お子さんの熱性けいれん予防のために処方されたダイアップ坐剤を、誤って3回目も入れてしまい、ご不安な気持ちでいっぱいの方もいらっしゃるのではないでしょうか。大切なことなので、まずはお一人で抱え込まず、落ち着いて対処することが肝心です。本記事では、ダイアップ坐剤の正しい使い方から、もし3回目を入れてしまった場合に考えられる影響、そして何よりも大切な緊急時の対処法について詳しく解説します。お子さんの安全を守るための正確な知識と行動を知り、安心して対応できるようになりましょう。
ダイアップ坐剤とは?熱性けいれん予防の重要性

ダイアップ坐剤は、お子さんが発熱時に起こしやすい熱性けいれんを予防するために使用されるお薬です。有効成分はジアゼパムで、中枢神経に作用して神経細胞の興奮を抑え、けいれんの発作を改善する効果があります。主に、熱が急激に上昇する際に起こりやすい熱性けいれんの予防目的で使われることが多いです。この坐剤は、高田製薬株式会社から販売されており、多くの医療機関で処方されています。
熱性けいれんは、乳幼児期に多く見られる症状で、通常38℃以上の発熱に伴って起こります。お子さんの脳は熱に敏感で未熟なため、熱が上がるときに突然意識を失ったり、手足が震えたりすることがあります。熱性けいれんを一度経験したお子さんの約30%が再発すると言われており、特にけいれんが長時間続いたり、短期間に繰り返したりする場合には、予防薬としてダイアップ坐剤が処方されることがあります。
ダイアップ坐剤の正しい使い方と投与間隔

ダイアップ坐剤は、その効果を最大限に発揮し、かつ安全に使用するために、正しい使い方と投与間隔を守ることが非常に重要です。一般的に、熱性けいれんの予防目的で使用する場合、以下の手順と間隔が推奨されています。
1回目の投与タイミング
お子さんの体温が37.5℃前後の発熱に気づいた時点で、できるだけ速やかに1個を肛門内に深く挿入します。熱性けいれんは発熱直後から24時間以内に起こりやすいため、早めの投与が予防のコツです。
2回目の投与タイミング
1回目の投与から8時間後に、38℃以上の発熱が続いている場合に限り、もう一度坐剤を挿入します。8時間後に熱が下がっていても、医師から指示があれば2回目を投与することが原則です。この2回の投与で、通常24時間以上の予防効果が持続するとされています。
3回目以降の投与が推奨されない理由
ダイアップ坐剤の有効成分であるジアゼパムは、体内で分解されるまでに時間がかかる(半減期が約30時間)ため、通常は2回の投与で十分な効果が24時間以上持続します。 3回目以降の投与は、体内の薬の濃度が過剰になり、副作用が強く出る可能性が高まるため、特別な指示がない限り推奨されません。 医師から3回目の投与を指示された場合でも、2回目の投与から16時間以上の間隔を空ける必要があるとされています。
3回目を入れてしまったらどうなる?考えられる影響と副作用

もし誤ってダイアップ坐剤を3回目も入れてしまった場合、お子さんの体内でジアゼパムの血中濃度が過剰になり、様々な影響や副作用が現れる可能性があります。ジアゼパムは中枢神経に作用する薬であるため、特に神経系への影響に注意が必要です。
一般的な副作用
ダイアップ坐剤の主な副作用として、眠気やふらつきが挙げられます。投与されたお子さんの約50%にこれらの症状が見られることがあります。 3回目を投与することで、これらの症状がより強く現れる可能性があり、お子さんがぐったりしたり、転びやすくなったりすることが考えられます。また、まれに興奮状態になることもあります。
より重篤な副作用の可能性
過剰な投与は、呼吸抑制を引き起こすリスクを高める可能性があります。特に乳児や呼吸器に問題があるお子さんの場合、注意が必要です。 呼吸が浅くなったり、呼吸回数が減ったりするなどの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。また、薬の作用で意識レベルの評価が難しくなることもあり、髄膜炎や急性脳症といった重篤な病気の症状がマスクされてしまう危険性も指摘されています。
ジアゼパムは体内でゆっくりと排泄されるため、一度過剰に投与してしまうと、その影響が長時間続く可能性があります。そのため、3回目を入れてしまった場合は、お子さんの様子を注意深く観察し、異変があればすぐに専門家の助けを求めることが大切です。
誤って3回目を入れてしまった場合の緊急対処法

ダイアップ坐剤を誤って3回目入れてしまったことに気づいたら、まずは落ち着いて、お子さんの状態を注意深く観察することが最も重要です。パニックにならず、冷静に対応しましょう。
お子さんの様子を注意深く観察する
以下の点に注目して、お子さんの状態を確認してください。
- 意識レベル: 呼びかけに反応するか、目が合うか、ぐったりしていないか。
- 呼吸の状態: 呼吸が浅くないか、速すぎないか、遅すぎないか、苦しそうではないか。
- 顔色や唇の色: 青ざめていないか、チアノーゼ(唇が紫色になる)がないか。
- ふらつきや眠気の程度: いつもより強い眠気やふらつきがないか、転倒の危険性はないか。
- 興奮状態: 普段と異なる異常な興奮が見られないか。
これらの症状は、ダイアップ坐剤の副作用として現れる可能性があります。特に呼吸の状態や意識レベルの変化には細心の注意を払ってください。
いつ医療機関に連絡すべきか、救急車を呼ぶ目安
以下のような状況が見られた場合は、迷わず医療機関に連絡するか、救急車を呼んでください。
- 意識が朦朧としている、呼びかけに反応しない。
- 呼吸が明らかに浅い、または不規則である。
- 顔色や唇の色が悪い(チアノーゼが見られる)。
- 強いふらつきで歩けない、または転倒を繰り返す。
- 異常な興奮が続き、落ち着かない。
- けいれんが5分以上続いている、または繰り返している。
これらの症状は、薬の過剰投与による重篤な影響のサインである可能性があります。夜間や休日であっても、ためらわずに緊急対応を求めてください。医療機関を受診する際には、いつ、何を、何回、どれくらいの量を投与したかを正確に伝えられるようにメモしておくと、医師の診断に役立ちます。
今後のために!ダイアップ坐剤の安全な使用と予防策

今回の経験を教訓に、今後ダイアップ坐剤をより安全に使用するための予防策を講じることが大切です。お子さんの健康を守るために、以下の点を心がけましょう。
投与記録の重要性
ダイアップ坐剤を投与した日時、回数、お子さんの体温、その後の様子などを詳細に記録する習慣をつけましょう。スマートフォンのメモ機能や専用の記録用紙を活用すると便利です。これにより、誤って多く投与してしまうことを防ぎ、また、次に医療機関を受診する際に正確な情報を提供できます。
家族間での情報共有
ご家族で協力してお子さんのケアをしている場合、誰がいつダイアップ坐剤を投与したのかを確実に共有することが不可欠です。口頭での伝達だけでなく、目に見える形で記録を残し、確認し合うことで、二重投与や過剰投与のリスクを大幅に減らせます。例えば、冷蔵庫に貼るホワイトボードに投与記録を記載するなどの工夫も有効です。
医師や薬剤師との連携
ダイアップ坐剤の使用に関して不安な点や疑問があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。特に、お子さんの体質や他の薬との併用についてなど、個別の状況に応じたアドバイスを受けることが重要です。また、ダイアップ坐剤の処方時に、使用方法や注意点について十分に説明を受け、理解を深めておくことも大切です。
これらの予防策を実践することで、ダイアップ坐剤を安全かつ効果的に使用し、お子さんの熱性けいれんを適切に管理できるようになります。
よくある質問

ダイアップ坐剤と解熱剤の併用は可能ですか?
ダイアップ坐剤と解熱剤の坐薬を併用する場合、ダイアップ坐剤を先に挿入し、30分以上の間隔を空けてから解熱剤の坐薬を使用してください。 これは、先に油成分の多い解熱剤の坐薬を入れてしまうと、ダイアップ坐剤の吸収が悪くなり、効果が十分に発揮されない可能性があるためです。内服の解熱剤であれば、同時に服用しても問題ありません。
ダイアップ坐剤はいつまで使うの?
ダイアップ坐剤の使用期間は、お子さんの状態や熱性けいれんの既往歴によって異なりますが、一般的には最後のけいれん発作から1〜2年間、または4〜5歳になるまでが目安とされています。 けいれんが発症するリスクが減る年齢になると、予防投与は不要となることが多いです。いつまで使用するかは、必ず主治医と相談して決定してください。
ダイアップ坐剤が便と一緒に出てしまったら?
ダイアップ坐剤を挿入後30分以内に便と一緒に出てしまった場合、坐剤が明らかにもれたと判断できる場合は、新たに挿入し直してください。 ただし、便中に坐剤の形が確認できる場合は、カットして予定量の半分を再度使用し、それ以上の追加は避けるべきです。 判断に迷う場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
ダイアップ坐剤の保管方法は?
ダイアップ坐剤は、室温(1〜30℃)で保存できます。 ただし、30℃以上の高温になる場所は避け、アルミピロー開封後は湿気を避けて遮光して保存してください。冷蔵庫での保管も可能ですが、冷凍庫での保管は推奨されません。 車の中など、高温になる可能性のある場所には放置しないように注意しましょう。
ダイアップ坐剤でけいれんは止まる?
ダイアップ坐剤は、けいれんが起こるのを「予防する」薬であり、目の前で起きているけいれんを「止める」効果はあまり期待できません。 坐剤を挿入してから効果が現れるまでに15分以上かかるため、けいれんが始まってから使用しても、自然に止まることが多いです。けいれんが5分以上続く場合は、速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。
まとめ

- ダイアップ坐剤は熱性けいれん予防薬です。
- 通常、1回目の投与から8時間後に2回目を投与します。
- 3回目以降の投与は原則推奨されません。
- 誤って3回目を入れると副作用が強く出る可能性があります。
- 眠気やふらつきが主な副作用です。
- 呼吸抑制など重篤な副作用のリスクもあります。
- 過剰投与に気づいたらお子さんの様子を観察しましょう。
- 意識レベルや呼吸の状態に異変があれば医療機関へ連絡を。
- けいれんが5分以上続く場合は救急車を呼びましょう。
- 投与日時や回数を記録する習慣をつけましょう。
- 家族間で投与情報を確実に共有することが大切です。
- 不安な点は医師や薬剤師に相談しましょう。
- ダイアップ坐剤と解熱剤の坐薬は30分以上間隔を空けてください。
- ダイアップ坐剤はけいれんを予防する薬です。
- 坐剤は室温で保存し、高温を避けましょう。
