「あれ、床に小さな穴が…?」「家具の周りに、きな粉みたいな粉が落ちている…」もし、そんな経験があるなら、それはキクイムシの仕業かもしれません。見慣れない虫の被害に、どうすればいいのか不安になりますよね。もしかしたら、そのうち自然にいなくなるかも…なんて淡い期待を抱いていませんか?残念ながら、その期待は禁物です。本記事では、キクイムシが決して自然にはいなくならない理由と、ご自身でできる駆除方法、そして再発を防ぐための予防策まで、詳しく解説していきます。
キクイムシは自然にいなくなる?放置するリスクとは

結論から言うと、キクイムシが自然にいなくなることは、ほぼありません。「虫の寿命は短いはず」と油断していると、被害はどんどん深刻化してしまいます。なぜ放置してはいけないのか、その理由をしっかり理解しておきましょう。
- 成虫の寿命は短いが幼虫が木材内部で長期間活動
- 放置すると被害が拡大!家具や家がボロボロに
- 賃貸物件での責任問題に発展する可能性も
成虫の寿命は短いが幼虫が木材内部で長期間活動
キクイムシの成虫の寿命は3〜5週間ほどと、確かに長くはありません。 しかし、問題なのはその一生です。成虫は木材の表面に産卵し、孵化した幼虫は木材の内部で約10ヶ月もの長い期間を過ごしながら、木を食べて成長します。 つまり、目に見える成虫がいなくなったとしても、木材の中では無数の幼虫が着々と食害を進めているのです。そして翌年の春から夏にかけて、成長した幼虫が成虫となって木材から出てきて、また産卵を繰り返す…この悪循環が続いてしまうのです。
放置すると被害が拡大!家具や家がボロボロに
キクイムシの被害を放置すると、どうなるのでしょうか。最初は数個だった小さな穴が、年々増えていきます。 1匹のメスが生涯に産む卵の数は約50個とも言われ、世代交代を繰り返すうちに、被害は家中の木製家具やフローリング、柱などに広がっていきます。 表面上は小さな穴でも、内部はスカスカの状態になり、家具の強度が著しく低下してしまいます。大切にしているアンティーク家具や、家の構造に関わる部分まで被害が及ぶと、修復が困難になったり、高額な修繕費用が必要になったりするケースも少なくありません。
賃貸物件での責任問題に発展する可能性も
もしお住まいが賃貸物件の場合、キクイムシの被害を放置すると、退去時に原状回復費用を請求される可能性があります。害虫の発生は、多くの場合、入居者の「善管注意義務(善良な管理者の注意をもって管理する義務)」違反と見なされることがあるためです。被害が小さいうちに対処すれば簡単な修繕で済みますが、放置して被害を拡大させてしまうと、高額な修繕費用を負担しなければならない事態にもなりかねません。被害に気づいたら、すぐに大家さんや管理会社に相談することが重要です。
もしかしてキクイムシ?被害のサインを見分ける3つのポイント

「この穴、本当にキクイムシかな?」と確信が持てない方もいるでしょう。キクイムシの被害には特徴的なサインがあります。シロアリなど他の害虫と見分けるためにも、以下の3つのポイントをチェックしてみてください。
- 1〜2mmの小さな穴
- きな粉のような細かい木くず
- 成虫の発見(5月〜8月頃)
1〜2mmの小さな穴
キクイムシの被害で最も分かりやすいのが、木材の表面に開いた小さな丸い穴です。これは、木材の内部で成長した成虫が外に脱出する時に開けた「脱出孔」です。穴の大きさは直径1〜2mm程度で、まるで画鋲を刺したような見た目をしています。 フローリングや家具、柱、壁などにこのような穴がポツポツと複数見つかったら、キクイムシの存在を強く疑いましょう。
きな粉のような細かい木くず
穴の周りや真下に、きな粉や小麦粉のように非常に細かい、サラサラとした木くずが落ちていませんか?これは「フラス」と呼ばれ、幼虫が木材を食べた際の食べかすとフンが混ざったものです。 シロアリの被害では土を含んだり湿っていたりすることが多いですが、キクイムシのフラスは乾燥しているのが特徴です。掃除してもまた同じ場所に粉が溜まっている場合は、現在進行形で被害が続いている証拠です。
成虫の発見(5月〜8月頃)
キクイムシの成虫は、気温と湿度が高くなる5月〜8月頃に発生のピークを迎えます。 体長は3〜8mmほどで、茶褐色や黒褐色の細長い甲虫です。 夜行性のため、夜になると室内を飛び回っていることもあります。もし家の中でこのような虫を見かけたら、どこから発生しているのか、家具や床などを注意深く調べてみてください。成虫の死骸が落ちていることも、被害発見のきっかけになります。
自分でできる!キクイムシの駆除方法

被害がまだ部分的で、穴の数も少ない初期段階であれば、ご自身で駆除することも可能です。ただし、木材内部に潜む幼虫までしっかりと退治することが重要です。正しい手順で、確実な駆除を目指しましょう。
- 準備するもの
- 駆除の手順
- おすすめの殺虫剤
- 駆除作業の注意点
準備するもの
自分で駆除を行う場合、以下のものを準備しましょう。
- キクイムシ用殺虫剤(エアゾールタイプ):穴に直接薬剤を注入できるよう、細いノズルが付いているものが必須です。
- 掃除機:木くずを吸い取るために使います。
- マスキングテープや養生シート:薬剤が周囲に飛び散らないように保護します。
- 木工用パテや爪楊枝:処理後に穴を塞ぐために使います。
- 手袋、マスク、ゴーグル:薬剤を吸い込んだり、肌に付着したりするのを防ぎます。
駆除の手順
準備が整ったら、以下の手順で駆除作業を進めましょう。
- 被害箇所の特定と清掃:キクイムシの穴と、その周りの木くずを特定します。まずは掃除機で木くずをきれいに吸い取ってください。
- 殺虫剤の注入:殺虫剤の細いノズルを、キクイムシの穴の奥までしっかりと差し込み、薬剤を注入します。 薬剤が逆流してくるくらい、数秒間しっかりと噴射するのがコツです。
- 周辺への噴霧:被害箇所の周辺の隙間(幅木の下や部材の接合部など)にも、予防のために殺虫剤を噴霧しておきましょう。
- 繰り返し処理:一度の処理では、内部の幼虫全てに薬剤が届かない可能性があります。1時間ほど時間を置いてから、同じ作業を2〜3回繰り返すとより効果的です。
- 穴を塞ぐ:駆除が終わったら、木工用パテや爪楊枝を折ったもので穴を塞ぎます。 これにより、新たなキクイムシの侵入や産卵を防ぐとともに、処理済みの穴と新しい穴を見分ける目印になります。
おすすめの殺虫剤
市販されている殺虫剤の中でも、キクイムシ駆除に効果的なものをいくつかご紹介します。
商品名 | 特徴 |
---|---|
キクイムシコロリ(吉田製油所) | キクイムシ専用に開発された殺虫剤。金属製の特殊ノズルで、小さな穴にも確実に薬剤を注入できます。防腐・防カビ効果も期待できます。 |
虫コロリアース(アース製薬) | 多くの害虫に効果があり、キクイムシにも有効です。すき間ノズルが付属しており、穴への注入も可能です。 |
エバーウッドP-400(住化エンバイロメンタルサイエンス) | プロも使用する業務用に近い殺虫剤。木材防腐剤としても効果が高く、予防効果も持続します。針ノズルで的確に注入できます。 |
駆除作業の注意点
ご自身で駆除作業を行う際は、安全に十分配慮してください。まず、作業中は必ず換気を行いましょう。薬剤を吸い込まないように、マスクやゴーグルの着用も忘れないでください。また、小さなお子様やペットがいるご家庭では、作業中や作業後に薬剤に触れることがないよう、別の部屋に移動してもらうなどの配慮が必要です。 使用する殺虫剤の注意書きをよく読み、正しく使用することが大切です。
自分での駆除は難しい?プロの業者に依頼するケース

DIYでの駆除は手軽ですが、限界もあります。場合によっては、専門の駆除業者に依頼する方が確実で安心です。どのような場合にプロを頼るべきか、その判断基準を解説します。
- 被害が広範囲に及んでいる場合
- 自分で駆除しても再発する場合
- 賃貸物件で原状回復義務がある場合
被害が広範囲に及んでいる場合
キクイムシの穴が数十個以上見つかる、複数の家具や部屋に被害が広がっているなど、被害が広範囲に及んでいる場合は、自分での完全な駆除は非常に困難です。 見えている穴以外にも、木材内部には無数の幼虫が潜んでいる可能性が高く、市販の殺虫剤だけでは対応しきれません。このような場合は、迷わずプロに相談しましょう。
自分で駆除しても再発する場合
一度は自分で駆除したはずなのに、翌年また同じ場所や別の場所から木くずが出てきたというケースも、業者への依頼を検討すべきサインです。 これは、前回の駆除で木材内部の幼虫を根絶できていなかった証拠です。プロは専門的な薬剤や機材を使用し、見えない部分に潜む害虫まで徹底的に駆除してくれます。
賃貸物件で原状回復義務がある場合
前述の通り、賃貸物件でキクイムシの被害を発見した場合は、まず大家さんや管理会社に報告・相談するのが基本です。自己判断で対処すると、かえって被害を広げてしまったり、退去時にトラブルになったりする可能性があります。専門業者による確実な駆除と、施工証明書の発行が、後のトラブルを避けるためにも重要になります。
キクイムシ駆除を業者に依頼した場合の費用相場と選び方

プロに頼むとなると、気になるのが費用ですよね。ここでは、駆除費用の相場と、後悔しないための信頼できる業者の選び方についてご紹介します。
- 駆除費用の目安
- 信頼できる業者の選び方3つのポイント
駆除費用の目安
キクイムシ駆除の費用は、被害の範囲や状況によって大きく変動しますが、一般的な相場は10平方メートルあたり10,000円〜30,000円程度です。 ただし、これはあくまで目安であり、被害が深刻な場合や、燻蒸処理など特殊な作業が必要な場合は、さらに高額になることもあります。
被害レベル | 費用目安 | 作業内容の例 |
---|---|---|
軽度(家具1点など) | 約20,000円~50,000円 | 薬剤注入処理、表面塗布処理 |
中度(フローリングの一部など) | 約50,000円~120,000円 | 広範囲の薬剤注入、防虫コーティング |
重度(家全体など) | 100,000円以上 | 燻蒸処理、場合によっては建材の交換 |
正確な料金を知るためには、必ず複数の業者から見積もりを取り、作業内容と料金を比較検討することが大切です。
信頼できる業者の選び方3つのポイント
悪質な業者に引っかからないために、以下の3つのポイントをチェックして、信頼できる業者を選びましょう。
- 見積もりが明確か:作業内容の内訳がきちんと記載されており、追加料金の有無についても事前に説明してくれる業者を選びましょう。 「一式」などと曖昧な表記しかない見積もりには注意が必要です。
- 実績と専門知識は豊富か:キクイムシ駆除の実績が豊富で、害虫の生態に詳しい専門家が在籍しているかを確認しましょう。公式サイトの施工事例や、保有資格などをチェックするのも有効です。
- 保証やアフターサービスは充実しているか:キクイムシは再発のリスクがある害虫です。駆除後の保証期間(半年〜1年以上が目安)が設けられているか、再発した場合にどのような対応をしてくれるのかを契約前に必ず確認しましょう。
二度と発生させない!キクイムシの徹底予防策

一度駆除しても、安心はできません。キクイムシが好む環境をなくし、二度と寄せ付けないための予防策を徹底することが、家と家具を守る上で最も重要です。
- 殺虫剤を木材表面に塗布する
- ニスや塗料で表面を保護する
- キクイムシが好まない木材を選ぶ
- 室内の湿度管理を徹底する
殺虫剤を木材表面に塗布する
予防策として、木材の表面に予防効果のある殺虫剤や木材防腐剤を塗布する方法があります。 これにより、成虫が木材の表面に産卵するのを防ぐことができます。特に、家具の裏側や引き出しの内部など、塗装されていない部分に処理しておくと効果的です。
ニスや塗料で表面を保護する
キクイムシのメスは、木材の導管(水分が通る管)に産卵管を差し込んで卵を産み付けます。そのため、ニスや塗料で木材の表面をコーティングしてしまえば、産卵管を差し込むことができなくなり、物理的に産卵を防ぐことができます。 新しい木製家具を購入した際は、無塗装の部分がないかチェックし、必要であれば塗装を施しましょう。
キクイムシが好まない木材を選ぶ
キクイムシは、幼虫の栄養源となるデンプンを多く含む広葉樹(ラワン、ナラ、ケヤキ、キリなど)を好みます。 一方で、デンプンが少なく、導管のない針葉樹(スギ、ヒノキなど)はほとんど食害しません。 これから家具を購入する際や、家を建てる際には、使用されている木材の種類を意識して選ぶことも、有効な予防策の一つです。
室内の湿度管理を徹底する
キクイムシは、湿度の高い環境を好みます。特に梅雨の時期は活動が活発になるため、注意が必要です。定期的に窓を開けて換気したり、除湿機やエアコンのドライ機能を活用したりして、室内の湿度を低く保つことを心がけましょう。 風通しを良くし、木材が湿気を含まないようにすることが、キクイムシにとって住みにくい環境を作ることにつながります。
よくある質問

Q. キクイムシは人体に害はありますか?
A. キクイムシが人を刺したり咬んだりすることはなく、直接的な健康被害はありません。 ただし、キクイムシのフンや死骸がアレルギーの原因(アレルゲン)となる可能性は指摘されています。また、キクイムシの被害を受けた木材に、二次的にカビが発生することもあります。
Q. キクイムシとシロアリの違いは何ですか?
A. キクイムシとシロアリは、どちらも木材を食害する害虫ですが、いくつかの違いがあります。キクイムシは甲虫の仲間で、主に乾燥した広葉樹を食害し、1〜2mmの小さな穴と乾いた木くずを出します。一方、シロアリはゴキブリに近い昆虫で、湿った木材を好み、建物の土台など構造部分に深刻な被害を与えます。被害箇所には土で固めた「蟻道(ぎどう)」を作ることが特徴です。
Q. 新築なのにキクイムシが発生するのはなぜですか?
A. キクイムシの被害は、実は新築から2〜3年以内の家で最も多く発生します。 これは、建築に使用された建材やフローリング材に、製造・加工段階で卵が産み付けられていたり、幼虫が潜んでいたりすることが原因です。 家が建ってから孵化・成長し、成虫となって出てくるため、新築なのに被害が発生するという現象が起こるのです。
Q. 燻煙・燻蒸タイプの殺虫剤は効果がありますか?
A. バルサンのような燻煙・燻蒸タイプの殺虫剤は、室内にいる成虫を駆除するには効果があります。しかし、木材の内部にいる幼虫には薬剤が届かないため、根本的な解決にはなりません。 キクイムシ駆除の基本は、穴に直接薬剤を注入する方法です。
Q. キクイムシの穴の大きさはどれくらいですか?
A. 一般的なヒラタキクイムシの場合、成虫が脱出する際に開ける穴の大きさは直径1mm〜2mm程度です。 非常に小さいですが、この穴と、そこから出るきな粉のような木くずが、被害を発見する重要な手がかりとなります。
まとめ

- キクイムシは放置しても自然にはいなくならない。
- 成虫の寿命は短いが、幼虫が木材内部で長期間食害する。
- 放置すると被害が拡大し、家具や家がボロボロになる。
- 被害のサインは「1〜2mmの穴」と「きな粉状の木くず」。
- 初期被害なら、ノズル付き殺虫剤でDIY駆除が可能。
- 駆除の際は、穴に直接薬剤を注入するのが基本。
- 被害が広範囲な場合や再発する場合は、プロの業者に相談する。
- 業者費用の相場は10㎡あたり1万円~3万円程度。
- 業者選びは「明確な見積もり」「実績」「保証」が重要。
- 予防には、木材表面の塗装や殺虫剤塗布が効果的。
- ニスや塗料でコーティングすると産卵を防げる。
- キクイムシは広葉樹を好み、針葉樹はあまり食べない。
- 室内の湿度管理を徹底し、風通しを良くすることが予防になる。
- キクイムシは人を刺さないが、フンがアレルゲンになる可能性はある。
- 新築の家で発生するのは、建材に潜んでいたことが原因。