大切に育てているマサキの生垣に、いつの間にか虫がついて葉が食べられていたり、白い粉のようなものが付着していたりして、心を痛めていませんか?マサキは丈夫で生垣に人気の樹木ですが、実は害虫の被害に遭いやすい一面もあります。しかし、ご安心ください。この記事を読めば、マサキを害虫から守るための具体的な方法が分かり、再び美しい緑の生垣を取り戻すことができます。害虫の種類から駆除、そして最も重要な予防策まで、詳しく解説していきます。
【写真でチェック】あなたのマサキは大丈夫?代表的な害虫5選

まず、敵を知ることから始めましょう。マサキの生垣に発生しやすい代表的な害虫は決まっています。それぞれの特徴や被害の様子を知ることで、早期発見・早期対処が可能になります。ご自宅のマサキに同じような症状がないか、写真と見比べながらチェックしてみてください。
この章で紹介する主な害虫は以下の通りです。
- ユウマダラエダシャク(シャクトリムシ)
- ミノウスバ
- カイガラムシ類(白い綿状の虫)
- ハマキムシ
- アブラムシ
ユウマダラエダシャク(シャクトリムシ)
「シャクトリムシ」として知られるこの幼虫は、マサキの葉を好んで食べる代表的な害虫です。 黒い体に黄色の斑点模様が特徴で、体を尺取り虫のように動かして移動します。 春から秋にかけて、特に5月~6月と8月~9月に2回発生のピークを迎えます。
発生すると集団で葉を食い荒らし、ひどい場合には生垣が丸裸にされてしまうこともあります。 昼間は枝に擬態して隠れ、夜間に活動して葉を食べ進めることが多いです。 葉が不自然に欠けていたり、周辺に黒いフンが落ちていたりしたら、この虫の発生を疑いましょう。
ミノウスバ
ミノウスバの幼虫も、マサキの葉、特に柔らかい新芽を好んで食害するやっかいな害虫です。 白地に黒い縦縞模様の毛虫で、肌に触れるとかぶれることがあるため注意が必要です。 主に春先、4月~5月頃に発生し、集団で新芽に群がります。
冬の間に枝先に白い卵塊を産み付けて越冬するため、冬の剪定時に卵を見つけて処分することが有効な予防策となります。 放置すると、せっかく芽吹いた新芽を食べ尽くされ、その後の生育に大きな影響を与えてしまいます。
カイガラムシ類(白い綿状の虫)
マサキの枝や葉に、白い綿のようなものや、茶色い小さな貝殻のようなものが付着していたら、それはカイガラムシの仕業です。 マサキナガカイガラムシやツノロウムシなど、様々な種類が見られます。 これらは植物の樹液を吸ってマサキを弱らせるだけでなく、排泄物が原因で「すす病」という病気を引き起こします。
成虫になるとロウ質の殻で覆われるため薬剤が効きにくくなりますが、足が退化して移動はしません。 幼虫が発生する6月~7月頃が薬剤散布の好機です。 大量に発生すると、見た目が悪いだけでなく、マサキの生育が著しく阻害されてしまいます。
ハマキムシ
ハマキムシは、その名の通り、葉を糸で綴り合わせて巻いたり、折りたたんだりして、その中に隠れて葉を食べる害虫です。 葉が不自然に巻かれているのを見つけたら、中に幼虫が潜んでいる可能性が高いでしょう。
中に隠れているため、薬剤が直接かかりにくいのが厄介な点です。被害を受けた葉を見つけたら、葉ごと摘み取って駆除するのが確実な方法と言えます。放置すると、次々と新しい葉が被害に遭い、見た目を損なう原因となります。
アブラムシ
アブラムシは非常に多くの植物に発生する害虫ですが、マサキも例外ではありません。体長2~4mmほどの小さな虫で、新芽や若い葉の裏にびっしりと群生し、樹液を吸います。
アブラムシの被害は、樹液を吸われることによる生育阻害だけではありません。カイガラムシと同様に、その排泄物が原因ですす病を誘発します。 また、ウイルス病を媒介することもあり、二次的な被害にも注意が必要です。繁殖力が非常に高いため、見つけ次第、早急に対処することが重要です。
見つけたら即対処!マサキの害虫駆除マニュアル

害虫を見つけてしまったら、被害が広がる前に迅速に対処することが大切です。ここでは、ご家庭でできる基本的な駆除方法から、効果的な薬剤の選び方、そして薬剤を使いたくない方向けの方法まで、具体的な駆除マニュアルをご紹介します。
この章で紹介する駆除方法は以下の通りです。
- まずは基本の駆除!手で取る・枝を切る
- どの薬剤を選べばいい?害虫別おすすめ殺虫剤
- 薬剤を使いたくない人へ!自然派の駆除方法
まずは基本の駆除!手で取る・枝を切る
害虫の発生が初期段階で、数が少ない場合は、薬剤を使わずに物理的に取り除くのが最も手軽で確実な方法です。
ユウマダラエダシャクやミノウスバの幼虫など、目に見える大きさの虫は、割り箸などでつまんで捕殺しましょう。 木を揺すると驚いて糸を吐いて垂れ下がる習性がある虫もいるので、下にビニールシートなどを敷いておくと後始末が楽になります。
また、カイガラムシやアブラムシがびっしりついた枝葉や、ハマキムシに巻かれた葉は、思い切って剪定ばさみで切り取ってしまいましょう。 切り取った枝葉は、害虫が広がらないように、すぐにビニール袋に入れて密閉し、ゴミとして処分することが重要です。
どの薬剤を選べばいい?害虫別おすすめ殺虫剤
害虫が広範囲に発生してしまった場合は、薬剤の使用が効果的です。害虫の種類や発生状況に合わせて適切な薬剤を選びましょう。
シャクトリムシや毛虫(ミノウスバなど)には、「スミチオン乳剤」や「オルトラン」といった浸透移行性の殺虫剤が効果的です。 浸透移行性の薬剤は、植物が根や葉から成分を吸収し、樹液を吸ったり葉を食べたりした害虫を退治します。
カイガラムシのように体が硬い殻で覆われている成虫には薬剤が効きにくいですが、幼虫が発生する時期(5月中旬~7月下旬頃)を狙って薬剤を散布すると高い効果が期待できます。
薬剤を使用する際は、必ず商品の説明書をよく読み、記載されている希釈倍率や使用方法を守ってください。散布は、風のない穏やかな日の早朝か夕方に行うのがおすすめです。
害虫の種類 | 薬剤の例 | 特徴 |
---|---|---|
ユウマダラエダシャク、ミノウスバ | スミチオン乳剤、オルトラン粒剤・水和剤 | 食毒・接触毒の効果。浸透移行性で効果が持続しやすい。 |
カイガラムシ類 | マシン油乳剤(冬季)、スプラサイド乳剤 | 冬季にマシン油で窒息死させる。幼虫発生期に殺虫剤を散布。 |
アブラムシ、ハマキムシ | ベニカXネクストスプレー、モスピラン液剤 | 速効性と持続性を兼ね備えた薬剤が多い。スプレータイプは手軽。 |
薬剤を使いたくない人へ!自然派の駆除方法
小さなお子様やペットがいるご家庭など、できるだけ薬剤を使いたくないという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、自然由来の成分を利用した駆除方法を試してみる価値があります。
例えば、牛乳を水で薄めてスプレーすると、乾燥する際に膜ができてアブラムシなどを窒息させる効果が期待できます。また、木酢液や竹酢液を希釈して散布すると、その独特の匂いで害虫を寄せ付けにくくする効果があると言われています。
ただし、これらの方法は化学合成された薬剤に比べると効果が穏やかであったり、効果の持続期間が短かったりします。害虫の発生初期や、予防目的でこまめに使用するのがおすすめです。効果が見られない場合は、被害が拡大する前に他の方法を検討することも大切です。
害虫を寄せ付けない!最強の予防は「剪定」にあり

害虫の駆除も大切ですが、それ以上に重要なのが「害虫を寄せ付けない環境づくり」、つまり予防です。そして、マサキの害虫予防において最も効果的なのが「剪定」です。風通しと日当たりを良くすることで、害虫や病気が発生しにくい健康な状態を保つことができます。
この章で解説する予防策は以下の通りです。
- なぜ剪定が害虫予防になるのか?
- マサキの剪定に最適な時期と年間の手入れスケジュール
- 失敗しない!生垣を健康に保つ剪定のコツ
- 剪定以外の日常的な予防策
なぜ剪定が害虫予防になるのか?
マサキは生育旺盛で、放置すると枝葉が密集して内側の風通しや日当たりが悪くなりがちです。 このような湿気がこもりやすくジメジメした環境は、うどんこ病などのカビが原因の病気や、カイガラムシなどの害虫にとって絶好の住処となってしまいます。
定期的に剪定を行い、混み合った枝や不要な枝を取り除くことで、株全体の風通しが良くなります。 空気がよどまなくなることで湿気が溜まりにくくなり、病害虫の発生を物理的に抑制できるのです。また、日光が株の内部まで届くようになると、マサキ自体の光合成が活発になり、より健康で病害虫に強い株に育ちます。
マサキの剪定に最適な時期と年間の手入れスケジュール
マサキの生垣の剪定は、年に2回行うのが理想的です。
1回目は、新芽の成長が落ち着く6月~7月上旬頃です。 梅雨時期は病害虫が発生しやすいため、その前に刈り込んで風通しを良くしておく目的があります。
2回目は、秋の9月~10月頃に行います。 この時期に剪定することで、冬に向けて樹形を整えることができます。この剪定により、枝が分岐してより密な生垣になります。
真夏の強い日差しの中での剪定は、切り口から葉が焼けてしまうことがあるため避けた方が良いでしょう。 また、厳寒期の剪定も、木がダメージから回復しにくいため、強い剪定は避けるのが無難です。
失敗しない!生垣を健康に保つ剪定のコツ
生垣の剪定は、まず全体の形をイメージすることから始めます。刈り込みバサミを使って、上部や側面のはみ出した部分を刈り込んでいきましょう。
表面を刈り込むだけでなく、内側に向かって伸びている枝や、枯れている枝、他の枝と交差している枝などを、枝の付け根から切り取る「透かし剪定」も重要です。 これを行うことで、内部の風通しと日当たりが格段に改善されます。
生垣の下の方は葉が少なくなりがちなので、上部を少し強めに、下部をやや弱めに刈り込むと、全体のバランスが良く、下までしっかりと葉のついた生垣を維持できます。
剪定以外の日常的な予防策
剪定以外にも、日々のちょっとした管理で害虫の発生を抑えることができます。
まず、株元の落ち葉はこまめに掃除しましょう。 落ち葉の下は、害虫が蛹になったり越冬したりするのに最適な隠れ場所になってしまいます。株元を清潔に保つことが、翌年の害虫発生を減らすことに繋がります。
また、肥料の与えすぎ、特に窒素成分の多い肥料は、葉が茂りすぎて軟弱になり、かえって病害虫を呼び寄せることがあります。 肥料は基本的に冬の2月頃に寒肥として有機質肥料を与える程度で十分です。
そして、冬の間に「石灰硫黄合剤」を散布しておくと、枝で越冬するカイガラムシや病原菌を駆除でき、春先の病害虫発生を効果的に予防できます。
害虫が原因かも?マサキを襲う2大病気

害虫の発生は、植物の病気を引き起こす原因にもなります。特にマサキでは「うどんこ病」と「すす病」に注意が必要です。これらの病気は害虫の発生と密接に関係しているため、合わせて対策を覚えておきましょう。
この章で紹介する病気は以下の通りです。
- 葉が白い粉だらけ…「うどんこ病」の正体と対策
- 葉や枝が真っ黒に…「すす病」の原因と対策
葉が白い粉だらけ…「うどんこ病」の正体と対策
葉の表面に、まるでうどんの粉をまぶしたように白いカビが生えるのが「うどんこ病」です。 これは糸状菌というカビの一種が原因で、日当たりや風通しが悪いと特に発生しやすくなります。
この白いカビが葉を覆ってしまうと光合成が妨げられ、マサキの生育が悪くなり、ひどい場合は枯れてしまうこともあります。 発生初期であれば、重曹や食酢を水で薄めたものをスプレーすることで進行を抑えられる場合があります。
最も効果的な対策は、やはり剪定によって風通しと日当たりを良くすることです。 発生してしまった場合は、病気の葉を取り除き、専用の殺菌剤を散布して蔓延を防ぎましょう。
葉や枝が真っ黒に…「すす病」の原因と対策
葉や枝が、黒いすすで覆われたように真っ黒になってしまうのが「すす病」です。 これもカビが原因の病気ですが、うどんこ病と違うのは、カビが直接植物に寄生しているわけではない点です。
すす病の原因は、カイガラムシやアブラムシなどの害虫の排泄物です。 これらの害虫が出す甘い排泄物を栄養源として、黒いカビが繁殖するのです。
したがって、すす病を解決するには、まず原因となっているカイガラムシやアブラムシを駆除することが不可欠です。 害虫がいなくなれば、すす病菌も栄養源を失い、それ以上広がることはありません。黒くなった部分は、見た目が悪いですが、布などで拭き取ればある程度きれいにすることができます。
生垣マサキの害虫に関するよくある質問

ここでは、生垣のマサキにまつわる害虫の疑問について、Q&A形式でお答えします。
マサキにつくシャクトリムシに毒はありますか?
マサキを食害するユウマダラエダシャク(シャクトリムシ)には毒はありません。見た目は少し不気味ですが、触れても人体に害はありません。ただし、同じくマサキにつくミノウスバの幼虫は、毛に毒があり触れるとかぶれることがあるため、駆除する際は手袋を着用するなど直接触れないように注意しましょう。
害虫駆除の消毒はいつ行うのが効果的ですか?
害虫駆除の消毒は、害虫の種類と活動時期に合わせて行うのが最も効果的です。多くの害虫が活発になる春先(4月~5月)に予防的に薬剤を散布するのがおすすめです。 また、カイガラムシのように特定の時期に幼虫が発生する場合は、そのタイミング(6月~7月頃)を狙うと効率的に駆除できます。 冬季に石灰硫黄合剤を散布して越冬害虫を駆除するのも非常に効果的です。
害虫に強いマサキの品種はありますか?
基本的にどの品種のマサキも害虫被害を受ける可能性はありますが、一般的に、健康で勢いのある株は害虫の被害を受けにくい傾向があります。日当たりと風通しの良い場所で適切に管理し、丈夫な株を育てることが、結果的に害虫に強い状態を保つことにつながります。 品種による大きな差よりも、栽培環境や管理方法が重要と言えるでしょう。
害虫被害で葉が全部落ちてしまいました。復活は可能ですか?
ユウマダラエダシャクなどの食害で一時的に葉が全てなくなってしまっても、マサキは萌芽力が非常に強い樹木なので、幹や枝が枯れていなければ復活する可能性は十分にあります。 まずは原因となった害虫をしっかりと駆除し、その後は適切な水やりと、2月頃に寒肥を与えて様子を見てください。春になれば新しい芽が吹いてくることが期待できます。
マサキの枝についている白い綿のようなものは何ですか?
マサキの枝や葉に付着している白い綿のような塊は、多くの場合「カイガラムシ」の一種です。イセリアカイガラムシやコナカイガラムシなどが考えられます。これらは樹液を吸って木を弱らせ、すす病の原因にもなるため、見つけ次第、歯ブラシなどでこすり落としたり、薬剤で駆除したりする必要があります。
まとめ

- マサキの代表的な害虫はユウマダラエダシャク、ミノウスバ、カイガラムシなど。
- 害虫は種類によって発生時期や被害の様子が異なる。
- 害虫駆除の基本は、初期段階での捕殺や被害枝の剪定。
- 広範囲に発生した場合は、害虫に合った薬剤を使用するのが効果的。
- 最強の害虫予防策は、年2回の「剪定」で風通しを良くすること。
- 剪定の適期は、梅雨前の6月頃と秋の9月~10月頃。
- 株元の落ち葉掃除も、越冬する害虫を減らすのに有効。
- 害虫が原因で「うどんこ病」や「すす病」が発生することもある。
- うどんこ病は風通しを良くすることで予防・改善できる。
- すす病は原因となるカイガラムシやアブラムシの駆除が先決。
- シャクトリムシに毒はないが、ミノウスバの毛には注意が必要。
- 害虫の活動が活発になる前の予防散布が効果的。
- 葉が落ちても、幹が生きていれば復活の可能性は高い。
- 白い綿状のものはカイガラムシの可能性が高い。
- 日々の観察で「早期発見・早期対処」を心がけることが最も重要。