グランドカバーとして人気のクリーピングタイム。可愛らしい花と爽やかな香りでお庭を彩ってくれる素敵なハーブですよね。しかし、そんなクリーピングタイムに「ナメクジが大量発生してしまった…」という悲しい声が聞こえてくることがあります。本記事では、なぜクリーピングタイムにナメクジが集まるのか、その原因を解明し、今日からできる具体的な予防策と駆除方法を詳しく解説します。
クリーピングタイムはナメクジの隠れ家になりやすい!

まず結論からお伝えすると、クリーピングタイム自体が特別ナメクジを誘引する成分を持っているわけではありません。 しかし、その育ち方がナメクジにとって最高の隠れ家を提供してしまうのです。クリーピングタイムは地面を這うように密に広がるため、葉の下は常に日陰で湿気が保たれやすい環境になります。このジメジメした場所こそ、乾燥を嫌うナメクジにとって格好の住処であり、産卵場所にもなってしまうのです。
特に、以下のような状況では注意が必要です。
- 梅雨の時期や雨が続いた後
- 水はけの悪い土壌に植えている場合
- 風通しの悪い場所で育てている場合
「虫除け効果を期待していたのに…」とがっかりするかもしれませんが、原因を知れば対策は可能です。大切なクリーピングタイムをナメクジの被害から守るために、まずは発生の原因を詳しく見ていきましょう。
なぜ?クリーピングタイムにナメクジが発生する3つの原因

クリーピングタイムがナメクジの温床となりやすいのには、明確な理由があります。ここでは、その主な3つの原因について掘り下げて解説します。ご自身のガーデニング環境と照らし合わせながら、チェックしてみてください。
本章では以下の内容を解説します。
- 原因1:湿気がこもりやすい環境
- 原因2:絶好の隠れ場所になる
- 原因3:柔らかい新芽や花が好物
原因1:湿気がこもりやすい環境
ナメクジが発生する最大の原因は「湿気」です。ナメクジの体は水分の蒸発に非常に弱く、乾燥した場所では生きていけません。 クリーピングタイムは地面を覆うように葉を密集させて成長します。このため、株元は常に日陰になり、土の表面が乾きにくく、高い湿度が保たれやすい状態になります。
特に、水はけの悪い粘土質の土壌に植えていたり、頻繁に水やりをしすぎていたりすると、さらに湿度は高まります。このような環境は、ナメクジにとってまさに天国。快適な住処を求めて、自然と集まってきてしまうのです。
原因2:絶好の隠れ場所になる
ナメクジは夜行性で、日中は天敵である鳥や直射日光から身を守るために、物陰に隠れて過ごします。 植木鉢の裏や石の下などが代表的な隠れ場所ですが、クリーピングタイムの密集した葉の下も、彼らにとっては最高のシェルターとなります。
ふさふさとした葉が外部の危険から体を守ってくれるだけでなく、適度な湿り気もあるため、安心して日中を過ごすことができます。そして、夜になると隠れ家から出てきて、クリーピングタイムやその周りの植物を食べて活動を始めるのです。知らず知らずのうちに、お庭にナメクジの安全地帯を提供してしまっている可能性があるのです。
原因3:柔らかい新芽や花が好物
クリーピングタイム自体は、他の植物に比べてナメクジの食害にものすごく遭いやすいというわけではありません。しかし、ナメクジは雑食性で、特に柔らかい植物を好んで食べます。
そのため、春に出てくるクリーピングタイムの柔らかい新芽や、咲き始めの花びらは、ナメクジにとって格好のごちそうになってしまうことがあります。 葉っぱに不自然な穴が開いていたり、花びらが食べられていたりしたら、それはナメクジの仕業かもしれません。隠れ場所と食料が同時に手に入る環境は、ナメクジの繁殖をさらに助長させてしまいます。
【今日からできる】クリーピングタイムのナメクジ対策|予防編

ナメクジ対策で最も重要なのは、発生してしまってから駆除することよりも、「そもそも寄せ付けない環境」を作ることです。少しの手間で大きな効果が期待できる予防策をご紹介します。
本章では以下の内容を解説します。
- 対策1:風通しを良くする(剪定・切り戻し)
- 対策2:水はけの良い土壌にする
- 対策3:水やりの工夫
- 対策4:コーヒーかすを撒く
- 対策5:銅製品を置く
- 対策6:忌避効果のある植物を一緒に植える
対策1:風通しを良くする(剪定・切り戻し)
ナメクジ対策の基本は、風通しを良くして湿気を溜めないことです。クリーピングタイムが密集して茂ってきたら、思い切って剪定(せんてい)や切り戻しを行いましょう。
特に、梅雨に入る前の5月~6月頃に、全体の半分くらいの高さに刈り込むのがおすすめです。株全体の風通しが良くなることで、地面が乾きやすくなり、ナメクジが好むジメジメした環境を改善できます。 見た目がスッキリするだけでなく、蒸れによる株の弱りを防ぐ効果もあるので、一石二鳥ですよ。
対策2:水はけの良い土壌にする
クリーピングタイムは元々、乾燥気味の環境を好むハーブです。 植え付ける段階で、水はけの良い土壌を用意してあげることが、後の管理を楽にするコツです。
庭植えの場合は、土に腐葉土やパーライトなどを混ぜ込んで、水がスムーズに抜けるように土壌改良を行いましょう。鉢植えの場合は、市販のハーブ用の土を使ったり、赤玉土を多めに配合したりするのがおすすめです。 鉢底に鉢底石を敷くのも忘れないようにしてください。水はけが良くなるだけで、ナメクジの発生率は格段に下がります。
対策3:水やりの工夫
「可愛いから」「枯らしたくないから」と、ついつい水をやりすぎていませんか? クリーピングタイムは乾燥に強い植物なので、水のやりすぎは禁物です。過剰な水分は根腐れの原因になるだけでなく、ナメクジを呼び寄せる原因にもなります。
水やりのタイミングは、「土の表面が完全に乾いてから」を徹底しましょう。 特に地植えの場合は、根付いてしまえば基本的に雨水だけで十分で、真夏の乾燥が続く時期以外は水やりの必要はほとんどありません。常に土が湿っている状態を避けることが、ナメクジ予防の重要なポイントです。
対策4:コーヒーかすを撒く
ご家庭でコーヒーを楽しまれる方におすすめなのが、コーヒーかすを利用したナメクジ対策です。ナメクジはコーヒーに含まれるカフェインを嫌う性質があると言われています。
よく乾燥させたコーヒーかすを、クリーピングタイムの株元やナメクジに来てほしくない場所の周りにパラパラと撒いておくだけで、忌避効果が期待できます。 ただし、注意点もあります。湿ったコーヒーかすはカビの原因になったり、逆に虫を寄せ付けてしまったりすることがあります。 必ずしっかりと乾燥させてから使うようにしましょう。また、雨で流れてしまうため、効果は永続的ではありません。定期的に撒き直す必要があります。
対策5:銅製品を置く
ナメクジは、体に触れると微弱な電流を感じる銅を嫌う性質があります。この性質を利用して、銅製品で物理的なバリアを作る方法も有効です。
例えば、鉢植えで育てている場合は、鉢の周りに銅線や銅板テープをぐるりと一周巻きつけるだけで、ナメクジが鉢の中に侵入するのを防ぐことができます。地植えの場合でも、クリーピングタイムを植えているエリアの周りを銅板で囲うなどの対策が考えられます。ホームセンターや園芸店で、ナメクジ対策用の銅製品が販売されているので、探してみるのも良いでしょう。
対策6:忌避効果のある植物を一緒に植える
コンパニオンプランツとして、ナメクジが嫌う香りを持つ植物を一緒に植えるのも一つの方法です。ナメクジは、ラベンダーなどの特定のハーブの香りを嫌う傾向があります。
クリーピングタイムの近くにラベンダーを植えることで、ナメクジが近寄りにくくなる効果が期待できます。ただし、これだけで完全に防げるわけではないので、他の対策と組み合わせることが大切です。見た目にも華やかになり、ガーデニングの楽しみも増えるので、試してみてはいかがでしょうか。
【見つけたら即実行】クリーピングタイムのナメクジ対策|駆除編

予防策を講じていても、ナメクジが発生してしまうことはあります。見つけたら放置せず、すぐに対処することが被害を拡大させないための鍵です。効果的な駆除方法をいくつかご紹介します。
本章では以下の内容を解説します。
- 駆除法1:夜間の捕殺
- 駆除法2:ビールトラップ
- 駆除法3:熱湯をかける
- 駆除法4:市販の駆除剤を利用する
駆除法1:夜間の捕殺
最も確実で原始的な方法が、夜間の捕殺です。ナメクジは夜行性なので、日没後、懐中電灯を持ってクリーピングタイムの周りを探してみましょう。 活発に活動しているナメクジを見つけることができるはずです。
見つけたら、割り箸やピンセットでつまんで捕獲します。捕まえたナメクジは、中性洗剤を数滴入れた水の中に落とすと、這い上がることができずに駆除できます。 手で直接触れると、寄生虫がいる可能性があるので絶対にやめましょう。 地道な作業ですが、薬剤を使いたくない方には最も安全で確実な方法です。
駆除法2:ビールトラップ
ナメクジがビールの酵母の香りに誘引される性質を利用したのが「ビールトラップ」です。
やり方は簡単。プリンの空き容器やペットボトルの底の部分などにビール(発泡酒でも可)を注ぎ、クリーピングタイムの近くの地面に、容器のフチが地面と同じ高さになるように少し埋めて設置します。夜の間に匂いに誘われたナメクジが容器の中に落ちて、おぼれて駆除できるという仕組みです。 翌朝、トラップにかかったナメクジを容器ごと処分します。手軽に試せる効果的な方法の一つです。
駆除法3:熱湯をかける
見つけたナメクジを即座に駆除したい場合、熱湯をかけるという方法があります。50℃以上のお湯であれば、確実かつ瞬時に駆除することが可能です。
ただし、この方法には大きな注意点があります。それは、熱湯がクリーピングタイムや他の植物にかからないようにすることです。 植物にかかってしまうと、根や葉が大きなダメージを受けて枯れてしまう可能性があります。ナメクジだけを狙って、ピンポイントでお湯をかけるように細心の注意を払いましょう。ジョウロなどではなく、ポットのような注ぎ口が細いもので慎重に行うのがおすすめです。
駆除法4:市販の駆除剤を利用する
大量に発生してしまい、手作業での駆除が追いつかない場合は、市販のナメクジ専用駆除剤に頼るのが最も効率的です。
駆除剤には、撒くだけの粒タイプや、容器に入れて設置する誘引殺虫タイプなど、様々な種類があります。 ペットや小さなお子様がいるご家庭では、天然成分由来のものや、薬剤に直接触れられない構造の製品を選ぶなど、安全面に配慮されたものを選びましょう。 商品の説明書をよく読み、適切な使用方法を守ることが大切です。雨に強いタイプなどもあるので、ご自身の環境に合ったものを選んでください。
よくある質問

Q1: クリーピングタイムに虫除け効果はありますか?
A: タイムに含まれる「チモール」という成分には、蚊やゴキブリなど一部の虫に対する忌避効果があるとされています。 しかし、ナメクジに対しては強い虫除け効果は期待できません。 むしろ、前述の通り、その茂みやすい性質からナメクジの絶好の隠れ家を提供してしまうことの方が多いのが実情です。 虫除け目的でクリーピングタイムを植える場合は、過度な期待はせず、他の対策と組み合わせることが重要です。
Q2: ナメクジに塩をかけるのは効果的ですか?
A: ナメクジに塩をかけると浸透圧で体内の水分が抜け、一時的に縮んで弱ります。 しかし、これは脱水症状を起こしているだけで、死んだわけではありません。雨が降ったり、水分を補給したりすると復活してしまうことがあります。 また、庭の土に塩分が残ると、土壌の塩分濃度が上がり、クリーピングタイムをはじめとする植物の生育に悪影響を及ぼす「塩害」を引き起こす可能性があるため、ガーデニングでの使用はおすすめできません。
Q3: ナメクジが這った跡のあるクリーピングタイムは料理に使えますか?
A: ナメクジは「広東住血線虫」などの寄生虫を保有している可能性があります。 もし、この寄生虫が口から体内に入ると、重篤な健康被害を引き起こすことがあります。そのため、ナメクジが這った形跡のあるクリーピングタイムや、その可能性がある植物を生で食べるのは絶対に避けてください。 どうしても使用したい場合は、流水で念入りに洗浄し、中心部まで十分に加熱調理することが必要です。しかし、安全を最優先に考え、食害に遭った部分やその周辺は破棄することをおすすめします。
Q4: コーヒーかす以外に家庭でできる対策はありますか?
A: 家庭にあるものでは、重曹や食酢もナメクジ対策に利用できると言われています。 重曹を直接振りかけたり、食酢を水で薄めてスプレーしたりする方法です。しかし、これらの方法は塩と同様に、土壌のpHバランスを変化させてしまう可能性があります。植物によっては生育に悪影響が出ることも考えられるため、使用する際は植物に直接かからないように注意するなど、慎重に行う必要があります。まずはコーヒーかすやビールトラップなど、植物への影響が少ない方法から試すのが良いでしょう。
まとめ

- クリーピングタイムはナメクジの絶好の隠れ家になる。
- 原因は「湿気」「隠れ場所」「柔らかい新芽」の3つ。
- 予防の鍵は「風通し」と「水はけ」の改善。
- 剪定や切り戻しで湿気がこもるのを防ぐ。
- 水やりは「土が乾いてから」を徹底する。
- コーヒーかすや銅製品は手軽な予防策になる。
- 発生したら夜間に捕殺するのが確実。
- ビールトラップは効果的な駆除方法の一つ。
- 熱湯は植物にかけないよう細心の注意が必要。
- 大量発生時は市販の駆除剤を適切に利用する。
- ナメクジに塩をかけるのは庭では非推奨。
- ナメクジが這った植物は生で食べない。
- 虫除け効果は過信せず、環境管理を徹底する。
- 原因を知り、適切な対策で被害は防げる。
- 諦めずに、美しいクリーピングタイムの庭を楽しもう。