セミナーや講演会などで講師を招いた際、感謝の気持ちを込めてお渡しする謝礼。しかし、いざ準備するとなると、「封筒はどれを選べばいいの?」「表書きはどう書くのが正しい?」「お札の入れ方にもマナーがあるの?」など、意外と知らないことや不安なことが多いのではないでしょうか。特に初めて講師を招く場合、失礼があっては大変です。
本記事では、そのようなお悩みを抱える方のために、講師への謝礼をお渡しする際の封筒の選び方から、正しい書き方、お札の入れ方、そしてスマートな渡し方まで、一連のマナーを徹底的に解説します。この記事を読めば、自信を持って講師に謝礼をお渡しできるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧いただき、失礼のない、心のこもった対応を目指しましょう。
講師への謝礼、封筒の選び方と表書きの基本
講師へ謝礼をお渡しする際、まず悩むのが封筒の選び方と表書きではないでしょうか。相手に失礼なく、かつ感謝の気持ちを伝えるためには、適切な封筒を選び、正しい表書きをすることが重要です。ここでは、謝礼をお渡しする際の封筒の種類や選び方のポイント、そして表書きの具体的な書き方について詳しく解説します。
具体的には、以下の項目について解説します。
- 封筒の種類と選び方のポイント
- 表書きの書き方(「御礼」「謝礼」「講演料」など)
- 名前の書き方(個人名・会社名)
封筒の種類と選び方のポイント
講師への謝礼を入れる封筒は、白無地の封筒を選ぶのが一般的です。 郵便番号の枠が印刷されていない、無地のものを選びましょう。 茶封筒は事務的な印象を与えてしまうため、避けるのが無難です。
また、封筒の厚みも重要です。中のお金が透けて見えないよう、ある程度の厚みがあるものや、二重になっている封筒を選ぶとより丁寧な印象になります。 文房具店などで「謝礼用」として販売されている封筒を選ぶのも良いでしょう。
水引については、必須ではありません。 もし使用する場合は、紅白の蝶結びの水引がついたのし袋を選びますが、一般的な謝礼の場合は水引なしの白封筒で十分です。 ただし、地域や慣習によって異なる場合もあるため、心配な場合は事前に確認しておくと安心です。
表書きの書き方(「御礼」「謝礼」「講演料」など)
封筒の表面中央上部には、「御礼」または「謝礼」と書くのが最も一般的で無難です。 より具体的に「講演料」や「研修費」などとしても問題ありません。 源泉徴収をした金額をお渡しする場合は、「講演料」と記載する方が分かりやすいでしょう。
注意点として、「寸志」や「薄謝」といった表現は避けましょう。 これらは目上の方から目下の方へ渡す際に使われる言葉であり、講師への謝礼としては不適切です。
文字は、楷書で丁寧に、黒色の筆ペンまたは太めのペンで書くのが理想的です。 ボールペンや細いペンはカジュアルな印象になるため、フォーマルな場では避けましょう。
名前の書き方(個人名・会社名)
表書きの真下、中央やや下寄りに、差出人の名前をフルネームまたは会社名・団体名で記入します。 表書きの文字よりも少し小さめに書くとバランスが良いでしょう。
会社名や団体名の場合は、正式名称で記入します。個人名の場合は、姓だけでなく名までしっかりと書きましょう。連名で渡す場合は、右側から目上の人の名前を順に記入します。
講師への謝礼、封筒へのお札の入れ方マナー
封筒の準備ができたら、次はお札の入れ方です。お札の入れ方にも守るべきマナーがあります。せっかく丁寧に封筒を用意しても、お札の入れ方で印象を損ねてしまっては元も子もありません。ここでは、新札の用意からお札の向き、複数枚入れる場合の揃え方まで、具体的なポイントを解説します。
具体的には、以下の項目について解説します。
- 新札を用意するのが望ましい
- お札の向きと揃え方
- 中袋は必要?
新札を用意するのが望ましい
講師へお渡しする謝礼は、できる限り新札を用意するのがマナーです。 新札を用意することで、相手への敬意と感謝の気持ちをより丁寧に伝えることができます。銀行や郵便局の窓口で両替してもらえますので、事前に準備しておきましょう。
どうしても新札が用意できない場合は、なるべく折り目の少ない綺麗なお札を選ぶように心がけましょう。 シワや汚れのひどいお札は避けるべきです。
お札の向きと揃え方
お札を封筒に入れる際には、向きと揃え方にも注意が必要です。お札の肖像画が印刷されている面(表側)を封筒の表側(表書きが書かれている面)に向け、かつ肖像画が上になるように入れます。 こうすることで、受け取った方が封筒を開けた際に、まず肖像画が見えるようになります。
複数枚のお札を入れる場合は、すべてのお札の向きを揃えて入れましょう。 バラバラの向きで入れるのは失礼にあたります。
不祝儀の場合はお札の顔を伏せて入れるという習慣がありますが、謝礼の場合は慶事と同様の扱いで問題ありません。
中袋は必要?
謝礼の金額によっては、中袋(内袋)を使用する場合があります。一般的に、高額な謝礼をお渡しする場合や、より丁寧な印象を与えたい場合は中袋を使用すると良いでしょう。 中袋を使用する場合は、中袋の表面中央に金額を漢数字(旧字体)で記入し、裏面左下に差出人の住所と氏名を記入します。
例えば、「金 壱萬圓也」のように記入します。ただし、必ずしも旧字体で書かなければならないわけではなく、通常の漢数字でも問題ありません。
中袋を使用しない場合は、封筒の裏面左下に金額を記入することもありますが、謝礼の場合は封筒の外側には金額を記載しないのが一般的です。 金額を記載する必要がある場合は、中袋の内側に控えめに記すか、別途支払明細書を用意するのがスマートです。
講師への謝礼、封筒の裏書きと金額の書き方
封筒の表書きとお札の準備が整ったら、次は裏書きです。裏書きは必須ではありませんが、書いておくことでより丁寧な印象を与えたり、誰からの謝礼か分かりやすくしたりするメリットがあります。また、金額の記載についても、どこにどのように書くべきか迷うポイントです。ここでは、封筒の裏書きの書き方と、金額の記載方法について解説します。
具体的には、以下の項目について解説します。
- 裏書きの書き方(住所・氏名)
- 金額の書き方と記載場所
- 封筒に金額を書かない場合の対応
裏書きの書き方(住所・氏名)
封筒の裏面には、差出人の住所と氏名を左下に記入するのが一般的です。 会社や団体の場合は、住所、会社名(団体名)、そして担当者名を記入します。個人の場合は、住所と氏名を記入しましょう。
表書きと同様に、黒色の筆ペンまたはペンを使用し、楷書で丁寧に書きます。文字の大きさは、全体のバランスを見て調整してください。
特に複数の人が謝礼を渡す可能性がある場合や、後日講師が誰からの謝礼かを確認する際に、裏書きがあると親切です。
金額の書き方と記載場所
謝礼の金額を封筒に記載する場合、中袋を使用していれば中袋の表面中央に漢数字(旧字体または通常の漢数字)で記入します。 例えば、「金 参萬圓也」や「金 三万円」のように書きます。
中袋を使用しない場合、封筒の裏面左下に金額を記載することもありますが、前述の通り、謝礼の場合は封筒の外側には金額を記載しないのが一般的です。 企業間の取引など、経理処理上金額の記載が必要な場合は、別途支払明細書を用意し、封筒に同封するのがより丁寧な対応と言えるでしょう。
個人で渡す場合など、特に明細書が必要ない場合は、金額を記載しなくてもマナー違反にはなりません。
封筒に金額を書かない場合の対応
封筒に金額を明記しない場合でも、講師側が後で確認できるように、何らかの形で金額を伝える配慮があると親切です。例えば、支払明細書や領収書(控)を同封する方法があります。 特に企業として謝礼をお渡しする場合は、経費処理の観点からも支払明細書を作成し、同封するのが望ましいでしょう。
また、口頭で「心ばかりではございますが、本日の御礼でございます」といった言葉と共に、金額に触れずにお渡しするのもスマートです。講師によっては、金額が明記されていることを好まない場合もあるため、状況に応じて判断しましょう。
いずれにしても、相手に失礼なく、かつスムーズに受け取ってもらえるような配慮を心がけることが大切です。
講師への謝礼、渡し方のマナーとタイミング
封筒の準備が完璧でも、渡し方一つで相手に与える印象は大きく変わります。感謝の気持ちをしっかりと伝えるためには、適切なタイミングで、失礼のないようにスマートにお渡しすることが重要です。ここでは、謝礼をお渡しする際の具体的なタイミングや、渡し方の手順、添える言葉など、実践的なマナーについて解説します。
具体的には、以下の項目について解説します。
- 謝礼を渡すタイミング
- 渡し方の手順と注意点
- 添える言葉の例
- お車代・交通費を別途渡す場合
謝礼を渡すタイミング
講師への謝礼をお渡しするタイミングは、講演やセミナーが終了し、講師が一段落ついた時が一般的です。 講師が帰る準備を始める前や、控室などで少し落ち着いたタイミングを見計らってお渡ししましょう。
あまり慌ただしい状況や、他の参加者が大勢いる前で渡すのは避けた方が良いでしょう。個別に、静かな場所でお渡しするのがスマートです。もし懇親会などがある場合は、その席でお渡しするケースもありますが、講師の都合や状況に合わせて判断しましょう。
大切なのは、講師に余計な気を遣わせないタイミングを選ぶことです。
渡し方の手順と注意点
謝礼をお渡しする際は、以下の手順と注意点を押さえておきましょう。
- 封筒は袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが正式なマナーです。袱紗がない場合は、綺麗なハンカチなどで代用しても良いでしょう。封筒を直接カバンから取り出すのは避けましょう。
- お渡しする際は、袱紗から封筒を取り出し、相手から見て正面になるように向きを変えて、両手で丁寧に差し出します。
- お渡しする場所は、床や低いテーブルの上ではなく、講師が受け取りやすい高さの台の上や、手渡しできる状況を選びましょう。
- お渡しする際は、感謝の言葉を添えることを忘れずに。
封筒のままポケットやカバンから無造作に取り出して渡すのは、大変失礼にあたります。細やかな配慮が、相手への敬意を示すことに繋がります。
添える言葉の例
謝礼をお渡しする際には、感謝の気持ちを込めた言葉を添えましょう。以下に例を挙げます。
- 「本日は素晴らしいご講演を誠にありがとうございました。心ばかりではございますが、御礼でございます。どうぞお納めください。」
- 「〇〇先生、本日は大変お世話になりました。些少ではございますが、感謝の気持ちでございます。」
- 「貴重なお話をありがとうございました。今後の活動の参考にさせていただきます。こちらは本日の御礼でございます。」
相手への感謝の気持ちと、労いの言葉を伝えることが大切です。堅苦しくなりすぎる必要はありませんが、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
お車代・交通費を別途渡す場合
謝礼とは別に交通費やお車代をお渡しする場合は、別の封筒を用意するのがマナーです。 謝礼と同じタイミングでお渡しして問題ありません。
お車代の封筒の表書きは、「御車代」または「お車代」、「交通費」とします。 謝礼の封筒と同様に、白無地の封筒を使用し、差出人名を記入します。金額は、実費に少し上乗せしたキリの良い金額をお包みするのが一般的です。
お渡しする際は、「こちらは交通費でございます」と一言添えると丁寧です。
講師への謝礼に関するその他の注意点(源泉徴収・消費税など)
講師への謝礼をお渡しする際には、封筒の書き方や渡し方だけでなく、税金に関する知識も必要になる場合があります。特に企業や団体が謝礼を支払う場合は、源泉徴収や消費税の取り扱いについて正しく理解しておくことが重要です。ここでは、謝礼に関連する税務上の注意点や、領収書の取り扱いについて解説します。
具体的には、以下の項目について解説します。
- 源泉徴収の必要性について
- 消費税の取り扱いについて
- 領収書の用意と依頼方法
源泉徴収の必要性について
講師に支払う謝礼金は、所得税法上「報酬・料金等」に該当し、原則として源泉徴収が必要になります。 これは、講師が個人の場合に適用されます。講師が法人に所属しており、講演料がその法人に支払われる場合は、源泉徴収の必要はありません。
源泉徴収の税率は、支払金額によって異なります。一般的には、100万円以下の場合は支払金額の10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)です。
源泉徴収した所得税は、支払った月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。 交通費や宿泊費を現金で講師に支払う場合も、原則として源泉徴収の対象となりますが、主催者側が交通機関や宿泊施設に直接支払った場合は源泉徴収の必要はありません。
源泉徴収の手続きは複雑な場合もあるため、不明な点は税理士や税務署に確認することをお勧めします。
消費税の取り扱いについて
講師への謝礼金が、役務の提供に対する対価である場合は、消費税の課税対象となります。 例えば、講演やセミナーの講師に対する謝礼は、その講演という役務提供の対価とみなされるため、消費税が課されます。
ただし、謝礼金が単なる「お礼」の意味合いで、対価性がないと判断される場合は、消費税の課税対象外(不課税)となることもあります。 しかし、実態として役務提供の対価と認められる場合は、名目が「謝礼」であっても消費税の対象となる点に注意が必要です。
また、国外の講師に国外で講演を依頼した場合など、国外取引に該当する場合は、対価性があっても日本の消費税はかかりません。
インボイス制度の開始に伴い、適格請求書発行事業者である講師に対しては、仕入税額控除のためにインボイス(適格請求書)の保存が必要になります。 消費税の取り扱いについても、専門家への確認が推奨されます。
領収書の用意と依頼方法
講師に謝礼をお渡しする際、主催者側で領収書を用意しておくとスムーズです。 領収書には、宛名(支払者名)、金額、但し書き(例:「講演料として」)、日付、発行者(講師の氏名・住所)を記入してもらい、捺印をいただきます。
但し書きに「源泉徴収税額●●円を控除済み」といった形で、源泉徴収した旨を記載しておくと、講師側も確定申告の際に分かりやすくなります。
領収書は、謝礼をお渡しする際に一緒に提示し、その場で署名・捺印を依頼するのが一般的です。事前に講師に領収書が必要な旨を伝えておくと、よりスムーズに進められるでしょう。
講師によっては、自身で領収書を用意している場合もありますので、事前に確認しておくと二度手間を防げます。
よくある質問
講師への謝礼に関して、疑問に思いやすい点をQ&A形式でまとめました。封筒の選び方から渡し方、さらには税金のことまで、気になるポイントを解消しましょう。
Q1: 講師への謝礼を入れる封筒は、どんなものが適切ですか?
A1: 白無地の封筒で、郵便番号枠のないものを選びましょう。 中身が透けないよう、ある程度の厚みがあるものや二重封筒がより丁寧です。 水引は必須ではありませんが、使用する場合は紅白の蝶結びのものを選びます。
Q2: 謝礼の封筒の表書きは、何と書けば良いですか?
A2: 「御礼」または「謝礼」と書くのが一般的です。 「講演料」や「研修費」など、具体的な名目にしても問題ありません。 「寸志」や「薄謝」は目上の方から目下の方へ使う言葉なので避けましょう。
Q3: 謝礼のお札は新札でなければいけませんか?
A3: できる限り新札を用意するのがマナーです。 相手への敬意を示すためです。どうしても用意できない場合は、折り目の少ない綺麗なお札を選びましょう。
Q4: 謝礼の封筒にお金の入れ方に決まりはありますか?
A4: はい、あります。お札の肖像画が印刷されている面を封筒の表側に向け、かつ肖像画が上になるように入れます。 複数枚入れる場合は、全てのお札の向きを揃えましょう。
Q5: 講師への謝礼はいつ渡すのが良いですか?
A5: 講演やセミナーが終了し、講師が一段落ついたタイミングでお渡しするのが一般的です。 個別に、静かな場所でお渡しするのがスマートです。
Q6: 交通費(お車代)は謝礼と一緒の封筒に入れても良いですか?
A6: いいえ、謝礼とは別に、交通費やお車代専用の封筒を用意するのがマナーです。 表書きは「御車代」や「交通費」とします。
Q7: 講師への謝礼に源泉徴収は必要ですか?
A7: はい、講師が個人の場合、原則として源泉徴収が必要です。 税率は支払金額によって異なります。講師が法人の場合は不要です。
Q8: 講師への謝礼に消費税はかかりますか?
A8: はい、謝礼が役務の提供に対する対価である場合は、消費税の課税対象となります。 例えば、講演料などが該当します。
Q9: 謝礼の封筒の裏には何を書きますか?
A9: 差出人の住所と氏名(または会社名・団体名)を左下に記入するのが一般的です。 金額は、中袋を使用する場合は中袋の表面に、使用しない場合は記載しないか、別途支払明細を同封します。
Q10: 講師が謝礼を受け取らない場合はどうすれば良いですか?
A10: 講師によっては、規定や方針により謝礼を受け取らない場合があります。 その場合は無理にお渡しせず、感謝の言葉を改めて伝えましょう。事前に謝礼について確認しておくのも良いでしょう。場合によっては、菓子折りなど品物でお礼の気持ちを伝えることもあります。
まとめ
- 謝礼の封筒は白無地の郵便番号枠なしを選ぶ。
- 表書きは「御礼」か「謝礼」が一般的。
- 差出人名は表書きの下にやや小さく書く。
- お札は新札を用意するのが望ましい。
- お札は肖像画を表にし、上向きに入れる。
- 複数枚のお札は向きを揃える。
- 中袋は高額な場合やより丁寧にしたい時に使用。
- 裏書きには差出人の住所・氏名を左下に書く。
- 金額は中袋の表面か、別途明細で伝える。
- 渡すタイミングは講演終了後、落ち着いた時。
- 袱紗に包み、両手で丁寧に渡す。
- 感謝の言葉を添えることを忘れずに。
- 交通費は別封筒で「御車代」として用意。
- 個人の講師への謝礼は源泉徴収が必要な場合がある。
- 役務提供の対価としての謝礼には消費税がかかる。