「正論で相手を追い詰めてしまう」「いつも言い負かされて、自分が悪いような気がする…」そんな経験はありませんか?もしかしたら、それはロジカルハラスメント(ロジハラ)かもしれません。
良かれと思って言った正論が、知らず知らずのうちに相手を傷つけ、人間関係を壊してしまうことがあります。また、正論を盾にした攻撃に、日々心をすり減らしている人も少なくありません。本記事では、あなたがロジハラの加害者になっていないか、あるいは被害者になっていないかを確認できるチェックリストを用意しました。原因と対策を学び、より良いコミュニケーションを目指しましょう。
あなたも無意識にやっているかも?ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは

最近よく耳にする「ロジカルハラスメント(ロジハラ)」。一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、ロジハラの基本的な定義から、混同されがちなパワハラとの違い、そしてなぜロジハラが問題視されるのかについて、分かりやすく解説していきます。自分や周りの言動を振り返るきっかけにしてみてください。
この章では以下の内容について詳しく見ていきます。
- ロジカルハラスメント(ロジハラ)の定義
- ロジハラとパワハラの違い
- 正論なのに、なぜハラスメントになるのか?
ロジカルハラスメント(ロジハラ)の定義
ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは、論理や正論を振りかざして相手を追い詰め、精神的な苦痛を与える行為を指します。 「ロジカル(logical)」は「論理的な」という意味ですが、これに「ハラスメント(harassment)」、つまり嫌がらせが組み合わさった言葉です。
大切なのは、論理的に話すこと自体が悪いわけではないという点です。 問題となるのは、その「伝え方」や「意図」にあります。相手の気持ちや状況を無視して、一方的に正しさを突きつけ、言い負かすことを目的としたコミュニケーションがロジハラに該当します。 結果として、言われた側は反論できなくなり、自信を失い、精神的に追い詰められてしまうのです。
ロジハラとパワハラの違い
ロジハラとパワーハラスメント(パワハラ)は、重なる部分も多いですが、少し違いがあります。パワハラは、職場の優越的な関係(上司と部下など)を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為全般を指します。 これには、暴力や暴言、過大な要求なども含まれます。
一方、ロジハラは、その攻撃の手段が「正論」や「論理」である点に特徴があります。 そのため、ロジハラはパワハラの一種と位置づけられることが多いです。 上司が部下に対して正論で執拗に追い詰めるのは、典型的なロジハラであり、パワハラにも該当する可能性があります。 しかし、ロジハラは同僚間や、時には部下から上司へ、さらには夫婦間でも起こりうる、より広い関係性の中で発生する問題です。
正論なのに、なぜハラスメントになるのか?
「正しいことを言っているのに、なぜハラスメントになるの?」と疑問に思うかもしれません。その境界線は、相手への配慮があるかどうかにあります。
単なる「ロジカルな指摘」は、相手の成長や問題解決を目的とし、相手の状況や感情にも配慮があります。 しかし、ロジハラは「自分の正しさを証明したい」「相手を言い負かしたい」という自己中心的な動機が根底にあることが多いのです。
たとえ言っている内容が事実で正しくても、相手の逃げ場を完全になくすような言い方や、人格を否定するような言葉、相手が落ち込んでいる時に畳み掛けるような行為は、相手を深く傷つけます。 コミュニケーションは、情報の伝達だけが目的ではありません。相手との良好な関係を築くことも重要な目的です。その関係性を破壊してしまう「正論の暴力」は、ハラスメントと見なされるのです。
【加害者向け】もしかして自分も?ロジカルハラスメント加害者度チェックリスト

「自分は論理的で、いつも正しいことを言っているだけ」そう思っていませんか?しかし、その言動が知らず知らずのうちに「ロジハラ」となり、相手を傷つけている可能性があります。ここでは、自分自身のコミュニケーションスタイルを振り返るためのチェックリストを用意しました。一つでも当てはまる項目があれば、注意が必要です。
この章では、以下のチェックリストを通じて、ご自身の言動を客観的に見つめ直す機会を提供します。
- 会話の主導権を握りたがる
- 相手の感情を軽視する
- 自分の「普通」を押し付ける
- 相手を論破することに快感を覚える
- 「なぜ?」で相手を追い詰める
会話の主導権を握りたがる
あなたは、会話の中で常に自分が中心でいたい、自分の意見で場をコントロールしたいと思っていませんか?ロジハラ加害者になりやすい人は、自分の意見が絶対的に正しいと信じ込んでいる傾向があります。 そのため、相手の話を遮って自分の話を始めたり、相手の意見を「でも」「だって」とすぐに否定したりすることが多くなります。
議論が白熱すると、相手の意見を聞き入れる姿勢を見せず、一方的に自分の主張を展開し続けます。 このような態度は、相手に「何を言っても無駄だ」と感じさせ、コミュニケーションそのものを諦めさせてしまう原因になります。健全な対話は、お互いの意見を尊重し合うことで初めて成り立つものです。
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□ 相手の話を最後まで聞かずに、自分の意見を話し始めてしまうことがある。
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□ 会議や話し合いで、最終的に自分の意見が通らないと気が済まない。
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□ 相手の意見に対して、すぐに「それは違う」「でも」と反論してしまう。
相手の感情を軽視する
「泣けば済むと思っているのか」「感情的になるな、論理的に話せ」といった言葉を口にしたことはありませんか?ロジハラ加害者の大きな特徴として、相手の感情や気持ちへの共感性が欠けている点が挙げられます。 彼らにとって重要なのは事実と論理だけであり、相手がどう感じるかは二の次、あるいは全く考慮に入れません。
相手が悲しんでいたり、落ち込んでいたりする状況でも、「なぜそうなったのか」「どうすれば解決できるのか」という正論だけを突きつけ、気持ちに寄り添うことをしません。 人は論理だけで動く生き物ではありません。感情を無視した正論は、相手の心を深く傷つけ、孤独にさせてしまうのです。
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□ 相手が悩みを相談してきたとき、「で、結論は?」「要するに何が言いたいの?」と話を急かしてしまう。
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□ 相手が泣いたり落ち込んだりすると、「感情的だ」と批判してしまう。
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□ 「あなたの気持ちは分かるけど」と言いつつ、結局は正論で相手の意見を封じ込める。
自分の「普通」を押し付ける
「普通はこうするでしょ?」「常識的に考えておかしい」といった言葉が口癖になっていませんか?人にはそれぞれ育ってきた環境や価値観があり、「普通」や「常識」は一つではありません。しかし、ロジハラ加害者は、自分の価値観が唯一の正解であるかのように振る舞います。
自分の考えと違う意見に対して、「なぜそんなことも分からないのか」と相手を見下したり、無能だと決めつけたりする傾向があります。 このような態度は、相手の多様性や個性を否定する行為であり、相手の自己肯定感を著しく低下させる原因となります。
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□ 「なんでこんな簡単なことができないの?」と相手の能力を疑うような言い方をしてしまう。
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□ 自分のやり方や考え方を、相手にも同じように求めることが多い。
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□ 「常識でしょ」「当たり前だ」という言葉をよく使う。
相手を論破することに快感を覚える
議論の目的は、より良い結論を出すことであり、相手を打ち負かすことではありません。しかし、ロジハラ加害者の中には、相手を言い負かし、自分の優位性を示すことに喜びを感じる人がいます。 彼らは、相手の意見の矛盾点や欠点を見つけ出し、そこを徹底的に攻撃します。
相手がぐうの音も出ないほどに言い込めると、満足感や優越感に浸ります。 しかし、その裏で相手は深く傷つき、屈辱を感じています。このようなコミュニケーションは、信頼関係を根本から破壊してしまいます。白黒をはっきりさせないと気が済まない性格も、この傾向を助長させることがあります。
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□ 話し合いが、いつの間にか相手の揚げ足取りになってしまうことがある。
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□ 相手を言い負かしたときに、「勝った」という気持ちになる。
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□ 議論で勝つためなら、少し強引な理屈や表現を使っても構わないと思っている。
「なぜ?」で相手を追い詰める
「なぜなぜ攻撃」という言葉を聞いたことがありますか?これは、ミスや問題に対して「なぜそうなったの?」「なぜ事前に確認しなかったの?」「なぜ相談しなかったの?」と、執拗に「なぜ?」を繰り返して相手を詰問する行為です。
一見、原因究明のための合理的な質問に見えますが、その実態は相手への責任追及と非難です。 答えに窮する相手を見て、さらに問い詰めることで、相手は精神的に追い詰められ、思考停止に陥ってしまいます。 このような詰問は、問題解決にはつながらず、ただ相手を疲弊させるだけのロジハラ行為と言えるでしょう。
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□ 相手のミスに対して、「なぜ?」を5回以上繰り返して問い詰めたことがある。
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□ 相手が答えに詰まると、さらに厳しい口調で追求してしまう。
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□ 原因究明という名目で、結果的に相手を責めるような尋問をしてしまうことがある。
【被害者向け】これってロジハラ?被害者度チェックリスト

「あの人の言うことは正しいのかもしれないけど、なんだかいつもモヤモヤする」「反論すると言い負かされて、結局いつも私が悪いのかな…」。そんな風に感じているなら、あなたはロジカルハラスメントの被害に遭っているのかもしれません。ここでは、あなたが受けている言動がロジハラに当たるかどうかを判断するためのチェックリストを用意しました。自分の心を守るための第一歩として、ぜひ確認してみてください。
この章では、以下のチェックリストを通じて、あなたが置かれている状況を客観的に把握する手助けをします。
- 会話の後にいつも疲労感や無力感を覚える
- 人格や能力を否定される
- 反論する気力を奪われる
- 常に自分が悪いと感じさせられる
- 周りに相談しても「正論だから仕方ない」と言われる
会話の後にいつも疲労感や無力感を覚える
特定の人と話した後に、どっと疲れが出たり、「自分はなんてダメなんだろう」と落ち込んだりすることはありませんか?健全なコミュニケーションは、たとえ意見が違っても、お互いにとって有益な時間になるはずです。しかし、ロジハラの被害に遭うと、会話そのものが精神的な負担となり、エネルギーを著しく消耗します。
相手の正論による一方的な攻撃を受け続けることで、精神的に疲弊しきってしまうのです。 会話が終わった後に残るのは、納得感ではなく、言いようのない疲労感や無力感。もし特定の相手との会話で常にこういった感情を抱くのであれば、それは危険なサインです。
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□ 特定の人と話す前は、いつも気分が重くなる。
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□ 話し終わった後、何もする気が起きなくなるほど疲れてしまう。
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□ 「また言いくるめられてしまった」という無力感に襲われることが多い。
人格や能力を否定される
「だから君はダメなんだ」「そんなことも分からないのか」といった言葉を投げかけられていませんか?ロジハラは、単に意見を否定するだけでなく、相手の人格や能力そのものを否定する言葉を伴うことが少なくありません。
ミスを指摘する際に、「なぜミスしたか」という事実だけでなく、「君の考え方は根本的に間違っている」というように、人格攻撃にまで発展します。このような言動は、相手の自尊心を深く傷つけ、自信を喪失させる深刻なハラスメントです。 仕事上の指摘は、あくまで行動や事実に対して行われるべきであり、人格を否定することは許されません。
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□ 「君には無理だ」「期待するだけ無駄だった」など、能力を決めつけるようなことを言われる。
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□ 意見が違うと、「頭が悪い」「何も考えていない」といった趣旨の言葉で罵られる。
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□ 自分の存在価値そのものを否定されたような気持ちになることがある。
反論する気力を奪われる
何か意見を言っても、すぐに理屈でねじ伏せられ、話の腰を折られる。そんな経験が続いていませんか?ロジハラの加害者は、相手に反論の隙を与えません。少しでも反論しようものなら、「感情的になるな」「話の論点がずれている」などと言って、議論の土俵にすら上がらせてくれないことがあります。
このような経験が繰り返されると、被害者は「何を言っても無駄だ」と学習し、次第に自分の意見を言うことを諦めてしまいます。 沈黙は同意ではなく、抵抗する気力すら奪われた結果なのです。活発な意見交換ができるはずの場が、一方的な演説の場になってしまっているとしたら、それは健全な状態ではありません。
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□ 反論しようとすると、相手の早口な正論に圧倒されて言葉に詰まってしまう。
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□ 「でも」「だって」と言いかけると、話を遮られてしまう。
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□ もう面倒なので、とりあえず相手の言うことに「はい」と答えてその場をやり過ごしてしまう。
常に自分が悪いと感じさせられる
話し合いが終わると、いつも「自分が至らなかったからだ」「自分の考えが浅はかだったんだ」と、自分を責めてしまっていませんか?ロジハラは、巧妙な論理のすり替えによって、被害者側にすべての非があるかのように思い込ませる特徴があります。
加害者は自分の正しさを主張するために、事実を都合よく解釈したり、問題の焦点をずらしたりします。その結果、被害者は論理の迷路に迷い込み、いつの間にか自分が悪者にされているのです。たとえ自分に何らかの非があったとしても、一方的にすべての責任を負わされるのは不当です。自己肯定感が著しく低下している場合は、特に注意が必要です。
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□ 相手に指摘された後、何日も「自分のせいだ」と悩み続けてしまう。
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□ 相手の機嫌が悪いのは、自分が何か間違ったことをしたからだと考えてしまう。
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□ 自分の意見や感情に自信が持てなくなってしまった。
周りに相談しても「正論だから仕方ない」と言われる
勇気を出して第三者に相談したのに、「あの人の言うことも一理ある」「正論だから我慢するしかないよ」と言われ、余計に追い詰められた経験はありませんか?ロジハラは、その攻撃が「正論」というオブラートに包まれているため、ハラスメントであると認識されにくい側面があります。
特に、事情をよく知らない第三者から見れば、加害者の主張は理路整然としており、説得力があるように聞こえてしまいます。そのため、被害を訴えても理解されず、孤立感を深めてしまうケースが少なくありません。しかし、どんなに正しい意見であっても、相手を精神的に追い詰める行為は許されるべきではありません。あなたの「つらい」という感情こそが、何よりの証拠なのです。
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□ 友人や同僚に相談しても、「気にしすぎじゃない?」と流されてしまったことがある。
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□ 「言っていることは正しいんだから」と、加害者を擁護するようなことを言われてしまった。
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□ 誰にもこの苦しさを理解してもらえないのではないかと、絶望的な気持ちになる。
なぜロジハラは起きてしまうのか?主な原因を解説

正論のはずが、なぜ相手を傷つけるハラスメントになってしまうのでしょうか。ロジハラが起こる背景には、加害者側の心理的な特徴や、コミュニケーションのあり方、そして職場や家庭といった環境の問題が複雑に絡み合っています。原因を理解することは、対策を考える上での第一歩です。ここでは、ロジハラが発生する主な原因を掘り下げて解説します。
この章で取り上げる主な原因は以下の通りです。
- 加害者の心理的特徴「自分が常に正しい」という思い込み
- コミュニケーション能力の不足
- 関係性の問題(上下関係など)
加害者の心理的特徴「自分が常に正しい」という思い込み
ロジハラをしてしまう人の根底には、「自分の考えや価値観が絶対的に正しい」という強い思い込みがあります。 このような人は、自分と異なる意見を受け入れることができず、相手が間違っているという前提で話を進めてしまいます。 そのため、相手を「正してあげなければ」という歪んだ使命感から、一方的に正論を押し付けてしまうのです。
また、プライドが高く、相手よりも優位に立ちたいという欲求が強いことも特徴です。 議論で相手を論破することで、自分の能力や正しさを誇示し、優越感を得ようとします。 この背景には、実は自分への自信のなさが隠れている場合もあり、他人を攻撃することでしか自尊心を保てないという心理状態が働いていることも少なくありません。
コミュニケーション能力の不足
意外に思われるかもしれませんが、ロジハラの原因の一つにコミュニケーション能力の不足が挙げられます。論理的に話せることと、コミュニケーション能力が高いことは、必ずしもイコールではありません。本当の意味でのコミュニケーション能力には、相手の感情を察したり、場の空気を読んだり、相手に合わせた言葉を選んだりする能力も含まれます。
ロジハラ加害者は、相手の気持ちを想像する共感性が欠けていることが多いです。 そのため、自分の発言が相手をどう傷つけるかを考えることができません。 また、自分の意見を伝える際に、相手が受け入れやすいような表現を選ぶといった配慮も不足しがちです。 結果として、正論であっても、その伝え方が一方的で攻撃的になり、ハラスメントと受け取られてしまうのです。
関係性の問題(上下関係など)
ロジハラは、当事者間の力関係が不均衡な場合に特に起こりやすいとされています。 最も典型的なのが、職場における上司と部下という上下関係です。 上司という優越的な立場を利用して、部下のミスを正論で執拗に問い詰めたり、反論を許さない雰囲気を作ったりすることは、ロジハラでありパワハラにも該当します。
また、「教える側」と「教えられる側」という関係性でも発生しやすくなります。例えば、先輩が後輩に仕事を教える場面や、専門知識を持つ人がそうでない人に説明する場面などです。 加害者側は「教えてやっている」という意識から、相手を見下したような態度を取りがちになります。 家庭内でも、経済力や知識の差などを背景に、夫婦間や親子間でロジハラが起こることがあります。
もう悩まない!ロジハラへの具体的な対策と対処法

ロジハラの加害者にも被害者にもならないためには、具体的な知識と行動が必要です。この章では、「加害者にならないための対策」と「被害に遭った際の対処法」をそれぞれ詳しく解説します。コミュニケーションのあり方を見直し、自分も相手も尊重できる関係を築くためのヒントがここにあります。もし今、ロジハラに悩んでいるなら、今日から実践できることがきっと見つかるはずです。
この章では、以下の具体的な方法について解説します。
- 【加害者向け】ロジハラしないための対策
- 【被害者向け】ロジハラから身を守る対処法
- 【共通】相談できる窓口を知っておく
【加害者向け】ロジハラしないための対策
もし自分がロジハラの加害者かもしれないと感じたら、意識的にコミュニケーションの方法を変えていく必要があります。最も大切なのは、相手の感情に配慮し、意見を受け止める姿勢です。 正論を伝える前に、まずは相手の話を最後まで聞きましょう。 相手の意見を頭ごなしに否定せず、「そういう考え方もあるんだね」と一度受け止めることが重要です。
次に、伝え方や言葉遣いを意識することです。 同じ内容でも、断定的な言い方を避け、「私はこう思うのだけど、どうかな?」のように柔らかい表現に変えるだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。また、自分と相手を共に尊重する「アサーティブコミュニケーション」を学ぶことも非常に有効です。 これは、自分の意見を率直に伝えつつも、相手の意見も尊重する対話の方法です。 最後に、何事も白黒はっきりさせる必要はないと理解することも大切です。 常に論破しようとするのではなく、時にはグレーな結論を受け入れる柔軟性を持ちましょう。
【被害者向け】ロジハラから身を守る対処法
ロジハラの被害に遭っていると感じたら、我慢し続ける必要はありません。 まずは加害者と物理的・心理的に距離を置くことを考えましょう。 無理に会話を続ける必要はなく、必要最低限の関わりにとどめるのが賢明です。 一対一で話すのを避け、第三者を交えて話すようにするのも効果的です。
相手の攻撃的な言葉をまともに受け止めず、「また始まったな」と心の中で受け流すことも、自分の心を守るためには必要です。相手の話に無理に反論しようとせず、「検討します」「参考にさせていただきます」といった言葉で一旦受け止める姿勢を見せることで、相手の攻撃が和らぐこともあります。
そして最も重要なのが、一人で抱え込まずに信頼できる人に相談することです。 友人や家族、あるいは次の項で紹介する専門の窓口に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になります。相談する際は、いつ、どこで、誰に、何を言われたか、そして自分がどう感じたかを具体的に記録しておくと、状況を客観的に説明しやすくなります。
【共通】相談できる窓口を知っておく
ロジハラの問題は、個人の努力だけでは解決が難しい場合も少なくありません。 そのような時は、専門の相談窓口を利用することが重要です。職場での問題であれば、まずは社内のハラスメント相談窓口や人事部、信頼できる上司に相談しましょう。 企業には、ハラスメントに対処する義務があります。
社内での解決が難しい場合や、相談しにくい場合は、社外の公的な機関に助けを求めることができます。代表的なものに、各都道府県の労働局にある「総合労働相談コーナー」があります。ここでは、専門の相談員が無料で相談に乗ってくれ、必要に応じて助言や指導、あっせん(話し合いの仲介)を行ってくれます。その他にも、法テラス(日本司法支援センター)や、NPO法人が運営する相談窓口などもあります。 精神的なつらさが大きい場合は、心療内科やカウンセリングを利用することも、自分を守るための大切な選択肢です。
ロジカルハラスメントに関するよくある質問

ここでは、ロジカルハラスメント(ロジハラ)に関して、多くの人が抱く疑問にお答えします。
ロジハラとパワハラ、モラハラとの違いは何ですか?
ロジハラ、パワハラ、モラハラは、いずれも相手を精神的に傷つけるハラスメントですが、その手法に違いがあります。
- ロジハラ(ロジカルハラスメント):正論や論理を武器に相手を追い詰める行為です。 「正しいこと」を盾にするため、加害者に自覚がないケースも多いのが特徴です。
- パワハラ(パワーハラスメント):職場の優越的な地位や関係性を利用して、精神的・身体的な苦痛を与える行為全般を指します。 暴力や暴言、過大な要求など、ロジハラよりも広い概念で、ロジハラもパワハラの一種と見なされることがあります。
- モラハラ(モラルハラスメント):言葉や態度によって、継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な暴力です。無視や嫌味、悪口などが典型例で、家庭内や職場など、さまざまな関係性で起こります。ロジハラが「論理」を使うのに対し、モラハラはより広い範囲の精神的嫌がらせを含みます。
夫や妻など家庭内でのロジハラにはどう対処すればいいですか?
家庭内でのロジハラは非常に深刻な問題です。 まず、相手の言動が「ロジハラ」であると認識し、自分が傷ついていることを自覚することが第一歩です。 以下の対処法を試してみてください。
- 感情を伝える:「あなたの言うことは正しいかもしれないけど、そういう言い方をされると私はとても悲しい(つらい)」と、「私」を主語にした「アイメッセージ」で自分の気持ちを伝えましょう。
- 距離を置く:議論がエスカレートしそうになったら、「少し頭を冷やしたいから」と言ってその場を離れるのも有効です。
- 第三者に相談する:一人で抱え込まず、信頼できる友人や親族、あるいは夫婦カウンセリングや公的な相談機関に相談してください。 客観的な視点を得ることで、解決の糸口が見つかることがあります。
- 記録する:いつ、何を言われたかを日記などに記録しておくと、自分の感情を整理でき、相談する際にも役立ちます。
決して「自分が我慢すればいい」と思わないでください。
ロジハラをする人に自覚はありますか?
多くの場合、ロジハラをしている本人に「ハラスメントをしている」という自覚はありません。 彼らは「正しいことを言っているだけ」「相手のためを思って指導している」と本気で信じていることが多いのです。 自分の正しさを疑わず、相手の感情に共感する能力が欠けているため、自分の言葉が相手をどれだけ傷つけているかに気づきにくいのです。
そのため、被害者が「それはロジハラですよ」と指摘しても、「何が悪いのか分からない」「感情的になるな」と反論されることも少なくありません。 自覚がないからこそ、問題が根深く、解決が難しいケースが多いと言えます。
ロジカルな指摘とロジハラの境界線はどこですか?
ロジカルな指摘とロジハラの境界線は、「相手への配慮と思いやりがあるかどうか」です。
以下の点で違いを見分けることができます。
- 目的:
- ロジカルな指摘:目的は問題解決や相手の成長。お互いにとってより良い結果を目指す建設的なものです。
- ロジハラ:目的は相手を論破し、自分の正しさを証明すること。自己満足や相手を支配することが目的です。
- 伝え方:
- ロジカルな指摘:相手の状況や感情を考慮し、言葉を選んで伝えます。相手が意見を言う余地も残します。
- ロジハラ:相手の逃げ場をなくすように、一方的かつ攻撃的に畳みかけます。威圧的な態度を伴うこともあります。
- 結果:
- ロジカルな指摘:相手は納得し、前向きな行動につながることが多いです。
- ロジハラ:相手は屈辱感や無力感を抱き、自信を失い、精神的に追い詰められます。
たとえ言っている内容が100%正しくても、相手を傷つければそれはハラスメントになり得ます。
まとめ

- ロジハラは正論を盾に相手を追い詰める嫌がらせです。
- 加害者は自分が正しいと思い込み、相手の感情を軽視します。
- 被害者は無力感や自己否定に陥りやすい傾向があります。
- パワハラの一種ですが、家庭などでも起こり得ます。
- 原因は加害者の思い込みやコミュニケーション不足です。
- 上下関係など、力関係の不均衡な場で起こりやすいです。
- 加害者にならないためには相手への配慮が不可欠です。
- アサーティブコミュニケーションを学ぶことが有効です。
- 被害に遭ったら、まずは相手と距離を置くことが大切です。
- 一人で抱え込まず、信頼できる人や窓口に相談しましょう。
- 家庭内ロジハラでは、自分の感情を伝えることが重要です。
- 加害者の多くは、ハラスメントの自覚がありません。
- 「指摘」と「ハラスメント」の境界は相手への配慮の有無です。
- 目的が「論破」か「解決」かで見分けることができます。
- 健全なコミュニケーションは、論理と感情の両輪で成り立ちます。