この習性を利用して、もみじの株元にアルミホイルやシルバー色のマルチシートを敷くことで、アブラムシが寄り付きにくくなります。 太陽の光が乱反射することで、アブラムシは方向感覚を失い、もみじに近づくのを避けるようになります。これは、農家でも利用されている効果的な方法の一つです。見た目が気になるかもしれませんが、特にアブラムシが発生しやすい春先に試してみる価値は十分にあります。
防虫ネット(若木の場合)
植えたばかりの若木や、鉢植えのもみじであれば、目の細かい防虫ネットで全体を覆ってしまうのも確実な予防法です。 物理的にアブラムシの侵入を防ぐことができるため、特に羽の生えた有翅アブラムシが飛来してくるのを防ぐのに効果的です。ただし、もみじのサイズが大きくなると現実的ではありません。また、ネットをかけることで風通しが若干悪くなる可能性もあるため、定期的に中の様子を確認することが大切です。
天敵を利用する
自然の生態系を利用してアブラムシをコントロールする方法もあります。アブラムシの天敵となる虫を味方につけることで、薬剤に頼らずに害虫の数を減らすことができます。
テントウムシを味方につける
アブラムシの天敵として最も有名なのがテントウムシです。 テントウムシは、成虫も幼虫もアブラムシを大好物として捕食してくれます。 特にナナホシテントウの成虫は、1日に100匹以上のアブラムシを食べるとも言われています。 庭でテントウムシを見かけたら、むやみに駆除せず、大切に見守ってあげましょう。天敵となる益虫が活動しやすい環境を整えることも、長期的な害虫対策として非常に重要です。ただし、テントウムシの中には草食性の種類もいるので、見分けがつかない場合はそのままにしておくのが無難です。
アブラムシと併発しやすい「すす病」とは?

もみじの葉や枝が、まるで黒いすすをかぶったように汚れていたら、それは「すす病」かもしれません。この病気はアブラムシと密接な関係があり、アブラムシが発生すると併発しやすくなります。ここでは、すす病の原因と対処法について解説します。
すす病の原因(アブラムシの排泄物)
すす病は、植物自体にカビが寄生して起こる病気ではありません。 その原因は、アブラムシやカイガラムシなどの吸汁性害虫が出す排泄物「甘露」です。 この甘露は糖分を多く含んでおり、ベタベタしています。この甘露を栄養源として、空気中に浮遊している黒いカビ(糸状菌)が繁殖し、葉や枝の表面を覆ってしまうのです。 つまり、すす病を防ぐためには、その原因となるアブラムシをしっかりと駆除することが最も根本的な対策となります。
すす病の対処法
すす病が発生してしまった場合、まずは原因となっているアブラムシを駆除することが最優先です。アブラムシがいなくなれば、すす病の新たな発生は抑えられます。すでに黒くなってしまった部分は、見た目が悪いだけでなく光合成を妨げるため、対処が必要です。 範囲が狭ければ、濡らした布やティッシュで優しく拭き取ることができます。 歯ブラシなどで軽くこすり落とすのも良いでしょう。被害がひどい葉や枝は、思い切って剪定してしまうのも一つの手です。 薬剤を使用する場合は、原因となるアブラムシに効く殺虫剤と、すす病に効果のある殺菌剤が一緒になったスプレー剤(例:ベニカXファインスプレーなど)を使用すると効率的です。
よくある質問

Q. アブラムシ駆除に木酢液は効果がありますか?
A. 木酢液は、害虫が嫌がる匂いで寄り付きにくくする忌避効果が期待できますが、直接的な殺虫効果はあまりありません。 そのため、すでに発生してしまったアブラムシを駆除するというよりは、発生前の予防として使用するのがおすすめです。 木酢液を水で薄めて定期的に散布することで、アブラムシが寄り付きにくい環境を作ることができます。
Q. 牛乳スプレーの注意点は?
A. 牛乳スプレーは手軽で安全な方法ですが、いくつか注意点があります。まず、効果を発揮させるためには、よく晴れた日に使用し、散布後に牛乳がしっかり乾く時間が必要です。 また、散布後に洗い流さないと、牛乳が腐敗して悪臭を放ったり、カビが発生する原因になります。 必ず水で丁寧に洗い流すようにしてください。
Q. アブラムシの天敵にはどんな虫がいますか?
A. アブラムシの天敵はたくさんいます。代表的なのはテントウムシですが、その他にもヒラタアブの幼虫や、クサカゲロウの幼虫などもアブラムシを捕食します。 これらの益虫は、農薬を使わない害虫管理において重要な役割を果たしてくれるので、庭で見かけても駆除しないようにしましょう。
Q. アブラムシの発生時期はいつですか?
A. アブラムシは、一般的に春から秋にかけての暖かい時期に発生し、特に春(4月~6月)と秋(9月~10月)に繁殖が活発になります。 気温が15~25℃くらいの過ごしやすい気候を好みます。 真夏は一時的に活動が鈍ることがありますが、一年を通して油断はできません。特に新芽が出る春先は、柔らかい葉を好むアブラムシにとって絶好のターゲットになるため、注意深く観察することが大切です。
Q. おすすめの殺虫剤はなんですか?
A. アブラムシに効果のある殺虫剤は多数販売されていますが、特におすすめなのは「ベニカXファインスプレー」と「オルトラン粒剤」です。ベニカXファインスプレーは速効性と持続性を兼ね備え、病気の予防もできるスプレータイプです。 オルトラン粒剤は株元に撒くだけで効果が長持ちする浸透移行性の粒剤で、予防にも適しています。 ご自身の目的や状況に合わせて選んでみてください。使用の際は、必ず商品の説明をよく読んでから使用しましょう。
まとめ

- アブラムシはもみじの樹液を吸い、生育を阻害する。
- 排泄物が原因で、見た目を損なう「すす病」が発生する。
- ウイルス病を媒介し、最悪の場合もみじを枯らすこともある。
- 初期段階なら、水で洗い流すか粘着テープで駆除できる。
- 薬剤を使わない方法として、牛乳スプレーも効果的。
- 牛乳スプレー使用後は、腐敗を防ぐため洗い流しが必要。
- 大量発生時は「ベニカXファインスプレー」などの殺虫剤が確実。
- 予防には、株元に撒く「オルトラン粒剤」が手軽で効果が持続する。
- 窒素肥料の与えすぎは、アブラムシを呼び寄せる原因になる。
- 剪定で風通しを良くすることが、最大の予防策の一つ。
- 株元のアルミホイルは、アブラムシの飛来を防ぐ効果がある。
- アリはアブラムシの天敵から守る共生関係にある。
- 天敵のテントウムシは、アブラムシを捕食してくれる益虫。
- すす病はアブラムシの排泄物が原因で発生するカビ。
- すす病対策は、原因となるアブラムシの駆除が基本。