大切に育てているヒイラギやキンモクセイの葉が、春になると穴だらけに…。「てんとう虫に似ているけど、なんだか違う虫がいる…」そんな経験はありませんか?その正体は、もしかしたらヘリグロテントウノミハムシかもしれません。見た目は可愛らしいテントウムシにそっくりですが、実は植物の葉を食い荒らす厄介な害虫なのです。本記事では、そんなヘリグロテントウノミハムシの生態から、効果的な殺虫剤、そして安全な対策方法まで、あなたの悩みを解決するための情報を詳しく解説します。
ヘリグロテントウノミハムシとは?その生態と被害の正体

まずは敵を知ることから始めましょう。ヘリグロテントウノミハムシがどんな虫で、どのような被害をもたらすのかを詳しく解説します。
- 見た目はテントウムシ?でも実は害虫!
- ヘリグロテントウノミハムシの生態とライフサイクル
- こんな症状は要注意!被害の特徴と被害を受けやすい植物
見た目はテントウムシ?でも実は害虫!
ヘリグロテントウノミハムシは、その名の通りテントウムシによく似た見た目をしています。 黒い体に赤い斑点が2つある模様は、一見すると益虫のナミテントウなどと見間違えてしまうほどです。しかし、彼らはテントウムシ科ではなく、ハムシ科に属する昆虫です。
最大の違いは、その行動にあります。危険を察知すると、ノミのようにピョンと跳ねて逃げるのが大きな特徴です。 この跳躍力から「ノミハムシ」という名前がついています。また、触角の長さも異なり、テントウムシの触角が短いのに対し、ヘリグロテントウノミハムシの触角は長いので、見分ける際のポイントになります。
なぜテントウムシに似ているのかというと、これは「擬態」の一種と考えられています。 テントウムシは体に苦い成分を持っているため、鳥などの天敵から食べられにくいのです。 ヘリグロテントウノミハムシは、このテントウムシに姿を似せることで、天敵から身を守っていると考えられています。
ヘリグロテントウノミハムシの生態とライフサイクル
ヘリグロテントウノミハムシの生態を理解することは、効果的な駆除に繋がります。彼らの活動時期や繁殖の流れを知っておきましょう。
成虫は、落ち葉の下などで越冬し、春になると活動を開始します。 4月から5月にかけて、ヒイラギモクセイなどの新芽や新しい葉に産卵します。 卵から孵化した幼虫は、葉の中に潜り込んで内部を食い荒らしながら成長します(この食害様から「ハモグリバエ」と間違われることもあります)。 葉の中で1ヶ月ほど過ごした幼虫は、やがて地面に降りて土の中で蛹になります。
そして、6月下旬から7月頃に成虫となって地上に現れ、再び葉を食害します。 このように、幼虫と成虫の両方が植物に被害を与えるのが特徴です。 活動時期は4月から10月頃までと長く、特に春先の新芽が出る時期に被害が集中します。
こんな症状は要注意!被害の特徴と被害を受けやすい植物
ヘリグロテントウノミハムシの被害は、見た目に大きく影響します。どのような症状が現れるのか、そしてどんな植物が狙われやすいのかを知っておきましょう。
幼虫による被害は、葉の内部を食害するため、葉の表面に茶色い線や不規則な模様、やけどのような跡ができます。 被害が進むと葉が縮れたり、枯れてしまったりすることもあります。
成虫による被害は、葉の表面を削るように食害するため、葉に小さな穴が点々と開いたり、白いカスリ状の食害痕が残ったりします。 美しい葉が台無しになり、景観を大きく損ねてしまいます。
特に被害を受けやすいのは、ヒイラギ、キンモクセイ、ヒイラギモクセイ、ネズミモチといったモクセイ科の植物です。 これらの植物を育てている方は、特に春先の新芽の時期に注意深く観察することが重要です。
【即効性重視】ヘリグロテントウノミハムシに効く!おすすめ殺虫剤5選

ヘリグロテントウノミハムシの被害を見つけたら、早急な対策が必要です。ここでは、効果が高く、即効性が期待できるおすすめの殺虫剤を厳選してご紹介します。
- 選び方のポイント(成分、剤形)
- おすすめ殺虫剤①:ベニカXネクストスプレー(住友化学園芸)
- おすすめ殺虫剤②:モスピラン液剤(日本曹達)
- おすすめ殺虫剤③:スターガード粒剤(住友化学園芸)
- おすすめ殺虫剤④:オルトラン粒剤・液剤
- おすすめ殺虫剤⑤:スミチオン乳剤
- 殺虫剤の効果的な使い方と注意点
選び方のポイント(成分、剤形)
殺虫剤を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。まず重要なのが「有効成分」です。ヘリグロテントウノミハムシには、「クロチアニジン」や「アセタミプリド」といったネオニコチノイド系の成分や、「フェンプロパトリン」などのピレスロイド系の成分が有効とされています。 これらの成分は、害虫の神経系に作用して駆除する効果があります。
次に「剤形」です。殺虫剤には、すぐに使えるスプレータイプ、水で薄めて使う液剤タイプ、土に混ぜる粒剤タイプなどがあります。
剤形 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
スプレー剤 | 希釈不要でそのまま使える | 手軽、見つけた害虫にすぐ使える | 広範囲には不向き、割高な場合がある |
液剤・乳剤 | 水で希釈して噴霧器などで散布 | 経済的、広範囲に散布可能 | 希釈の手間がかかる、噴霧器が必要 |
粒剤 | 株元に撒く、または土に混ぜ込む | 効果が長持ちする(浸透移行性)、手間が少ない | 即効性に欠ける、すでに発生した成虫には効きにくい |
特に、葉の中に潜る幼虫や、薬剤がかかりにくい場所にいる成虫には、根から成分を吸収して植物全体に行き渡らせる「浸透移行性」の殺虫剤(粒剤や一部のスプレー剤・液剤)が非常に効果的です。
おすすめ殺虫剤①:ベニカXネクストスプレー(住友化学園芸)
まずおすすめしたいのが、住友化学園芸の「ベニカXネクストスプレー」です。この製品の最大の特長は、5種類の有効成分を配合している点です。 殺虫成分として「クロチアニジン」「ペルメトリン」「ピリダリル」などが含まれており、速効性と持続性を両立しています。
特に「クロチアニジン」は浸透移行性があり、植物全体に成分が行き渡るため、葉の中に隠れた幼虫にも効果を発揮します。 雨にも強いので、効果が長持ちするのも嬉しいポイントです。 また、殺菌成分も含まれているため、うどんこ病などの病気も同時に予防・治療できる優れものです。 幅広い植物に使えるので、一本持っておくと非常に便利です。
おすすめ殺虫剤②:モスピラン液剤(日本曹達)
次におすすめするのが、日本曹達から販売されている「モスピラン液剤」です。有効成分は「アセタミプリド」で、これも浸透移行性を持つネオニコチノイド系の殺虫剤です。 幅広い害虫に効果があり、速効性と持続性を兼ね備えています。
液剤タイプなので、自分で水で薄めて使用します。 そのため、広い範囲に散布したい場合や、コストを抑えたい場合に適しています。計量が簡単で水に溶けやすく、いやな臭いが少ないのも使いやすい点です。 従来の殺虫剤に抵抗性がついた害虫にも効果が期待できるため、他の薬剤で効果が感じられなかった場合に試してみる価値があります。
おすすめ殺虫剤③:スターガード粒剤(住友化学園芸)
手間をかけずに予防したい方には、住友化学園芸の「スターガード粒剤」がおすすめです。これは、株元に撒くだけで効果を発揮する粒剤タイプの殺虫剤です。有効成分が根から吸収され、植物全体に行き渡る浸透移行性を持っています。
一度撒けば効果が長期間持続するため、何度も散布する手間が省けます。特に、ヘリグロテントウノミハムシの活動が始まる前の春先に撒いておくことで、発生を予防する効果が期待できます。葉の中に潜る幼虫に対して非常に効果的です。ただし、即効性はスプレー剤などに劣るため、すでに大量発生している成虫をすぐに駆除したい場合には、他の薬剤との併用がおすすめです。
おすすめ殺虫剤④:オルトラン粒剤・液剤
長年、家庭園芸で信頼されている殺虫剤が「オルトラン」です。粒剤と液剤があり、用途に応じて選べます。有効成分「アセフェート」は浸透移行性を持ち、根や葉から吸収されて植物全体に広がり、害虫を内側から退治します。
オルトラン粒剤は、スターガード粒剤と同様に株元に撒くことで予防効果と持続的な殺虫効果が期待できます。 植え付け時に土に混ぜ込むことも可能です。オルトラン液剤は、水で薄めて散布することで、すでに発生している害虫に直接作用させることができます。 独特の臭いがありますが、その効果の高さから多くのガーデナーに支持されています。
おすすめ殺虫剤⑤:スミチオン乳剤
「スミチオン乳剤」もまた、家庭園芸の代表的な殺虫剤の一つです。 有効成分「MEP」は、幅広い害虫に効果がある有機リン系の殺虫剤です。速効性があり、散布するとすぐに効果が現れます。
乳剤タイプなので、水で薄めて使用します。コストパフォーマンスに優れており、広範囲の害虫対策に適しています。 ただし、浸透移行性はないため、薬剤が直接かからないと効果がありません。葉の中にいる幼虫には効果が薄い場合があるため、成虫の発生時に集中的に散布するのが効果的です。使用する際は、展着剤(ダインなど)を混ぜると、薬剤が葉に付きやすくなり効果が高まります。
殺虫剤の効果的な使い方と注意点
殺虫剤の効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方が重要です。まず、散布するタイミングですが、害虫の活動が活発になる早朝や夕方がおすすめです。 日中の高温時は、薬害が出やすくなるため避けましょう。
散布する際は、葉の裏や茎にもまんべんなくかかるように丁寧に散布してください。 ヘリグロテントウノミハムシは危険を感じると地面に落ちることがあるため、株元や周辺の地面にも散布しておくとより効果的です。
また、殺虫剤を使用する際は、必ず製品のラベルに記載されている使用方法、希釈倍数、使用回数などを守ってください。 特に野菜などに使用する場合は、収穫前日数が定められているので、収穫までの期間を必ず確認しましょう。 安全のため、散布時はマスクや手袋を着用することをおすすめします。
【安全性重視】ペットや子供がいても安心!自然派・食品由来の殺虫剤

化学合成された殺虫剤の使用に抵抗がある方や、ペットやお子様がいるご家庭では、安全性の高い製品を選びたいものです。ここでは、食品成分や自然由来の成分で作られた、環境にも優しい殺虫剤をご紹介します。
- やさお酢(アース製薬)
- カダンセーフ(フマキラー)
- 自然派殺虫剤のメリット・デメリット
やさお酢(アース製薬)
アース製薬の「やさお酢」は、その名の通り食酢100%でできている製品です。 農薬取締法で安全性が認められた「特定防除資材」に分類されており、食品成分なので収穫直前まで何度でも安心して使用できます。
アブラムシやハダニ、うどんこ病などに効果があり、発生前からスプレーすることで予防効果も期待できます。 殺虫効果もありますが、化学殺虫剤ほどの即効性や持続性はありません。 そのため、2~3日おきに繰り返し散布することで効果を高めるのがおすすめです。 お酢の力で植物を元気にする効果も期待できる、人にも植物にも優しい製品です。
カダンセーフ(フマキラー)
フマキラーの「カダンセーフ」も、安全性に配慮した殺虫殺菌剤です。ヤシ油とでんぷんから作られた有効成分を使用しており、化学合成殺虫剤とは異なる作用で害虫を駆除します。害虫の気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させる物理的な作用なので、薬剤抵抗性がつきにくいのが特長です。
アブラムシやハダニ、うどんこ病などに効果があり、野菜や花など幅広い植物に使用できます。 食品原料由来の成分なので、収穫前日まで使用可能です。こちらも化学殺虫剤に比べると効果は穏やかなので、発生初期の防除や、予防的な使用に向いています。
自然派殺虫剤のメリット・デメリット
自然派・食品由来の殺虫剤には、多くのメリットがありますが、デメリットも理解した上で使用することが大切です。
メリットとしては、やはり安全性が高いことが挙げられます。 ペットや小さなお子さんがいるご家庭でも安心して使いやすく、野菜などの食用植物にも収穫の直前まで使用できる製品が多いです。 環境への負荷が少ないのも魅力です。
一方、デメリットは、化学合成殺虫剤に比べて効果が穏やかである点です。即効性や持続性に欠けるため、害虫が大量発生してしまった後では、完全に駆除するのが難しい場合があります。 そのため、こまめな散布が必要になったり、予防的な使い方を心がけたりする必要があります。 状況に応じて、化学殺虫剤と使い分けるのが賢い選択と言えるでしょう。
殺虫剤を使わない!ヘリグロテントウノミハムシの駆除・予防法

「できるだけ殺虫剤は使いたくない」という方のために、薬剤に頼らない駆除・予防方法もご紹介します。地道な作業ですが、環境への影響を最小限に抑えることができます。
- 物理的に駆除する方法
- 天敵はいる?
- 発生を予防するための環境づくり
物理的に駆除する方法
最もシンプルで確実なのが、見つけ次第、捕殺する方法です。 成虫は、朝方の動きが鈍い時間帯を狙うと捕まえやすいです。ただし、前述の通り、危険を察知するとすぐに跳ねて逃げてしまうため、注意が必要です。 樹の下にビニールシートなどを広げておき、枝を揺すって虫を落としてから捕獲するのも一つの手です。
幼虫は葉の中に潜んでいるため、捕殺は困難です。 そのため、被害にあった葉ごと摘み取って処分するのが効果的です。 これにより、葉の中で成長している幼虫を駆除でき、被害の拡大を防ぐことができます。早期発見、早期対応が重要になります。
天敵はいる?
ヘリグロテントウノミハムシの天敵については、残念ながら特定の天敵を利用した防除方法は確立されていません。テントウムシに擬態していることからも、鳥などの捕食者から逃れる術を持っていると考えられます。
クモやカマキリ、ハチなど、他の多くの昆虫を捕食する生き物は、ヘリグロテントウノミハムシを捕食する可能性はありますが、積極的にこの虫だけを狙うわけではないため、天敵による防除効果を期待するのは難しいのが現状です。庭の生態系を豊かに保ち、多様な生き物が生息できる環境を整えることが、間接的な害虫抑制に繋がるかもしれません。
発生を予防するための環境づくり
ヘリグロテントウノミハムシの発生を完全に防ぐのは難しいですが、被害を最小限に抑えるための環境づくりは可能です。
まず、日当たりと風通しを良くすることが基本です。植物が健全に育てば、病害虫に対する抵抗力も高まります。剪定を適切に行い、枝葉が密集しすぎないように管理しましょう。
また、成虫は落ち葉の下などで越冬するため、冬の間に株元の落ち葉をきれいに掃除しておくことも、翌春の発生を減らすのに有効です。 これにより、越冬場所を奪い、春先の発生源を減らすことができます。
さらに、春先に新芽が出てくるタイミングで、目の細かい防虫ネットをかけるという物理的な予防策も考えられます。成虫の飛来や産卵を防ぐことができますが、景観を損ねるというデメリットもあります。
よくある質問

ヘリグロテントウノミハムシ対策に関する、よくある質問とその回答をまとめました。
テントウムシとの見分け方は?
一番の見分け方のポイントは「触角の長さ」と「行動」です。 ヘリグロテントウノミハムシは触角が長く、危険を感じるとノミのようにピョンと跳ねます。 一方、益虫のテントウムシは触角が短く、跳ねることはありません。 また、ヘリグロテントウノミハムシはヒイラギやキンモクセイなどのモクセイ科の植物に集団で発生することが多いのに対し、テントウムシはアブラムシがいる様々な植物で見られます。
殺虫剤はいつ撒くのが効果的?
殺虫剤を撒く効果的なタイミングは、成虫が活動を始める春先(4月~5月)と、新成虫が発生する初夏(6月~7月)です。 特に、産卵のために新芽に集まる春先に駆除することで、その後の幼虫による被害を大きく減らすことができます。散布する時間帯は、日中を避け、早朝か夕方がおすすめです。
収穫前の野菜にも使えますか?
使用する殺虫剤によります。「やさお酢」や「カダンセーフ」のような食品・自然由来成分の製品は、収穫前日まで使用できるものが多いです。 化学合成殺虫剤を使用する場合は、必ずラベルを確認し、「収穫前日数」を守ってください。 例えば「収穫7日前まで」と記載があれば、散布してから7日間は収穫できません。安全に美味しく野菜をいただくためにも、ルールは必ず守りましょう。
薬剤抵抗性の害虫にも効きますか?
同じ系統の殺虫剤を使い続けると、害虫がその薬剤に対して抵抗性を持ってしまい、効きにくくなることがあります。「ベニカXネクストスプレー」のように複数の系統の殺虫成分を配合した製品や、「モスピラン液剤」のように従来とは異なる作用を持つ薬剤は、薬剤抵抗性がついた害虫にも効果が期待できます。 また、作用性の異なる薬剤を交互に散布する「ローテーション散布」も、抵抗性の発達を防ぐのに有効です。
まとめ

- ヘリグロテントウノミハムシはテントウムシに似た害虫。
- ノミのように跳ねるのが大きな特徴。
- ヒイラギやキンモクセイなどモクセイ科の植物を好む。
- 幼虫は葉の中に潜り、成虫は葉の表面を食害する。
- 発生時期は春から秋で、特に春に被害が集中する。
- 効果的な殺虫剤は「ベニカXネクストスプレー」など。
- 浸透移行性の殺虫剤が幼虫にも効きやすい。
- 粒剤タイプの殺虫剤は予防効果が高い。
- 安全性重視なら「やさお酢」などの自然派製品がおすすめ。
- 殺虫剤は早朝か夕方に葉の裏までしっかり散布する。
- ラベルをよく読み、使用方法や収穫前日数を守る。
- 殺虫剤を使わない場合は、被害葉の除去や捕殺が基本。
- 冬の間に落ち葉を掃除すると翌春の発生を抑えられる。
- テントウムシとの見分け方は触角の長さと跳ねるかどうか。
- 薬剤抵抗性を防ぐため、異なる系統の薬剤を併用する。