大切に育てている庭木やバラ、イチジクの元気がない…。もしかしたら、それはカミキリムシの仕業かもしれません。木の幹に穴を開け、内部を食い荒らすカミキリムシは、放置すると木を枯らしてしまう恐ろしい害虫です。そんなカミキリムシの駆除に「オルトラン」が効くという話を聞いたことはありませんか?
本記事では、カミキリムシ駆除におけるオルトランの効果や、その正しい使い方を徹底的に解説します。厄介な幼虫(テッポウムシ)への対処法から、二度とカミキリムシを寄せ付けないための予防策まで、あなたのガーデニングライフを守るための情報を詳しくお届けします。
結論:カミキリムシ駆除にオルトランは使える!ただし使い方にコツあり

早速結論からお伝えすると、オルトランはカミキリムシの駆除に有効な薬剤の一つです。しかし、成虫と幼虫では生態が異なるため、その効果を最大限に引き出すには、それぞれの状況に合わせた使い方をすることが重要になります。
この章では、なぜオルトランがカミキリムシに効くのか、そしてどのように使い分けるべきかを解説します。
- オルトランの「浸透移行性」がカミキリムシに効く理由
- 成虫と幼虫(テッポウムシ)で効果的な使い方は違う
- オルトランの種類(粒剤・水和剤)と選び方
オルトランの「浸透移行性」がカミキリムシに効く理由
オルトランが多くの害虫に効果を発揮する最大の理由は、その「浸透移行性」という性質にあります。 浸透移行性とは、薬剤の有効成分が植物の根や葉から吸収され、植物の隅々まで行き渡る性質のことです。
これにより、薬剤が直接かからなかった場所に隠れている害虫や、植物の内部に潜んでいる害虫も、その植物を食べたり汁を吸ったりすることで退治できるのです。 カミキリムシの幼虫は木の幹の内部に潜んで食害を進めるため、通常の散布タイプの殺虫剤では薬剤が届きにくいという弱点があります。しかし、浸透移行性を持つオルトランであれば、植物全体が殺虫成分を持つようになり、内部の幼虫にも効果が期待できるというわけです。
成虫と幼虫(テッポウムシ)で効果的な使い方は違う
カミキリムシの被害を食い止めるには、成虫と幼虫、両方への対策が必要です。それぞれ活動場所や生態が異なるため、オルトランの使い方も変えるのが効果的です。
成虫対策
成虫は主に5月〜7月頃に活動し、木の表面をかじったり、産卵したりします。 活発に飛び回る成虫には、即効性のある水和剤を直接散布するのがおすすめです。また、粒剤を株元に撒いておくことで、葉や枝を食べた成虫を駆除する効果も期待できます。
幼虫(テッポウムシ)対策
一方、幼虫は木の内部に潜んでいるため、直接薬剤をかけることが困難です。 ここで活躍するのが、オルトランの浸透移行性です。株元に粒剤を撒くことで、有効成分が木全体に行き渡り、内部で食害している幼虫を駆除します。 幼虫の活動が活発になる前に予防的に散布しておくことが、被害を最小限に抑えるコツです。
オルトランの種類(粒剤・水和剤)と選び方
オルトランには、主に「粒剤」と「水和剤」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、目的に合わせて選びましょう。
GFオルトラン粒剤
- 特徴: 土にパラパラと撒くだけで手軽に使える。効果が約2〜3週間持続する。
- 向いている使い方: 予防、持続的な効果を期待する場合、幼虫対策。
- 販売会社: 住友化学園芸(2025年7月1日よりKINCHO園芸株式会社に社名変更)
GFオルトラン水和剤
- 特徴: 水に薄めてスプレーなどで散布する。即効性が高く、直接害虫を狙い撃ちできる。
- 向いている使い方: 目の前の成虫をすぐに駆除したい場合。
- 販売会社: 住友化学園芸(2025年7月1日よりKINCHO園芸株式会社に社名変更)
基本的には、手軽で予防効果も高い「粒剤」を定期的に使用し、成虫を見つけた際には「水和剤」で対処するという使い分けがおすすめです。
【実践】オルトランを使ったカミキリムシの具体的な駆除方法

オルトランがカミキリムシに有効であることが分かったところで、次は具体的な使い方を見ていきましょう。正しい方法で使わなければ、せっかくの効果も半減してしまいます。ここでは、粒剤と水和剤、それぞれの使い方と、最も厄介な幼虫への対処法を詳しく解説します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 用意するもの
- オルトラン粒剤の使い方:株元に撒くだけで予防&駆除
- オルトラン水和剤の使い方:直接散布で成虫を狙い撃ち
- 最も厄介な幼虫(テッポウムシ)への対処法
用意するもの
作業を始める前に、必要なものを準備しておきましょう。
- GFオルトラン粒剤 または GFオルトラン水和剤
- 手袋、マスク、保護メガネ: 農薬を使用する際は、体を保護するために必ず着用しましょう。
- (水和剤の場合)噴霧器(スプレーボトル): 薬剤を水で薄めて散布するために使います。
- (幼虫駆除の場合)針金、殺虫スプレー(ノズル付き): 幼虫を直接駆除する際に使用します。
オルトラン粒剤の使い方:株元に撒くだけで予防&駆除
オルトラン粒剤の使い方は非常に簡単です。予防と持続的な駆除を目的として、定期的に行いましょう。
- 散布する量を確認する: 植物の大きさや種類によって適切な使用量が異なります。製品のパッケージ裏面にある説明を必ず確認してください。
- 株元に均一に撒く: 植物の根元、幹周りの土の上にパラパラと均一に撒きます。 一箇所に固まらないように注意しましょう。
- 軽く土と混ぜる(推奨): 軽く土の表面と混ぜ合わせることで、薬剤が風で飛ばされたり、雨で流されたりするのを防ぎ、より効果が高まります。
- 水やりをする: 散布後に水やりをすることで、有効成分が土に溶け出し、根から吸収されやすくなります。
散布のタイミングは、カミキリムシの活動が始まる前の春先(4月〜5月頃)と、産卵時期の初夏(6月〜7月頃)が特に効果的です。効果の持続期間は約2〜3週間なので、定期的に散布を続けることが大切です。
オルトラン水和剤の使い方:直接散布で成虫を狙い撃ち
庭でカミキリムシの成虫を見つけたら、水和剤で素早く対処しましょう。
- 薬剤を希釈する: 製品の指示に従い、正しい倍率で水に薄めます。 濃すぎると植物に薬害が出る可能性があり、薄すぎると効果が出にくくなります。
- 噴霧器で散布する: カミキリムシの成虫に直接かかるように散布します。また、成虫がよく止まっている枝や幹、葉の裏などにもまんべんなく散布しておくと、予防効果も期待できます。
- 風のない日に行う: 薬剤が飛散しないよう、風の弱い日の朝や夕方に行うのがおすすめです。
水和剤は即効性がありますが、粒剤ほど効果は長持ちしません。あくまでも緊急的な対策として使用し、基本は粒剤での予防を心がけましょう。
最も厄介な幼虫(テッポウムシ)への対処法
木の根元におがくずのようなもの(フラス)が落ちていたら、それは幼虫が内部にいるサインです。 この状態を発見したら、オルトランの浸透移行性に頼るだけでなく、より積極的な駆除が必要です。
- 穴を特定する: おがくずを頼りに、幼虫が侵入した穴を見つけます。
- おがくずを取り除く: 穴の周りのおがくずをきれいに取り除きます。
- 物理的に駆除する: 細い針金を穴に差し込み、中の幼虫を刺殺します。 感触で判断するのは難しいですが、何度か出し入れしてみましょう。
- 殺虫剤を注入する: 針金での駆除が難しい場合や、確実を期したい場合は、ノズル付きの殺虫スプレー(カミキリムシ専用品など)を穴に差し込み、薬剤を注入します。
- 穴を塞ぐ: 駆除が終わったら、雨水や雑菌が入らないように、癒合剤や木工用ボンドなどで穴を塞いでおくと良いでしょう。
この作業と並行して、オルトラン粒剤を株元に撒いておくことで、万が一駆除しきれなかった幼虫や、他の場所に潜んでいる幼虫にも対処できます。
オルトランだけじゃない!カミキリムシの駆除方法

オルトランは非常に有効な薬剤ですが、カミキリムシ対策は薬剤だけに頼るのではなく、様々な方法を組み合わせることが成功の秘訣です。ここでは、オルトラン以外の駆除方法や、他の有効な薬剤についてご紹介します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 成虫を見つけたら!物理的な駆除方法
- 幼虫のサイン「木くず」を見つけたらやるべきこと
- オルトラン以外の有効な殺虫剤
成虫を見つけたら!物理的な駆除方法
カミキリムシの成虫は比較的大きく、動きもそれほど素早くないため、見つけ次第捕まえるのが最も確実で手っ取り早い方法です。特に活動が活発になる日中の暖かい時間帯に、庭木をよく観察してみましょう。
捕殺(ほさつ)
軍手などをはめて、直接捕まえます。カミキリムシはアゴの力が強いので、素手で捕まえるのは避けた方が無難です。 捕まえた後は、踏みつけるなどして確実に駆除してください。
叩き落とす
高い場所にいて手が届かない場合は、長い棒などで叩き落としてから駆除します。虫取り網を使うのも良い方法です。
成虫を一匹駆除することは、将来産み付けられるはずだった数十から数百の卵をなくすことにつながります。 見つけたら放置せず、すぐに対処する習慣をつけましょう。
幼虫のサイン「木くず」を見つけたらやるべきこと
前章でも触れましたが、木の根元に落ちているおがくずのようなフラスは、幼虫が内部で活動している決定的な証拠です。 これを見つけたら、被害が深刻化する前にすぐに行動を起こす必要があります。
基本的な対処法は、「針金で刺す」または「殺虫スプレーを注入する」です。
針金を使った駆除法
少し硬めの針金を用意し、フラスが出ている穴にゆっくりと差し込んでいきます。幼虫に当たると、グニュっとした感触があったり、針金の先に体液が付着したりします。穴はまっすぐとは限らないので、色々な角度から試してみることが大切です。
殺虫スプレーを使った駆除法
園芸店やホームセンターで販売されている、カミキリムシ幼虫(テッポウムシ)専用の殺虫スプレーがおすすめです。 これらの多くは細いノズルが付いており、穴の奥まで薬剤を届かせることができます。数秒間スプレーを噴射し、内部に薬剤を充満させましょう。
数日経ってもフラスの排出が止まらない場合は、幼虫がまだ生きている可能性があります。その際は、再度同じ作業を繰り返してください。
オルトラン以外の有効な殺虫剤
オルトランは優れた薬剤ですが、同じ薬剤を使い続けると害虫が抵抗性を持つ可能性があります。いくつかの薬剤をローテーションで使用することで、より効果的な防除が期待できます。カミキリムシに効果があるとされる代表的な薬剤をいくつかご紹介します。
- スミチオン乳剤: 幅広い害虫に効果がある有機リン系の殺虫剤です。カミキリムシの成虫駆除に使用できます。
- ダントツ水溶剤: 浸透移行性があり、カミキリムシにも効果が期待できます。
- 園芸用キンチョールE: ノズル付きで、カミキリムシの幼虫が潜む穴に直接薬剤を注入できるタイプです。
- ガットサイドS: 塗布タイプの殺虫剤で、木の幹に塗ることで産卵を防ぐ効果があります。
これらの薬剤を使用する際も、必ず製品ラベルの指示に従い、対象植物や使用方法を確認してください。
そもそもカミキリムシを寄せ付けない!今日からできる予防策

カミキリムシの被害に遭ってから駆除するのは大変な労力がかかります。最も理想的なのは、そもそもカミキリムシが寄り付かない環境を作ることです。日頃のちょっとした心がけで、被害のリスクを大幅に減らすことができます。
この章では、誰でも今日から始められる効果的な予防策をご紹介します。
- 産卵場所をなくす!剪定と清掃の重要性
- 物理的にガード!防虫ネットの活用
- 木を元気に保つことが最大の予防
産卵場所をなくす!剪定と清掃の重要性
カミキリムシの成虫は、弱った木や枯れ枝、傷のある場所に好んで卵を産み付けます。 つまり、産卵場所を与えないことが、最も効果的な予防策の一つなのです。
定期的な剪定
枯れている枝や、混み合って風通しが悪くなっている枝、弱々しい枝などを定期的に剪定しましょう。 これにより、カミキリムシにとって魅力的な産卵場所を減らすことができます。剪定した切り口には、癒合剤を塗っておくと、そこから菌が入ったり、害虫が侵入したりするのを防げます。
株元の清掃
木の根元に雑草が生い茂っていると、カミキリムシの成虫が隠れる場所になったり、産卵や被害の発見が遅れたりする原因になります。 株元は常にきれいな状態を保ち、風通しを良くしておくことが大切です。落ち葉などもこまめに取り除きましょう。
物理的にガード!防虫ネットの活用
特に被害を受けやすいバラやイチジク、柑橘類などの果樹には、物理的に成虫の飛来を防ぐ方法も有効です。
防虫ネットや不織布でカバーする
カミキリムシの成虫が発生する5月〜8月頃にかけて、木の幹、特に地面から50cm〜1mくらいの高さの部分に、目の細かい防虫ネットや不織布を巻き付けます。 これにより、幹に直接産卵されるのを防ぐことができます。
見た目が気になるかもしれませんが、被害を受けて木が枯れてしまうよりはずっと良いはずです。特に、まだ若くて被害を受けやすい木には効果的な方法です。
木を元気に保つことが最大の予防
結局のところ、これが最も重要かもしれません。カミキリムシは、樹勢が弱っている木を狙う傾向があります。 人間が疲れていると風邪をひきやすくなるのと同じで、木も弱っていると害虫の被害を受けやすくなるのです。
適切な水やりと施肥
植物の種類や季節に合わせて、適切な量の水やりと肥料を与え、健康な状態を保ちましょう。元気な木は、害虫に対する抵抗力も強くなります。
日当たりと風通し
日当たりが悪かったり、風通しが悪い場所では、木が弱りやすくなります。植え付けの段階で適切な場所を選ぶことが重要ですが、周りの植物を剪定するなどして、環境を改善することも考えましょう。
日頃から植物の様子をよく観察し、元気な状態を維持してあげることが、カミキリムシをはじめとする様々な病害虫から大切な木を守るための、一番の近道と言えるでしょう。
よくある質問

オルトランはどんな植物に使えますか?
GFオルトラン粒剤や水和剤は、花き類、観葉植物、野菜など、非常に幅広い植物に使用できます。 例えば、バラ、きく、ペチュニアなどの花や、トマト、きゅうり、なすなどの野菜にも登録があります。 ただし、製品によって使用できる作物が定められているため、使用前には必ず製品ラベルを確認し、ご自身の育てている植物に使用可能か確かめてください。
オルトランの効果はどのくらい続きますか?
GFオルトラン粒剤の場合、1回の散布で約2〜3週間、効果が持続します。 これは浸透移行性により、有効成分が植物内にとどまるためです。 一方、水に薄めて使うGFオルトラン水和剤は、粒剤ほどの持続期間はありませんが、即効性に優れています。害虫の発生状況に合わせて使い分けるのがおすすめです。
オルトランを使ってもカミキリムシがいなくなりません。なぜですか?
オルトランを使用しても効果が見られない場合、いくつかの原因が考えられます。
- 使用量が適切でない: 少なすぎると十分な効果が得られません。製品の指示通りの量を使いましょう。
- 幼虫が大きくなりすぎている: 幼虫が大きく成長してしまうと、薬剤が効きにくくなることがあります。この場合は、針金や専用スプレーでの直接駆除を試みてください。
- 薬剤抵抗性: 同じ薬剤を長期間使い続けると、害虫が抵抗性を持つことがあります。スミチオンなど、系統の異なる他の薬剤とのローテーションを検討してみましょう。
- 外部からの飛来: 駆除しても、近隣から新たな成虫が次々と飛来している可能性があります。薬剤での駆除と並行して、防虫ネットなどの物理的な予防策も行いましょう。
オルトランは人体やペットに安全ですか?
オルトランは農薬であり、取り扱いには注意が必要です。製品ラベルに記載されている安全使用上の注意事項を必ず守ってください。 具体的には、散布時には農薬用マスク、手袋、長袖長ズボンの作業着を着用し、薬剤を吸い込んだり、皮膚に付着したりしないようにしましょう。 また、散布中や散布当日は、子供やペットが作業場所に立ち入らないように配慮が必要です。 正しく使用すれば過度に恐れる必要はありませんが、安全対策は万全に行ってください。
カミキリムシの発生時期はいつですか?
カミキリムシの種類によって多少異なりますが、一般的に成虫は5月頃から活動を始め、6月〜8月頃に最も活発になり産卵します。 卵は約1週間で孵化し、幼虫(テッポウムシ)となって木の内部で1〜2年かけて成長します。 そのため、成虫が見られる初夏から夏にかけては特に注意が必要な時期と言えます。
まとめ

- オルトランは浸透移行性でカミキリムシに有効。
- 成虫には水和剤、幼虫・予防には粒剤が効果的。
- 粒剤は株元に撒き、水和剤は直接散布する。
- 幼虫のサインは木の根元のおがくず(フラス)。
- フラスを見つけたら針金やスプレーで直接駆除。
- 成虫は見つけ次第、手で捕まえるのが確実。
- オルトラン以外の殺虫剤との併用も有効。
- 同じ薬剤の連続使用は抵抗性を生む可能性。
- 弱った木を狙うため、剪定で健康な状態を保つ。
- 株元の雑草は隠れ家になるため清掃する。
- 防虫ネットで物理的に産卵を防ぐのも一手。
- 木を元気に育てることが最大の予防策になる。
- 農薬使用時は必ず保護具を着用し安全に配慮。
- 成虫の活動が活発な初夏は特に注意が必要。
- 正しい知識で、大切な庭木を害虫から守ろう。