指先がズキズキ痛む「ひょうそ(瘭疽)」。ささくれや深爪など、ちょっとした傷から細菌が入って化膿してしまうつらい症状ですよね。早く治したいけれど、「どの塗り薬を使えばいいの?」「そもそも市販薬で治るの?」と悩んでいませんか?
放置すると悪化して、眠れないほどの痛みになることも。この記事では、ひょうそにおすすめの市販の塗り薬から病院で処方される薬、症状を悪化させないための正しい治し方まで、あなたの疑問や不安に寄り添いながら詳しく解説していきます。
ひょうそ(瘭疽)とは?指先のつらい痛みの原因と症状

まずは、ひょうそがどのような状態なのか、なぜ起こるのかを正しく理解しましょう。原因と症状を知ることで、適切な対処ができるようになります。
この章では、以下の内容について解説します。
- ひょうその主な原因は細菌感染
- ひょうその初期症状と進行した場合の症状
ひょうその主な原因は細菌感染
ひょうそは、正式には「化膿性爪囲炎(かのうせいそういえん)」とも呼ばれ、指先の小さな傷から細菌が侵入し、感染を起こすことで発症します。 主な原因菌は、私たちの皮膚にもともと存在している黄色ブドウ球菌や連鎖球菌です。
普段は悪さをしないこれらの菌も、皮膚のバリア機能が低下すると、傷口から内部に侵入して増殖し、炎症を引き起こしてしまうのです。
ひょうその引き金となる具体的な原因には、以下のようなものがあります。
- ささくれをむしる癖
- 深爪
- 爪切りの際の小さな傷
- 手荒れや乾燥
- 水仕事が多い
- 指しゃぶり(特に乳幼児)
- マニキュアやジェルネイルの処理
- 巻き爪や陥入爪
このように、日常生活の中のささいなことが原因で、誰にでも起こりうる皮膚トラブルなのです。
ひょうその初期症状と進行した場合の症状
ひょうその症状は、進行度によって変化します。早めに気づいて対処することが、悪化させないための鍵です。
初期症状としては、爪の周りが赤く腫れ、熱っぽさを感じたり、ズキズキとした痛みが出たりします。 触れると痛みが強くなるのが特徴です。
しかし、ここで適切な処置をしないと症状は進行してしまいます。炎症がひどくなると、膿がたまって白や黄色っぽく腫れあがり、脈打つような激しい痛み(拍動痛)を感じるようになります。
さらに悪化すると、以下のような深刻な状態になる可能性もあるため注意が必要です。
- 指の関節が曲げられなくなる
- リンパ管に炎症が広がり、腕や足に赤い線が現れる(リンパ管炎)
- まれに骨にまで感染が及ぶ(骨髄炎)
「たかが指先の傷」と軽く考えず、症状が軽いうちに対処することが非常に重要です。
【市販薬】ひょうそに使える塗り薬の選び方とおすすめ3選

ひょうその初期段階であれば、市販の塗り薬で対処できる場合があります。しかし、たくさんの種類があってどれを選べばいいか迷ってしまいますよね。ここでは、市販薬を選ぶ際のポイントと、おすすめの塗り薬を具体的にご紹介します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 市販薬を選ぶ際のポイントは「抗生物質」
- おすすめ市販薬①:ドルマイシン軟膏
- おすすめ市販薬②:テラマイシン軟膏a
- おすすめ市販薬③:テラ・コートリル軟膏a
市販薬を選ぶ際のポイントは「抗生物質」
ひょうそは細菌感染症なので、薬を選ぶ上で最も重要なポイントは「抗生物質(抗菌薬)」が配合されているかどうかです。 抗生物質は、原因となっている細菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする働きがあります。
パッケージの成分表示を確認し、「抗生物質」や「抗菌薬」と記載のあるものを選びましょう。消毒薬(オロナインH軟膏など)も初期の殺菌には役立ちますが、すでに炎症が起きてしまっている場合は、抗生物質入りの塗り薬の方が効果的です。
また、赤みや腫れ、痛みが強い場合は、抗炎症成分である「ステロイド」が配合されたものを選ぶと、つらい症状を和らげるのに役立ちます。 ただし、ステロイドは長期間の使用には向かないため、5〜6日使用しても改善しない場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。
おすすめ市販薬①:ドルマイシン軟膏
ドルマイシン軟膏は、2種類の抗生物質(コリスチン硫酸塩、バシトラシン)が配合された塗り薬です。
この薬の大きな特徴は、多くの細菌に効果を発揮する点です。ひょうその原因となりやすい黄色ブドウ球菌や連鎖球菌だけでなく、グラム陰性菌などにも効果が期待できます。そのため、原因菌が特定できない初期段階のひょうそに適しています。
実際に、ささくれが悪化してひょうそになりやすい方が「膿んでズキズキする傷にかなり効果がある」と口コミを寄せている例もあります。 ステロイドは配合されていないため、比較的マイルドな使い心地です。
おすすめ市販薬②:テラマイシン軟膏a
テラマイシン軟膏aも、2種類の抗生物質(オキシテトラサイクリン塩酸塩、ポリミキシンB硫酸塩)を配合した塗り薬です。
幅広い細菌に対して優れた抗菌力を示すため、ひょうそをはじめとする化膿性の皮膚疾患に広く使用されます。 ドルマイシン軟膏と同様に、ステロイドは含まれていません。
化膿してしまった傷口の細菌増殖を防ぎ、症状の悪化を食い止める効果が期待できます。ガーゼにのばして患部に貼付する使い方も可能です。
おすすめ市販薬③:テラ・コートリル軟膏a
テラ・コートリル軟膏aは、抗生物質(オキシテトラサイクリン塩酸塩)に加えて、抗炎症成分であるステロイド(ヒドロコルチゾン)が配合されているのが特徴です。
そのため、細菌の増殖を抑えるだけでなく、ひょうそによる赤み、腫れ、痛みといったつらい炎症症状を効果的に和らげます。
「ズキズキとした痛みが強い」「赤く腫れあがっている」など、炎症が目立つ場合に特におすすめの塗り薬です。ただし、ステロイドが含まれているため、漫然とした長期使用は避け、症状が改善しない場合は速やかに医師に相談しましょう。
病院で処方されるひょうその塗り薬|市販薬との違いは?

市販薬を数日使っても良くならない、または症状がひどい場合は、自己判断を続けずに医療機関を受診することが大切です。病院では、症状に合わせてより効果的な薬が処方されます。
この章では、以下の点について解説します。
- 処方される主な塗り薬の種類
- 市販薬では治らない場合に処方されることが多い
- 症状によっては内服薬や切開排膿も
処方される主な塗り薬の種類
皮膚科などでひょうそと診断された場合、塗り薬としては抗生物質を含んだ外用薬が処方されるのが一般的です。
よく処方される塗り薬には「ゲンタシン軟膏」などがあります。 これは、市販薬には含まれていない種類の抗生物質(アミノグリコシド系)で、ひょうその原因菌に対して強い抗菌力を示します。
また、炎症の強さや原因菌の種類によっては、他の抗生物質や、抗真菌薬(カンジダが原因の場合)、抗ウイルス薬(ヘルペスが原因の場合)の塗り薬が選択されることもあります。 医師が症状を直接診察することで、最も適した成分の薬を処方してもらえるのが、病院で治療する最大のメリットです。
市販薬では治らない場合に処方されることが多い
市販の抗生物質入り塗り薬は、あくまで初期の軽度な症状を対象としています。そのため、市販薬を5〜6日使用しても一向に改善が見られない、あるいは悪化しているといった場合には、市販薬では対応できない状態になっている可能性が高いです。
考えられる理由としては、
- 市販薬の抗生物質が効かない耐性菌に感染している
- 感染が皮膚の深い部分まで及んでいる
- 細菌ではなく、カビ(真菌)やウイルスが原因である
などが挙げられます。このような場合、病院で原因を特定し、それに合った処方薬で治療する必要があります。
症状によっては内服薬や切開排膿も
ひょうその治療は、塗り薬だけとは限りません。
炎症が強い場合や、感染が広がる恐れがある場合には、塗り薬と併せて抗生物質の飲み薬(内服薬)が処方されます。 内服薬は体の中から細菌に作用するため、塗り薬だけよりも高い治療効果が期待できます。
また、膿がパンパンに溜まって痛みが非常に強いケースでは、「切開排膿(せっかいはいのう)」という処置が行われることもあります。 これは、メスや注射針で皮膚を小さく切開し、中に溜まった膿を外に出す処置です。膿を出すことで内部の圧力が下がり、うそのように痛みが和らぐことが多いです。 決して自己判断で膿を潰そうとせず、必ず医師に処置してもらいましょう。
ひょうその塗り薬|正しい使い方と注意点

せっかく薬を使っても、使い方が間違っていては十分な効果が得られません。ここでは、塗り薬の効果を最大限に引き出すための正しい使い方と、知っておくべき注意点を解説します。
この章でお伝えするポイントは以下の3つです。
- 塗る前に患部を清潔にすることが大切
- 1日数回、適量を塗布する
- 5〜6日使用しても改善しない場合は病院へ
塗る前に患部を清潔にすることが大切
塗り薬を使う前に、まず患部を清潔にすることが非常に重要です。汚れたまま薬を塗っても、効果が半減するだけでなく、新たな雑菌を塗り込んでしまうことになりかねません。
石鹸をよく泡立て、ぬるま湯で優しく患部を洗い流しましょう。 ゴシゴシこすると刺激になってしまうので、泡で汚れを浮かせるようなイメージで洗うのがコツです。洗い終わったら、清潔なタオルやガーゼで水分を優しく押さえるように拭き取ります。消毒液を使う場合は、洗い流した後に使用しますが、刺激が強い場合もあるので、しみるようなら無理に使う必要はありません。
1日数回、適量を塗布する
患部がきれいになったら、いよいよ塗り薬を塗布します。
使用回数は、薬の種類によって異なりますが、市販薬の場合は1日数回とされているものがほとんどです。 商品の用法・用量を必ず確認してください。
塗る量は、患部を覆うくらいの量が目安です。少なすぎると効果が不十分になり、多すぎても効果が高まるわけではありません。清潔な綿棒に薬を取ってから塗ると、チューブの口や指を介した汚染を防げるので衛生的です。
薬を塗った後は、患部を保護するために絆創膏やガーゼを貼るのがおすすめです。 これにより、薬が衣服などについて取れてしまうのを防ぎ、外部からの刺激や雑菌からも守ることができます。
5〜6日使用しても改善しない場合は病院へ
市販の塗り薬を使用する上で、最も大切な注意点です。
市販薬を5〜6日間使用しても、症状が全く良くならない、あるいは赤みや腫れ、痛みが悪化している場合は、セルフケアの限界です。 すぐに使用を中止し、皮膚科や形成外科を受診してください。
「もう少し続ければ効くかも」と自己判断で使い続けるのは非常に危険です。治療が遅れるほど症状は悪化し、治るまでに時間がかかったり、切開などの処置が必要になったりする可能性が高まります。 早めの受診が、結果的に早く、きれいに治すことにつながります。
これは病院へ行くべき?受診の目安と診療科

「このくらいの症状で病院に行っていいのかな?」と迷うこともあるでしょう。ここでは、すぐに医療機関を受診すべき症状の目安と、何科に行けばよいのかを具体的にお伝えします。
この章のポイントは以下の2点です。
- こんな症状が出たらすぐに皮膚科を受診
- 何科を受診すればいい?皮膚科か形成外科へ
こんな症状が出たらすぐに皮膚科を受診
市販薬で様子を見るのではなく、すぐに病院を受診した方がよい危険なサインがあります。以下の症状が一つでも当てはまる場合は、自己判断せずに速やかに医師の診察を受けてください。
- ズキズキとした痛みが強く、眠れないほどである
- 患部が白や黄色っぽく、明らかに膿が溜まっている
- 指全体がパンパンに腫れあがっている
- 患部から腕や足の付け根に向かって、赤い線が伸びている(リンパ管炎の疑い)
- 発熱や悪寒など、全身の症状を伴う
- 糖尿病などの持病がある
これらの症状は、感染が広がっている、あるいは重症化しているサインです。特に糖尿病の方は感染症が悪化しやすいため、軽微な症状でも早めに受診することをおすすめします。
何科を受診すればいい?皮膚科か形成外科へ
ひょうその症状で病院に行く場合、まずは「皮膚科」を受診するのが一般的です。 皮膚の専門医が、症状を正確に診断し、適切な治療法を提案してくれます。
また、「形成外科」も選択肢の一つです。 特に、膿が溜まって切開が必要な場合や、巻き爪が原因でひょうそを繰り返している場合などは、形成外科での処置が適していることがあります。
どちらの科を受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけの皮膚科に相談してみましょう。必要に応じて、形成外科を紹介してもらうことも可能です。大切なのは、専門医に診てもらうことです。
よくある質問

Q. オロナインはひょうそに効きますか?
A. オロナインH軟膏には殺菌・消毒成分が含まれているため、ひょうそのごく初期段階で、まだ炎症が起きていない傷の消毒には役立ちます。 しかし、ひょうその主な原因である黄色ブドウ球菌などに対する強い抗菌力はなく、すでに赤く腫れて痛みが出ている状態では効果が不十分なことが多いです。 根本的な治療には、抗生物質配合の塗り薬がおすすめです。
Q. ゲンタシン軟膏はひょうそに効きますか?
A. はい、効果が期待できます。ゲンタシン軟膏は医療用の抗生物質で、ひょうその原因菌に強い抗菌作用を示します。 病院でひょうそと診断された際に処方される代表的な塗り薬の一つです。ただし、医師の処方が必要な薬なので、市販では購入できません。
Q. リンデロンはひょうそに使えますか?
A. リンデロンはステロイド外用薬で、炎症を抑える効果は非常に高いですが、抗生物質は含まれていません。細菌感染症であるひょうそに単独で使用すると、かえって細菌の増殖を助長し、症状を悪化させてしまう危険性があります。抗生物質とステロイドの両方が配合された薬(テラ・コートリル軟膏aなど)もありますが、自己判断でリンデロンを使用するのは避けるべきです。
Q. ひょうそは自然に治りますか?
A. ごく軽度の赤み程度であれば自然に治ることも稀にありますが、基本的には自然治癒は期待しない方が良いでしょう。 ひょうそは細菌感染症であり、放置すると皮膚の奥深くへ感染が広がり、悪化する可能性が高いです。 痛みや腫れがある場合は、早めに薬を使用するか、医療機関を受診することが大切です。
Q. ひょうそは何日で治りますか?
A. 症状の程度によりますが、軽症で、適切な治療(抗生物質の塗り薬や飲み薬)を開始した場合、多くは1週間から10日ほどで痛みや腫れが引いてきます。 しかし、膿が溜まって切開が必要になった場合や、治療が遅れた場合は、治るまでに2〜3週間以上かかることもあります。
Q. ひょうそを早く治す方法はありますか?
A. 早く治すためのポイントは、「早期治療」と「患部の安静」です。症状が出たらすぐに抗生物質入りの塗り薬を使い始めるか、病院を受診しましょう。また、患部を心臓より高く上げると痛みが和らぎやすくなります。水仕事などを避け、患部に刺激を与えないようにすることも大切です。膿は自分で潰さず、必ず医師に処置してもらってください。
Q. 爪の周りが化膿した場合もひょうそですか?
A. はい、その可能性が高いです。「ひょうそ」と「爪囲炎(そういえん)」はほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。 厳密には、爪の周りの炎症を「爪囲炎」、それが進行して指の腹側まで炎症が及んだ状態を「ひょうそ」と区別することもありますが、一般的には爪の周りの化膿性炎症を総称してひょうそと呼んでいます。
まとめ

- ひょうそは指先の傷からの細菌感染が原因です。
- 主な症状は赤み、腫れ、ズキズキとした痛みです。
- 市販薬は「抗生物質」配合のものを選びましょう。
- 痛みが強い場合は「ステロイド」配合薬も有効です。
- おすすめ市販薬はドルマイシン軟膏などです。
- 病院ではゲンタシン軟膏などが処方されます。
- 市販薬で5〜6日改善しない場合は病院へ行きましょう。
- 膿が溜まれば切開排膿の処置が必要なこともあります。
- 薬を塗る前は患部を清潔にすることが大切です。
- 強い痛みや膿、発熱はすぐに受診するサインです。
- 診療科は「皮膚科」または「形成外科」です。
- オロナインは初期の消毒には使えますが治療には不向きです。
- 自己判断でリンデロンを使うのは危険です。
- 自然治癒は期待せず、早期治療を心がけましょう。
- 早く治すには安静にし、自分で膿を潰さないことです。