大切に育てている植物の葉に、いつの間にか白い筋が…。それは「ハモグリバエ（別名：エカキムシ）」の仕業かもしれません。放置すると見た目が悪くなるだけでなく、植物の生育にも影響が出てしまいます。そんな厄介なハモグリバエの駆除に、「オルトラン」が効果的だと聞いたことはありませんか？
本記事では、なぜハモグリバエ駆除にオルトランが有効なのか、その理由から、効果を最大限に引き出す正しい使い方、そして「もし効かなかったら…」という時のための対処法まで、詳しく解説していきます。この記事を読めば、あなたもハモグリバエ対策のプロになれるはずです。
気づいたら葉に白い線が！厄介なハモグリバエの正体とは？
まずは敵を知ることから始めましょう。ハモグリバエがどのような虫で、植物にどんな被害をもたらすのかを理解することが、効果的な対策の第一歩です。
この章では、以下の点について解説します。
- ハモグリバエ（エカキムシ）の基本情報
- 放置は危険！ハモグリバEが植物に与える被害
- ハモグリバエが発生しやすい時期と植物
ハモグリバエ（エカキムシ）の基本情報
ハモグリバエは、ハエ目ハモグリバエ科に分類される昆虫の総称です。 成虫は体長2mm程度の小さなハエで、一見するとただのコバエのように見えます。しかし、本当に厄介なのはその幼虫です。
成虫は植物の葉の組織内に卵を産み付け、孵化した幼虫は葉の内部を食べながら進んでいきます。 この食害された跡が、まるで白いペンで絵を描いたような筋状に見えることから、「エカキムシ（絵描き虫）」とも呼ばれています。 葉を透かして見ると、筋の先端に2〜3mmほどの小さな幼虫が潜んでいるのを確認できることもあります。
放置は危険！ハモグリバエが植物に与える被害
ハモグリバエの被害は、単に見た目が悪くなるだけではありません。幼虫に葉の内部を食害されると、植物は光合成を行う能力が低下してしまいます。被害が広がると、葉全体が白っぽく変色し、最終的には枯れて落葉してしまうことも少なくありません。
特に野菜や草花の場合、葉の商品価値や観賞価値が著しく損なわれてしまいます。 トマトやナスなどの果菜類では直接果実を食害することはありませんが、光合成が阻害されることで生育不良となり、収穫量の低下につながる可能性があります。
ハモグリバエが発生しやすい時期と植物
ハモグリバエは、春から秋（3月～11月頃）にかけて長期間発生し、特に活動が活発になるのは気温が20℃～30℃の時期です。 ビニールハウスなどの加温された施設では、一年中発生する可能性があるので注意が必要です。
また、ハモグリバエは非常に多くの種類の植物に寄生します。家庭菜園やガーデニングで人気の植物も例外ではありません。
- ナス科：トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ
- マメ科：エンドウ、インゲン、ソラマメ
- ウリ科：キュウリ、カボチャ、メロン
- キク科：シュンギク、レタス、ガーベラ
- アブラナ科：カブ、キャベツ、チンゲンサイ
これらの植物を育てている方は、特にハモグリバエの発生に注意しましょう。
ハモグリバエ駆除の切り札！オルトランが選ばれる3つの理由
数ある殺虫剤の中で、なぜハモグリバエ対策に「オルトラン」が推奨されるのでしょうか。それには明確な理由があります。オルトランの持つユニークな特性が、葉の中に潜む厄介なハモグリバエの幼虫に対して非常に効果的なのです。
この章では、オルトランが選ばれる主な理由を3つご紹介します。
- 理由1：葉の内部まで効く！浸透移行性の力
- 理由2：効果が長持ち！手間いらずの持続性
- 理由3：幅広い害虫に効く！ついでに他の害虫も駆除
理由1：葉の内部まで効く！浸透移行性の力
オルトランの最大の特徴は、「浸透移行性」という性質です。 これは、薬剤の有効成分が植物の根や葉から吸収され、植物の隅々まで行き渡る仕組みのことを指します。 つまり、植物自体が殺虫成分を持つバリアをまとうような状態になるのです。
ハモグリバエの幼虫は葉の内部に潜んでいるため、通常の散布タイプの殺虫剤では薬剤が直接届きにくく、駆除が困難です。しかし、浸透移行性のオルトランであれば、幼虫が葉を食べることによって薬剤を体内に取り込み、内側から駆除することができるのです。 これは、ハモグリバエ対策において非常に大きなアドバンテージと言えるでしょう。
理由2：効果が長持ち！手間いらずの持続性
オルトランは、一度使用するとその効果が長く続くのも魅力です。特に粒剤タイプは、土に混ぜたり株元に撒いたりすることで、有効成分がゆっくりと根から吸収され、約2〜3週間もの間、効果が持続します。
雨や水やりで薬剤が流れ落ちてしまう心配も少ないため、頻繁に薬剤を散布する手間が省け、省力的な害虫管理が可能になります。 忙しくてこまめな手入れが難しい方にとっても、非常に便利な殺虫剤です。
理由3：幅広い害虫に効く！ついでに他の害虫も駆除
オルトランは、ハモグリバエだけに効くわけではありません。アブラムシやコナジラミといった汁を吸う害虫（吸汁性害虫）から、アオムシやヨトウムシといった葉を食べる害虫（食害性害虫）まで、非常に幅広い種類の害虫に対して効果を発揮します。
ハモグリバエ対策としてオルトランを使用することで、気づかないうちに発生していた他の害虫も同時に駆除できる可能性があります。 様々な害虫に悩まされがちな家庭菜園やガーデニングにおいて、一本で多くの問題を解決してくれる頼もしい存在です。
【初心者でも簡単】オルトランの効果を最大化する正しい使い方
オルトランの優れた効果を最大限に引き出すためには、正しく使うことが何よりも重要です。ここでは、製品の種類ごとの特徴や具体的な使い方、そして注意点について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
この章のポイントはこちらです。
- まずは種類を選ぼう！オルトラン粒剤・水和剤・DX粒剤の違い
- オルトラン粒剤・DX粒剤の使い方（土に混ぜる・ばらまく）
- オルトラン水和剤の使い方（薄めて散布）
- 使う前に必ず確認！オルトラン使用上の注意点
まずは種類を選ぼう！オルトラン粒剤・水和剤・DX粒剤の違い
オルトランには、主に「粒剤」「水和剤」、そして粒剤の進化版である「DX粒剤」があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の用途に合ったものを選びましょう。
| 種類 | 有効成分 | 使い方 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| GFオルトラン粒剤 | アセフェート | 土に混ぜる、株元に散布 | 最もスタンダード。手軽で効果が長持ち。 |
| オルトラン水和剤 | アセフェート | 水に薄めて葉や茎に散布 | 速効性を求める場合に。葉面からも吸収される。 |
| オルトランDX粒剤 | アセフェート、クロチアニジン | 土に混ぜる、株元に散布 | 2つの有効成分でより広範囲の害虫に効き、効果も約1ヶ月と長い。 |
手軽さと持続性を重視するなら「粒剤」や「DX粒剤」、すでに発生してしまった害虫に素早く対処したい場合は「水和剤」と使い分けるのがおすすめです。
オルトラン粒剤・DX粒剤の使い方（土に混ぜる・ばらまく）
粒剤タイプの使い方は非常に簡単です。 主に2つのタイミングで使います。
- 植え付け時に混ぜ込む方法
苗を植える際に、掘った植え穴の土に適量を混ぜ込みます。 これにより、苗が成長する初期段階から害虫の被害を防ぐことができます。 - 生育中に株元にばらまく方法
すでに植えてある植物の場合は、株の周りの土の上にパラパラと均一にばらまきます。 散布後は、軽く土と混ぜ合わせるとより効果的です。
どちらの場合も、使用後は水を軽く与えることで有効成分が土に溶け出し、根から吸収されやすくなります。
オルトラン水和剤の使い方（薄めて散布）
水和剤は、水で決められた倍率に薄めてから、噴霧器（スプレー）などを使って植物全体に散布します。 葉の表だけでなく、葉の裏側にもしっかりと薬剤がかかるように散布するのがコツです。ハモグリバエの成虫が潜んでいることもあります。
水和剤は葉からも成分が吸収されるため、粒剤よりも速効性が期待できます。 すでに被害が広がっている場合に適した方法です。
使う前に必ず確認！オルトラン使用上の注意点
オルトランは効果的な薬剤ですが、安全に使用するためにはいくつかの注意点があります。使用前には必ず製品のラベルをよく読んでください。
- 適用作物を確認する：オルトランは多くの植物に使えますが、中には使用できない作物もあります。特に野菜などに使用する場合は、対象作物であることを必ず確認しましょう。
- 使用時期・回数を守る：作物ごとに、収穫何日前まで使えるかという「使用時期」や「総使用回数」が定められています。これを必ず守ってください。
- ミツバチへの影響：ミツバチに対して影響があるため、開花中の植物や、ミツバチが活発に活動している時間帯の散布は避けるようにしましょう。
- 保護具を着用する：薬剤を扱う際は、マスクや手袋、保護メガネなどを着用し、薬剤が皮膚に付着したり、吸い込んだりしないように注意してください。
「オルトランが効かない…」そんな時に考えられる原因と対処法
「指示通りにオルトランを使ったのに、ハモグリバEの被害が収まらない…」そんな経験をすると、がっかりしてしまいますよね。しかし、諦めるのはまだ早いです。効かないのには、必ず何か原因があります。その原因を探り、適切に対処することが大切です。
この章では、オルトランが効かない場合に考えられる原因と、その具体的な対処法について解説します。
- 原因1：薬剤抵抗性のハモグリバエかも？
- 原因2：使い方が間違っている可能性
- 対処法：オルトラン以外の有効な殺虫剤
- 対処法：物理的防除との組み合わせ
原因1：薬剤抵抗性のハモグリバエかも？
同じ薬剤を長期間、繰り返し使用していると、その薬剤が効きにくい、あるいは全く効かない「薬剤抵抗性」を持った害虫が現れることがあります。 ハモグリバエ類は、この薬剤抵抗性が発達しやすい害虫としても知られています。
もし、これまでオルトランで効果があったのに、急に効かなくなったという場合は、薬剤抵抗性のハモグリバエが発生している可能性を疑う必要があります。
原因2：使い方が間違っている可能性
意外と多いのが、使用方法が正しくないケースです。例えば、以下のような点に心当たりはありませんか？
- 量が少ない：規定量よりも少ない量しか使っていないと、十分な効果が得られません。
- 散布にムラがある：水和剤の場合、葉の裏などにかかっておらず、幼虫や成虫が生き残っている。
- 土が乾燥しすぎている：粒剤を使った際に土が極度に乾燥していると、有効成分が根から吸収されにくくなります。
もう一度、製品ラベルの使用方法を確認し、自分の使い方が正しかったか見直してみましょう。
対処法：オルトラン以外の有効な殺虫剤
薬剤抵抗性が疑われる場合は、オルトラン（有効成分：アセフェート）とは系統の異なる殺虫剤に切り替えるのが有効な対策です。作用の仕方が違う薬剤を使うことで、抵抗性がついたハモグリバエも駆除できる可能性が高まります。
ハモグリバエに有効な他の殺虫剤には、以下のようなものがあります。
- アファーム乳剤：チョウ目害虫などにも効果が高い薬剤です。
- スミチオン乳剤：家庭園芸で広く使われている代表的な殺虫剤です。
- ダントツ（水溶剤・粒剤）：ネオニコチノイド系の殺虫剤で、浸透移行性があります。
- アルバリン粒剤：ダントツと同じくネオニコチノイド系で、浸透移行性があります。
重要なのは、同じ系統の薬剤を連続して使わないことです。系統の異なる薬剤を順番に使う「ローテーション散布」を心がけましょう。
対処法：物理的防除との組み合わせ
薬剤だけに頼るのではなく、他の防除方法と組み合わせることで、より確実な効果が期待できます。これを「総合的病害虫管理（IPM）」と呼びます。
例えば、オルトランを使いつつ、次章で紹介する「防虫ネット」や「黄色粘着シート」を併用することで、新たなハモグリバエの侵入を防ぎ、薬剤の使用回数を減らすことにも繋がります。 被害が出た葉をこまめに取り除くことも、地道ですが効果的な方法です。
もう発生させない！オルトランと併用したいハモグリバエ予防策
ハモグリバエの被害を最小限に抑えるには、駆除だけでなく「そもそも発生させない」という予防の視点が非常に重要です。オルトランなどの薬剤と併せて物理的な予防策を行うことで、より強固な防御体制を築くことができます。
この章では、誰でも簡単にできる効果的な予防策を3つご紹介します。
- 物理的にシャットアウト！防虫ネットの活用
- 黄色で誘って捕獲！粘着シートの設置
- 天敵を味方につける！生物的防除
- 日々の管理で発生を防ぐ（被害葉の早期発見・処分）
物理的にシャットアウト！防虫ネットの活用
最も確実で基本的な予防策が、防虫ネットや寒冷紗で植物を覆うことです。 ハモグリバエの成虫は体長2mm程度と非常に小さいため、網目の細かい（1mm以下が理想）ネットを選ぶのがポイントです。
特に、苗を植え付けた直後や、ハモグリバエが発生し始める春先からネットをかけておくことで、成虫の飛来と産卵を物理的に防ぐことができます。 プランター栽培の場合は、プランターごとすっぽり覆えるタイプのネットが便利です。
黄色で誘って捕獲！粘着シートの設置
ハモグリバエの成虫は、黄色に誘引される習性があります。 この習性を利用したのが、黄色の粘着シート（粘着トラップ）です。
植物の近くに支柱などを立てて吊るしておくだけで、飛来した成虫を粘着力で捕獲してくれます。 これにより、産卵されるのを未然に防ぐことができます。ハモグリバエだけでなく、コナジラミやアブラムシなど、同じく黄色に集まる習性のある他の害虫も同時に捕獲できるというメリットもあります。 発生状況のモニタリングにも役立ちます。
天敵を味方につける！生物的防除
自然界には、ハモグリバエの天敵となる生物が存在します。その代表格が「ハモグリミドリヒメコバチ」などの寄生蜂です。 このハチは、ハモグリバエの幼虫に卵を産み付け、孵化したハチの幼虫がハモグリバエの幼虫を食べて成長します。
農薬を使いたくない有機栽培や減農薬栽培で注目されている方法で、「ミドリヒメ」といった商品名で天敵製剤として販売もされています。 薬剤抵抗性がつかず、人や環境に優しいのが最大のメリットです。 ただし、効果が出るまでに時間がかかるため、発生初期に導入するのが効果的です。
日々の管理で発生を防ぐ（被害葉の早期発見・処分）
日々の観察も重要な予防策の一つです。葉に白い筋や、産卵痕である小さな白い点を見つけたら、その葉をすぐに摘み取って処分しましょう。
葉の中にいる幼虫は、指で押しつぶして駆除することも可能です。 被害がごく初期の段階であれば、この方法だけでも被害の拡大を十分に防げます。摘み取った葉は、放置せずに必ず圃場やベランダの外で処分してください。
【Q&A】ハモグリバエ駆除とオルトランのよくある質問
ここでは、ハモグリバエの駆除やオルトランの使用に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q. オルトランの効果はどのくらい続きますか？
A. 使用するオルトランの種類や環境によって異なりますが、一般的に粒剤タイプで約2〜3週間、DX粒剤では約1ヶ月効果が持続するとされています。 水和剤は速効性がありますが、持続期間は粒剤よりも短くなります。
Q. コーヒーかすや食酢はハモグリバエに効きますか？
A. コーヒーかすを土に撒いたり、薄めた食酢をスプレーしたりする方法が民間療法として紹介されることがあります。 これらは一定の忌避効果を期待するものですが、科学的に確立された駆除効果は限定的です。被害がすでに出ている場合は、農薬など確実な方法で対処し、これらはあくまで補助的な予防策として捉えるのが良いでしょう。
Q. 室内で育てている観葉植物にも使えますか？
A. はい、使えます。オルトランは花き類・観葉植物にも登録があります。 室内で薬剤を散布するのに抵抗がある場合は、土に混ぜるだけの粒剤タイプが手軽で使いやすくおすすめです。
Q. 野菜に使っても大丈夫ですか？収穫何日前まで使えますか？
A. はい、トマト、きゅうり、なすなど多くの野菜に使用できます。 ただし、安全に食べるために、作物ごとに「収穫〇日前まで」という使用時期（収穫前日数）が厳密に定められています。 例えば、トマトの場合、オルトラン粒剤は収穫前日まで使用できますが、キャベツは収穫21日前までと定められています。 使用前には必ず製品ラベルを確認し、記載されている使用基準を厳守してください。
Q. ハモグリバエの幼虫は葉の中にいますが、どうやって駆除すればいいですか？
A. 葉の中にいる幼虫を直接駆除するのは困難です。 最も効果的なのは、本記事で紹介した浸透移行性のあるオルトラン粒剤などを使用することです。 また、被害を受けた葉ごと摘み取って処分するか、葉の上から指で幼虫を押しつぶす物理的な駆除も有効です。
Q. ハモグリバエの天敵は何ですか？
A. ハモグリバエの主な天敵は、ハモグリミドリヒメコバチやイサエアヒメコバチといった寄生蜂です。 これらの天敵はハモグリバエの幼虫に寄生して数を減らしてくれます。農薬の使用を減らすと、こうした天敵が畑や庭に自然と増えてくることもあります。
まとめ
- ハモグリバエは葉の内部を食害する厄介な害虫です。
- オルトランは浸透移行性で葉の中にいる幼虫に効きます。
- オルトランは効果が長く持続し、手間が少ないのが特徴です。
- 粒剤、水和剤、DX粒剤を用途に合わせて選びましょう。
- 植え付け時に土に混ぜるか、生育中に株元に撒きます。
- 使用する際は必ずラベルの指示を守ってください。
- 効かない場合は薬剤抵抗性や使用方法の間違いが原因です。
- 効かない時は系統の違う薬剤への変更を検討しましょう。
- アファーム乳剤やダントツなどが代替薬として有効です。
- 予防には防虫ネットの使用が非常に効果的です。
- 黄色粘着シートで成虫を捕獲し、発生を抑えます。
- 天敵であるハモグリミドリヒメコバチの利用も有効です。
- 被害葉の早期発見と処分を心がけることが大切です。
- 野菜に使う際は収穫前日数を必ず守ってください。
- 薬剤と物理的防除を組み合わせて対策しましょう。
