高齢者の体調不良は、若い世代とは異なる特徴があるため、熱が下がらない状態が続くと不安になりますよね。特に高齢者の場合、発熱の症状がはっきりしないことも多く、気づかないうちに重症化しているケースも少なくありません。本記事では、高齢者の熱が下がらない時に考えられる原因から、家庭でできるケア、そして医療機関を受診する目安まで、詳しく解説します。
大切なご家族の健康を守るためにも、ぜひ参考にしてください。
高齢者の発熱、なぜ熱が下がりにくいのか?

高齢者の体は、若い頃とは異なり、体温調節機能や免疫機能が低下しているため、発熱の仕方に特徴があります。そのため、熱が下がりにくかったり、症状が分かりにくかったりすることが少なくありません。
高齢者の体温調節機能の特徴
加齢に伴い、高齢者は体温を一定に保つための機能が低下します。具体的には、暑さを感じにくくなったり、汗をかく量が減ったり、血流を増やして熱を放出する働きが遅くなったりします。 このため、体内に熱がこもりやすく、一度上がった熱がなかなか下がらないという状況が起こりやすいのです。また、平熱自体が若い頃よりも低い傾向にあるため、微熱程度でも体にとっては大きな負担になっている可能性があります。
発熱時の症状が分かりにくい理由
高齢者の発熱は、若い世代のように高熱が出にくいことが特徴です。 免疫機能の低下により、細菌やウイルスに対する体の反応が鈍くなるため、病気が進行していても熱が上がらない、あるいは微熱程度で経過することがよくあります。 「いつもより元気がない」「食欲がない」「ぼんやりしている」といった、一見すると発熱とは結びつきにくい症状が、実は重い病気のサインであることも少なくありません。
家族や周囲の人が日頃から高齢者の様子をよく観察し、わずかな変化にも気づくことが大切です。
熱が下がらない時に考えられる主な原因

高齢者の熱が下がらない場合、様々な原因が考えられます。感染症が最も一般的ですが、感染症以外の要因も考慮に入れる必要があります。
感染症による発熱
高齢者は免疫力が低下しているため、様々な感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。 熱が下がらない場合、以下のような感染症が原因となっている可能性があります。
肺炎や気管支炎
肺炎は高齢者の死因の上位を占める深刻な病気です。 高齢者の肺炎は、発熱や咳、痰といった典型的な症状が出にくいことが多く、微熱や食欲不振、倦怠感などの症状で進行することがあります。 特に、飲み込む力が弱くなることで起こる誤嚥性肺炎は、高齢者に多く見られます。 「いつもより元気がない」「口数が少ない」といった変化にも注意が必要です。
尿路感染症
尿路感染症も高齢者に多い感染症の一つです。 免疫力の低下や膀胱の機能低下、尿路の構造的変化などが原因で起こりやすくなります。 排尿時の痛みや頻尿、尿の混濁などの症状が一般的ですが、高齢者の場合はこれらの症状が目立たず、発熱や悪寒、全身の倦怠感のみが現れることもあります。 腎盂腎炎に進行すると、高熱や腰痛を伴うこともあります。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症も、高齢者にとっては重症化しやすい感染症です。 高熱や関節痛、倦怠感などの全身症状が突然現れることが多いですが、高齢者の場合は症状が軽微であったり、微熱が続いたりすることもあります。 合併症として肺炎を引き起こすリスクも高いため、注意が必要です。
その他の感染症(胆嚢炎、蜂窩織炎など)
上記以外にも、胆嚢炎や蜂窩織炎(ほうかしきえん)など、様々な感染症が高齢者の発熱の原因となることがあります。原因不明の熱が続く場合は、感染症の可能性を広く考慮し、医療機関での詳しい検査が必要です。
感染症以外の原因
発熱の原因は感染症だけではありません。高齢者の場合、以下のような感染症以外の要因で熱が下がらないこともあります。
脱水症状
高齢者は体内の水分量が少なく、喉の渇きを感じる機能も低下しているため、脱水症状になりやすい傾向があります。 脱水症状は、体温調節機能の低下を招き、発熱を引き起こすことがあります。 微熱や倦怠感、口の渇き、尿量の減少などが主な症状です。 特に夏場だけでなく、冬場でも「かくれ脱水」には注意が必要です。
薬剤熱
服用している薬の副作用として発熱が起こることがあります。これを薬剤熱と呼びます。 新しい薬を飲み始めた後や、薬の量が変わった後に熱が続く場合は、薬剤熱の可能性も考慮し、医師や薬剤師に相談しましょう。
膠原病や悪性腫瘍
関節リウマチなどの膠原病や、がんなどの悪性腫瘍も、発熱の原因となることがあります。 これらの病気による発熱は、微熱が長く続いたり、原因が特定しにくい「不明熱」として現れたりすることがあります。 発熱以外の症状にも目を向け、総合的に判断することが重要です。
高齢者の発熱で特に注意すべき危険なサイン

高齢者の発熱は、重篤な病気のサインであることがあります。特に以下の症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診する、あるいは救急車を呼ぶなどの緊急対応が必要です。
意識レベルの変化や言動の異常
「ぼんやりしている」「呼びかけへの反応が鈍い」「いつもと違う言動がある」「意識が朦朧としている」といった意識レベルの変化は、脳への影響や重度の感染症、脱水症などが考えられ、非常に危険なサインです。 速やかに医療機関を受診してください。
呼吸困難や胸の痛み
息苦しさを訴える、呼吸が速い、浅い、胸に痛みがあるといった症状は、肺炎や心臓の病気など、命に関わる状態の可能性があります。 特に、咳や痰がなくても呼吸が苦しそうであれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
水分が摂れない、食欲不振が続く
発熱時は脱水になりやすいため、水分補給が非常に重要です。 しかし、高齢者の中には、食欲不振や吐き気で水分を十分に摂れない方もいます。 水分が摂れない状態が続くと、脱水症状が急速に悪化し、意識障害などを引き起こす危険性があります。 無理にでも水分を摂らせる工夫が必要です。
全身状態の悪化
「顔色が悪い」「ぐったりしている」「元気がない」「体が冷たい」など、全体的に状態が悪化していると感じる場合は、重篤な状態に陥っている可能性があります。 高齢者の場合、症状が急変することもあるため、少しでも異変を感じたら、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
熱が下がらない高齢者への家庭でのケアと注意点

熱が下がらない高齢者への家庭でのケアは、症状の緩和と悪化の予防が目的です。医療機関を受診するまでの間や、軽症の場合に、以下の点に注意して対応しましょう。
水分補給の重要性
発熱時は体から水分が失われやすいため、脱水症状を防ぐためにこまめな水分補給が欠かせません。 水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク、薄めた野菜ジュースなどもおすすめです。 一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ頻繁に与えるようにしましょう。喉の渇きを感じにくい高齢者には、時間を決めて声かけをするなどの工夫も有効です。
快適な環境作りと体温調節
室温は快適な温度に保ち、湿度も適切に調整しましょう。 汗をかいている場合は、こまめに着替えさせ、体を清潔に保つことが大切です。熱が高くてつらそうな場合は、首や脇の下、足の付け根などを冷やすと楽になることがあります。 しかし、寒がっている場合は無理に冷やさず、温かくしてあげましょう。本人が快適に感じることを優先することが大切です。
食事の工夫と栄養補給
食欲がない場合でも、栄養を摂ることは体力維持に重要です。消化しやすく、のどごしの良いものを選びましょう。例えば、おかゆ、うどん、ゼリー、プリン、スープなどがおすすめです。 少量でも良いので、食べられるものを無理なく与えるようにしてください。栄養補助食品を活用するのも一つの方法です。
清潔保持と皮膚ケア
発熱時は汗をかきやすく、皮膚が汚れやすくなります。体を拭いたり、着替えさせたりして、清潔を保ちましょう。特に寝たきりの場合は、褥瘡(じょくそう)の予防のためにも、皮膚の状態をこまめに確認し、保湿ケアを行うことが大切です。口腔ケアも感染症予防に繋がります。
病院を受診する目安と緊急時の対応

高齢者の発熱は、自己判断が難しい場合が多く、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。特に注意すべきケースと、緊急時の対応について解説します。
すぐに医療機関を受診すべきケース
以下のような症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 38℃以上の高熱が続く、または急激に熱が上がった場合
- 意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い、言動がおかしいなど、意識レベルの変化がある場合
- 呼吸が苦しい、息切れがする、胸の痛みがある場合
- 水分が全く摂れない、尿の量が極端に少ない、または出ない場合
- ひどい頭痛や吐き気、嘔吐が続く場合
- 全身の倦怠感が強く、ぐったりしている場合
- けいれんを起こしている場合
- 持病が悪化しているように見える場合
これらの症状は、重篤な病気のサインである可能性が高いため、迷わず受診を検討しましょう。
かかりつけ医への相談と情報共有
普段から高齢者の健康状態を把握しているかかりつけ医がいる場合は、まずは電話で相談するのが良いでしょう。症状や経過を正確に伝え、指示を仰ぐことが大切です。受診する際は、いつから熱が出ているか、他にどのような症状があるか、服用している薬、既往歴などをまとめて伝えると、スムーズな診断に繋がります。
救急車を呼ぶべき状況
以下のような場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
- 意識がない、または意識が朦朧として呼びかけに全く反応しない場合
- 呼吸が停止している、または非常に苦しそうで、顔色が悪く唇が紫色になっている場合
- 全身のけいれんが止まらない場合
- 大量の吐血や下血がある場合
- 頭を強く打った後に意識障害がある場合
救急車を呼ぶことに躊躇せず、命を最優先に行動しましょう。
高齢者の発熱を予防するための日頃の対策

高齢者の発熱は重症化しやすいため、日頃からの予防が非常に重要です。免疫力を高める生活習慣や感染症対策を徹底し、健康な毎日を送りましょう。
免疫力を高める生活習慣
免疫力は加齢とともに低下しがちですが、日々の生活習慣で高めることが可能です。
- バランスの取れた食事: 肉、魚、卵、大豆製品などの良質なたんぱく質、野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルを積極的に摂りましょう。 特に、発酵食品や抗酸化作用のある食材もおすすめです。
- 十分な睡眠: 質の良い睡眠は免疫力を維持するために不可欠です。
- 適度な運動: 無理のない範囲で体を動かすことで、血行が促進され、免疫機能の向上に繋がります。
- ストレス管理: ストレスは免疫力を低下させる要因となるため、趣味やリラックスできる時間を持つことが大切です。
これらの生活習慣を継続することで、病気にかかりにくい体作りを目指しましょう。
予防接種の活用
高齢者に推奨される予防接種を積極的に活用することで、感染症の発症や重症化のリスクを減らすことができます。
- インフルエンザワクチン: 毎年接種が推奨されています。
- 肺炎球菌ワクチン: 重症肺炎の予防に有効です。
- 帯状疱疹ワクチン: 痛みを伴う合併症の予防に役立ちます。
- 新型コロナウイルスワクチン: 必要に応じて接種を検討しましょう。
かかりつけ医と相談し、ご自身の体調や既往歴に合わせた接種計画を立てることが大切です。
感染症対策の徹底
日頃から感染症対策を徹底することで、発熱の原因となる病気にかかるリスクを減らせます。
- 手洗い・うがい: 外出後や食事前には、石鹸を使った丁寧な手洗いと、うがいを習慣にしましょう。
- マスクの着用: 人混みや体調がすぐれない時には、マスクを着用して飛沫感染を防ぎましょう。
- 換気: 定期的に部屋の換気を行い、室内の空気を入れ替えましょう。
- 口腔ケア: 口腔内を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防にも繋がります。
家族や周囲の人も一緒に感染症対策に取り組むことが、高齢者を守ることに繋がります。
よくある質問

- 高齢者の熱が下がらないのはなぜですか?
- 高齢者の発熱で病院に行く目安は?
- 高齢者の微熱が続くのはなぜ?
- 高齢者の発熱でやってはいけないことは?
- 高齢者の発熱は何日で治る?
- 高齢者の発熱で食欲がない時は?
- 高齢者の発熱で意識が朦朧とするのは?
- 高齢者の発熱で脱水症状を防ぐには?
高齢者の熱が下がらないのはなぜですか?
高齢者は体温調節機能や免疫機能が低下しているため、熱が上がりにくく、一度上がった熱も下がりにくい傾向があります。また、病気が進行していても高熱が出ないことも少なくありません。
高齢者の発熱で病院に行く目安は?
38℃以上の高熱が続く、意識がぼんやりしている、呼吸が苦しい、水分が摂れない、全身状態が悪いなどの症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。微熱でも「いつもと違う」と感じたら、早めの受診が大切です。
高齢者の微熱が続くのはなぜ?
高齢者は免疫機能の低下により、病気にかかっても高熱が出ずに微熱が続くことがあります。肺炎や尿路感染症、脱水症状、薬剤熱、膠原病、悪性腫瘍など、様々な原因が考えられます。
高齢者の発熱でやってはいけないことは?
自己判断で解熱剤を使用することは避けましょう。 無理に食事を摂らせたり、体を冷やしすぎたりするのも良くありません。本人の状態をよく観察し、快適に過ごせるように配慮し、必要に応じて医療機関を受診することが重要です。
高齢者の発熱は何日で治る?
発熱の原因や高齢者の体力によって異なります。風邪などの軽症であれば数日で治まることもありますが、肺炎や尿路感染症などの場合は治療に時間がかかることがあります。熱が長引く場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
高齢者の発熱で食欲がない時は?
食欲がない場合でも、脱水症状を防ぐために水分補給を最優先しましょう。 消化しやすく、のどごしの良いおかゆやスープ、ゼリーなどを少量ずつ与える工夫をしてください。栄養補助食品の活用も有効です。 食欲不振が続く場合は、医師に相談しましょう。
高齢者の発熱で意識が朦朧とするのは?
意識が朦朧としている場合は、重度の脱水症状、重症感染症、脳の病気など、命に関わる状態の可能性があります。 非常に危険なサインなので、ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。
高齢者の発熱で脱水症状を防ぐには?
喉の渇きを感じにくいため、時間を決めてこまめに水分を摂るように促しましょう。 水やお茶だけでなく、経口補水液なども活用し、快適な室温を保つことも大切です。 尿の色や口の乾燥状態をチェックして、脱水のサインを見逃さないようにしましょう。
まとめ
- 高齢者の発熱は体温調節機能や免疫機能の低下により、症状が分かりにくいことがあります。
- 微熱でも重篤な病気が隠れている可能性があるので注意が必要です。
- 熱が下がらない主な原因は、肺炎や尿路感染症などの感染症が多いです。
- 脱水症状や薬剤熱、膠原病、悪性腫瘍なども発熱の原因となることがあります。
- 意識の変化、呼吸困難、水分が摂れないなどの危険なサインを見逃さないでください。
- 家庭でのケアでは、こまめな水分補給と快適な環境作りが大切です。
- 消化の良い食事で栄養を摂り、清潔を保つことも重要です。
- 危険なサインが見られたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
- かかりつけ医への相談や情報共有を密に行うことが大切です。
- 意識障害や呼吸停止など、緊急性の高い場合は迷わず救急車を呼んでください。
- 日頃からバランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動で免疫力を高めましょう。
- インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種も積極的に活用してください。
- 手洗い、うがい、マスク着用、換気などの感染症対策を徹底しましょう。
- 家族や周囲の人が高齢者の体調変化に気づくことが、早期発見・早期対応に繋がります。
- 高齢者の発熱は、常に慎重な対応が求められます。
