お腹にガスがたまり、さらに粘液が混じった便が出ると、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。この症状は、一時的な体調不良から、時には見過ごせない病気のサインである可能性もあります。本記事では、ガスがたまる粘液便の症状、考えられる原因、そしてご自身でできる対処法から、医療機関を受診すべき目安まで、詳しく解説します。あなたの不安を少しでも和らげ、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。
ガスがたまる粘液便とは?その症状と体からのサイン

ガスがたまる粘液便は、お腹の不快感と便の異常が同時に現れる症状です。この二つの症状が同時に現れることは、腸内で何らかのトラブルが起きているサインかもしれません。それぞれの症状が何を意味するのか、そしてなぜ同時に現れるのかを理解することが、適切な対処への第一歩となります。
「ガスがたまる」状態が示すもの
お腹にガスがたまる状態は、腹部膨満感や腹痛、おならの増加として感じられます。これは、腸内でガスが過剰に発生しているか、あるいは発生したガスがうまく排出されずに滞留していることが原因です。早食いによって空気を多く飲み込んだり、消化しにくい食べ物を摂取したりすることで、腸内細菌がそれらを分解する際にガスが多く発生することがあります。また、ストレスによって腸の動きが鈍くなり、ガスがたまりやすくなることもあります。。
「粘液便」が意味するもの
粘液便とは、便にゼリー状の粘液が混じっている状態を指します。健康な便にも少量の粘液は含まれていますが、肉眼で確認できるほど多量に出る場合は、腸の粘膜に炎症や刺激が起きている可能性が考えられます。 粘液は腸の粘膜を保護する役割がありますが、腸が傷ついたり炎症を起こしたりすると、その保護のために粘液の分泌が増えることがあります。 粘液便の色によっても原因が異なり、白っぽい粘液便はストレスや消化不良、冷えなどが原因で起こることがあります。
両方の症状が同時に現れる理由
ガスがたまる症状と粘液便が同時に現れる場合、腸全体に影響を及ぼす共通の原因が背景にあることが多いです。例えば、過敏性腸症候群(IBS)では、ストレスや食生活の乱れによって腸の機能が過敏になり、ガスがたまりやすくなるとともに、粘液便が見られることがあります。 また、腸の炎症や腸内環境の悪化も、ガス発生と粘液分泌の両方を促す要因となります。便秘が原因でガスがたまり、さらに腸の粘膜が刺激されて粘液便が出るケースも少なくありません。
ガスがたまる粘液便の主な原因を徹底解明

ガスがたまる粘液便は、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。これらの原因を理解することは、症状の改善や適切な治療法の選択に役立ちます。ここでは、特に考えられる主な原因について詳しく見ていきましょう。
過敏性腸症候群(IBS)の可能性
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に炎症や潰瘍などの器質的な異常が見られないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感を伴う便通異常が慢性的に続く病気です。 IBSの症状の一つとして、ガスがたまることによる腹部膨満感やおならの増加、そして粘液便が挙げられます。 特にストレスや緊張が症状を悪化させることが多く、下痢型、便秘型、混合型、ガス型など、さまざまなタイプがあります。 IBSのガス型では、腸の動きが過剰になることで腸内にガスがたまり、頻繁におならが出るなどの症状が現れることがあります。
腸炎や消化器系の感染症
細菌やウイルス、寄生虫などによる腸炎や消化器系の感染症も、ガスがたまる粘液便の原因となることがあります。 腸に炎症が起きると、粘膜が傷つき、それを保護するために粘液の分泌が増加します。 また、感染によって腸の動きが乱れ、ガスがたまりやすくなることもあります。感染性腸炎では、粘液便や粘血便に加え、発熱、激しい腹痛、吐き気、嘔吐などを伴うことが多いです。 潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患も、粘液便や粘血便、下痢、腹痛、発熱などを引き起こす難病として知られています。
食生活の乱れと消化不良
偏った食生活や消化不良も、ガスがたまる粘液便の大きな原因となり得ます。特に、脂肪分の多い食事やアルコールの過剰摂取は、腸に負担をかけ、粘液便を引き起こすことがあります。 また、食物繊維の不足は便秘を招き、便秘によってガスがたまりやすくなるだけでなく、硬い便が腸の粘膜を刺激して粘液の分泌を促すこともあります。 早食いや不規則な食事も消化不良の原因となり、腸内でのガス発生を増加させる可能性があります。
ストレスと自律神経の不調
現代社会において、ストレスは腸の健康に多大な影響を与える要因の一つです。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、腸の動きをコントロールする神経に影響を与えます。 自律神経の乱れは、腸の蠕動運動を抑制したり、逆に過剰にしたりすることで、ガスがたまりやすくなったり、便通異常(下痢や便秘)を引き起こしたりします。 これにより、腸の粘膜が刺激され、粘液の分泌が増加し、粘液便として排出されることがあります。 ストレスが原因で腸が過敏になり、粘液便が見られることはよくあります。
腸内環境の悪化
腸内環境の悪化、つまり腸内細菌のバランスが崩れることも、ガスがたまる粘液便の原因となります。悪玉菌が増え、善玉菌が減少すると、腸内で異常発酵が起こり、ガスが過剰に発生しやすくなります。 また、腸内環境の乱れは腸のバリア機能を低下させ、粘膜が傷つきやすくなることで粘液の分泌を促すことがあります。 食物繊維の不足や不規則な食生活、抗生物質の長期服用などが腸内環境の悪化を招くことがあります。
こんな時は要注意!病院を受診すべき目安と何科に行くべきか

ガスがたまる粘液便の症状は、多くの場合、一時的な体調不良や生活習慣の乱れが原因ですが、中には医療機関での診察が必要なケースも存在します。特に、特定の症状が伴う場合や症状が長引く場合は、速やかに専門医の診察を受けることが大切です。自己判断せずに、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき危険なサイン
以下のような症状がガスがたまる粘液便に加えて現れる場合は、より深刻な病気が隠れている可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
- 粘液に血が混じっている(粘血便):特に鮮やかな赤色の血や、イチゴゼリーのような粘血便は、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなどの重篤な疾患のサインである可能性があります。
- 発熱を伴う:感染性腸炎や炎症性腸疾患の可能性が考えられます。
- 激しい腹痛や吐き気、嘔吐がある:腸炎や腸閉塞など、緊急性の高い状態である可能性があります。
- 体重が急激に減少している:大腸がんなどの悪性腫瘍や、慢性的な炎症性疾患が疑われます。
- 便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す:大腸がんの症状として現れることがあります。
- 症状が何日も続く、または繰り返し現れる:一過性ではない慢性的な問題が考えられます。
- 中高年(40歳以上)で初めての症状:大腸がんのリスクが高まる年代であるため、特に注意が必要です。
受診するなら消化器内科がおすすめ
ガスがたまる粘液便の症状で医療機関を受診する場合、消化器内科が最も適しています。消化器内科では、胃や腸などの消化器全般の疾患を専門としており、適切な検査と診断、治療を受けることができます。 必要に応じて、便検査、血液検査、腹部エコー、大腸カメラ検査などが行われ、症状の原因を特定します。 特に大腸カメラ検査は、大腸の粘膜を直接観察できるため、炎症や潰瘍、ポリープ、がんなどの有無を詳しく調べることが可能です。
診察で伝えたいこと
診察時には、医師に以下の情報を具体的に伝えることで、より正確な診断につながります。
- いつから症状が出ているか:症状の経過を正確に伝えましょう。
- 便の様子:粘液の色(透明、白、ピンク、緑、赤など)、量、便の硬さ、血が混じっているかなどを詳しく説明します。
- その他の症状:腹痛の有無や程度、発熱、吐き気、嘔吐、体重減少、食欲不振など、付随する症状を全て伝えます。
- 生活習慣:食生活、ストレスの状況、飲酒・喫煙習慣、運動習慣などを伝えます。
- 既往歴や服用中の薬:過去にかかった病気や現在服用している薬があれば、全て伝えます。
自宅でできるガスがたまる粘液便の対処法と生活習慣の改善

ガスがたまる粘液便の症状は、日々の生活習慣を見直すことで改善されるケースも少なくありません。特に、食生活の工夫やストレス管理は、腸の健康を保つ上で非常に重要です。ここでは、ご自宅で実践できる具体的な対処法と生活習慣の改善点をご紹介します。
食事内容の見直しと工夫
腸への負担を減らし、腸内環境を整える食事を心がけましょう。
- FODMAP食に注目する:FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい糖質の総称です。 これらを多く含む食品(高FODMAP食)は、腸内でガスを発生させたり、下痢や腹痛を引き起こしたりすることがあります。 過敏性腸症候群(IBS)の症状改善に効果が期待できるとされており、一時的に高FODMAP食を控える「低FODMAP食」を試すのも一つの方法です。 高FODMAP食品には、小麦、玉ねぎ、豆類、乳製品などが挙げられます。
- 食物繊維をバランス良く摂取する:水溶性食物繊維(海藻類、果物、こんにゃくなど)と不溶性食物繊維(野菜、きのこ類、穀類など)をバランス良く摂ることで、便の量を増やし、スムーズな排便を促します。 ただし、不溶性食物繊維の摂りすぎは、かえってガスを増やしたり、便秘を悪化させたりすることもあるため、ご自身の体調に合わせて調整しましょう。
- 発酵食品を積極的に摂る:ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品は、腸内環境を整える善玉菌を増やし、腸の働きをサポートします。
- 規則正しい食事とよく噛むこと:決まった時間に食事を摂り、一口30回を目安によく噛むことで、消化を助け、ガス発生を抑えることができます。早食いは空気を多く飲み込む原因にもなります。
- 水分をこまめに補給する:体内の水分不足は便秘を招き、ガスがたまる原因となることがあります。
ストレスを和らげるコツ
ストレスは腸の不調に直結するため、日頃からストレスを上手に管理することが大切です。
- リラックスする時間を作る:入浴、アロマテラピー、好きな音楽を聴くなど、心身がリラックスできる時間を作りましょう。
- 十分な睡眠をとる:睡眠不足は自律神経の乱れを招き、腸の働きに悪影響を与えます。
- 適度な運動を取り入れる:軽いウォーキングやストレッチは、ストレス軽減だけでなく、腸の動きを活発にする効果も期待できます。
- 趣味や気分転換を見つける:気分転換になるような活動を見つけ、ストレスをため込まないようにしましょう。
適度な運動で腸を活性化
運動は、腸の蠕動運動を促し、ガスや便の排出を助ける効果があります。 特に、ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの有酸素運動は、腸に優しい運動としておすすめです。 毎日少しずつでも継続することで、腸の動きが活発になり、ガスがたまる症状や便通の改善につながります。 また、運動はストレス解消にも役立ち、心身のリフレッシュにもつながります。
市販薬やサプリメントの活用
症状が軽度な場合や、一時的な不調であれば、市販薬やサプリメントの活用も検討できます。ただし、使用する際は薬剤師や登録販売者に相談し、用法・用量を守って正しく使用することが重要です。
- 消泡剤配合の整腸薬:腸内にたまったガスを分解・排出する成分(ジメチルポリシロキサンなど)と、腸内環境を整える乳酸菌などが配合された市販薬があります。
- 整腸剤:乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給し、腸内環境のバランスを整えることで、ガス発生を抑え、便通を改善する効果が期待できます。
- 漢方薬:体質や症状に合わせて、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)などの漢方薬が用いられることもあります。
市販薬を1~2週間使用しても症状が改善しない場合や、悪化する場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
よくある質問

- ガスがたまる粘液便は癌のサインですか?
- 子供にもガスがたまる粘液便は出ますか?
- ストレスでガスがたまる粘液便が出やすくなるのはなぜですか?
- 粘液便が出た後、お腹のガスが減ることはありますか?
- 特定の食べ物がガスがたまる粘液便を引き起こすことはありますか?
ガスがたまる粘液便は癌のサインですか?
ガスがたまる粘液便の症状だけで直ちに癌と断定することはできませんが、粘液に血液が混じる(粘血便)場合や、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、急激な体重減少、40歳以上で初めて症状が出たなどの場合は、大腸がんの可能性も考慮し、速やかに医療機関を受診することが大切です。 大腸がんは初期には自覚症状がほとんどないことも多く、粘液便がないからといって安心はできません。 早期発見のためには、定期的な健康診断や大腸カメラ検査が推奨されます。
子供にもガスがたまる粘液便は出ますか?
はい、子供にもガスがたまる粘液便は出ることがあります。 赤ちゃんのうんちが粘り気のあるものに変わるのは正常な変化であることもありますが、鼻水のような粘液状のものが多量に混じった下痢便や、血液が混じっているような場合には、急いで医療機関を受診しましょう。 子供の場合、感染性腸炎や食物アレルギー、過敏性腸症候群などが原因となることがあります。 お腹が張って鳴る、おならが多いタイプのお子さんの場合は、玉ねぎや芋、炭酸飲料など、ガスを作りやすい食べ物を避けることも有効です。 お子さんの機嫌や食欲に変化がないか、他の症状を伴っていないかなどをよく観察し、心配な場合は小児科を受診してください。
ストレスでガスがたまる粘液便が出やすくなるのはなぜですか?
ストレスは自律神経のバランスを乱し、腸の働きに大きな影響を与えるため、ガスがたまる粘液便が出やすくなります。 自律神経は、腸の動き(蠕動運動)をコントロールしており、ストレスがかかると交感神経が優位になり、腸の動きが抑制されることがあります。 これにより、ガスが腸内に滞留しやすくなり、お腹の張りや腹痛を引き起こします。 また、ストレスは腸の粘膜を刺激し、保護のために粘液の分泌を増加させることもあります。 特に過敏性腸症候群(IBS)はストレスと密接な関係があり、ストレスが症状を悪化させる大きな要因となります。
粘液便が出た後、お腹のガスが減ることはありますか?
粘液便が出た後にお腹のガスが減るかどうかは、その原因によって異なります。もし粘液便が、腸内にたまったガスや便が排出される過程で、腸の粘膜が刺激されて一時的に出たものであれば、排便後にガスが減って腹部の不快感が軽減される可能性はあります。しかし、腸の炎症や過敏性腸症候群など、根本的な問題が解決されていない場合は、一時的にガスが減っても、再びガスがたまる症状が現れることが多いです。 症状が続く場合は、原因を特定するために医療機関を受診することが大切です。
特定の食べ物がガスがたまる粘液便を引き起こすことはありますか?
はい、特定の食べ物がガスがたまる粘液便を引き起こすことがあります。特に、FODMAP(フォドマップ)と呼ばれる糖質を多く含む食品は、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすいため、腸内でガスを過剰に発生させ、腹部膨満感や下痢、粘液便などの症状を引き起こすことがあります。 高FODMAP食品の例としては、小麦製品(パン、パスタ)、玉ねぎ、ニンニク、豆類、乳製品(牛乳、ヨーグルト)、一部の果物(りんご、梨)などが挙げられます。 これらの食品を摂取した後に症状が悪化する場合は、低FODMAP食を試すことで症状の改善が期待できることがあります。 また、脂質の多い食品、カフェイン、アルコール、香辛料なども腸を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。
まとめ

- ガスがたまる粘液便は、お腹の不快感と便の異常が同時に現れる症状です。
- 「ガスがたまる」のは腸内ガス過剰発生や排出不良が原因です。
- 「粘液便」は腸の粘膜の炎症や刺激が背景にあることが多いです。
- 過敏性腸症候群(IBS)はガスと粘液便の主な原因の一つです。
- 腸炎や消化器系の感染症もこれらの症状を引き起こします。
- 食生活の乱れや消化不良も腸に負担をかけ症状を悪化させます。
- ストレスや自律神経の不調は腸の働きに大きく影響します。
- 腸内環境の悪化もガス発生と粘液分泌を促す要因です。
- 粘液に血が混じる、発熱、激しい腹痛などは危険なサインです。
- 症状が続く場合は消化器内科を受診することがおすすめです。
- 食事内容の見直し、特に低FODMAP食が有効な場合があります。
- ストレスを和らげるためのリラックスや睡眠も重要です。
- 適度な運動は腸の蠕動運動を促し症状改善に役立ちます。
- 市販の整腸薬や消泡剤も一時的な症状緩和に活用できます。
- 子供の粘液便やガス症状も、他の症状を伴う場合は受診が必要です。
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