大切に育てている植物に、白い小さな虫が群がっているのを見つけてショックを受けたことはありませんか?その正体は、オンシツコナジラミかもしれません。この害虫は繁殖力が非常に強く、あっという間に増えて植物を弱らせてしまう厄介な存在です。本記事では、そんなオンシツコナジラミに悩むあなたのために、効果的な特効薬から、家庭で手軽にできる対策、さらには再発を防ぐための予防法まで、具体的かつ分かりやすく解説します。この記事を読めば、もうオンシツコナジラミに悩まされることはありません。
オンシツコナジラミに本当に効く特効薬(農薬)は?

オンシツコナジラミが大量発生してしまった場合、最も迅速で確実な効果が期待できるのは農薬の使用です。しかし、多くの種類があるため、どれを選べば良いか迷ってしまいますよね。ここでは、効果が高く評価されている代表的な農薬を厳選してご紹介します。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合ったものを選んでください。
効果で選ぶ!オンシツコナジラミにおすすめの農薬3選
数ある農薬の中から、特にオンシツコナジラミに対して高い効果が報告されているものを3つピックアップしました。それぞれの有効成分や特徴を比較し、最適な一品を見つけましょう。
モスピラン液剤は、多くのホームセンターや園芸店で手軽に入手できる人気の殺虫剤です。有効成分の「アセタミプリド」は、植物の体内に行き渡る浸透移行性に優れており、葉の裏に隠れている幼虫や、直接薬剤がかかりにくい場所にいる成虫にも効果を発揮します。 即効性があり、散布後すぐに効果が現れ始めるのも嬉しいポイントです。幅広い植物に使用できるため、家庭菜園の強い味方となるでしょう。
次に、ダントツ水溶剤も非常に効果的な農薬です。有効成分「クロチアニジン」は、オンシツコナジラミに対して高い殺虫効果が認められています。 特に、宮城県の研究機関が行った試験では、複数の地域のオンシツコナジラミ個体群に対して安定した高い効果を示したという報告があります。 プロの農家でも使用される信頼性の高い薬剤です。
そして、コルト顆粒水和剤もおすすめです。有効成分「ピリフルキナゾン」は、比較的新しいタイプの殺虫剤で、従来の薬剤に抵抗性がついてしまったオンシツコナジラミにも効果が期待できます。 天敵への影響が少ないとされており、環境に配慮しながら害虫対策をしたい方にも適しています。
農薬名 | 有効成分 | 主な特徴 | 販売会社例 |
---|---|---|---|
モスピラン液剤 | アセタミプリド | 浸透移行性が高く、即効性がある。入手しやすい。 | 住友化学園芸 |
ダントツ水溶剤 | クロチアニジン | 高い殺虫効果が多くの試験で確認されている。 | 住友化学 |
コルト顆粒水和剤 | ピリフルキナゾン | 薬剤抵抗性がついた個体にも有効。天敵への影響が少ない。 | 日本農薬 |
農薬を使う上での重要な注意点
農薬は非常に効果的ですが、安全に使用するためにはいくつかの注意点を守る必要があります。まず、必ず商品のラベルをよく読み、記載されている使用方法、希釈倍率、使用回数を厳守してください。 対象作物として登録されているかどうかも必ず確認しましょう。 登録のない作物に使用すると、薬害が出たり、収穫物が食べられなくなったりする可能性があります。
散布する際は、マスク、ゴーグル、手袋などを着用し、薬剤が皮膚に付着したり、吸い込んだりしないように注意が必要です。 風の強い日や雨の日の散布は避け、早朝や夕方の涼しい時間帯に行うのがおすすめです。また、近隣の住宅や通行人に薬剤がかからないように配慮することも大切です。散布後は、使用した器具をよく洗い、残った薬剤は適切に保管・処分してください。
薬剤抵抗性とは?ローテーション散布のすすめ
オンシツコナジラミは、同じ系統の農薬を繰り返し使用していると、その薬剤が効きにくくなる「薬剤抵抗性」を発達させやすいという特徴があります。 せっかく特効薬を使っても、効果が薄れてしまっては意味がありません。この薬剤抵抗性の発達を防ぐために重要なのが「ローテーション散布」です。
ローテーション散布とは、作用性の異なる(系統の違う)複数の農薬を順番に使用することです。 農薬には「IRACコード」という作用機構を示す分類コードが記載されています。 このコードが異なる薬剤を交互に使うことで、オンシツコナジラミが特定の薬剤に慣れてしまうのを防ぎ、長期間にわたって高い防除効果を維持することができます。農薬を選ぶ際は、前回使用したものとは違う系統の薬剤を選ぶように心がけましょう。
農薬を使いたくない!家庭でできる安全な駆除方法

「野菜やハーブなど、口にするものには農薬を使いたくない」「小さな子供やペットがいるので心配」という方も多いでしょう。ご安心ください。農薬を使わなくても、オンシツコナジラミを駆除する方法はあります。ここでは、家庭で手軽に試せる安全な対策をご紹介します。
牛乳スプレーやでんぷんスプレーの効果
家庭にあるもので簡単にできるのが、牛乳スプレーです。水と牛乳を1:1の割合で混ぜ、スプレーボトルに入れてオンシツコナジラミに直接吹きかけます。 牛乳が乾く際に膜を作り、虫の気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させるという仕組みです。 特に成虫に効果があります。
ただし、散布後に牛乳をそのままにしておくと、腐敗して悪臭の原因になったり、カビが発生したりすることがあります。 散布して数時間後、牛乳が乾いたら水で洗い流すようにしましょう。この方法は即効性がありますが、卵や蛹には効果が薄いため、数日間隔をあけて繰り返し行う必要があります。
また、でんぷんを主成分とした「粘着くん」のような市販の製品も有効です。 これは、でんぷんの粘着力で虫の動きを封じ、窒息させて駆除するものです。食品由来の成分なので、収穫前日まで使用できる野菜も多く、安心して使えるのが大きなメリットです。
天敵を利用した生物的防除
自然界の力を借りて害虫を駆除する方法、それが天敵を利用した生物的防除です。オンシツコナジラミには、オンシツツヤコバチやタバコカスミカメといった天敵がいます。 これらの天敵は、オンシツコナジラミの幼虫に卵を産み付けたり、捕食したりして数を減らしてくれます。
「エンストリップ」や「バコトップ」といった商品名で天敵製剤が販売されており、これらを施設内に放飼することで、継続的にオンシツコナジラミの密度を抑制することができます。 化学農薬と違い、抵抗性がつく心配がないのが最大の利点です。ただし、天敵が活動できる温度などの環境条件があるため、使用する際は説明書をよく確認する必要があります。 また、効果が現れるまでに時間がかかるため、害虫の発生初期に導入するのがポイントです。
黄色い粘着シートで物理的に捕獲
オンシツコナジラミの成虫が黄色に誘引される性質を利用したのが、黄色い粘着シートです。 これは、ハエ取り紙のように、粘着力のある黄色いシートを植物の近くに吊るしておくだけの簡単な方法です。飛んでいる成虫がシートに引き寄せられてくっつき、物理的に捕獲することができます。
この方法は、大量発生した際の密度を減らす効果があるだけでなく、発生初期の発見にも役立ちます。定期的にシートをチェックし、虫が捕まっていたら「オンシツコナジラミが発生し始めたな」と早期に気づくことができます。 早期発見は、被害が広がる前に対策を打つための重要な第一歩です。農薬散布や天敵導入と組み合わせることで、より高い防除効果が期待できます。
そもそも発生させない!オンシツコナジラミの徹底予防策

どんな病害虫対策でも最も重要なのは「予防」です。一度発生してしまうと駆除には手間とコストがかかりますが、日頃から発生しにくい環境を整えておくことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、今日から実践できるオンシツコナジラミの予防策をご紹介します。
発生しやすい環境を知る
オンシツコナジラミという名前の通り、この害虫は温室やビニールハウスのような、暖かく雨風が当たらない閉鎖的な環境を好みます。 特に、気温が20~25℃程度で、湿度が高い状態が続くと繁殖が活発になります。 また、植物が密集して風通しが悪い場所も、格好の住処となってしまいます。
家庭菜園やベランダガーデニングでも、壁際や軒下など、風通しが悪く湿気がこもりやすい場所は注意が必要です。自分の栽培環境が、オンシツコナジラミにとって快適な場所になっていないか、一度見直してみましょう。環境を改善するだけで、発生リスクを大きく下げることができます。
侵入を防ぐ物理的な対策
オンシツコナジラミは、成虫が飛んで外部から侵入してきます。そのため、物理的に侵入経路を断つことが非常に有効な予防策となります。施設栽培の場合は、開口部に0.4mm以下の目合いの防虫ネットを張ることで、成虫の侵入を大幅に防ぐことができます。
家庭菜園では、プランターや畝全体を目の細かい防虫ネットで覆うのが効果的です。 また、地面にシルバーマルチ(銀色のビニールシート)を張るのもおすすめです。シルバーマルチは光を反射するため、コナジラミ類が方向感覚を失い、植物に寄り付きにくくなる効果があります。 これはアブラムシなど他の害虫対策にもなるので、一石二鳥の方法です。
日頃の管理でできること
日々のちょっとした心がけも、オンシツコナジラミの予防につながります。まず、新しい苗を購入する際は、葉の裏までよく確認し、卵や幼虫がついていないかチェックする習慣をつけましょう。 気づかずに持ち込んでしまうケースは非常に多いです。
また、定期的な観察を欠かさないことも重要です。 最低でも週に一度は、葉の裏を中心に植物全体をチェックしましょう。特に新芽の周りは好んで集まる場所なので、念入りに見てください。もし少数の発生を見つけたら、その場で葉ごと取り除いたり、粘着テープで捕殺したりすることで、大発生を防ぐことができます。
さらに、圃場やプランター周りの雑草をこまめに除去することも大切です。 オンシツコナジラミは、オオアレチノギクやヒメジョオンといった雑草にも寄生し、越冬することがあります。 雑草が隠れ家や発生源にならないよう、常にきれいな状態を保ちましょう。
厄介な害虫オンシツコナジラミの正体とは?

効果的な対策を立てるためには、まず敵であるオンシツコナジラミについてよく知ることが重要です。その生態や引き起こす被害を理解することで、なぜこれまで紹介した対策が有効なのか、より深く納得できるはずです。
オンシツコナジラミの生態と見分け方
オンシツコナジラミは、カメムシの仲間に分類される体長1~2mmほどの小さな昆虫です。 成虫は白い翅を持ち、植物を揺らすと白い粉が舞うように一斉に飛び立ちます。 幼虫は葉の裏に固着して生活し、植物の汁を吸って成長します。 25℃前後の好適な環境下では、卵から成虫になるまで約3週間と世代交代が非常に早く、あっという間に増殖します。
よく似た害虫に「タバココナジラミ」がいますが、見分けるポイントは翅のたたみ方です。オンシツコナジラミは、葉に止まった時に翅を葉とほぼ平行に、屋根のようにたたみます。 一方、タバココナジラミは翅を体に対して45度~垂直に立てるようにとまります。 ルーペなどで観察すると違いが分かります。
放置すると怖い!オンシツコナジラミがもたらす被害
オンシツコナジラミの被害は、単に見た目が不快なだけではありません。主な被害は3つあります。
第一に、吸汁による直接的な被害です。成虫・幼虫ともに植物の葉や茎から汁を吸うため、被害を受けた植物は栄養を奪われ、生育が悪くなります。 葉の色が抜けて白いかすり状になったり、ひどい場合には枯れてしまったりすることもあります。
第二に、すす病の誘発です。オンシツコナジラミは、お尻から「甘露」と呼ばれる甘い排泄物を出します。 この甘露を栄養源として、空気中のカビ(すす病菌)が繁殖し、葉や果実が黒いすすで覆われたようになってしまいます。 すす病になると光合成が妨げられ、植物の生育がさらに悪化するだけでなく、野菜や果物の商品価値も著しく低下します。
そして第三に、ウイルス病の媒介です。オンシツコナジラミは、植物間を移動する際にウイルスを運ぶことがあります。 例えば、トマト退緑ウイルス(ToCV)などを媒介することが知られており、一度ウイルス病に感染すると治療法はなく、株ごと処分するしかありません。 このように、オンシツコナジラミは放置すると甚大な被害につながる恐ろしい害虫なのです。
よくある質問

Q1. オンシツコナジラミの卵には何が効きますか?
A1. オンシツコナジラミの卵は、薬剤が効きにくいことが多いです。 しかし、一部の農薬、例えば「スピロテトラマト(商品名:モベントフロアブルなど)」は幼虫の脱皮を阻害する作用があり、卵から孵化した直後の幼虫に効果を発揮します。 また、宮城県の研究では、卵の時期に薬剤処理を行った試験で「クロチアニジン水溶剤(ダントツなど)」や「スピネトラム水和剤(ディアナSCなど)」が高い効果を示したという報告もあります。 ただし、最も確実なのは、孵化して幼虫になったタイミングを狙って、浸透移行性のある薬剤を散布することです。物理的に葉ごと取り除くのも有効な手段です。
Q2. オンシツコナジラミが発生しやすい野菜や花は何ですか?
A2. オンシツコナジラミは非常に多くの植物に寄生する多食性の害虫です。 特に被害を受けやすい代表的な植物には、以下のようなものがあります。
- 野菜:トマト、ナス、キュウリ、メロン、カボチャ、インゲン、ピーマンなど
- 花き:ポインセチア、キク、トルコギキョウ、フクシア、サルビア、ゼラニウムなど
これらの植物を育てている場合は、特に注意深く観察する必要があります。
Q3. 天敵を放した場合、農薬は使えませんか?
A3. 天敵を利用している期間中は、基本的に農薬の使用は避けるべきです。 多くの殺虫剤は、害虫だけでなく天敵にも影響を与えてしまうためです。しかし、どうしても農薬を使わなければならない場合は、天敵への影響が少ない、あるいは影響のない「選択性殺虫剤」を選ぶ必要があります。各天敵製剤のメーカーは、使用できる農薬のリスト(影響表)を公開していることが多いので、必ず確認してから使用してください。例えば、気門を物理的に塞ぐタイプの「サフオイル乳剤」などは、天敵への影響が比較的少ないとされています。
Q4. 冬になればオンシツコナジラミはいなくなりますか?
A4. 露地栽培の場合、冬の低温で活動は鈍化し、多くは死滅しますが、一部は幼虫や蛹の状態で雑草などで越冬することがあります。 一方、温室や室内など、加温されている環境では冬でも活動を続け、周年発生します。 そのため、施設栽培や観葉植物の場合は、冬でも油断せず対策を続ける必要があります。
まとめ

- オンシツコナジラミは繁殖力が強く、植物を弱らせる害虫です。
- 大量発生には「モスピラン」などの浸透移行性農薬が効果的です。
- 薬剤抵抗性を防ぐため、系統の違う農薬を交互に使いましょう。
- 農薬を使いたくない場合は、牛乳スプレーが家庭で試せます。
- でんぷん由来の「粘着くん」は安全性が高くおすすめです。
- 天敵の「オンシツツヤコバチ」を利用する生物的防除もあります。
- 黄色い粘着シートは成虫の捕獲と発生の早期発見に役立ちます。
- 発生原因は高温多湿と風通しの悪さです。
- 予防には防虫ネットやシルバーマルチが有効です。
- 新しい苗の購入時は、葉裏のチェックを徹底しましょう。
- 圃場周りの雑草はこまめに除去することが大切です。
- 被害は吸汁害、すす病、ウイルス病の媒介と多岐にわたります。
- タバココナジラミとは翅のたたみ方で見分けられます。
- 卵の駆除は難しく、孵化のタイミングを狙うのが効果的です。
- トマトやナス、ポインセチアなどは特に被害に遭いやすいです。