「LDH、赤字って本当?」「好きなアーティストの活動は大丈夫?」そんな不安を抱えて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。一時期、LDHが深刻な赤字に陥ったというニュースが駆け巡り、多くのファンが心配の声を上げました。しかし、結論から言うと、現在のLDHは赤字ではありません。
本記事では、LDHが過去に赤字となった具体的な理由を深掘りし、そこからいかにしてV字回復を遂げたのか、そしてHIRO社長復帰後の新体制が描く未来の展望まで、プロの視点で徹底的に解説します。この記事を読めば、LDHの経営状況に関するあなたの疑問や不安は、きっと解消されるはずです。
【結論】LDHは現在赤字ではない!2023年決算も黒字を確保

まず最も重要な事実として、株式会社LDH JAPANは現在、赤字経営ではありません。官報に掲載された決算公告によると、2023年12月期の純利益は17億1900万円でした。 これは、前期の34億1500万円の黒字からは利益が減少したものの、しっかりと黒字を確保していることを示しています。
一時期、特にコロナ禍であった2020年度には30億円を超える大幅な赤字を記録したと報じられたこともありましたが、その後、驚異的な回復力を見せています。 2022年12月期には34億円を超える最終黒字へと転換し、経営の立て直しに成功したのです。 このV字回復は、LDHの持つ企業体力と、変化に対応する柔軟な経営戦略の賜物と言えるでしょう。
LDHが過去に赤字転落した3つの主な理由

では、なぜ一時期LDHは赤字に陥ってしまったのでしょうか。その背景には、複合的な要因が絡み合っていました。ここでは、特に大きな影響を与えたと考えられる3つの理由を詳しく解説していきます。
- 理由1:新型コロナウイルス感染症の壊滅的な影響
- 理由2:事業の多角化とEXILE TRIBE戦略の裏目
- 理由3:相次ぐ不祥事と企業イメージの低下
理由1:新型コロナウイルス感染症の壊滅的な影響
LDHが赤字に転落した最大の理由は、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックです。LDHのビジネスモデルの根幹は、所属アーティストによるライブ・エンタテインメント事業にあります。チケット収入はもちろん、会場で販売されるグッズの売上は、同社の収益の大きな柱でした。
2020年は6年に一度の祭典「LDH PERFECT YEAR 2020」が開催され、年間で約300万人もの動員を見込んでいました。 しかし、政府からの自粛要請を受け、2月26日のEXILEの公演を皮切りに、予定されていた数多くのライブが中止や延期に追い込まれました。 発表されているだけでも168公演以上が中止となり、その経済的損失は計り知れません。 このライブ事業の停滞が、会社の収益を直撃し、赤字の主要因となったのです。
理由2:事業の多角化とEXILE TRIBE戦略の裏目
LDHは音楽事業だけでなく、アパレル、飲食、ダンススクールなど、多角的な事業展開を行っているのが特徴です。 これらは「360度ビジネス」と呼ばれ、エンタテインメントを軸にライフスタイル全般を提案する戦略でした。しかし、この多角化がコロナ禍においては裏目に出てしまいます。ライブと同様に、アパレル店舗や飲食店も休業や時短営業を余儀なくされ、収益が悪化しました。
また、EXILEの魂を受け継ぐというコンセプトの「EXILE TRIBE」戦略も、一因として考えられます。 次々と新しいグループをデビューさせた結果、グループが増えすぎてしまい、個々のグループの区別がつきにくいという声がファンや一般層から上がるようになりました。 結果として、ファン層が分散し、一グループあたりの熱量が薄まってしまった可能性も否定できません。
理由3:相次ぐ不祥事と企業イメージの低下
企業の経営は、社会からの信頼の上に成り立っています。残念ながら、LDHは過去にいくつかの不祥事やスキャンダルが報じられています。例えば、週刊誌によるレコード大賞の買収疑惑報道や、過去の申告漏れの指摘などがそれに当たります。
これらの報道の真偽はともかくとして、「クリーン」「ストイック」といったEXILEが持つパブリックイメージとのギャップは、一部のファン離れや企業イメージの低下に繋がった可能性があります。特に、エンタテインメントという人々の夢や憧れを扱う業界において、企業イメージの毀損は、見えない形でじわじわと経営に影響を与えることがあります。コロナ禍という未曾有の危機と、こうしたネガティブなイメージが重なったことも、苦境の一因となったと考えられます。
赤字からのV字回復!LDHが講じた3つの復活戦略

深刻な赤字という危機に直面したLDHですが、そこから見事なV字回復を成し遂げました。その原動力となったのは、単なるライブの再開だけではありません。危機をチャンスに変える、巧みな経営戦略がありました。ここでは、LDHを復活に導いた3つの戦略を紐解いていきます。
- 戦略1:ライブエンタテインメントの完全復活とファンの回帰
- 戦略2:デジタルシフトの加速と新たな収益源の確立
- 戦略3:グローバル市場への本格進出
戦略1:ライブエンタテインメントの完全復活とファンの回帰
やはり、LDH復活の最大のエンジンはライブエンタテインメントの再開でした。コロナ禍でエンタメ業界全体が手探りの状態の中、LDHは感染症対策の専門家チームを組織し、安全なライブ開催の形を模索しました。 2021年にはドームツアーを再開するなど、業界に先駆けて大規模ライブの復活へと舵を切ります。
フェイスシールドの配布や指定入場時間の設定など、徹底した感染対策のもとで開催されたライブは、エンタメに飢えていたファンたちの心を再び掴みました。 リアルな空間でアーティストとファンが一体となる熱狂。これこそがLDHの原点であり、最大の強みです。このライブの完全復活が、チケットやグッズの売上を回復させ、黒字化への道を切り拓いたのです。
戦略2:デジタルシフトの加速と新たな収益源の確立
コロナ禍は、LDHにデジタル戦略の重要性を再認識させました。リアルなライブが開催できない状況下で、新たな収益源として注力したのがデジタルコンテンツです。特に大きな一手となったのが、サイバーエージェントと共同で設立した株式会社CyberLDHが手掛ける動画配信サービス「CL」の開始です。
「CL」では、オンライン専用のライブ「LIVE×ONLINE」や、アーティストの素顔に迫るオリジナル番組などを配信。 これまで会場に足を運べなかったファンや、より深くアーティストの世界観に浸りたいファン層のニーズを捉え、新たな収益の柱へと成長させました。リアルなライブを補完するデジタルコンテンツの充実は、今後のLDHの経営をより安定させる重要な要素となるでしょう。
戦略3:グローバル市場への本格進出
国内市場が少子化により縮小していくことを見据え、LDHは以前から海外展開に意欲的でしたが、コロナ禍を経てその動きを加速させています。特に注力しているのが、成長著しいアジア市場です。
BALLISTIK BOYZやPSYCHIC FEVERといった若手グループをタイに送り込み、現地の音楽番組やフェスに出演させるなど、長期的な視野でファンベースの構築に取り組んでいます。 この戦略は着実に実を結び始めており、PSYCHIC FEVERの楽曲はアジア各国のバイラルチャートを席巻しました。 K-POPが世界を席巻する中、LDHが培ってきたダンス&ボーカルグループのノウハウは、海外でも十分に通用するポテンシャルを秘めています。このグローバル戦略が、LDHの次なる成長を牽引していくことは間違いありません。
【HIRO社長復帰】新体制で描くLDHの今後の展望

2023年10月、創業者であるEXILE HIROが代表取締役社長に復帰するという大きなニュースが発表されました。 約6年半ぶりの社長復帰は、LDHが新たなフェーズへと向かう強い意志の表れと言えます。この新体制のもと、LDHはどのような未来を描いているのでしょうか。
- コンプライアンス強化と信頼回復への道
- 「Dreams For Children」子どもたちの夢を応援する社会貢献活動
- アニメ事業など新規分野への挑戦
コンプライアンス強化と信頼回復への道
HIRO社長は復帰にあたり、コンプライアンスやガバナンスの徹底的な強化を明言しています。 過去の不祥事の反省を踏まえ、社会から信頼され、貢献できる組織へと生まれ変わることを目指しています。その一環として、警察庁出身者や元財務事務次官といった経歴を持つ人物を社外取締役や監査役に迎え入れるなど、経営の透明性を高めるための具体的な手を打っています。
エンタテインメント企業として、ファンや社会からの信頼は何よりも重要です。この経営体制の強化は、LDHが長期的に安定して成長していくための強固な土台作りと言えるでしょう。
「Dreams For Children」子どもたちの夢を応援する社会貢献活動
LDHは以前から「Dreams For Children」をテーマに、子どもたちの夢を応援する社会貢献活動に力を入れています。 ダンススクール「EXPG」の運営もその一環であり、エンタテインメントを通じて子どもたちに夢を持つことの素晴らしさを伝えています。
HIRO社長は、この活動をさらに推し進めていく考えを示しています。企業の利益追求だけでなく、社会貢献活動を通じて企業としての存在意義を高めていくこと。これが、これからのLDHが目指す姿の一つです。夢を原動力に成長してきたLDHだからこそ、次世代の子どもたちに夢の力を伝えていくという使命を担っているのです。
アニメ事業など新規分野への挑戦
安定した経営基盤を固めつつ、LDHは新たな挑戦の手も緩めていません。その象徴が、2025年から本格始動したアニメーション制作ブランド「LDH Animation」です。 日本が世界に誇るアニメという文化と、LDHが持つエンタテインメントのノウハウを融合させ、世界市場を視野に入れたコンテンツ制作を目指します。
音楽やライブという枠にとらわれず、総合エンタテインメント企業として常に進化を続ける姿勢。HIRO社長のリーダーシップのもと、デジタル戦略やグローバル展開、そしてアニメのような新規事業が有機的に結びつくことで、LDHはこれからも私たちに新たな驚きと感動を与えてくれることでしょう。
よくある質問

LDHの赤字はいつからいつまで続いた?
LDHの決算は公式に毎年詳細が発表されているわけではありませんが、報道によると、特にコロナ禍の影響が深刻化した2020年度(2021年3月期決算)に30億円を超える大きな赤字を計上したとされています。 しかし、その後の2022年12月期決算では34億円を超える黒字にV字回復しており、赤字の状態は主にコロナ禍の期間に限定されていたと見られます。
LDHのファンクラブ会員数は減っている?
ファンクラブの会員数について、LDHが公式な数字を公表していないため、正確な増減を把握することは困難です。一時期、グループの増加によるファンの分散やコロナ禍での活動停滞により、会員数が減少した可能性を指摘する声もありました。 しかし、ライブの本格的な再開や、オンラインコンテンツの充実により、現在は再び増加傾向にある可能性も考えられます。
他の芸能事務所(ジャニーズ、アミューズ等)の経営状況は?
コロナ禍はLDHだけでなく、ライブ事業を収益の柱とする多くの芸能事務所に大きな打撃を与えました。 例えば、アミューズも同様に減収減益を記録する時期がありました。一方で、各社はオンライン配信やデジタルコンテンツの強化、事業の多角化などでこの危機に対応しています。芸能事務所のビジネスモデル自体が、コロナ禍を機に大きな変革期を迎えていると言えるでしょう。
LDHの所属アーティストの今後はどうなる?
LDHの経営が安定し、黒字を確保していることから、所属アーティストの活動が危ぶまれる状況にはありません。むしろ、HIRO社長の復帰による組織強化や、グローバル戦略の本格化は、アーティストにとって新たな活躍の場が広がることを意味します。 国内でのライブ活動はもちろん、海外での挑戦や、アニメなど異分野とのコラボレーションなど、これまで以上に多岐にわたる活動が期待されます。
まとめ

- LDHは現在赤字ではなく、2023年12月期も黒字を確保している。
- 過去の赤字の最大の原因はコロナ禍でのライブ中止・延期だった。
- 事業の多角化やEXILE TRIBE戦略が裏目に出た側面もある。
- 過去の不祥事報道が企業イメージに影響した可能性も否定できない。
- V字回復の原動力は、徹底した対策のもとでのライブ再開である。
- 動画配信サービス「CL」などデジタル戦略が新たな収益源となった。
- アジアを中心としたグローバル戦略を積極的に推進している。
- 2023年10月に創業者HIROが代表取締役社長に復帰した。
- 新体制ではコンプライアンス強化を最重要課題としている。
- 社外取締役を登用し、経営の透明性を高めている。
- 「Dreams For Children」を掲げ社会貢献活動にも注力する。
- アニメ事業「LDH Animation」を立ち上げ、新規分野に挑戦中。
- 経営基盤の安定により、アーティストの活動の場はさらに広がる。
- ライブ、デジタル、グローバルを三本柱に今後も成長を目指す。
- ファンの不安を払拭し、未来への期待感を抱かせる経営戦略を展開している。