Excelでジェノグラムを簡単作成!無料テンプレートと作り方を徹底解説

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家族関係や個人の情報を視覚的に表現する「ジェノグラム」。カウンセリングや福祉、医療の現場だけでなく、自己理解や家族研究にも役立つツールです。本記事では、身近なソフトであるExcelを使ってジェノグラムを作成したいと考えている方に向けて、無料テンプレートの入手方法から具体的な作成手順、基本的な記号の意味まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、誰でも簡単にExcelで見やすいジェノグラムが作れるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

ジェノグラムとは?Excelで作成するメリット・デメリット

まずは、ジェノグラムがどのようなもので、なぜExcelで作成するのか、そのメリットとデメリットについて解説します。ジェノグラムの基本を理解することで、より効果的に作成・活用できるようになるでしょう。

  • ジェノグラムの基本:家族の構造と関係性を可視化
  • ジェノグラムから何がわかる?その目的と活用場面
  • なぜExcel?ジェノグラム作成におけるExcelのメリット
  • Excelでジェノグラムを作る際のデメリットと注意点

ジェノグラムの基本:家族の構造と関係性を可視化

ジェノグラムとは、家族構成員の基本的な情報(性別、年齢、生死など)と、構成員間の関係性(婚姻、親子、兄弟姉妹など)、そして関係性の質(親密、疎遠、対立など)を、特定の記号を用いて図式化したものです。単なる家系図とは異なり、家族内の力動やパターン、世代間で繰り返される問題などを視覚的に捉えることを目的としています。

例えば、誰と誰が結婚していて、子供が何人いるか、といった基本的な構造に加え、誰と誰の仲が良いのか、あるいは対立しているのか、家族内でどのような出来事(病気、死別、移住など)があったのかといった、より詳細でダイナミックな情報を一枚の図に集約できます。これにより、複雑な家族システムを客観的に理解する手助けとなるのです。

主に家族療法やカウンセリングの分野で発展してきましたが、現在では医療、福祉、教育、研究など、幅広い分野で活用されています。

ジェノグラムから何がわかる?その目的と活用場面

ジェノグラムを作成することで、様々な情報が見えてきます。主な目的は、家族システム全体の理解を深めることです。

具体的には、以下のような点が明らかになります。

  • 家族構造: 核家族、拡大家族、ステップファミリーなど、家族の形態。
  • ライフサイクル: 家族が現在どの段階にあるか(結婚、子育て、子の独立など)。
  • 世代間パターン: 特定の病気、職業、行動様式、関係性のパターンなどが世代を超えて繰り返されていないか。
  • 重要な出来事: 死別、離婚、病気、トラウマ、移住などが家族に与えた影響。
  • 関係性の質: 家族メンバー間の情緒的なつながりや対立の状況。
  • 利用可能なリソース: 家族内外のサポートシステム。

これらの情報をもとに、クライエントが抱える問題の背景にある家族要因を探ったり、介入の方針を立てたりするのに役立ちます。また、自分自身の家族を振り返り、自己理解を深めるツールとしても有効です。活用場面としては、臨床心理士や精神科医によるカウンセリング、ソーシャルワーカーによるアセスメント、看護師による患者の家族背景の把握、研究者による家族パターンの分析などが挙げられます。

なぜExcel?ジェノグラム作成におけるExcelのメリット

ジェノグラム作成には専用ソフトや手書きなど様々な方法がありますが、多くの方が使い慣れているExcelを利用することには、いくつかのメリットがあります。

  1. 普及率の高さ: 多くのPCに標準搭載されている、または導入されているため、特別なソフトを新たに購入・インストールする必要がない場合が多いです。
  2. 操作の習熟度: 仕事やプライベートでExcelを使った経験がある人なら、基本的な操作(図形の挿入、線の描画、文字入力など)に戸惑うことが少ないでしょう。
  3. 柔軟なカスタマイズ性: 図形や線の種類、色、サイズなどを自由に変更でき、独自の記号を追加したり、レイアウトを調整したりすることが容易です。
  4. データの連携: 作成したジェノグラムを他のExcelデータ(例えば、クライエント情報一覧など)と連携させたり、WordやPowerPointなどの他のOfficeソフトに貼り付けたりするのも簡単です。
  5. コスト: すでにExcelを持っていれば、追加費用なしで作成を開始できます。

これらの点から、手軽にジェノグラム作成を始めたい方や、他の文書と連携させたい方にとって、Excelは有力な選択肢となります。

Excelでジェノグラムを作る際のデメリットと注意点

手軽さが魅力のExcelですが、ジェノグラム作成においてはいくつかのデメリットや注意点も存在します。

まず、Excelは本来、表計算ソフトであり、図形描画専用ツールではありません。そのため、複雑な家族構成や多数のメンバーを描画する場合、図形や線の配置、調整に手間がかかることがあります。特に、関係線が多くなると、線が重なったり、修正が面倒になったりする可能性があります。

また、ジェノグラム特有の記号(例えば、関係の質を示す波線やギザギザ線など)を標準機能だけで正確に描画するのが難しい場合もあります。図形描画機能に慣れていないと、見栄えの良いジェノグラムを作成するのに時間がかかるかもしれません。

さらに、専用ソフトのように、入力した情報から自動で関係性を整理したり、特定のパターンを分析したりする機能はありません。あくまで手動での作図が基本となります。

注意点としては、個人情報、特に機密性の高い家族情報を扱うため、ファイルの管理とセキュリティには十分配慮する必要があります。パスワード設定やアクセス権限の管理などを徹底しましょう。

【図解】Excelを使ったジェノグラムの基本的な書き方・作成手順

ここでは、実際にExcelを使ってジェノグラムを作成する基本的な手順を、ステップバイステップで解説します。Excelの図形描画機能を活用すれば、初心者でも作成可能です。

  • 準備:情報収集とExcelシートの設定
  • STEP1: 図形ツールで個人を表す記号を作成・配置
  • STEP2: 線ツールで家族関係(結婚・親子など)を描画
  • STEP3: テキストボックスで名前や年齢などの情報を追加
  • STEP4: 関係性の質を示す記号を追加
  • STEP5: 全体のレイアウト調整と見栄えの向上テクニック

準備:情報収集とExcelシートの設定

まず、ジェノグラムを作成するために必要な情報を集めます。最低限、対象となる家族の構成員(通常3世代程度)、それぞれの性別、生年月日(または年齢)、生死、結婚・離婚歴、親子関係などの情報が必要です。可能であれば、同居状況、職業、学歴、健康状態、重要なライフイベント(死別、病気、移住など)、メンバー間の関係性(親密、疎遠、対立など)に関する情報も集めると、より詳細なジェノグラムが作成できます。

次に、Excelを開き、新しいブックを作成します。ジェノグラムは縦横に広がる可能性があるため、シートの表示倍率を少し下げて(例: 75%程度)、全体を見渡せるようにしておくと作業しやすいでしょう。また、「挿入」タブにある図形描画ツールを頻繁に使うことになるので、リボンの表示を確認しておきましょう。必要であれば、グリッド線を表示させておくと、図形の配置がしやすくなります。

STEP1: 図形ツールで個人を表す記号を作成・配置

ジェノグラムでは、男性を四角(□)、女性を丸(○)で表すのが基本です。「挿入」タブの「図形」から、それぞれ「正方形/長方形」と「楕円」を選択してシート上に描画します。Shiftキーを押しながらドラッグすると、きれいな正方形や正円を描くことができます。

図形の大きさはある程度揃えた方が見やすくなります。最初に一つ作成し、それをコピー&ペースト(Ctrl+C → Ctrl+V)して使うと効率的です。図形の色は、通常は白抜き(塗りつぶしなし)で、枠線は黒にします。図形を選択した状態で「図形の書式設定」タブから調整できます。

作成した図形を、世代ごとに配置していきます。一般的には、上の世代を上に、下の世代を下に配置します。夫婦は横に並べ、兄弟姉妹は出生順に左から右へ並べるのが基本です。本人(IP: Identified Patient/Person)を示す場合は、その記号を二重線(□や○を二重にする)で囲みます。

死亡している場合は、記号の中にバツ印(×)を描き込みます。「挿入」タブの「図形」から「線」を選び、記号の対角線上に2本引きます。

STEP2: 線ツールで家族関係(結婚・親子など)を描画

次に、個人を表す記号同士を線で結び、家族関係を示します。「挿入」タブの「図形」から「線」を選択します。

  • 結婚: 夫婦を表す記号(□と○)を実線で結びます。線の真ん中あたりに結婚した年を記載することもあります。
  • 離婚: 結婚線に斜線(//)を入れます。離婚した年を記載することもあります。
  • 内縁・同棲: 夫婦を表す記号を破線で結びます。
  • 別居: 結婚線に一本の斜線(/)を入れます。
  • 親子関係: 夫婦を結ぶ線の中央から下に線を引き、その先に子供たちの記号を繋げます。
  • 兄弟姉妹: 親から引かれた線から分岐させ、出生順に左から右へ記号を配置し、横線で繋ぎます。

線を引く際は、記号の中心から線が出入りするように意識すると綺麗に見えます。線の種類(実線、破線)や太さ、色は「図形の書式設定」タブで変更可能です。複雑な関係性を描画する場合、線が交差することもありますが、なるべく見やすいように工夫しましょう。Excelの「コネクタ」機能を使うと、図形を移動しても線が追従するので便利です。

STEP3: テキストボックスで名前や年齢などの情報を追加

各個人の記号の近くに、名前、生年月日(または現在の年齢)、死亡している場合は没年月日(または没年齢)などの基本的な情報を書き込みます。「挿入」タブの「テキストボックス」を選択し、シート上でドラッグして作成、文字を入力します。

テキストボックスは、通常、記号のすぐ下や横に配置します。文字サイズやフォントは、全体で統一感を持たせると見やすくなります。テキストボックスの枠線や背景色は、通常「なし」に設定します。

その他、職業、学歴、重要な病歴、性格特性など、特記すべき情報があれば、同様にテキストボックスを使って記号の近くに簡潔に記載します。情報量が多くなる場合は、記号に番号を振り、別紙やExcelの別シートに詳細情報をまとめる方法もあります。

STEP4: 関係性の質を示す記号を追加

ジェノグラムの特徴的な要素として、家族メンバー間の情緒的な関係性の質を図示することができます。これも線や記号を使って表現します。

  • 親密な関係: 2人を繋ぐ線を三重線(≡)で描きます。
  • 融合/過干渉な関係: 2人を繋ぐ線を太い実線で描き、さらにその周りを囲むように描くこともあります。
  • 疎遠な関係: 2人を繋ぐ線を破線(—)で描きます。
  • 対立する関係: 2人を繋ぐ線をギザギザ線( jagged line )で描きます。
  • 断絶した関係: 2人を繋ぐ線の途中に切れ目( || )を入れます。
  • 身体的・精神的虐待: 関係を示す線に矢印をつけ、虐待者から被虐待者へ向かうように描きます。矢印の種類で虐待の種類を示すこともあります。

これらの関係性を示す線は、個人を表す記号同士を直接結びます。Excelの「図形」にある「フリーフォーム」や「曲線」ツールを使うと、ギザギザ線なども描画できますが、少し慣れが必要です。単純な線種(実線、破線)で表現できる関係性から描き始めると良いでしょう。これらの記号は、ジェノグラムを見る上で非常に重要な情報となります。

STEP5: 全体のレイアウト調整と見栄えの向上テクニック

すべての要素を配置し終えたら、最後に見やすさのための調整を行います。

まず、全体のバランスを見て、記号や線の間隔を調整します。世代間のスペース、兄弟姉妹間のスペースなどが均等になるように心がけます。Excelの「配置」機能(「図形の書式設定」タブ内)を使うと、複数の図形を整列させたり、間隔を揃えたりするのに便利です。

文字情報が多すぎて見づらい場合は、フォントサイズを調整したり、配置場所を工夫したりします。テキストボックスが図形や線と重ならないように注意しましょう。

色を効果的に使うことも有効です。例えば、特定の関係性(例: 対立関係を赤線で示す)や、特定の健康問題を持つ人を色付きの記号で示すなど、ルールを決めて色分けすると、視覚的に情報が伝わりやすくなります。ただし、色を使いすぎると逆に見づらくなるため、凡例を作成するなどして、色の意味がわかるようにしておくことが重要です。

最後に、タイトル(例: 「〇〇家 ジェノグラム」)や作成日、凡例(使用した記号の説明)などをシートの隅に追加しておくと、後で見返したときや他の人に見せるときに分かりやすくなります。

無料で使える!Excelジェノグラムテンプレート活用術

Excelで一からジェノグラムを作成するのは大変…と感じる方には、テンプレートの活用がおすすめです。ここでは、テンプレートを使うメリットや探し方、使い方について解説します。

  • テンプレートを使うメリット:時間短縮と効率化
  • おすすめ無料Excelテンプレート配布サイト
  • テンプレートの選び方とダウンロード方法
  • ダウンロードしたテンプレートの基本的な使い方とカスタマイズ方法

テンプレートを使うメリット:時間短縮と効率化

Excel用ジェノグラムテンプレートを利用する最大のメリットは、何と言っても時間と手間を大幅に削減できることです。基本的な記号(□、○、×印付き記号など)や関係線(結婚線、親子線など)があらかじめ用意されているため、図形描画に時間を費やす必要がありません

多くの場合、テンプレートには基本的なレイアウトも含まれているため、どこに何を配置すればよいか迷うことも少なくなります。記号や線のスタイルも統一されているので、見栄えの良いジェノグラムを効率的に作成できます。

特に、Excelの図形描画機能に不慣れな方や、短時間で多くのジェノグラムを作成する必要がある方にとっては、テンプレートは非常に強力な助けとなるでしょう。あらかじめ用意されたパーツをコピー&ペーストし、情報を入力していくだけで、基本的なジェノグラムが完成します。

おすすめ無料Excelテンプレート配布元

インターネット上では、親切な個人や組織が作成した無料のExcelジェノグラムテンプレートが配布されていることがあります。以下に、テンプレートを探す際のキーワードや、配布されている可能性のあるサイトの種類を挙げます。

  • 検索キーワード例: 「ジェノグラム テンプレート Excel 無料」「家族図 テンプレート Excel」「Genogram Template Excel Free」
  • 配布元の種類:
    • 個人ブログやウェブサイト: 臨床心理士やソーシャルワーカー、研究者などが自身の経験に基づいて作成したテンプレートを公開している場合があります。
    • 教育機関・研究機関のサイト: 大学の心理学部や社会福祉学部、関連する研究機関などが、教育・研究目的でテンプレートを提供していることがあります。
    • テンプレート配布サイト: Excelテンプレート全般を扱っているサイトの中に、ジェノグラム用テンプレートが含まれている可能性もあります。(ただし、専門的なものは少ないかもしれません)
    • 海外のサイト: 英語で検索すると、より多くのテンプレートが見つかる可能性があります。特に、ソーシャルワークやカウンセリング関連の海外サイトは情報が豊富です。

ただし、無料テンプレートを利用する際は、作成元が信頼できるか、利用規約(商用利用の可否など)を確認することが重要です。また、ファイルが安全であるかも確認しましょう。

※具体的なサイト名の提示は、情報の変動性や安全性の観点からここでは控えますが、上記のキーワードで検索してみてください。

テンプレートの選び方とダウンロード方法

いくつかのテンプレートが見つかった場合、どれを選ぶべきか迷うかもしれません。以下の点を考慮して選ぶと良いでしょう。

  • 含まれる記号の種類: 基本的な記号(性別、生死、結婚、親子)だけでなく、関係性の質を示す記号や、離婚、養子などの特殊な状況を示す記号がどの程度含まれているか確認します。自分の作成したいジェノグラムに必要な記号が揃っているかどうかが重要です。
  • 使いやすさ: テンプレートの構成が分かりやすいか、記号のコピー&ペーストがしやすいかなど、直感的に操作できそうかどうかを見ます。サンプル画像があれば参考にしましょう。
  • カスタマイズ性: 記号のサイズや色、線の種類などを後から変更しやすいかどうかもポイントです。完全に固定されているテンプレートよりも、ある程度自由に編集できる方が便利です。
  • 説明の有無: テンプレートの使い方や記号の意味について、簡単な説明が付いていると親切です。

選んだテンプレートのダウンロード方法は、配布サイトの指示に従います。通常は、ダウンロードボタンをクリックするか、指定されたリンクからファイルを保存します。ファイル形式が「.xlsx」または「.xls」であることを確認しましょう。ダウンロード後は、念のためウイルスチェックを行うことをお勧めします。

ダウンロードしたテンプレートの基本的な使い方とカスタマイズ方法

ダウンロードしたExcelテンプレートファイルを開くと、多くの場合、あらかじめいくつかの記号や線が配置されたシートが表示されます。

基本的な使い方は以下の通りです。

  1. 記号のコピー&ペースト: テンプレートに用意されている基本記号(□、○など)を選択し、コピー(Ctrl+C)して、ジェノグラムを作成したい場所にペースト(Ctrl+V)します。
  2. 線の描画・調整: 関係線も同様にコピー&ペーストするか、テンプレートの線を参考にしながら「挿入」タブの「図形」→「線」で描画します。線の長さや位置はドラッグして調整します。
  3. 情報の入力: テキストボックスが用意されていればそれをコピーして使うか、新たに「挿入」タブからテキストボックスを作成し、名前や年齢などの情報を入力します。
  4. 不要な要素の削除: テンプレートに含まれていても、自分のジェノグラムには不要な記号や線は選択して削除(Deleteキー)します。

カスタマイズしたい場合は、Excelの通常の図形編集機能を使います。

  • サイズ変更: 図形やテキストボックスを選択し、隅のハンドルをドラッグします。Shiftキーを押しながらドラッグすると縦横比を保ったまま変更できます。
  • 色や線の変更: 対象を選択し、「図形の書式設定」タブで「図形の塗りつぶし」「図形の枠線」「図形の効果」などを変更します。
  • 記号の追加: テンプレートにない記号が必要な場合は、Excelの図形ツールを使って自作します。

テンプレートはあくまで土台です。自分の目的に合わせて自由に編集・カスタマイズして、最適なジェノグラムを作成しましょう。

これで完璧!ジェノグラムの主要な記号とルール

ジェノグラムを正確に読み書きするためには、基本的な記号とその意味を理解しておく必要があります。ここでは、一般的に使われる主要な記号とルールを解説します。

  • 基本記号:性別、生死、本人(IP)の示し方
  • 婚姻関係の記号:結婚、離婚、内縁、別居など
  • 親子関係の記号:実子、養子、双子、流産など
  • 関係性の質を表す記号:親密、疎遠、対立、虐待など
  • その他の記号:同居、重要な出来事など
  • 記号一覧表(すぐに使えるチートシート)

基本記号:性別、生死、本人(IP)の示し方

ジェノグラムの最も基本的な構成要素は、個人を表す記号です。

  • 男性: 四角(□)で表します。
  • 女性: 丸(○)で表します。
  • 性別不明またはトランスジェンダーなど: 文脈に応じて菱形(◇)や他の記号を用いることがありますが、標準化はされていません。凡例で定義することが重要です。
  • 本人 (IP – Identified Patient/Person): ジェノグラム作成の中心となる人物、あるいはクライエントを指します。その人の記号を二重線(□や○を二重にする)で囲んで示します。
  • 死亡者: 記号の中にバツ印(×)を描き込みます。記号の近くに没年齢や没年月日を記載します。

これらの記号の内部や近くに、生年月日(または年齢)と名前を記載するのが一般的です。

婚姻関係の記号:結婚、離婚、内縁、別居など

夫婦やパートナーの関係性は、2人の記号を結ぶ線の種類で示されます。通常、夫(□)を左、妻(○)を右に配置します。

  • 結婚: 2人の記号を実線(―)で結びます。線の真ん中あたりに結婚した年(例: m.1995)を記載します。
  • 内縁・同棲: 2人の記号を破線(—)で結びます。同棲開始年を記載することもあります。
  • 別居: 結婚線の上に一本の斜線(/)を入れます。別居開始年を記載します(例: s.2010)。
  • 離婚: 結婚線の上に二本の斜線(//)を入れます。離婚した年を記載します(例: d.2015)。
  • 婚姻無効: 結婚線の上にバツ印(×)を描くこともあります。
  • 未婚のパートナーシップ: 内縁・同棲と同様に破線で示すことが多いですが、文脈に応じて凡例で定義します。

再婚などで複数のパートナーがいる場合は、最初のパートナーを中央に近い側に描き、後のパートナーを外側に描くなど、時系列がわかるように配置します。

親子関係の記号:実子、養子、双子、流産など

親子関係は、夫婦を結ぶ線から下に引かれた線で示されます。

  • 実子: 夫婦線の中心から下に実線を引き、その先に子供の記号を繋げます。
  • 養子: 親から子への線を破線にするか、実線に「A」や「養」などの注記を加えます。養親と実親の両方を描く場合は、関係性がわかるように線を使い分けます。
  • 里子: 親から子への線を点線にするか、「F」や「里」などの注記を加えます。
  • 双子: 親からの線が分岐し、それぞれの子供の記号に繋がる点で結合させます。一卵性双生児の場合は、さらに双子の記号同士を線で結びます
  • 妊娠中: 胎児の性別が不明な場合は三角形(△)で示します。性別が判明している場合は、該当する記号(□または○)を破線で描くこともあります。
  • 流産・死産: 流産は小さな黒丸(●)や×印、死産は性別に応じた記号(□または○)に×印を描き込み、親からの線に繋げます。

兄弟姉妹は、親からの線にぶら下がる形で、出生順に左から右へ配置します。

関係性の質を表す記号:親密、疎遠、対立、虐待など

ジェノグラムの大きな特徴である、メンバー間の情緒的な関係性は、主に2人を結ぶ線のスタイルで表現されます。

  • 非常に親密 (Very Close / Enmeshed): 三重線(≡)で結びます。ポジティブな場合も、境界が曖昧な共依存的な場合も示唆します。
  • 親密 (Close): 二重線(=)で結びます。
  • 疎遠 (Distant / Poor): 破線(—)で結びます。感情的なつながりが薄い状態。
  • 対立 (Conflictual): ギザギザ線( jagged line )で結びます。頻繁な口論や緊張関係を示します。
  • 融合かつ対立 (Enmeshed & Conflictual): 三重線とギザギザ線を組み合わせるなど、工夫して表現します。
  • 断絶 (Cutoff): 関係を示す線の途中に切れ目( || )を入れます。全く交流がない状態。
  • 虐待 (Abuse): 関係を示す線に矢印をつけ、加害者から被害者へ向けます。矢印の種類で虐待の種類(身体的、性的、精神的)を示すこともあります(例:→ 身体的、<0xE2><0x86><0x9B> 性的)。
  • 支配的 (Dominant): 関係を示す線に、支配する側からされる側へ向かう矢印をつけることもあります。

これらの記号は主観的な評価を含むため、誰の視点からの評価なのかを意識することが重要です。複数の視点がある場合は、色分けなどで表現することもあります。

その他の記号:同居、重要な出来事など

上記以外にも、ジェノグラムには様々な情報が付加されます。

  • 同居: 同じ家に住んでいるメンバーを点線や曲線で囲みます
  • 重要な出来事: 結婚、離婚、死別、誕生、病気の発症、移住、失業、災害体験など、家族に大きな影響を与えた出来事を、該当する人物の記号の近くや、関係線の近くに、発生年とともに記載します(例: 癌発症 2018)。
  • 身体的・精神的疾患: 記号の一部を塗りつぶしたり、色を変えたり、特定のマーク(例: アルコール依存症にA)を付記したりして示します。凡例で明確に定義することが不可欠です。
  • 職業・学歴: 記号の近くに簡潔に記載します。

これらの情報を加えることで、家族の状況をより深く、多角的に理解することができます。

記号一覧表(すぐに使えるチートシート)

以下に、これまで説明した主要なジェノグラム記号をまとめた一覧表(チートシート)を示します。Excelで作成する際や、読み解く際の参考にしてください。

カテゴリ記号意味
個人男性
女性
□ (二重線) / ○ (二重線)本人 (IP)
□に× / ○に×死亡
妊娠中 (性別不明)
婚姻関係□―○結婚 (m.YYYY)
□—○内縁・同棲
□―/―○別居 (s.YYYY)
□―//―○離婚 (d.YYYY)
親子関係↓ (実線)実子
↓ (破線)養子
● or ×流産
関係性の質非常に親密 / 融合
親密
疎遠
〜〜〜 (ギザギザ線)対立
―||―断絶
その他点線で囲む同居

注: これは一般的な記号の例です。分野や文脈によって異なる記号が使われることもあります。必ず凡例を確認・作成するようにしましょう。

Excelだけじゃない!ジェノグラム作成ツールの選択肢

Excelは手軽な選択肢ですが、より効率的に、あるいは高機能なジェノグラムを作成したい場合には、他のツールも検討する価値があります。ここでは、Excel以外の主なジェノグラム作成方法を紹介します。

  • 高機能なジェノグラム作成専用ソフト(GenoProなど)
  • 手軽に使えるオンライン描画ツール(Canva, EdrawMaxなど)
  • Wordでジェノグラムを作成する方法とExcelとの比較
  • アナログ派に:手書きでジェノグラムを作成するコツ

高機能なジェノグラム作成専用ソフト(GenoProなど)

ジェノグラム作成に特化したソフトウェアは、最も効率的かつ高機能な選択肢と言えます。代表的なソフトとしては「GenoPro」が有名です。

これらの専用ソフトのメリットは以下の通りです。

  • 簡単な操作性: ドラッグ&ドロップや数クリックで、人物の追加、関係性の設定(結婚、親子など)が直感的に行えます。記号や線は自動で適切な位置に配置されることが多いです。
  • 豊富な記号: ジェノグラム特有の記号(関係性の質、特殊な家族状況など)が豊富に用意されており、簡単に利用できます。
  • 自動レイアウト調整: 家族構成が複雑になっても、ソフトウェアが自動で見やすいようにレイアウトを調整してくれる機能があります。
  • データ管理機能: 各個人に関する詳細情報(生年月日、出来事、病歴、メモなど)を入力・管理し、必要な情報を表示/非表示にしたり、レポートとして出力したりできます。
  • 分析機能: 特定のパターン(例: 特定の病気の遺伝傾向)をハイライト表示するなど、簡単な分析機能を持つソフトもあります。

デメリットとしては、多くの場合、有料であること、ソフトウェアのインストールが必要であること、操作に慣れるまで少し時間がかかる可能性があることが挙げられます。しかし、頻繁にジェノグラムを作成する専門家(カウンセラー、ソーシャルワーカーなど)にとっては、投資する価値のあるツールと言えるでしょう。

手軽に使えるオンライン描画ツール(Canva, EdrawMaxなど)

近年、Webブラウザ上で動作するオンラインの描画ツールも増えています。これらの中にも、ジェノグラム作成に利用できるものがあります。例えば、「Canva」や「EdrawMax Online」、「Lucidchart」などです。

これらのツールのメリットは以下の通りです。

  • インストール不要: Webブラウザとインターネット接続があれば、どのデバイスからでも利用できます。
  • 豊富なテンプレートと素材: フローチャートや組織図などのテンプレートが豊富に用意されており、それらを応用してジェノグラムを作成できます。ジェノグラム専用のテンプレートを提供しているツールもあります。
  • 共同編集機能: 複数人で同時に編集できる機能を持つツールが多く、チームでの作業に適しています。
  • クラウド保存: 作成したデータはクラウド上に保存されるため、バックアップや共有が容易です。

デメリットとしては、無料プランでは機能や素材に制限がある場合が多いこと、ジェノグラム専用ソフトほどの特化機能(自動レイアウト、詳細なデータ管理など)は期待できないことが挙げられます。手軽に見栄えの良い図を作成したい、あるいは共同で作業したい場合に適しています。

Wordでジェノグラムを作成する方法とExcelとの比較

Excelと同様に普及率の高いMicrosoft Wordでも、図形描画機能を使ってジェノグラムを作成することは可能です。基本的な操作はExcelと似ており、「挿入」タブの「図形」から記号や線を描画し、テキストボックスで情報を追加します。

Wordのメリットは、文章作成ソフトであるため、ジェノグラムに付随する説明文や考察などを同じファイル内に記述しやすい点です。レポートや記録の一部としてジェノグラムを埋め込む場合に便利です。

一方、デメリットとしては、Excelに比べて図形の精密な配置や整列、コネクタ機能などがやや弱いと感じるかもしれません。広大なキャンバスを持つExcelの方が、大規模なジェノグラムを描画する際には扱いやすい場合があります。

ExcelとWordのどちらが良いかは、最終的な目的によります。図としてのジェノグラム作成が主目的ならExcel、文書作成の一環としてジェノグラムを挿入したいならWord、といった使い分けが考えられます。操作感の好みもあるでしょう。

アナログ派に:手書きでジェノグラムを作成するコツ

デジタルツールが苦手な方や、セッション中にクライエントと一緒にその場で作成したい場合など、手書きでジェノグラムを作成する方法も依然として有効です。

手書きのメリットは以下の通りです。

  • 特別な機材が不要: 紙とペンがあれば、いつでもどこでも始められます。
  • スピードと即時性: PCの起動やソフトの操作を待つ必要がなく、思いついたことや聞いたことをすぐに書き込めます。
  • 自由度の高さ: 決まった形式にとらわれず、自由に線や記号、メモを書き加えられます。
  • 対面セッションでの活用: クライエントと一緒に描画していくことで、共同作業感や理解の共有が生まれやすくなります。

デメリットとしては、修正がしにくい(消しゴムや修正液が必要)、大規模な家族になるとスペースが足りなくなったり、見づらくなったりする保存や共有がデジタルデータほど容易ではない、などが挙げられます。

手書きで作成する際のコツとしては、

  • 大きめの紙(A3など)を用意する。
  • 鉛筆やフリクションペンなど、修正可能な筆記用具を使う。
  • 定規やテンプレート(円定規、四角定規など)を使うと綺麗に描ける。
  • 最初に大まかな配置を決めてから詳細を描き込む。
  • 凡例を必ず作成する。

手書きで下書きを作成し、後でExcelや専用ソフトで清書するという方法も効率的です。

ジェノグラムとExcel作成に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、ジェノグラムやExcelでの作成に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

ジェノグラムと家系図の主な違いは何ですか?

ジェノグラムと家系図は、どちらも家族の系譜を図示したものですが、その目的と含まれる情報に大きな違いがあります。

家系図 (Family Tree) は、主に血縁関係や婚姻関係による家族の系譜(先祖から子孫へのつながり)を記録し、示すことを目的としています。誰が誰の親で、誰と結婚したか、といった基本的な構造情報が中心です。

一方、ジェノグラム (Genogram) は、家系図の基本的な情報に加え、家族メンバー間の情緒的な関係性(親密、対立、疎遠など)、重要なライフイベント、病歴、職業、性格特性、世代間パターンなど、より広範で詳細な情報を含みます。その目的は、単に系譜を示すだけでなく、家族システム全体の力動やパターンを理解し、分析することにあります。特に、カウンセリングや心理療法の分野で、問題の背景を探るアセスメントツールとして用いられます。

簡単に言えば、家系図は「構造」に焦点を当て、ジェノグラムは「構造+関係性+情報」に焦点を当てていると言えるでしょう。

Excelで複雑な家族構成(再婚、多世代など)を表現するコツは?

Excelで複雑な家族構成を描画するには、いくつかの工夫が必要です。

  • スペースの確保: まず、シート上に十分なスペースを確保します。必要に応じて、複数のシートに分割することも検討しましょう。
  • 配置の工夫:
    • 再婚: 複数の配偶者がいる場合、時間軸に沿って(例: 最初の配偶者を左、次の配偶者を右に)配置し、それぞれの結婚線・離婚線・親子線を明確に描きます。線が交差する場合は、Excelの「線の交差」機能(前面/背面移動)や、線の種類・色を変えることで見やすくします。
    • 多世代: 世代間のスペースを十分に取ります。4世代以上になる場合は、特に縦方向のスペースが必要です。関連する家族(例: 本人の兄弟姉妹とその家族)を近くにまとめて配置すると分かりやすくなります。
    • 養子・里子など: 親子線の種類(破線、点線)を変えたり、注記を加えたりして、関係性を明確に示します。
  • コネクタの活用: Excelの「コネクタ」機能を使うと、図形を移動しても線が自動的に追従するため、レイアウト調整が楽になります。「挿入」→「図形」の中にあります。
  • グループ化: 関連する図形や線をまとめて「グループ化」しておくと、移動やコピーがしやすくなります。
  • 凡例の活用: 複雑な関係性や特殊な記号を用いた場合は、必ず凡例を作成し、それぞれの意味を明記します。
  • 情報の取捨選択: あまりに情報量が多くなりすぎる場合は、ジェノグラムの目的に合わせて、表示する情報を絞ることも検討しましょう。詳細は別紙や別シートに記載します。

試行錯誤しながら、最も見やすい表現方法を探ることが大切です。

ジェノグラム作成に便利なExcelのショートカットや機能は?

Excelでジェノグラムを効率的に作成するために、覚えておくと便利なショートカットキーや機能があります。

  • コピー&ペースト:
    • Ctrl + C: 選択した図形やテキストボックスをコピー
    • Ctrl + V: コピーしたものを貼り付け
    • Ctrl + D: 選択したものを複製(コピー&ペーストを一度に行う)
  • 図形描画関連:
    • Shift + ドラッグ: 正方形、正円、水平・垂直・45度の直線を引く
    • Ctrl + ドラッグ: 選択した図形をコピーしながら移動
    • Alt + ドラッグ: グリッド線に合わせて図形を配置・サイズ変更
  • 選択とグループ化:
    • Shift + クリック: 複数の図形を連続して選択
    • Ctrl + A: (オブジェクトを選択した状態で)シート上のすべてのオブジェクトを選択
    • Ctrl + G: 選択した複数の図形をグループ化
    • Ctrl + Shift + G: グループ化を解除
  • 配置・整列機能: 「図形の書式設定」タブにある「配置」メニューを活用すると、複数の図形をきれいに整列させたり、間隔を揃えたりできます。(例: 左揃え、上下中央揃え、左右に整列など)
  • コネクタ機能: 図形同士を繋ぐ線としてコネクタを使うと、図形を移動しても線が追従します。
  • グリッドとガイド: 「表示」タブで「グリッド線」や「ガイド」を表示させると、図形の配置がしやすくなります。「図形の書式設定」タブの「配置」→「グリッド線に合わせる」をオンにすると便利です。

これらの機能を使いこなすことで、作図時間を短縮し、より見栄えの良いジェノグラムを作成できます。

作成したジェノグラムはどのように活用できますか?(臨床、研究、自己理解)

ジェノグラムは様々な場面で活用できる汎用性の高いツールです。

  • 臨床場面(カウンセリング、心理療法、医療、福祉):
    • アセスメント: クライエントや患者が抱える問題の背景にある家族関係、世代間パターン、ストレス要因、利用可能なリソースなどを把握するために用います。
    • 介入計画: ジェノグラムから得られた情報をもとに、効果的な介入方法(例: 家族療法、特定の個人へのアプローチ)を計画します。
    • クライエントとの共有: クライエントと一緒にジェノグラムを作成・確認することで、クライエント自身の問題への気づきを促し、治療関係を深めることができます。
    • 多職種連携: 医師、看護師、ソーシャルワーカー、心理士などの間で、クライエントの家族情報を共有し、共通理解を持つためのツールとして役立ちます。
  • 研究:
    • 家族パターンの分析: 特定の疾患、行動様式、職業選択などが世代間でどのように伝達されるかを調査・分析するために用います。
    • 事例研究: 特定の家族事例を深く理解し、記述するためのツールとして活用します。
    • 量的研究への応用: ジェノグラムから得られた情報をコード化し、統計分析に用いることもあります。
  • 自己理解・家族理解:
    • 自分自身のルーツを知る: 自分の家族の歴史、関係性、繰り返されるパターンなどを客観的に見つめ直すことで、自己理解を深めることができます。
    • 家族との関係性の改善: 家族メンバーとの関係性における課題や強みを認識し、より良い関係を築くためのヒントを得ることができます。
    • ライフプランニング: 家族の歴史やパターンを踏まえ、自身の将来設計(結婚、キャリア、健康管理など)に役立てることができます。

このように、ジェノグラムは専門的な場面から個人的な活用まで、幅広い可能性を持っています。

ジェノグラム作成時のプライバシーや倫理的な配慮点は?

ジェノグラムは非常に個人的で機密性の高い情報を含むため、作成・保管・利用にあたっては、プライバシー保護と倫理的な配慮が不可欠です。

  • インフォームド・コンセント: 特に臨床場面などで他者の情報を扱う場合、ジェノグラムを作成する目的、含まれる情報、誰がどのように利用・保管するのかを明確に説明し、対象者(可能であれば情報が含まれる主要な家族メンバー)から同意を得る必要があります。
  • 情報の正確性と客観性: 伝聞や憶測に基づく情報と、事実確認が取れた情報を区別して記載するなど、情報の出所や確度を意識します。主観的な評価(関係性の質など)については、誰の視点からの評価なのかを明記することが望ましいです。
  • 機密保持: 作成したジェノグラム(ファイル、印刷物)は、権限のない第三者の目に触れないように厳重に管理します。Excelファイルの場合はパスワードを設定する、保管場所を限定する、施錠できる場所に保管するなどの対策が必要です。共有する場合も、必要最低限の範囲に留め、相手にも機密保持義務を確認します。
  • 目的外利用の禁止: 同意を得た目的以外でジェノグラムを利用してはいけません。
  • 情報の最小化: ジェノグラムの目的にとって必要最小限の情報のみを収集・記載するように努めます。
  • 偏見や差別の排除: ジェノグラムから得られた情報をもとに、特定の個人や家族に対して偏見を持ったり、差別的な扱いをしたりしないように、常に自己点検が必要です。
  • 廃棄: 不要になったジェノグラムは、シュレッダーにかける、ファイル復元不可能な形で削除するなど、確実に情報を抹消できる方法で廃棄します。

これらの倫理的な配慮を怠ると、信頼関係の損失やプライバシー侵害につながる可能性があるため、十分に注意が必要です。

ジェノグラムの記号は国際的に標準化されていますか?

ジェノグラムの記号は、モニカ・マクゴールドリックらによって提唱されたものが広く普及しており、ある程度の標準化はなされています。特に、基本的な記号(性別、生死、結婚、親子関係など)については、多くの文献やソフトウェアで共通のものが使われています。

しかし、完全に統一された国際標準規格が存在するわけではありません。特に、関係性の質を表す記号や、特定の文化や状況に特有の家族関係(例: 一夫多妻、複雑な養子縁組など)を示す記号については、研究者や臨床家によって異なるバリエーションが用いられたり、独自の記号が考案されたりすることがあります。

そのため、ジェノグラムを作成したり、他者が作成したジェノグラムを読み解いたりする際には、以下の点が重要になります。

  • 凡例(Legend / Key)を確認・作成する: 使用している記号とその意味を明確に示す凡例を必ず添付するか、図の中に記載します。これにより、記号の解釈における誤解を防ぐことができます。
  • 文脈を考慮する: ジェノグラムが作成された分野(例: 医療、福祉、心理学)や文化的背景によって、記号のニュアンスが異なる可能性も考慮します。
  • 基本的な記号をマスターする: まずは、広く一般的に使われている基本的な記号(本記事で紹介したものなど)を理解しておくことが、ジェノグラム活用の第一歩となります。

記号の意味が不明な場合は、作成者に確認するのが最も確実です。

ジェノグラムの学習におすすめの書籍やウェブサイトはありますか?

ジェノグラムについてより深く学びたい方向けに、参考となる書籍やウェブサイトをいくつか紹介します。

  • 書籍:
    • 『ジェノグラムの実際―家族システムの理解とアセスメント』(モニカ マクゴールドリック, ランディ ガーソン, スーエリー ペトリ 著, 福島 哲夫 監訳): ジェノグラムのバイブルとも言える書籍。記号、作成法、解釈、臨床応用まで網羅的に解説されています。(※定番中の定番です)
    • 『家族療法・家族システム論に関する入門書』: 多くの家族療法関連の書籍で、アセスメントツールとしてジェノグラムが紹介されています。
  • ウェブサイト:
    • GenoProのウェブサイト: ジェノグラム作成ソフトGenoProの公式サイトには、記号の説明や作成例などが掲載されています(英語中心ですが参考になります)。
    • 大学や研究機関のサイト: 心理学、社会福祉学、看護学などの学部や研究室のウェブサイトで、講義資料や研究論文としてジェノグラムに関する情報が公開されていることがあります。(例: 「大学名 ジェノグラム 資料」などで検索)
    • 臨床心理士やソーシャルワーカーのブログ・サイト: 実務家が自身の経験に基づいて、ジェノグラムの活用法や作成のコツなどを解説している場合があります。

これらの資料を参考に、理論と実践の両面から学習を進めることで、ジェノグラムへの理解を深め、効果的に活用できるようになるでしょう。特に、マクゴールドリックらの書籍は、基本を学ぶ上で非常に役立ちます。

Excel以外でおすすめの無料ジェノグラム作成ツールは?

Excel以外で、無料で利用できるジェノグラム作成ツールを探している場合、いくつかの選択肢があります。ただし、「完全無料」で「高機能」な専用ツールは少ないのが現状です。

  • 無料プランのあるオンライン描画ツール:
    • Canva: デザインツールとして有名ですが、フローチャートや図形描画機能を使ってジェノグラムを作成できます。無料プランでも基本的な機能は利用可能です。テンプレートも探せば見つかるかもしれません。
    • Draw.io (diagrams.net): 完全無料のオンライン図形描画ツール。非常に多機能で、フローチャート用の図形などを組み合わせてジェノグラムを作成できます。自由度は高いですが、ジェノグラム専用の機能はありません。
    • Lucidchart: 高機能なオンライン作図ツール。無料プランでは作成できる図の数などに制限がありますが、ジェノグラム用のテンプレートも用意されていることがあります。
  • オープンソースのソフトウェア:
    • Gramps: 本来は系図学(家系図作成)ソフトウェアですが、カスタマイズ次第でジェノグラムに近い情報も管理できる可能性があります。無料で利用できますが、操作には慣れが必要です。
  • 一部機能が無料の専用ソフト(試用版など):
    • GenoPro: 有料ソフトですが、機能制限付きの無料試用版が提供されている場合があります。本格導入前のお試しとして利用できます。

選ぶ際のポイントは、どの程度の機能が必要か、操作にどのくらい慣れているか、です。手軽に始めたいならCanvaやDraw.io本格的な機能を試したいならGenoProの試用版などが考えられます。無料ツールは機能制限があることが多いので、自分の目的に合ったものか、事前に確認することが重要です。

まとめ

本記事では、Excelを使ってジェノグラムを作成する方法を中心に、その基本から応用まで幅広く解説しました。最後に、記事の重要なポイントをまとめます。

  • ジェノグラムは家族構造と関係性を図式化するツール。
  • 家系図と異なり、関係性や詳細情報を含む。
  • Excelは普及率が高く、手軽に作成を始められる。
  • Excelの図形描画機能で記号や線を作成する。
  • 男性は□、女性は○が基本記号。
  • 結婚は実線、離婚は二重斜線などで関係を示す。
  • 親子関係は夫婦線から下に線を引く。
  • 関係性の質(親密、対立など)も線種で表現可能。
  • 名前、年齢、出来事などをテキストボックスで追加。
  • 無料のExcelテンプレートを使えば時間短縮になる。
  • テンプレートはネット検索で見つけられるが、信頼性を確認。
  • 専用ソフト(GenoPro等)は高機能だが有料が多い。
  • オンライン描画ツール(Canva等)も選択肢の一つ。
  • Wordや手書きでも作成可能。
  • 作成・利用時はプライバシーと倫理的配慮が必須。
  • 記号はある程度標準化されているが、凡例が重要。

Excelでのジェノグラム作成は、少し慣れが必要な部分もありますが、本記事で紹介した手順やテンプレートを活用すれば、どなたでも作成可能です。ぜひ、家族理解や自己理解、専門業務にお役立てください。

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