仰向けに寝ると咳が出て眠れない、苦しいと感じる方は少なくありません。その原因は様々ですが、適切な対策で症状を和らげることができます。本記事では、仰向けで咳が出る主な原因から、ご自宅でできる簡単な対策、そして医療機関を受診すべきタイミングまで、詳しく解説します。
仰向けに寝ると咳が出る主な原因とは?

仰向けに寝たときに咳が出やすくなるのは、体の姿勢や重力、そして特定の病気が関係していることが多いです。ここでは、考えられる主な原因を詳しく見ていきましょう。
逆流性食道炎による咳
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで炎症を起こす病気です。特に仰向けになると、胃酸が食道に逆流しやすくなり、喉や気管を刺激して咳を引き起こすことがあります。食後にすぐ横になる習慣がある方は、症状が悪化しやすい傾向にあります。
胸焼けや酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)を伴うこともありますが、人によっては咳や喉の違和感だけが主な症状となる場合もあります。 胃酸の逆流が気道を刺激する神経反射によって咳が出ると考えられています。
後鼻漏(こうびろう)が引き起こす咳
後鼻漏とは、鼻水が喉の奥に流れ落ちる状態を指します。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが原因で鼻水が過剰に分泌されると、仰向けに寝た際に鼻水が喉に溜まりやすくなり、刺激となって咳を誘発することがあります。
特に就寝時や起床時に咳き込むことが多いのが特徴です。 喉のイガイガ感や痰が絡むような咳を伴うこともあります。 鼻炎の治療を優先することで、後鼻漏による咳が改善する可能性が高いです。
喘息(ぜんそく)の症状としての咳
喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、様々な刺激に対して過敏になることで、気道が狭くなり咳や呼吸困難が生じる病気です。 夜間や早朝に症状が悪化しやすい特徴があり、仰向けで寝ると気道が狭まりやすくなるため、咳が出やすくなることがあります。
ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)や息苦しさを伴う場合は、喘息の可能性が高いです。 冷たい空気やハウスダストなどの刺激が引き金となることもあります。
アレルギー反応による咳
ハウスダスト、ダニ、花粉などのアレルゲンが原因で、アレルギー性鼻炎や喘息が悪化し、咳が出やすくなることがあります。 寝具に潜むダニのフンや死骸がアレルゲンとなり、寝返りを打つたびに舞い上がって吸い込むことで、咳が誘発されることも珍しくありません。
アレルギーが原因の場合、寝室にいるときに咳が増え、寝室以外では症状が緩和される傾向があります。 寝室の環境を清潔に保ち、アレルゲン対策を行うことが重要です。
その他の原因(風邪の残り、乾燥、心不全など)
風邪や気管支炎の回復期には、気道の粘膜が過敏になり、軽い刺激でも咳が出やすくなることがあります。 夜間は空気が乾燥しやすく、喉への刺激が強まるため、就寝中に咳が悪化しやすいです。
また、稀なケースですが、心不全によって肺に水が溜まりやすくなり、仰向けで寝ると咳や息苦しさが増すこともあります。 睡眠時無呼吸症候群も、気道が塞がれることで夜間の咳の原因となることがあります。 喫煙習慣がある方は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の可能性も考慮する必要があります。
仰向けで咳が出る時に試したい今すぐできる対策

仰向けに寝ると咳が出てつらいとき、すぐに試せる対策がいくつかあります。これらの方法で症状を和らげ、快適な睡眠を取り戻しましょう。
寝る姿勢を工夫する
仰向けで咳が出やすい場合、寝る姿勢を変えることで気道の圧迫を避け、症状を軽減できることがあります。
- 枕を高くする、上半身を少し起こす: 枕やクッションを使って頭や上半身を高くすることで、重力によって胃酸の逆流や鼻水が喉に流れ込むのを防ぎやすくなります。 気道が確保され、呼吸が楽になる効果も期待できます。
- 横向きに寝る: 横向きに寝ると、仰向けに比べて気道が確保されやすくなり、舌の落ち込みによる気道の閉塞が起こりにくくなります。 特に左を下にして横向きに寝ると、胃が食道より低くなるため、胃酸の逆流を防ぐ効果が期待できます。
ただし、頭だけを高くしすぎると不自然な姿勢になり、かえって気道を圧迫する可能性もあるため、肩甲骨の下あたりにタオルなどを入れて調整すると良いでしょう。
寝室の環境を整える
寝室の環境は、咳の症状に大きく影響します。快適な睡眠のために、以下の点を意識して整えてみましょう。
- 加湿器で湿度を保つ: 空気が乾燥していると喉や気管支が刺激され、咳が出やすくなります。 加湿器を使用したり、濡れたタオルを部屋に干したりして、湿度を50〜60%程度に保つことがおすすめです。
- 寝具の清潔を保ち、アレルゲン対策: ダニやハウスダストなどのアレルゲンは、寝具に多く潜んでいます。 定期的に寝具を洗濯・乾燥させ、掃除をこまめに行いましょう。 空気清浄機の使用も、部屋のアレルゲンを減らすのに役立ちます。
- 室温の調整: 日中と夜間の温度変化も咳を誘発する原因となることがあります。 室温は20〜22℃を目安に、快適な温度に保つようにしましょう。
マスクをして眠ることも、喉の乾燥を防ぐ効果的な方法の一つです。
食生活や生活習慣を見直す
日頃の食生活や生活習慣が、夜間の咳に影響を与えることがあります。見直しによって症状が改善することもあります。
- 寝る前の飲食を控える: 食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすくなるため、寝る2〜3時間前には食事を済ませることが大切です。 特に高タンパク・低脂肪のメニューを意識し、刺激物やアルコールの摂取は控えましょう。
- 禁煙の重要性: 喫煙は気道を刺激し、咳を悪化させる大きな原因となります。 禁煙は、咳の症状改善だけでなく、全体的な健康維持にもつながります。
- 口呼吸の改善: 睡眠中に口呼吸をしていると、喉が乾燥しやすくなり、咳を誘発することがあります。 鼻呼吸を意識したり、口周りの筋肉を鍛えるトレーニングも有効です。
適度な運動は減量にも効果があり、胃の働きを助けるメリットもあります。
市販薬の活用
一時的な咳の症状に対しては、市販薬を活用することも一つの方法です。ただし、薬剤師に相談し、ご自身の症状に合った薬を選ぶことが大切です。
- 咳止め: 咳の中枢に作用して咳を抑えるタイプや、痰を出しやすくするタイプなどがあります。
- 胃酸抑制剤: 逆流性食道炎が疑われる場合は、胃酸の分泌を抑える薬が有効なことがあります。
- 鼻炎薬: 後鼻漏が原因の場合は、鼻水を抑える抗アレルギー薬や鼻炎薬が効果的です。
市販薬はあくまで対症療法であり、症状が長引く場合は医療機関を受診しましょう。
こんな時は病院を受診しましょう

ご自宅での対策を試しても咳が改善しない場合や、他の症状を伴う場合は、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。自己判断で放置せず、早めに専門医に相談しましょう。
受診を検討すべき症状の目安
以下のような症状が見られる場合は、医療機関の受診を検討してください。
- 咳が2週間以上続く場合: 長引く咳は、風邪以外の病気が隠れている可能性があります。
- 発熱、胸の痛み、息苦しさ、体重減少などの随伴症状がある場合: これらの症状は、肺炎や心不全、COPDなどの重篤な病気のサインである可能性があります。
- 市販薬で改善が見られない場合: 適切な市販薬を使用しても症状が良くならない場合は、専門的な治療が必要かもしれません。
- 日常生活に支障が出ている場合: 咳で眠れない、仕事や学業に集中できないなど、生活の質が著しく低下している場合は受診を検討しましょう。
- 呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューといった音がする場合: 喘息の可能性が高いです。
特に、夜間の咳は睡眠不足につながり、体力の低下や免疫力の低下を招くことがあります。
何科を受診すべきか
咳の症状で何科を受診すれば良いか迷うこともあるでしょう。症状に応じて、適切な診療科を選びましょう。
- 呼吸器内科: 咳や痰、息苦しさなど、呼吸器系の症状が主な場合は、呼吸器内科を受診するのが一般的です。喘息やCOPD、肺炎などの診断・治療を行います。
- 耳鼻咽喉科: 後鼻漏やアレルギー性鼻炎が原因と考えられる場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。鼻や喉の炎症を専門的に診てもらえます。
- 消化器内科: 胸焼けや胃酸の逆流など、逆流性食道炎の症状が疑われる場合は、消化器内科を受診しましょう。
まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのも良い方法です。 早期に原因を突き止め、適切な治療を受けることが、症状の改善と慢性化の予防につながります。
よくある質問

- 寝ると咳が出るのはなぜですか?
- 寝る時に咳が出るのは何かの病気ですか?
- 夜中に咳が止まらない時の対処法はありますか?
- 寝る時に咳が出る場合、何科を受診すれば良いですか?
- 仰向けで寝ると咳が出るのは逆流性食道炎の可能性が高いですか?
寝ると咳が出るのはなぜですか?
寝ると咳が出やすくなるのは、いくつかの理由が考えられます。一つは、横になることで鼻水や痰が喉の奥に流れ込みやすくなり、気道を刺激するためです。 また、胃酸が食道に逆流しやすくなる逆流性食道炎や、気道が狭くなる喘息なども原因となります。 夜間は副交感神経が優位になり、気管支が収縮しやすくなることも一因です。
さらに、寝室の乾燥やアレルゲンも咳を誘発する要因となります。
寝る時に咳が出るのは何かの病気ですか?
寝る時に咳が出るのは、単なる風邪の症状だけでなく、何らかの病気が隠れている可能性もあります。 例えば、逆流性食道炎、後鼻漏(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因)、喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全などが挙げられます。 咳が2週間以上続く場合や、他の症状を伴う場合は、医療機関を受診して原因を特定することが重要です。
夜中に咳が止まらない時の対処法はありますか?
夜中に咳が止まらない時には、いくつかの対処法を試すことができます。 まず、枕を高くしたり、横向きに寝たりして、上半身を起こした姿勢を試しましょう。 温かい飲み物をこまめに摂り、喉を潤すことも大切です。 寝室の湿度を保つために加湿器を使用したり、濡れたタオルを干したりするのも効果的です。 マスクをして寝るのも喉の乾燥を防ぐのに役立ちます。
また、寝る前の飲食を控え、刺激物を避けることも重要です。 市販の咳止め薬も一時的な症状緩和に役立ちますが、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
寝る時に咳が出る場合、何科を受診すれば良いですか?
寝る時に咳が出る場合、症状の原因によって受診する科が異なります。 咳や痰、息苦しさが主な症状であれば、呼吸器内科を受診するのが適切です。 鼻水や喉の違和感が強く、後鼻漏が疑われる場合は耳鼻咽喉科へ。 胸焼けや酸っぱいものが上がってくるなどの症状があり、逆流性食道炎が考えられる場合は消化器内科を受診しましょう。
まずはかかりつけ医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうのも良い方法です。
仰向けで寝ると咳が出るのは逆流性食道炎の可能性が高いですか?
仰向けで寝ると咳が出る場合、逆流性食道炎の可能性は十分に考えられます。 仰向けになることで胃酸が食道に逆流しやすくなり、それが喉や気管を刺激して咳を引き起こすためです。 特に食後すぐに横になる習慣がある方や、胸焼け、酸っぱいものが上がってくるなどの症状を伴う場合は、逆流性食道炎の可能性が高いと言えるでしょう。
ただし、後鼻漏や喘息など、他の原因も考えられるため、自己判断せずに医療機関で診断を受けることが大切です。
まとめ
- 仰向けに寝ると咳が出る原因は多岐にわたります。
- 逆流性食道炎は胃酸の逆流で咳を誘発します。
- 後鼻漏は鼻水が喉に流れ落ちて咳を引き起こします。
- 喘息は気道の炎症で夜間に咳が悪化しやすいです。
- アレルギー反応も寝室のアレルゲンで咳の原因となります。
- 風邪の残りや乾燥、心不全なども咳の原因となることがあります。
- 寝る姿勢を工夫し、枕を高くしたり横向きに寝たりしましょう。
- 寝室の湿度を保ち、加湿器を活用することが大切です。
- 寝具を清潔に保ち、ダニやハウスダスト対策を行いましょう。
- 寝る前の飲食を控え、禁煙を心がけることが重要です。
- 市販薬は一時的な対処法として活用できます。
- 咳が2週間以上続く場合は医療機関を受診しましょう。
- 発熱や息苦しさなどの随伴症状があれば早めに受診が必要です。
- 呼吸器内科、耳鼻咽喉科、消化器内科が主な受診科です。
- 早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが改善のコツです。
