大切に育てているヒイラギやキンモクセイの葉が、いつの間にかまだら模様になったり、穴だらけになったりしていませんか?もし、その近くでテントウムシに似た小さな虫を見かけたら、それはヘリグロテントウノミハムシの仕業かもしれません。本記事では、この厄介な害虫の正体から、効果的な駆除方法、そして来年以降の発生を防ぐための予防策まで、詳しく解説していきます。あなたの美しい庭木を守るために、正しい知識を身につけて対策を始めましょう。
その葉の被害、ヘリグロテントウノミハムシの仕業かも?

庭木の葉に現れた異変は、植物からのSOSサインです。特に、ヒイラギやモクセイ類に被害が集中している場合、ヘリグロテントウノミハムシの可能性が高まります。まずは、敵の正体を正確に把握することが、対策の第一歩となります。
この章では、以下の点について詳しく見ていきましょう。
- テントウムシにそっくり?ヘリグロテントウノミハムシの正体
- 被害の特徴と被害に遭いやすい植物
- ヘリグロテントウノミハムシの生態と発生時期
テントウムシにそっくり?ヘリグロテントウノミハムシの正体
ヘリグロテントウノミハムシは、コウチュウ目ハムシ科に分類される昆虫です。 その名の通り、見た目はテントウムシに非常によく似ています。成虫の体長は3〜4mmほどで、黒い体に赤い斑点が二つあるのが特徴です。 しかし、益虫であるテントウムシとは全く異なる、植物を食い荒らす害虫なのです。
最大の違いは、その動きにあります。危険を察知すると、ノミのようにピョンと跳ねて逃げる習性があります。 これが「ノミハムシ」という名前の由来です。また、益虫のヒメアカホシテントウなどと比べると触角が長いという特徴もあります。 幼虫は体長5mm程度の乳白色から黄白色のイモムシ状で、主に葉の内部に潜んで食害します。
被害の特徴と被害に遭いやすい植物
ヘリグロテントウノミハムシの被害は、成虫と幼虫で異なります。成虫は葉の表面を削るように食害し、葉に白い筋や小さな穴が無数に開いたような食害痕を残します。 一方、幼虫は葉の内部に潜り込み、葉肉を食べて進むため、葉の表面に茶色いケロイド状の筋や、袋状の膨らみができます。 この被害が進むと、葉は光合成ができなくなり、やがて枯れてしまいます。新芽や若い葉が特に狙われやすく、放置すると生垣全体の美観を大きく損なうことになります。
この害虫が特に好むのは、以下のようなモクセイ科の植物です。
- ヒイラギ
- ヒイラギモクセイ
- キンモクセイ
- ギンモクセイ
- ネズミモチ
- イボタノキ
これらの植物を育てている場合は、特に注意深い観察が必要です。
ヘリグロテントウノミハムシの生態と発生時期
効果的な駆除を行うためには、ヘリグロテントウノミハムシのライフサイクルを知ることが重要です。この害虫は、主に年1回発生します。
成虫は落ち葉の下などで越冬し、春(3月〜4月頃)になると活動を開始します。 樹上に現れた成虫は、ヒイラギなどの新芽や新しい葉に産卵します。卵から孵化した幼虫は、すぐに葉の内部に潜り込み、5月〜7月頃にかけて葉を食べながら成長します。 十分に成長した幼虫は、葉から出て地面に落下し、土の中で蛹になります。そして、6月下旬から7月頃に新たな成虫が羽化し、再び葉を食害し始めます。 このように、春から秋(4月〜10月)にかけて、成虫と幼虫の両方が活動し、植物に被害を与え続けるのです。
今すぐできる!ヘリグロテントウノミハムシの駆除方法

ヘリグロテントウノミハムシの発生に気づいたら、被害が手遅れになる前に、迅速に対処することが何よりも大切です。駆除方法は、農薬を使わない手軽なものから、薬剤を用いて一網打尽にするものまで様々です。ここでは、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選べるよう、具体的な駆除方法を解説します。
この章でご紹介するのは、以下の駆除方法です。
- 農薬を使わない手軽な駆除方法
- 効果てきめん!農薬を使った駆除方法
農薬を使わない手軽な駆除方法
薬剤の使用に抵抗がある方や、被害がまだ小規模な場合には、物理的な駆除が有効です。手間はかかりますが、環境への負担が少なく、安全な方法と言えるでしょう。
まず、成虫を見つけたら、地道に捕殺するのが最も確実です。ただし、前述の通り非常に素早く跳ねて逃げるため、捕獲は容易ではありません。 そこで、木の根元に袋やシートを広げ、枝を揺すって虫を振り落とす方法がおすすめです。落ちてきたところを素早く捕まえましょう。
幼虫は葉の内部にいるため、被害に遭っている葉ごと摘み取ってしまうのが最も手っ取り早い駆除方法です。 葉に茶色い筋が入っていたり、不自然に膨らんでいたりする葉を見つけたら、中に幼虫が潜んでいる可能性が高いです。摘み取った葉は、ビニール袋などに入れてしっかりと口を縛り、可燃ゴミとして処分してください。地面に放置すると、そこから成虫が羽化してしまう可能性があります。
効果てきめん!農薬を使った駆除方法
被害が広範囲に及んでいる場合や、物理的な駆除では追いつかない場合は、農薬の使用を検討しましょう。適切な薬剤を正しいタイミングで使えば、効率的に駆除することが可能です。
ヘリグロテントウノミハムシに効果のある殺虫剤としては、「スミチオン」や「オルトラン」、「ベニカ」シリーズなどが挙げられます。 スプレータイプのものは、見つけた成虫に直接噴射したり、葉全体に散布したりして使用します。
特におすすめなのが、「オルトラン粒剤」などの浸透移行性の殺虫剤です。 これは、植物の根元に撒くことで有効成分が根から吸収され、植物全体に行き渡るタイプの薬剤です。葉の内部にいる幼虫にも効果を発揮するため、非常に効率的です。 葉の裏など、薬剤がかかりにくい場所にいる害虫にも効果が期待できます。
薬剤散布のベストタイミングは、越冬から明けた成虫が活動を始める3月〜4月と、新成虫が発生する6月〜7月です。 特に、産卵前の成虫を駆除することで、その後の幼虫による被害を大幅に抑えることができます。 農薬を使用する際は、必ず製品のラベルに記載されている使用方法、用量、対象植物などを確認し、安全に注意して作業を行ってください。
来年は発生させない!徹底的な予防策

一度ヘリグロテントウノミハムシを駆除しても、安心はできません。周辺の環境に発生源が残っていれば、翌年再び被害に遭う可能性があります。大切な庭木を継続的に守るためには、駆除だけでなく、そもそも害虫を寄せ付けないための「予防」が非常に重要になります。
この章では、来シーズンの発生を未然に防ぐための予防策を解説します。
- 越冬させないことが最大の予防
- 早期発見で被害を最小限に
越冬させないことが最大の予防
ヘリグロテントウノミハムシの成虫は、落ち葉の下や株元の雑草の陰などで冬を越します。 つまり、これらの越冬場所をなくすことが、最も効果的な予防策となるのです。秋から冬にかけて、庭木の周りの落ち葉はこまめに掃除し、きれいに取り除きましょう。 雑草も放置せず、定期的に抜き取ることを心がけてください。
これにより、成虫が冬を越すための隠れ家を奪い、翌春の発生母数を大幅に減らすことができます。また、土を軽く耕して空気に触れさせることも、土中で蛹になろうとする幼虫や、越冬しようとする成虫にとって厳しい環境を作る上で効果的です。
早期発見で被害を最小限に
どんなに予防策を講じても、どこかから飛来してくる可能性はゼロではありません。そこで重要になるのが、「早期発見・早期駆除」です。 被害が小さいうちに対処すれば、駆除の手間も少なく、植物へのダメージも最小限に抑えられます。
特に注意して観察したいのが、新芽が出始める春先です。越冬した成虫が活動を始めるこの時期に、葉に小さな食害痕がないか、テントウムシに似た虫がいないかを注意深くチェックしましょう。水やりのついでに葉の表裏を観察する習慣をつけるのがおすすめです。もし1匹でも見つけたら、被害が広がる前兆と捉え、すぐさま捕殺するなどの対策を取りましょう。
【要注意】ヘリグロテントウノミハムシと間違えやすい害虫

ガーデニングで出会う害虫の中には、ヘリグロテントウノミハムシと見た目や被害が似ているものがいくつか存在します。害虫の種類を正確に見分けることは、適切な薬剤を選んだり、効果的な対策を立てたりする上で非常に重要です。間違った対処法では、効果がないばかりか、状況を悪化させてしまう可能性もあります。
ここでは、特に間違えやすい代表的な害虫との違いを解説します。
- テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ)
- キスジノミハムシ
テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ)
「テントウムシダマシ」は、その名の通りテントウムシにそっくりな害虫の総称で、ニジュウヤホシテントウなどが含まれます。ヘリグロテントウノミハムシと同様に植物を食害しますが、決定的な違いは好む植物の種類です。
テントウムシダマシが主に被害を与えるのは、ジャガイモ、ナス、トマトといったナス科の植物や、キュウリなどのウリ科植物です。 ヒイラギなどのモクセイ科につくことはありません。また、見た目の違いとして、テントウムシダマシの体表には光沢がなく、細かい毛が生えている点が挙げられます。 動きもヘリグロテントウノミハムシのように俊敏に跳ねることはありません。
キスジノミハムシ
「キスジノミハムシ」も、ヘリグロテントウノミハムシと同じく「ノミハムシ」の仲間で、危険を察知すると跳ねて逃げます。しかし、食害する対象が全く異なります。
キスジノミハムシが好むのは、ダイコン、カブ、コマツナ、ハクサイといったアブラナ科の野菜です。 成虫は葉に小さな穴を開け、幼虫は土の中で根を食害します。 見た目は、黒い体に黄色い筋が入っているのが特徴で、ヘリグロテントウノミハムシの赤い斑点とは明らかに異なります。家庭菜園でアブラナ科の野菜を育てている方は、こちらの害虫に注意が必要です。対策としては、防虫ネットをかけたり、シルバーマルチで飛来を防いだりする方法が有効です。
ヘリグロテントウノミハムシ駆除に関するよくある質問

Q1. ヘリグロテントウノミハムシに天敵はいますか?
A1. ヘリグロテントウノミハムシは、テントウムシに擬態することで、鳥などの天敵から身を守っていると考えられています。 そのため、クモやカマキリなどが捕食することはあっても、天敵による防除効果はあまり期待できません。人の手で駆除することが基本となります。
Q2. 木酢液や食酢は効果がありますか?
A2. 木酢液や食酢を薄めて散布する方法は、一部の害虫に対して忌避効果があるとされていますが、ヘリグロテントウノミハムシに対する確実な駆除効果は科学的に証明されていません。特に、葉の内部に潜んでいる幼虫には効果が届きにくいため、補助的な予防策として考え、確実な駆除には専用の殺虫剤を使用することをおすすめします。
Q3. 薬剤散布はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
A3. 薬剤の種類や発生状況によって異なりますが、一般的には成虫の活動が活発になる春(3〜4月)と初夏(6〜7月)の2回、重点的に散布するのが効果的です。 散布後も被害が続くようであれば、薬剤の説明書に記載されている使用間隔を守りながら、追加で散布を検討してください。同じ薬剤を使い続けると抵抗性がつく可能性があるため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するのも一つの方法です。
Q4. 大量発生してしまった場合はどうすればいいですか?
A4. 大量発生してしまった場合、物理的な駆除だけでは追いつきません。 速やかに浸透移行性の殺虫剤(オルトラン粒剤など)を根元に撒き、同時にスプレータイプの殺虫剤で葉についている成虫を駆除するなど、複数の方法を組み合わせるのが効果的です。被害がひどい枝葉は、思い切って剪定し、害虫の密度を減らすことも重要です。それでも収まらない場合は、造園業者や害虫駆除の専門家に相談することも検討しましょう。
Q5. 駆除した後の木の手入れはどうすればいいですか?
A5. 害虫を駆除した後は、植物が体力を回復できるよう、適切な手入れを心がけましょう。被害を受けた葉や枝をきれいに取り除き、風通しを良くします。また、お礼肥として緩効性の肥料を与え、土が乾いていたらたっぷりと水やりをすることで、樹勢の回復を助けることができます。元気な木は病害虫への抵抗力も高まります。
まとめ

- ヘリグロテントウノミハムシはテントウムシに似た害虫。
- ヒイラギやキンモクセイなどモクセイ科の植物を好む。
- 成虫は葉の表面を、幼虫は葉の内部を食害する。
- 春から秋にかけて活動し、特に春と初夏に発生が多い。
- 駆除は成虫の捕殺や被害葉の除去が基本となる。
- 農薬を使わない駆除では限界がある場合も。
- 大量発生時は農薬の使用が効果的。
- おすすめの農薬はスミチオンやオルトランなど。
- 浸透移行性のオルトラン粒剤は幼虫にも効く。
- 薬剤散布は春と初夏のタイミングが重要。
- 予防策として落ち葉の清掃が最も効果的。
- 越冬場所をなくすことで翌年の発生を抑えられる。
- 新芽の時期は特に注意深く観察し、早期発見を。
- テントウムシダマシやキスジノミハムシとは被害植物が違う。
- 正しい知識で、大切な庭木を害虫から守りましょう。